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ZMP、カーロボティクス分野で首都大学東京との共同研究を開始


株式会社ゼットエムピー代表取締役社長の谷口悟氏(左)と、首都大学東京システムデザイン学部山口亨教授
 株式会社ゼットエムピー(ZMP)は17日、首都大学東京と共同でロボット技術を使った新ソリューションの研究を行なっていることを発表した。

 同社は、昨年からカーロボティクスのマーケティングおよび開発に着手し、今回は、首都大学東京システムデザイン学部山口亨教授と共同研究を行なうに至ったこと、これまでの経緯、今後発売予定のプラットフォーム製品などに関して発表した。

 共同研究のパートナーである山口教授は、社団法人自動車技術会エレクトロニクス部会幹事で、ヒューマトロニクスの専門家だ。ヒューマトロニクスとは山口教授が考案した概念で、人は自動車を認識できるがその逆は成り立っていない現状=人と自動車の関係が非対称性であるという問題の解決を目指すエレクトロニクス技術のことを指す。山口教授は、今後、自動車が高度に知能化・情報化すると共に、高齢者や弱者にも愛される「人との共生が図れる」ものになっていくものと思われるが、ヒューマトロニクスはそれを実現するための原動力となるだろう、としている。ヒューマトロニクスの狙いは、人と自動車がコンピュータネットワークによって協調し、人を支援する新たな文化となるよう発展させていくことも語った。


来年4月出荷予定でカーロボティクス・プラットフォームを開発中

 共同研究の成果を導入しつつ、現在ZMPで開発されているのが、1/10スケールモデルのクルマにロボット技術を導入したプラットフォームだ。このカーロボティクス・プラットフォームを開発するに至った背景としては、国土交通省主導で1991年から始まった先進安全自動車ASV(Advanced Safety Vehicle)プロジェクトが第4期に入り、急速に関連機能の普及と、自動車のロボット化が進んでいることが第一にある。開発が進んでいるとはいえ、こうした新技術の開発は、最初から実車で進めようとすると膨大な費用を必要とする上、テストコースなどの広いスペースも求められ、非常にハードルが高くなってしまう。大手自動車メーカーなど、どうしても研究・開発できる企業・組織は限られてしまうわけだが、その課題を解決し、低コストかつ省スペースで初期研究を進められるようにしようというのが、今回の1/10スケールモデルのカーロボティクス・プラットフォームというわけだ。

 目標としては、まず「日本発の世界中で使用される研究用プラットフォームを目指すこと」が1つ。大手自動車メーカーのような、開発費用とテストコースなどを備えていない中小企業や大学などの「多くの研究室でも手軽に始められること」が2つ目だ。さらに3つ目として、「メカトロニクス、ロボット技術の教材としても活用できること」がある。最後に4つ目が、「環境対策や画像処理、センサーなどの情報処理技術分野の教材として広げていくこと」。山口教授との共同研究では、人と自動車のインタラクションや、自動車間の情報共有などの新たなアプリケーション開発を目指すとしている。


カーロボティクス・プラットフォームの概要

概要説明を行なったZMP技術開発部部長の安藤秀之氏
 1/10スケールのカーロボティクス・プラットフォームに搭載されるのは、ロボット技術であることは前述したとおり。自律移動、自動車間通信、人と自動車のインタラクションなどの初期研究に活用できるよう、CPUや各種センサーが搭載されている。

 初期研究用途のニーズとしては、自動車メーカー、大手自動車部品メーカー、電気自動車を開発している重電メーカー、またはカーエレクトロニクス関連メーカーなどの自動車関連企業や大学・大学院、公的研究機関などを想定。教育用途のニーズとしては、同じく自動車関連メーカーの研修などに加え、工業高校や高専などの工業関連教育や、大学3、4年生に対する制御とロボット技術関連コースなども考えているという。

 なお、教育用途の場合は、単純にプラットフォームだけでなく、産業界、教育、研究ニーズとロボット技術をマッチングさせたエンジニア育成ソリューションとして、カリキュラムやテキストなども合わせて提供していくとしている。大学や企業などの制御理論学習、自動制御実習、開発プロセス教育をターゲットとし、産業界と教育現場をつなぐエンジニア育成教材にしていくという。教育ツールとしては、ZMPは5年間で300ユーザーに「e-nuvo」シリーズを導入した実績を持つが、その際に得た技術や教育ノウハウを活用する予定だ。「e-nuvo」シリーズと併せた教材としての活用も可能としている。

 導入によって得られるメリットについては、「MATLAB/Simlink」などを用いた高度な制御理論の実習ができることや、組込システムの開発の基礎をわかりやすく学べることなどを挙げる。研究用途に関しては、初期の自律アルゴリズム検証、人との基礎的なインタラクションの検証など。そのほか、学生の学習や新入社員の研修に対する効果としては、ロボットとクルマというわかりやすい題材を用いることでモチベーションを保ちやすいことや、実践的な教育を実施できることなどを挙げる。複数のエンジニアリング分野の担当者間で協力してプロジェクトをマネージメントするチームビルディング用の教材としても活用できるとした。また経済的なメリットとしては、プラットフォームとPCがあれば実習をスタートさせられ、学習や研修のコストを大幅に削減可能。オープンキャンパスで学生募集のアピールに貢献しやすいといった点もある。


カーロボティクス・プラットフォームのニーズ一覧 産業界、教育、研究ニーズとロボット技術のマッチング

ロボティクス・プラットフォームと、「e-nuvo」シリーズとの位置づけ 主要な導入メリットの一覧

カーロボティクス・プラットフォームの構成

 システム構成は、CPU、ステレオカメラ、画像処理ボード、Wi-Fi通信モジュール、ジャイロや加速度センサーなどの内界センサー、レーザーレンジファインダや赤外線測距センサーなどの外界センサーなどとなっている。OSはLinux。PC側はOSがWindowsとLinuxに対応し、gccを使用したRCメインCPU開発環境、画像処理用のIMAPCAR統合開発環境などとなっている。

 カーロボティクス・プラットフォーム本体でセンサーの入力から制御出力までを実行し、PCは開発及び非リアルタイムな指令、ログ収集に活用するとしている。今回は、実物の紹介はなく、プラットフォームのセンサーと基板レイアウトのイメージで紹介された。ただし、プロトタイプはできあがっているそうで、実機の公開はそう遠くないそうである。

 ちなみにカーロボティクス・プラットフォームがカバーする工学分野は、電機・電子工学、情報工学、制御工学、機械工学。詳細に分類すると、電子回路、組込システム、ソフトウェア、ヒューマンマシンインタラクション、認識、制御システム設計、機械設計、アクチュエータなど。非常に多岐に渡っている。


カーロボティクス・プラットフォーム本体のイメージ カーロボティクス・プラットフォームがカバーする工学分野一覧

導入使用例の紹介

 使用例としては、代表的なものとして、まず自律移動ロボットの研究・教育分野がある。「障害物回避アルゴリズム検証」では、カメラ、測距センサーなどを利用して、人や他車などの障害物検出及び回避のアルゴリズムを検証していく。実車での実験に持っていく前に、まずカーロボティクス・プラットフォームで行なえば、かかる費用や手間を大きく削減できるというわけだ。

 また、同じ分野での使用例として、「群制御、インフラ協調」についても紹介された。群制御とは、複数台のプラットフォームを使用して、前車の運転状況に合わせた追随制御や、カメラや測距センサーなどを利用して前車との距離を一定に保つ制御などの技術のこと。インフラ協調とは、PCを介した他車とのコミュニケーションや、模擬交通情報の提供による初期研究、PCを模擬コミュニケーションインフラとした自動車間通信の初期研究などを指す。

 現状、複数の自動車による自動運転などは実車での実験も進んでいるし、高速道路に限れば、いくつかの市販車で前車との距離をセンサーで常時検出して、一定間隔で追従する機能が搭載済みだ。同一車種間の自動車間通信で独自の交通情報をやり取りするような市販車もある。しかし、まだどれも低価格帯の市販車に導入されるほど技術のコストダウンが進んでいるわけではないし、まして群制御系の技術は一般道でまだ使用レベルに達してはいないので、大いに研究開発の余地があり、そこにこのカーロボティクス・プラットフォームが活用される機会が大いにあるといえるだろう。


自律移動ロボットの研究・教育分野での「障害物回避アルゴリズム検証」のイメージ 自律移動ロボットの研究・教育分野での「群制御、インフラ協調」のイメージ

 そのほか、自動運転の研究分野の「レーン追従、標識/信号認識」や、ヒューマトロニクスの研究分野の「人と自動車のインタラクション及び自動車間の情報共有」、自動車工学の研究・教育分野の「クイックな仮説検証」、道路環境の研究分野の「道路環境への情報埋め込み研究、都市計画などへの利用」なども紹介された。


自動運転の研究分野の「レーン追従、標識/信号認識」のイメージ ヒューマトロニクスの研究分野の「人と自動車のインタラクション及び自動車間の情報共有」のイメージ

 こうした研究開発に利用できる1/10スケール・カーロボティクス・プラットフォームだが、受注を17日より開始。環境問題の題材にもなるように、電流値モニターなどを設けて、車両構成、積載量、群制御などによるエネルギー消費の研究、教育にも活用する予定だ。さらに環境問題関連として、燃料電池も搭載を検討中とのことである。価格は内容によって変わってくるが、おおよそ50万円前後、出荷時期は来年4月からを予定している。


URL
  ZMP
  http://www.zmp.co.jp/
  ニュースリリース(PDF)
  http://www.zmp.co.jp/data/CRP_Pressrelease_20081217.pdf
  首都大学東京
  http://www.tmu.ac.jp/


( デイビー日高 )
2008/12/19 17:52

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