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マッスルスーツを着用したキャスパー・ヴァン・ディーン氏が登場
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7月19日(土)に公開予定のSFアクション映画「スターシップ・トゥルーパーズ3」の主人公で“地球連邦軍の英雄”ジョニー・リコ大佐を演じるキャスパー・ヴァン・ディーン氏の来日を記念し、「地球連邦軍 入隊促進キャンペーンイベント」の記者会見が10日に行なわれた。
監督のエド・ニューマイヤー氏も合わせて来日し、イベントでは2人揃って登壇した。また、ミリタリールックの同映画のキャンペーンガール5名がステージに華を添え、さらに地球連邦軍日本支部提督となったタレント兼女医の西川史子さんも白の将官用軍服姿で登場し、高飛車なコメントで報道陣を笑わせた。
そして、東京理科大学工学部小林研究室で開発中の動作補助ウェア「マッスルスーツ」も登場。開発者の小林宏教授とともに登場し、ヴァン・ディーン氏が実際に装着して西川さんをお姫さまだっこし、その性能を披露した。
なお“地球連邦軍”入隊促進キャンペーンだが、7月31日まで期間限定で同映画の公式サイト上で行なわれている。入隊試験に合格すると抽選で限定ミニ・フィギュアのマローダー(白)が当たるという内容だ。入隊試験に関しては、マウスで照準を操って砂漠からはい出てくる地球連邦軍の敵・バグズを撃ち殺していくという1人称視点のシューティングで、ライフがなくなる前に15匹倒せばクリア。成功するまで何度でも挑戦可能だ。
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主演のキャスパー・ヴァン・ディーン氏
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エド・ニューマイヤー監督
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地球連邦軍日本支部の西川史子提督
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キャンペーンガール。ジョニー・リコ大佐率いるマローダースペシャルユニットの隊員と同じ赤いベレー帽
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トークショーの様子
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今回Robot Watch的に一番の目玉となったのは、東京理科大学工学部の小林教授がマッスルスーツをひっさげて登場したことだ。リコ大佐らがバグズに大打撃を与えるパワードスーツ「マローダー」とは若干イメージが異なるが、マローダーはスーツというよりロボットなので、イメージとしては原作小説のパワードスーツの遠い先祖、という感じだろう。実際に装着したヴァン・ディーン氏いわく「ロボコップ」の主人公であるマーフィーになったみたいだ」という感想を述べていた(製作総指揮のポール・バーホーベン氏が監督した出世作)。
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マッスルスーツを装着したヴァン・ディーン氏
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東京理科大学工学部の小林宏教授
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【動画】楽々とお姫さま抱っこをする様子
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お姫さま抱っこを別角度から
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【動画】マッスルスーツ背部。かなりシンプルなのがわかる
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イベントの最後は登壇者全員で敬礼してフォトセッション
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会場外には同映画のパンフレットなどに使われている、モニュメントがあった
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入隊キャンペーンのトップ画面
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マッスルスーツをもう少し詳しく紹介すると、上半身のみのシステムで、肩とヒジと腰をサポートする。背中に背負子のようにメインシステムを背負い、肩部でつながっている腕部のメカを両腕にも装着するという感じである。近年、筑波大学・山海教授のロボットスーツ「HAL」や、神奈川工科大学・山本教授らの「ウェアラブルパワーアシストスーツ」のように、全身を覆うタイプのイメージが強いが、マッスルスーツは同じスーツでも、実際には動作補助ウェアということで、アシストスーツとは若干分類が異なるようだ。
ちなみに背負ったらその重量がすべて装着者にかかって重たいと思うかも知れないが、前述したとおりに腰をサポートする設計になっている。骨盤でマッスルスーツの重量を受け止め、腰そのものや肩などに大きな負担はかからない。ウエストバックに重たいものを入れても、腰そのものにあまりかからないのと同じような理由だ(ただし、もちろん脚部にはその重さがかかる)。また、腰の曲げ伸ばしもサポートしているので、腰だけを曲げて重量物を持ち上げるといった動作をしても腰への負荷が少なく、ギックリ腰を避けられるようになっている。
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実は装着する部分はこんなに小型
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腰の黄色い部分の下側が腰骨に重量を、上側が装置を支え、蝶つがいのように開くので腰に重さはかからない
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人工筋肉は空気圧式で、コンプレッサと電空レギュレータを駆使して操作している。現在のプロトタイプでは、コンプレッサなどは外部にある形だ。コンプレッサと電空レギュレータは動作音のないタイプを使用しており、静音性が高い。マッスルスーツ自体には大きな音を立てる部分がないので、装着して操作してもメカニカルノイズの類はほとんどしない。ステージから5m以上離れていたとはいえ、ヴァン・ディーン氏が使用した際もまったく動作音がせず、ヴァン・ディーン氏の腕力でお姫さまだっこしているのでは? と勘ぐってしまうほどであった。
この人工筋肉の動作には、関節に埋め込まれた角度検出センサを用いている。人工筋肉は、ゴムチューブをスリーブで包んだもので、1m当たり30gと軽いことが特徴。約30%の収縮率があり、出力重量比は400:1(DCモーターは16:1)と出力が高い点も特徴だ。力は肩の部分で約50N・m(ニュートンメートル)、つまり約5kgの重量物を1m持ち上げられるように設定されているという。ただし、もっと出力を上げることも可能だそうである。
上肢動作(腕の曲げ伸ばしなど)として実現できるのは、前方や側方への肩からの腕の曲げ延ばし、内・外向きのひねり、ヒジの屈曲など。また前へならえも普通にできるし、左右の腕を内側に向けてXの字にすることもできるなど、かなり自由度がある。装着者の適合体格もアジャスト幅があるため幅広く、記者でも問題ないぐらいだった。そう、今回突撃状態で記者はバックステージで小林教授にインタビューさせてもらったのだが、そこで実際に装着させてもらったのだ。記者が身長180cmオーバー、体重90kgオーバー、肩幅も60cmオーバーという具合でも、装着前に多少の調整が必要だっただけで、簡単に着用することができたのだ。
用途としては要介護者の動作の補助、肉体労働者の姿勢補助および筋力補助、スポーツ向けの様々な動きの再現(バットやクラブ、ラケットなどのスイングなど)が検討されている。2001年から開発が進められているが、開発のきっかけになったのは、要介護者が介護してもらう必要がないように、という観点からスタートしたのだそうだ。しかし現時点では、製品化の際のマーケットとしては工場での重量物の運搬や、組み立て・設置など、肉体労働者の姿勢補助および筋力補助も重視しているようである。
現在、そうした工場では巨大なロボットアームのバランサーなどを使って作業が行なわれているわけだが、必ずしもすべての工場でそれが設置されているというわけではない。スペースの問題で設置できない場所もあるし、費用的な問題もある。また、どうしても人の手で直接細かく作業しなければならない場合もあり、「人そのものがパワーアップする」というシステムが欲されているのだ。それに応えるべく開発されたのが、このマッスルスーツというわけである。製品化はあと1年ほどで目処が立っており、かなり引き合いもあるそうである。価格的なものは教えてもらえなかったが、低コスト設計であることと、量産化されればかなりお手頃になるだろうということであった。製品化の際は、現在のものとはデザインはまったく別物となり、重量もかなり軽くなるという。現在は11kgあるそうで、腰のサポートがないと、肩や背中に少しばかりズシっと来る。
ちなみに、下半身も装備した全身型でない点については、疑問に思う方もいるのではないだろうか。上下揃ってパワードスーツだろう、と。これは、小林教授の考えとして、安定性を重視してのことだそうだ。実は、小林教授の研究室では、下半身麻痺の障害を持っている人のための、歩行サポートシステム「アクティブ歩行器」を既に実用化済みだ。自力での歩行が不可能な人でも歩けるシステムなので、これを応用すれば技術的に全身型も可能というわけである。
ただし、マッスルスーツに関しては、作業現場での実用性も重視しており、倒れないためにはやはり人間の足が一番ということで、下半身の装備はなしとしたそうである。ただし、将来的には全身型も開発するかもしれない、ということであった。
なにはともあれ、来年は各社のアシストスーツが製品化される様なので、このマッスルスーツも楽しみなところである。なお、マッスルスーツは日立系の医療機器メーカー・日立メディコの登録商標ということなので、おそらく製品は同社から発売されるものと予想される。
■URL
スターシップ・トゥルーパーズ3
http://starship3.jp/
東京理科大学工学部小林研究室
http://kobalab.com/
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( デイビー日高 )
2008/06/11 18:27
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