つくばチャレンジは、人々が生活しているリアルワールドの中でロボットが確実に動き回って働くための技術の追求をテーマとして行なわれる、自律型ロボットによる屋外競技である。つくばチャレンジは、昨年11月に第1回が開催され、今年が2回目の開催となる。つくばチャレンジでは、毎回、ロボットが実環境の中で実現するべき動作を「課題」として定義し、その課題を達成させることを目的とする。昨年度の課題は、つくば市内の約1kmの遊歩道を、外部からのサポートを受けずに自律でゴールまで走行することで、33台のエントリー中(実際に走行したのは27台)3台が、見事に課題を達成した。
今回の課題も距離は昨年と同じ約1kmだが、ほぼ直線コースだった前回とは異なり、スタートから500mの地点でUターンして折り返す必要があり、他のロボットとすれ違う場面も出てくる。また、より人通りや障害物が多い場所で行なわれるので、難易度は格段に高く、非常にチャレンジングな課題となっている。
つくばチャレンジ2008は、11月20日(木)と11月21日(金)の2日に分けて開催される予定。初日に100mのトライアル走行が行なわれ、トライアル走行をクリアしたチームのみが、翌日行なわれる1kmの本走行に挑戦できる。しかし、現在のロボット技術では、ぶっつけ本番でリアルワールドのコースを走行させることは非常に難しく、実際には何度か試走会が行なわれている。昨年も試走会が数回行なわれたが、今回も、すでに8月3日(日)、9月7日(日)、10月5日(日)、19日(日)、11月2日(日)と5回の試走会が行なわれている。そこで、10月19日に行われた試走会の様子をレポートしたい。
● つくばエキスポセンターから出発してまた戻ってくるコース
つくばチャレンジ2008のエントリーはすでに締め切られており、大学や研究機関、企業、有志、個人など、合計50チームがエントリーしている。10月19日に行なわれた試走会では、約30チームが参加し、熱心に試走や調整を繰り返していた。
まず、今回のつくばチャレンジのコースを紹介しよう。つくばチャレンジ2008のコースは、つくば駅から徒歩5分のところにあるつくばエキスポセンター前からスタートし、つくば公園通りを駅の方に向かって進んでいく。すると、左手に茨城県つくば美術館や中央図書館が見えてくるので、その前を通り過ぎて陸橋を越え、オークラフロンティアホテルつくばの手前で折り返して、またつくばエキスポセンター前まで戻ってくる。スタートとゴールのゲートは同じだが、ゴールの際は、いったんゲート前を通り過ぎて、再び180度ターンして折り返し、さらに90度曲がってからゲートに入る必要がある。
実際にコースを歩いて撮影した写真を載せておくが、この写真を見ればわかるように、道幅は広いが、通行人も多く、美術館や図書館の前には自転車が多数停まっており、障害物となるだろう。また、道幅全てがコースとなるのではなく、カラーコーンで区切られた半分の幅しか走行に利用できない。そのため、すれ違いや追い抜きも難しそうだ。また、途中で何度か道がカーブしているほか、陸橋の前後ではかなりのアップダウンがある。
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つくばエキスポセンターが、今回のつくばチャレンジのスタート地点とゴール地点となる
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スタートとゴールのゲート。反対側にはSTARTと書かれている。このゲートを越えてエキスポセンターの敷地から出たら、すぐに90度左に曲がる必要がある
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ゲートを出て、左に曲がったところ。右側に緑色のカラーコーンが並んでいるが、その左側がコースとなる
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少し進んだら、また右に曲がる必要がある
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ここからしばらくはずっと直線コースだが、左側の街路樹などが障害物となる
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左に見えるのが茨城県つくば美術館
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美術館の前には、多くの自転車が駐輪している
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美術館の隣には、中央図書館がある
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中央図書館前を通過し、さらに直進する
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前方に陸橋が見えてくる
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陸橋の手前はかなりの上り坂になっている
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陸橋の後半は、反対に下り坂になる
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陸橋を渡ったら、植え込みの左側を通過することになる
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前方に折り返し地点を示す大きなカラーコーンが見えてくる
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折り返し地点に向かって植え込みの左側を進む
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ここが折り返し地点。つくば駅のすぐそばだ
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折り返し地点でUターンして、植え込みのさっきと反対側(進行方向に対しては左側)を進む
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こうしてみると陸橋の勾配がかなりきついことがよくわかる
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エキスポセンター方面に向かって進んでいく。実際の競技でも、このようにロボット同士がすれ違う場面が出そうだ
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エキスポセンターの近くまで戻ってきた。この先を道に沿って左側に曲がる
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帰りは、いったんゴール前を通り過ぎて、またUターンする必要がある
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ゴール前の折り返し地点をUターンしてから、左に見えるゴールゲートを通過すれば、完走となる
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今回のコースを地図で示すと、赤線のようになる
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● 試走会ではリモートコントロールが多かったが、自律での挑戦も
10月19日の試走会は、本番と同じスタート/ゴールゲートを用いて、本番と同じコースで行なわれた。このときが4回目の試走会であり、すでに地図データの収集を終え、自律での走行にチャレンジしているチームもあったが、多くのチームは、地図データなどの収集を行ない、走行性能を確かめるべく、リモートコントロールで走行していた。今回は、折り返しがあるため、途中でロボット同士がすれ違ったり、追い抜かれたりする場面も出てくる。人間によるリモートコントロールなら、ロボット同士のすれ違いや追い抜きはそう難しくはないが、現時点では、自律ロボットに、他の移動ロボットを確実に認識して衝突を回避するコースを取ったり、後ろから来るロボットに道を譲る動作をさせるのは、非常に難しい。そこで今年度においては、ロボットが他のロボットの走行を妨げていると判断された場合は、担当委員がオペレーターに指示を出し、ロボットを手動で一時的に停止させたり、持ち上げるなどしていったんコースから排除することが認められている。もちろん、自律で他のロボットを回避したり、道を譲ることができればベストなのだが、そうした機能をどこまで実現できるかも、見所の1つであろう。
つくばチャレンジでは、ロボットの移動手段についての制限はない(安全のため最高速度は時速4km以下に制限されている)。そのため、セグウェイのような倒立振子タイプや4輪タイプ、クローラータイプなど、バリエーションも豊富だ。昨年度は、多足タイプのロボットなども登場していた。
つくばチャレンジ2008は、トライアル走行、本走行とも平日に行なわれるが(今回のコースは遊歩道で、休日はかなりの人が行き来するため、競技を行なうには厳しい)、数少ないリアルワールドで行なわれるロボット競技(つくばチャレンジは、あくまで速さを競う「競技」ではなく、人と環境に対する安全性・親和性を課題として最重視する)であり、その重要性は高い。昨年は、3チームが完走という、運営側の予想を上回る結果となったが、今年はどうなるのか、非常に楽しみである。
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エキスポセンターの敷地内に各チームの整備用スペースが設けられた
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つくばチャレンジ試走会を行なっていることを知らせる案内板が、主要なところに立てられていた
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コース上を歩いて移動し、GPSデータの収集に専念するチームもあった
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Project Before 2008チームは、レーザー測量機を使って詳細な地図データを作成していた
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【動画】自律でチャレンジしていた宇都宮プロジェクトチームの「アロマックス」。コースの2つめのカーブはうまく曲がることができた
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【動画】CIT-CATチームの「Kenaf23」。戦車のようにクローラーで動くロボットだ。自律で動いていたが、2つめのカーブをうまく曲がれなかった
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東北大学田所研チームの「anemone」。セグウェイを台車として利用しており、安定した移動を実現していた
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【動画】陸橋を下って、折り返し地点へと向かう東北大学田所研チームのanemone。このときは、自律ではなく、リモートコントロールで動作していた
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【動画】スタートから約500m離れた場所にある折り返し地点でUターンする東北大学田所研チームのanemone。こちらも、リモートコントロールで動作している
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北陽電機・産総研ジョイントチームの「HOIST2」。スズキのセニアカーを台車として利用している
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今回は折り返しがあるので、このように途中ですれ違う場面も出てくる。試走会では、人間によるリモートコントロールで動いていたロボットが多かったため、すれ違いもこなしていたが、自律ですれ違うのはかなり難しそうだ
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ロボットによって移動速度も異なるので、後から来たロボットが前のロボットを追い抜く場面も出てくる
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■URL
つくばチャレンジ2008
http://www.robomedia.org/challenge08/index.html
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・ 「つくばチャレンジ2007」レポート ~初開催で、33台のエントリー中3台が完走(2007/12/11)
( 石井英男 )
2008/11/14 00:33
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