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写真は自律制御部門のコース。左奥からスタートして右手前がゴールとなる
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8月30日、福岡県福岡市にあるロボスクエアで「第8回国際宇宙ロボットコンテスト(火星ローバーコンテスト)」が開催され、自律部門・有線部門・無線部門の3部門で競技が行なわれた。
これは手作りの探査ロボットカー(ローバー)を使い、火星を模した不整地コースを、途中で岩石に見立てたボールを採取しながら、時間内にゴールを目指す競技大会だ。
2005年10月に福岡市で開催された国際宇宙会議(IAC)の会場で第1回大会が行なわれてから、今回で8回目になる。福岡県の小中学生を中心とした(年齢による制限はないので、一般参加も構わない)ローカルなロボコン大会だったが、前回の第7回大会は静岡県浜松市で開催され、今回はその浜松大会の優勝者が参加するなど新たな動きも出てきている。
● 簡単な迷路を走破する自律部門
自律部門は不整地コースを使わず、自律専用のコースを使用する。スタート地点から自律でゴールまで2分以内に辿りつかなければならないという内容で、今回、自律部門には24台がエントリーした。
自律部門の入賞者は次の通り。
●優勝:Super Sapphire
●2位:むぎGO!
●3位:ロボ之助
優勝した「Super Sapphire」は、1回目のチャレンジで3秒84という大会新記録を出して勝利。測距センサーを機体に積み、そのセンサーで壁との距離を測りながら進むわけだが、今回は1度壁にぶつかってしまったため「今度は壁に全くぶつからないでゴールしたい」と、操縦者は今後の目標を語っていた。
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ゴール部分のアップ。ゴール近くのみラインが引かれているが、ライントレースセンサーが使われることは少なく、タッチセンサーによる角度修正でゴールを目指す機体が多い
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とにかく早かったSuper Sapphire
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Super Sapphire機体のアップ。2つの測距センサーで壁との距離を測って進む
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2位のむぎGO!。機体を三角形にしたのは壁に引っかからないためだそうだ
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● メインイベントの有線部門
火星ローバーコンテストのメインイベントとも呼べるものが、この有線部門だ。
競技の内容は、火星地表を模したコースを自作の探査車(ローバー)で5分以内にゴールのオリンポス山の麓まで走破するものだ。途中に火星の岩石に見立てたボールをローバーに取り込む必要があり(ボールを取り込まないと先には進めない)、獲得したボールの数でボーナスポイントが追加される。
また、ゴールに到着した後、アンテナに見立てた部分を動かす「アンテナ・パフォーマンス」を行なわないと完走とは認められない。今回のコンテストでは新たにコース上に岩石が追加され、より難度が上がっていた。有線部門は、毎回参加者の数が3部門の中で1番多い。今回は25台がエントリーした。なお、静岡県浜松市で開催された第7回火星ローバーコンテストの優勝者もこの部門に参加した。
有線部門の入賞者は次の通り。
●優勝:ブランコ
●2位:チームYS
●3位:スーパーファルコン
優勝したブランコは、大量のボール17個を獲得した上に1分39秒でゴールするという、圧倒的な強さを見せた。
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火星ローバーのコース。中央の山(オリンポス火山)の横にある平坦部がゴール
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コースのスタート方面。中央の銀色のローバーは、ネットを通じて操縦するためのものだが、移動機構が未調整で今回は展示のみだった
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今回新たに作られた岩石群。「地殻変動が起こった」のだそうだ(笑)
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フォルムがユニークな「ヘビノコ2」。以前に比べてボールを取り込む頭部が大型になったが、「頭が下がらない」というアクシデントが発生していた
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16個のボールを取り込みながらも、岩石群に行く手を阻まれた「森のリスB」
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トップに並ぶ17個のボールを取り込んで完走した「なまいきな勢者」
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浜松大会で優勝し、今回有線部門で3位になったスーパーファルコン
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ショートカットの丘越えを達成したチームYS
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優勝したブランコ。名前の通り兎がブランコに乗っている。操縦者は自律部門でも2位になっていて、機体に兎を乗せるのがポリシーらしい
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● モンスターマシンが爆走した無線部門
無線部門は、有線部門と基本ルールは変わらないが、無線でローバーを操縦する。本来はモーターと電源に制限のあるリミテッド部門と制限のないアンリミテッド部門に分ける予定だったが、参加台数が少ないため、部門を分けずに無線部門として行なわれた。コントローラーを無線化するだけで費用がかかるためか、この部門だけいつも参加者が少ない。今回は5台がエントリーした。
無線部門の入賞者は次の通り。
●優勝:チームトレイン
●2位:九州ロボット少年団
●3位:オリンポス
衝撃的だったのは、やはり優勝したチームトレインだ。岩場などを走らせて遊ぶ、アメリカ製のホビー用バギーを使用。あたかも平地でバギーを走らせているようなスピードでゴールまで駆け抜け(途中でボールを取り込みながらもゴールまで68秒しかかからなかった)、会場に来ていた人を驚かせていた。
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無線部門で3位を受賞したオリンポス。安定した走行を見せていた
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2位の九州ロボット少年団
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「爆走!」という言葉が似合っていたチームトレイン
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● 「ローバー大賞」はボールを吸引するローバーが受賞
火星ローバーコンテストでは、全部門から最もすぐれたローバーに対して「ローバー大賞」が与えられる。今回のローバー大賞は、有線部門の「火星人Ω」に授与された。
火星人Ωは、ボールを吸引する機構が目を引く機体だ。その他にも、アンテナをモーターで動かさずにロックを外すとアンテナが動くといった工夫が随所に見られ、みごとローバー大賞受賞となった。
今回で火星ローバーコンテストも8回目を迎え、上位陣のローバーの性能がかなり上がってきた。コンテストを続けてきた成果が出てきたとも言えるが、一方では初心者との差が大きくなってきているのも事実。また福岡県以外にも火星ローバーコンテストが広がる動きもあり、今後の成り行きが注目される。
なお閉会式で、コンテストの中心人物である中村講介氏から「インターネットを通じてローバーを操縦する部門も、参加者がそろえば行ないたい」との発言があり、状況次第ではネット操縦部門が成立するかもしれないことを伝えておく。
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ローバー大賞を受賞した火星人Ωが、ボールを吸引しているところ。下のボックスに何個かボールをためられるようだが、今回は1個のみでゴールに向かった
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岩石群もクリアしていく
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閉会式の様子
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■URL
ロボスクエア
http://www.robosquare.org/
( 大林憲司 )
2008/09/18 17:21
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