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次世代マニピュレータを使った廃棄物分離・選別システム
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11月18日、東急建設株式会社は日立建機株式会社と共同で開発した「次世代マニピュレータ」と「材質判定・移送装置」による建物解体工事における廃棄物分離・選別作業をRT化するシステムを、同社の技術研究所で報道陣に公開した。解体工事の環境保全と安全性向上が目的で、作業の効率化を実現、7カ月くらいかかっている工期を6カ月くらいに短縮し、解体工事全体で10%の工期短縮効果を上げることが目標。2012年度の現場運用を目指す。
「次世代マニピュレータ」は2本のアームを持つ油圧ショベルベースの建機。全長6m91cm、全幅2m73cm、運転質量13.4t。シオマネキのような左右非対称の双腕が特徴だ。腕は右に取り付けられた破砕作業を行なう大きな主腕(6自由度)と、切断作業などを行なえる左の副腕(9自由度)からなり、両腕を使った建設現場での解体作業ができる。両腕がぶつかって干渉しないための干渉防止機能や、把持した物体の質量を計測して旋回速度を制御する機能などを持ち、把持した廃棄物を落下させることなく移送できる。
日立建機ではこれまでにも「ASTACO(アスタコ)、(意味はザリガニ)」という双腕機を開発していたが、それぞれ片方で出せる力が同じ質量の機械に比べると小さく、大きな仕事を行なうには非効率だった。日立建機株式会社 商品開発事業部 開発企画室 室長の生田正治氏は、今回のモデルは右腕で11t級、左腕で3t半級の力が出せることから、より本格的な双腕機と言えると述べた。腕先端の位置精度は6自由度の右腕がプラスマイナス10cm程度、9自由度ある左腕が同じく15cm程度だという。
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新開発の次世代マニピュレータ
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側面。重量は13.4t
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左の副腕は横に倒して右腕との協調動作が可能。これまでの建機ではできなかった動き
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後方から
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ボディ下後方には人の接近を警戒するためのレーザーレンジファインダー
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アームには緑測器の傾斜角センサが使われていた
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運転席上部に付けられたステレオカメラと静止画撮影用カメラ
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副腕先端
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根本部分と先端部分がそれぞれ独立して可動
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ハンドの詳細
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両腕を使った作業が可能
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干渉防止機能
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操縦席
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右手にはモニター群
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操作用インターフェイス
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手元に複数のシフトボタンの付けられたジョイスティック
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足元はペダル
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操縦の様子。通常のバックホウと全く違って右腕は右腕で、左腕は左腕のジョイスティックで操縦する。肘も使う
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今回のシステムは独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の委託研究業務「戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト」のミッションの1つ、「特殊環境ロボット分野 建設系産業廃棄物処理RTシステム」の一環として開発されたもの。このプロジェクトでは同じテーマに複数の研究体が取り組んでおり、今年度11月に「ステージゲート」と呼ばれる選抜を受ける。ステージゲートを通過した研究体だけがさらに2カ年研究を続けられる。ただし東急建設と日立建機ではシステム開発に目処がついていることから、仮にNEDOの審査を通過しなくても独自に開発を続ける予定だという。
● 開発の背景
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開発の概要を解説する東急建設株式会社 技術研究所メカトログループグループリーダーの柳原好孝氏
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会見では開発の背景などもビデオを使って分かりやすく解説された。高度成長期に作られたビルは耐用年数に近づいている。また耐震基準に合わないものもあり、ビルの解体需要は年々増加している。現在はロングブームを使って、ビルの上から行なう解体作業が基本だが、ビルの高層化と地上の作業面積が狭いことから、ビルの階上に載せた解体機を使う「階上解体」という作業が一般的になりつつある。
コンクリート造の建物の解体は3つの工程からなる。1) 内装解体、2) アスベスト除去、3) 躯体解体。このシステムは躯体解体に適用される。躯体解体は以下の8つの手順で行なわれる。1) 建設副産物(廃棄物)の投下口を開ける、2) 解体機を載せる階下に補強のサポートを設置する、3) 解体機を最上階に吊り上げる、4) 階上から床を解体する、5) 建設副産物を階下に落とす、6) 解体機を下階へ移動する、7) 床を下の解から解体する、8) 壁を倒す(4-8を繰り返す)。このシステムは3-8の作業を行なう。
このなかでさまざまな廃棄物が出る。これら廃棄物の排出は困難を伴う。まず容積を減らすことが重要だが熟練オペレータでもそれはなかなか難しいという。またプラスチックは細かく砕くと選別が難しくなるので砕かずに運ぶことが必要だ。トラックで廃棄する排出物から異物を排出するには最終的に人の手で行なわなければならないが、解体機周辺での作業は危険が伴う。
そこで次世代マニピュレータによる廃棄物の分離・移送が可能な双腕マニピュレータ、5品目(コンクリート、鉄、アルミ、木材、プラスチック)の材質判定技術、解体機周辺の作業員検知技術、建設副産物の寸法形状データ取得技術、騒音振動等の周辺環境モニター技術を開発したという。
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解体市場の推移
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工期と工事費の割合
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ロングブームを使った現在の解体作業
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● デモンストレーション
当日行なわれたデモでは、実際に解体作業を模した実験スペースでの作業の様子が披露された。現場ではまず「大割機」と呼ばれる既存の解体機で建物を大きく壊し、その後の「小割」そして「選別」と呼ばれる作業で「次世代マニピュレータ」が活躍することになる。次世代マニピュレータによるコンクリート片からアルミ部材を外して分別する様子や、対象物を認識して適切な速度で移送する模様などがデモされたあと、識別装置によるデモが行なわれた。
次世代マニピュレータは双腕であり、操作系はこれまでのバックホウとは全く別物となっている。ただし操縦系に関しては今後大きく変わる可能性もあるそうで、今後のロボット技術の発展も睨みながら今後も研究を続けていくとのことだ。
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大割機と呼ばれる既存の解体機。これでまず建物を大きく壊す
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【動画】双腕を持つ次世代マニピュレータの基本動作
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【動画】副腕の動き。左右にローリングする
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【動画】右手で右腕、左手で左腕を操作することで両方同時に動かせる
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【動画】実際のデモ中の操縦の様子。オペレータの方によれば、これまでの建機とは全く違う操作だという
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【動画】旋回してコンクリートブロックにアプローチ
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【動画】鉄筋を切断し移送する
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【動画】右腕でコンクリート片を抑えアルミを引きはがして移送
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【動画】副腕だけでもかなりのパワーがある
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【動画】主腕でコンクリート片を持ち上げる
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ステレオカメラを使って物体を識別
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識別する範囲をまず指定して計測を実行
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見えない裏側も推定する
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対象をコンクリートと認識
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認識結果から適切な把持重量を推定し移動速度を決定する
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【動画】重いものはゆっくり運ぶ
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識別機
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コンベア上にカメラがある。コンクリを識別中
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渦電流、蛍光X線、近赤外のセンサを使って廃棄物の種類を識別する
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蛍光X線と識別作業の模様。将来的には非接触のセンサーとする予定
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プラスチックを識別した様子
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環境ビジュアライザで騒音、振動、粉塵データを可視化
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現場環境の計測と可視化の模様
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将来は半自律と遠隔操縦が目標
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デモでは双腕機のデモはスムーズに行なわれたものの、識別に関しては手間取ったり、木材を識別しようとしたのに「不明」と識別されてしまうシーンもあった。ただしこのシステムは、屋内では既に十分機能するそうだ。同社では屋内でセンサーが完全に動作するという研究開発計画を「フェーズ1」と位置づけ、すでにこの目標はクリア。現在は屋外での識別を可能とする研究段階である「フェーズ2」を先取りして開発を始めたところだという。しかしながら屋外現場での識別は非常に困難であり、今後も研究を継続していくという。
東急建設では在来機を次世代マニピュレータに置き換えることによる工期短縮ならびに解体機台数の削減、そしてリサイクル率の向上で、環境面においても10%~25%程度のCO2削減効果があり、混合廃棄物全体のボリュームを半分くらいに削減できると考えられるという。
なお日立建機が開発している双腕機はセンサー類がついてない単体の機械で3,000万円くらいの価格を想定し、2012年あたりから販売したいと考えているという。また東急建設としてもフェーズ1までの開発が終了し、システムが安定したら現場に持っていきたいとし、具体的には2012年くらいには現場で使い始めたいと考えているという
今後両社は遠隔操縦技術や、対象に自動で近づいたり定型作業をコマンドで行なう運転などの半自律的な機能を向上させていく予定。解体現場のほか、中間処分場、最終処分場、不法廃棄物処理、被災地での応用も可能となると考えており、次世代マニピュレータによる実用化普及をすすめ、作業の効率と安全性向上を計るとしている。
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フェーズ1の目標は達成したと考えているという
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現在はフェーズ2の目標を先取りして研究開発中
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遠隔操縦と半自律機能を実現するのがフェーズ3の開発目標
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日立建機株式会社 商品開発事業部 開発企画室 室長 生田正治氏
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■URL
東急建設
http://const.tokyu.com/
東急建設技術研究所
http://const.tokyu.com/lab/index.html
日立建機
http://www.hitachi-kenki.co.jp/
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( 森山和道 )
2008/11/19 02:16
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