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「ROBO-ONE GP 2008 inスパリゾートハワイアンズ」レポート


 2009年1月4日(日)、福島県いわき市のスパリゾートハワイアンズにて、ROBO-ONE GPの2008年度最終戦が開催された。


2008年度ROBO-ONE GPの総決算

 2008年度の最終戦の舞台となったのは、今年で3年連続となる福島県いわき市のスパリゾートハワイアンズ。昨年までは「スプリングパークプラザ」という、施設内でも比較的“室内”といえる環境で行なわれていたが、なんと今年は「ビーチシアター」、つまりスパリゾートハワイアンズの主役ともいえる「フラ&ポリネシアンショー」が開催される「ウォーターパーク」内のメインステージに移されたのである。

 「ウォーターパーク」というのは、50mの大プールを筆頭に、流れるプールやウォータースライダー、お子様用のミニプールまでが揃う文字通り水だらけのエリア。気温も水着で遊ぶ人に合わせて、30度オーバーに保たれている。人間にとってはパラダイスなのだが、この高温多湿環境はロボットにとってあまりにも過酷な環境だろう(試合途中のステージ上は36度だというアナウンスもあった。真夏だ)。しかも湿気が天井付近で結露するため、リング上にはポタポタとしずくが落ちてくる。「午後には乾くんで大丈夫です」と運営側からはアナウンスされていたが、テストで動かしていた出場者からは「直撃したら(ショートして)燃えるよ」という、笑えない呟きも。開始前から波乱の予感がする、ROBO-ONE GP最終戦の開幕となった。


水着のお客さんがロボットイベントを眺めている珍しい環境。今年はリングの向こうにウォータースライダーが見えた ふだんはこんな感じで「フラ&ポリネシアンショー」が行なわれている場所

天井から降り注いたしずくの跡。午後にはほとんど気にならなくなった 強烈な湿気と高気温で結露してしまったカメラ。外は冬、コチラは夏

 今回の最終戦に出場したのは、ヨコヅナグレート不知火二代目(Dr.GIY & YAYOI)、レグホーン(NAKAYAN)、ivre(遊)、クロムキッド(KUPAKUMA)、トコトコ丸(ちーむトコトコ)、アフロ(すがわらゆうすけ)、Metallic Fighter(森永英一郎)、アリモプレナ(スミイファミリー)、もん☆(BOSO)、ダイナマイザー(スギウラファミリー)、キングカイザー(マルファミリー)という11機(当日の出場順)。もん☆、ダイナマイザー、キングカイザーの3機はシードとされ、3分1ラウンド・3ノックダウン制で行なわれた。

 初戦から、昨秋にROBO-ONEグランドチャンピオンシップのベルトを手にしたヨコヅナグレート不知火二代目が、本大会3位の実績を引っさげてGPに初参戦したレグホーンの前にいきなり敗退するというドラマからスタート。

 3戦目のトコトコ丸対アフロは、特別ルールとして時間無制限の一本勝負として行なわれた。チョーク(絞め技)もアリで、フォールかレフェリーストップ、リングアウト、ギブアップのみで決着がつくというもの。お互いに頭突きを見舞い、フォールも見せる。タフな2機の戦いは通常のバトルの3分間を超えてなお続いたが、最後はリング際を覗き込んでいた(相手を見失っていた?)アフロを、そーっと後ろに回ったトコトコ丸がリング外に落下させて、決着した。


【動画】ヨコヅナグレート不知火二代目(左)対レグホーン 【動画】ivre(左)対クロムキッド。過去の戦績を振り返ると、圧倒的にクロムキッド不利という顔合わせは、やはりivreに軍配が上がった

【動画】トコトコ丸(左)対アフロ 【動画】Metallic Fighter(左)対アリモプレナ。Metallic Fighterの拳とアリモプレナの腰ミノの相性が悪く、何度も引っかかってしまう。結果は2-0で“2009年干支ロボット”アリモプレナ

 初戦を勝ち上がったのは、レグホーン、ivre、トコトコ丸、アリモプレナの4機。ivre対クロムキッドはトーナメントの中では2回戦扱いのため、2回戦第1試合はシードのダイナマイザーがレグホーンと対戦。第2試合はナゾのユニット“BOSO”の操るもん☆がトコトコ丸を迎撃。第3試合でキングカイザーがアリモプレナと対戦する、という流れになった。

 1戦目でヨコヅナグレート不知火二代目を破ったレグホーンは、2戦目のダイナマイザー戦も2ダウンを奪って有利に試合を進め、最終的に2-1の優勢勝ちを収め、準決勝戦に進んだ。ダイナマイザーはエースオペレーターでなかったことが響いたのか、終始動きが鈍くみえた。

 トコトコ丸の相手となるもん☆は、「夕妃(ゆうひ)」という謎の女性オペレーターを擁して“BOSO”と名乗るユニットで参戦。メカニックである「マッド・ナグ」とともに、身なりからしてハードコアな2人と、雅なトコトコ丸という、奇妙な取り合わせになった。バトルのほうは、扇形に広がる凶悪な手先に加えて、腰を横にスライドさせてリーチを稼ぐもん☆が、開始30秒あたりからものの1分もしないうちに立て続けに3ダウンを奪い、楽々と準決勝戦に進んだ。ROBO-ONE本大会での優勝経験もあるものの、カワイイ系で攻めているトコトコ丸だが、製作者の網野氏は「そろそろ踊り(の扇子)ではなく、剣を取って戦う時期が来ましたかね」と、リベンジを期していた。


【動画】レグホーン(左)対ダイナマイザー戦 【動画】トコトコ丸(左)対もん☆戦

 2回戦最後の試合は、“素早い突き”と“なぎ払い”という、得意技が同系統のキングカイザー対アリモプレナ。この日すでに一戦消化して機体もオペレーターも暖まっているアリモプレナに対し、これが初戦のキングカイザーはなかなか決定的な攻撃を浴びせられない。逆にリングサイドまで追い込まれてリングアウトするなど、0-2とされてしまう。だが、終盤になって「しゃがんでいる状態が長いと警告があるかも」と実況に触れられたことでアリモプレナに隙が生まれたのか、キングカイザーは残り20秒で1ダウンを奪取。そして最後まであきらめずに攻め続け、残り0秒で2ダウン目をもぎ取り、ドローによる延長戦に持ち込んだ。

 有効なダウンを奪ったほうが勝利となる2分間サドンデス方式の延長戦は、序盤からお互いに積極的な攻撃がありながらスリップダウンすらない、緊張感あふれる戦い。最終的には間合いを詰めようと動いたキングカイザーの足に、リーチぎりぎりでなぎ払いを当てたアリモプレナがダウンを奪い、準決勝戦への最後の切符を手に入れた。


【動画】キングカイザー(右)対アリモプレナ戦。キングカイザー製作者の丸直樹氏は「今まで戦った中で一番倒れない相手だったかもしれない。修行しなおします」とコメント 【動画】「両者がこれだけ安定している戦いは珍しい」と解説が驚いてしまう延長戦

【動画】レグホーン(左)対ivre
 準決勝戦第1試合はレグホーン対ivre。どちらも格闘をメインに据えた、武闘派のGPファイターである。そんな顔合わせだけに戦いの内容も火花が散りそうな熱戦となった。

 開始直後にivreはレグホーンをはたき倒し、さらに巨大なハンドユニットでレグホーンの顔を挟み込むと、そのまま引き倒して2-0とリードする。あと1ダウンで負けという状況になったレグホーンだったが、その後も変わらず積極的に攻め込み、ivreをリング際まで追い詰めると手羽先スラッシュ(横突き)でリングアウトさせ、1ダウン。2ダウン目もリプレイを見るようにじわじわとリング際へ押し込んでリングアウトに追い込んで、決着は延長戦に持ち込まれる。

 その延長戦は開始5秒、ファーストタッチの手羽先スラッシュが戦闘体制を整えようとしていたivreに決まり、レグホーンが決勝戦に進んだ。


【動画】もん☆(左)対アリモプレナ
 準決勝第2試合は、もん☆対アリモプレナ。女性オペレーター同士の対決だったが、ロボットのほうはどちらも重量級という戦いになった。しゃがんだ体勢からの突きと、前後方向になぎ払う攻撃という、似通った攻撃方法を持つ2機の戦いだったためか、攻撃が当たってもなかなか倒れない展開。最初のダウンは、お互いにノーガードの「なぎ払い合い」から、アリモプレナが奪ったが、すぐにもん☆も突きとセットになった引き倒しでイーブンに持ち込む。じつはもん☆の手先にはねじが数本飛び出ており、引っかかりやすい服を着ているアリモプレナは格好の獲物なのである。最終的に延長戦までもつれ込んだ両者の勝負を決めたのはやはりこの「ねじ」で、引き倒しを決まり手にもん☆が決勝戦に進んだ。


 3位決定戦はivre対アリモプレナ。互いに攻めるものの、体格的に多少不利なivreが押され気味の展開となり、3-1でアリモプレナの勝利となった。ivreはこの日リングアウト続き(3位決定戦の最後のダウンもリングアウト)で、各部に蓄積したダメージも大きかったのだろう。

 決勝戦はレグホーン対もん☆。横突きとなぎ払いを主な技にしている両者だが、レグホーンはリングのレッドゾーンまで使って広い範囲を動き回り、チャンスと見たら懐に飛び込んで技を繰り出すタイプ。一方、もん☆は比較的ゆったりと動き、相手が射程範囲に入ってきたところでカウンターを喰らわせるタイプといえる。決勝戦はその両者のいいところが随所に出た試合になった。

 なぎ払いの戻り際を狙って背面から飛び込んだレグホーンが手羽先スラッシュで1ダウンを奪い、試合は駆け回るニワトリに翻弄されるもん☆ともいえる絵面に。しかしもん☆もさすがに決勝戦まで来る力がある機体である。このまま終わってしまうのかと思われた残り20秒に逃げ回るレグホーンをリング際に追い詰め、そのノド元にエグい突きを一閃。土壇場で1-1のドローに持ち込む。

 しかし、今日のレグホーンはさらに上を行っていた。残り5秒の試合再開直後に、手羽先スラッシュを連続で繰り出し、避けきれないもん☆から決定的なダウンを奪う。そのままタイムアップとなり、2-1でレグホーンがGP初出場・初優勝を飾った。

 負けたBOSO・夕妃は「負けたのは、たまたまです」と不満そう。メカニックのマッド・ナグも「次に会ったときは焼き鳥にしてやる!」と、リベンジを誓っていた。


【動画】3位決定戦、ivre(左)対アリモプレナ 【動画】決勝戦、レグホーン(左)対もん☆

優勝したNAKAYAN氏
 レグホーンの製作者・NAKAYAN氏は、開口一番「想定外でした」と一言。というのも、レグホーンは自分より重いロボットに勝つことはほとんどなかったのだという。しかしこの日は、ダイナマイザーやもん☆などに勝利。「特にもん☆は3、4回戦って一度も勝ってなかったんで、非常に嬉しいです」と、素直な喜びを伝えてくれた。勝利のポイントは、という問いに対しては、「回り込まれたときに、どう対処していいのかわからなかったんだと思いますよ。レグホーンの突きがどれだけ恐ろしいか、知らなかったんでしょう」と、クールな分析を披露。「それでも、ガードしてるのにダウンさせられたのには驚きました。さすがに大型機ですね」と、戦いが緊張感に満ちたものだったことも教えてくれた。

 レグホーンは関西を中心としたローカルな格闘大会でレベルアップし、ついにROBO-ONE GPまで制した。その勢いの源がどこにあるのかが不思議だったのだが、今回勝利後のインタビューで少しわかった気がする。NAKAYAN氏は、筆者の「最後に1-0とリードしている状態で、正面切っての打ち合いに応じた理由はなぜ?」という問いに対して、「そりゃあ、(レグホーンは)“喧嘩番長”ですから。喧嘩は時間が来るまで続けるもんですよ」と、不敵な、楽しそうな笑みを見せてくれた。時間切れ・優勢勝ちを狙うなんて考えはハナから存在しない。そんなところに強さは宿るのだろう。

 丑年のお正月ということで、牛柄の服を着ていたアリモプレナが実況にあおられたりもしていたが、よく考えてみるとここは東北のハワイ。オペレーターとおそろいでアロハを(普段から)着ているレグホーンが負けるわけはなかったのかもしれない。


ROBO-ONE GCタイトルはキングカイザーが奪還!

 ROBO-ONEの名前が冠されたタイトルの中で、最も特殊なのがこの「ROBO-ONE グランドチャンピオンシップ(GC)」ではないだろうか。ROBO-ONE GPはROBO-ONE本大会で優秀な成績を残したロボットが“ヘッドハンティング”されて所属する、いわばROBO-ONEの上位リーグである。だが、この「ROBO-ONE GC」は、初戦こそチャンピオンを決めるためにトーナメントを組んだものの、その後はベルトを賭けたチャンピオン対挑戦者のワンマッチのみで行なわれている。挑戦者として選ばれなければ挑戦することすらできない、特殊なタイトルというわけだ。

 現在のチャンピオンは、前回初代王者キングカイザーを1Rで沈めたヨコヅナグレート不知火二代目(Dr.GIY & YAYOI)。対するは前回の結果に納得がいかない前王者・キングカイザー(マルファミリー)。3分3R(2R先取)、3ノックダウン制で行なわれた。

 試合開始と同時に、キングカイザーが間合いを詰め、前後左右へ自在にパンチ、なぎ払い、突きを放つ。キングカイザーの攻撃は一瞬の間もおかずに次々と繰り出され、不知火は開始30秒ほどではたき倒されてしまう。たまらず間合いを取った不知火はキングカイザーの後方に回り込もうと移動するのだが、キングカイザーの突きは誘導ミサイルのごとく高速移動している不知火を撃墜。立ち上がった不知火が攻め手を見つけられずに戸惑っていると見るや、キングカイザーは自分だけが届く間合いへじわりと詰める。不知火が逃げようとするところを見逃さずカウンター気味に倒して、リターンマッチは1R1分少々という早い決着となった。不知火のオペレーター・YAYOI氏の試合経験の少なさが響いたかもしれない。

 2R目は不知火のオペレーターが経験豊富なDr.GIY氏に代わり、不知火陣営は背水の陣を敷く。だが、この日のキングカイザーの攻撃はGPの不完全燃焼を晴らすような抜群の切れ味で、2R開始早々にキングカイザーはダウンを奪うと、背後に回った不知火もなぎ倒し、最後はスリップダウンから体制を整えていた不知火に詰め寄っての突き一閃。2R目も1分と少しで決めてしまった。

 試合後のインタビューでは、GIY氏が「今日は全くいいところがなかったですね」としょんぼり。YAYOI氏も「完敗です」と兜を脱いでいた。丸氏は「前回あっさりと負けて悔しい思いをしていたので、今回借りを返してベルトを取り戻せて嬉しかった」と、ホッとした様子。また「ちょっと不知火が調子悪かったみたいですね」と残念そうなコメントもくれた。


【動画】ROBO-ONE GCタイトルマッチ、ヨコヅナグレート不知火二代目(右)対キングカイザー。第1ラウンド 【動画】ROBO-ONE GCタイトルマッチ、ヨコヅナグレート不知火二代目(右)対キングカイザー。第2ラウンド

2009年のROBO-ONE GPは積極開催

 2008年度は2回のみの開催となったROBO-ONE GPだが、2009年はより多く、さまざまな土地での開催を視野に入れて動いているようだ。GP専用のサイトも「ROBO-ONE エンターテインメントサイト」として、大会の日程だけではなく選手のプロフィールや組み合わせの発表など、情報が充実しているのでぜひマメにチェックしよう。


【動画】アリモプレナのフラダンス&歌謡ショー 【動画】ファイヤーダンスのタイコを模したダイナマイザーのデモ

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URL
  ROBO-ONE
  http://www.robo-one.com/

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( 梓みきお )
2009/02/17 15:17

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