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IFPEX2008 第22回フルードパワー国際見本市リポート
~空気圧や水圧利用のロボットも集まった展示会


神奈川工科大学 山本・吉満研究室の「ウェアラブルパワーアシストスーツ」
 4月22日から25日にかけての4日間、有明の東京ビッグサイト東5・6ホールで、「IFPEX2008 第22回フルードパワー国際見本市」が開催された(同時開催「PT EXPO2008 パワートランスミッションエキスポ2008」)。同展示会は、油圧・空気圧・水圧などの流体=フルードパワー系の機器を扱った内容で、主催は社団法人日本フルードパワー工業会とフジサンケイ ビジネスアイ。今回は151の企業、団体、教育機関が参加した(PT EXPO2008は33の企業、団体、教育機関が参加)。来場者数は、4日間で合計6万1,482名を数えている。油圧、空気圧、水圧などを動力機構として組み込んだ各種ロボットも出展されていたので、それらを紹介する。


目玉は神奈川工科大学の「ウェアラブルパワーアシストスーツ」のデモ

 入口に近い日本フルードパワー工業界コーナーでは複数のロボットが展示されており、目玉のひとつだったのが、神奈川工科大学 ロボット・メカトロニクス学科 山本圭治郎教授と吉満俊拓準教授の研究室で開発された、「ウェアラブルパワーアシストスーツ」のデモンストレーションだ。


装着前のウェアラブルパワーアシストスーツ全身ショット 背後

上半身アップ 腰部アップ 下半身アップ

 現在、アシストスーツは複数が発表されているが、神奈川工科大学のウェアラブルパワーアシストスーツの大きな特徴は、空気圧で動作すること。エアバッグをアクチュエータとして利用することで、空気ならではの柔軟性と圧縮性による柔らかさを実現している。それでいて、アシスト力もあり、関節の動きを強力に支援してくれるというわけだ。また、万が一電源が落ちてしまった場合の安全設計も考慮されている。瞬間的にエアバッグ内の空気を封じ込めるため、急にアシスト力が0になったりする心配がないのだ。

 ウェアラブルパワーアシストスーツの開発を山本教授が始めたいきさつは、介護が腰を痛めたりすることの多い重労働であり、機械による介護システムの実現が急務であることがまず挙げられる。ただし、ロボットに完全に任せたのでは、現状の人工知能技術などでは患者の要望や感性を満たすことが難しい。また安全性の問題が残り、使用する側も被介護者側も不安感を持ちやすいという面もある。そうした理由から、現実的な解決方法として「介護者を力持ちにする」パワーアシストスーツを選んだというわけだ。

 同スーツの空気圧を利用するという点以外の特徴としては、肩から足まで全身に装着するデザインなので、スーツ自体の重量が装着者の足にかからない。ただし、装着者はスーツに背後から覆い被られるような形になるので、重さは感じないものの、どうしても拘束感があるという。また、腕部のフレームなど一部を除けば、エアバッグや小型エアポンプなどの主要機構のほとんどが背面に設置されている点も特徴だ。被介護者(装着者)と介護者・患者とのスキンシップを妨げないように考慮されているのである。そのほか、二重関節機構を採用しており、人間の動作に対して滑らかにスーツのフレームが追従するのも特徴のひとつ。現在のモデルでは、装着者の5cm程度の身長差はフレームの調節で対応できるようになっている。

 アシスト力は、ヒジ、腰、ヒザ関節に発生する形だ。吸気用小型エアポンプと排気用ソレノイドバルブがエアバッグに直結されており、Ni-MH電池(12Vを2本並列)で約20分間の連続運転が可能となっている。アシスト力の算出には、新開発の「筋肉硬さセンサ」(サポータ式筋肉センサ)が使われている。このセンサは各筋肉が発揮している筋力を検出する仕組みで、それで得られたデータをCPUが身体力学計算モデルに基づいて必要な関節トルクを算出するという仕組みだ。これにより、安全性を確保しつつ、各関節が必要としているアシスト力を違和感なく発生できるというわけである。


エアバッグ式のアクチュエータ 脚部のエアバッグ バッテリ

背部のコントロールボックス 装着の様子

【動画】90kg強の学生さんを実際に持ち上げるデモンストレーションの様子 【動画】ウェアラブルパワーアシストスーツの柔軟性の様子。スクワットは可能

 筋肉硬さセンサは、小型ロードセルの感圧面にアクリル性の土台を取り付け、その上にシリコンゴムの接触子を配し、そして小型ロードセルを囲いの中に入れた上で、その囲いが皮膚に当たるように伸縮粘着テープで取り付けてある。それにより、接触子が筋肉の硬さの変化を安定して検出できる形だ。センサの取り付けは3カ所。ヒジ駆動筋のある上腕、腰駆動筋のある背中腰上、ヒザ駆動筋のある膝上だ。またポテンショメータによるヒジ、肩、腰、ヒザ、カカトの各関節の角度を検出することも同時に行なっている。必要なアシスト力の計算は、すべて搭載されているCPUが担当。つまり、電源面でもコントロール面でも外部から完全に独立したシステムとなっている。

 安全性を考慮し、現在のアシスト力は2分の1に設定されている。つまり、100kgのものなら50kgの時の力で間に合うというわけだ。デモンストレーションでも、かなりガッチリした大柄な体格の学生さん(90kg強)を、体格的に劣る学生さんがお姫さまだっこで抱きかかえていた。おそらく体重差は数十kgに及ぶと思われ、アシストなしでのお姫さまだっこは不可能と思われるのだが、しっかりと抱えていた。ただし、それでも45kgの重さは感じているので、かなり重そうではあった。男性なら45kgを支えられるにしても、介護や看護の現場では女性も多い。そんなときのため、アシスト力を3分の2ぐらいに上げることもできるそうである。

 実用化に向けて解決を要する課題としては、エアバッグとエアポンプの開発を挙げている。エアバッグは、素材の伸縮比が5以上で、耐内圧は2気圧以上。サイズは50mm×50mm×100mmとしている。エアポンプは、出力圧が2気圧で、吐出流量が毎分25リットル。サイズはエアバッグと同じ50mm×50mm×100mmとしている。


ココロ製恐竜の「ヴェロキラプトル」の咆哮にビックリ

 ウェアラブルパワーアシストスーツと同じ日本フルードパワー工業界コーナーに展示されていたのが、ココロ製の恐竜ロボット「ヴェロキラプトル」(獣脚亜目マニラプトル形類ドロマエオサウルス科)だ。白亜紀後期の中国やモンゴルに生息していた、全長1.8mほどの補食(肉食)型恐竜である。ちなみに、近年の研究では鳥類を子孫に持つ恐竜の一種とされており、今回のモデルは体表を羽毛が覆った姿で再現された。


ヴェロキラプトルが吼えたところ 別角度から

顔のアップ。目が怖い 【動画】生物感漂うヴェロキラプトルの動作の様子

 ヴェロキラプトルは、特にデモンストレーションなどはなかったのだが、常に動いているので展示そのものがデモンストレーションという具合。エサを探すようにランダムにキョロキョロとしているかと思えば、突然身体を起こして両手のかぎ爪を構えて咆哮を上げたりする。そのリアルさや迫力に驚く人もいるほどだ。さすがは幕張メッセで開催中の「世界最新! よみがえる恐竜大陸」に恐竜ロボットを出展しているメーカーだけある、という出来映えである。

 このヴェロキラプトルは、同社の「動刻」(動く彫刻という意味)と呼ばれるアニマトロニクス系のメカトロアートシリーズ。圧縮空気でアクチュエータを動かす空圧システムが採用されている。空圧システムが採用された理由は安全性の高さ。「漏れなどによる汚染がなく、損傷時も被害が最小限で収まること」と「空気には弾力があって外力に対する抵抗が少ないことから、障害物や人に当たってしまった場合も対象への危害が少ない」というわけである。

 またリアルな造形を行なう際も、空気圧はメリットが大きいようである。リアルな造形のためには特殊ゴムで切り目なく覆う必要があるわけだが、サーボなどを使用した場合は冷却用の放熱孔などを開けないとならない。しかし、空気圧なら発熱が少なく、ゴムで覆ってしまっても問題はまず起きないというわけである。しかも動作する際にサーボのようにメカニカルノイズも発生しないため、より生き物感を出せる点もメリットとして大きいようだ(ただしコンプレッサーが後方で常時稼働しているため、若干その騒音が気になる点はあるが)。もしココロ製の恐竜を見たいという人は、「世界最新! よみがえる恐竜大陸」展が5月18日まで開催されているので、そちらに足を運んでみよう。会場内の「ジュラシックワールド」で、タルボサウルス、スピノサウルス、ヴェロキラプトル、マメンチサウルスほか多数が来場者を迎えてくれるはずだ。

 なお、日本フルードパワー工業界コーナーには、日本工学院テクノロジーカレッジの「KARFE(カーフィー)」も展示され、よくしゃべり、よく動いていた。かなりあちこちのイベントに顔を出しているのでご存知の人も多いかと思うが、実はKARFEも空気圧を利用して動作しているロボットである。


KARFE 別角度から

カレッジ研究発表コーナーにもロボットが多数

 会場の一角を用いて、大学および高等専門学校のフルードパワー系機器の数々が出展されていたのだが(別の場所でプレゼンテーションも行なわれた)、ロボットそのものからロボットの要素技術まで、数々のロボット系機器が含まれていた。続いてそれらを紹介していこう。

 最も多くブースを構えていたのが、東京工業大学だ。ふたつの研究室が出展しており、東京工業大学大学院 理工学研究科 機械制御システム専攻/工学部 制御システム工学科の北川能教授と塚越秀行準教授の研究室は、9つもの展示を行なっていた。

 その中でロボットは、倒壊家屋内や交通事故車内に閉じこめられた人々を救出することを用途として開発中の「Bari-bari-II」だ。従来、救助活動ではレスキュー隊員が場合によっては二次被害の危険性もある中で救助活動を行なってきたわけだが、その身替わりとして重量のあるガレキ下に進入し、探索を行なうもの。Bari-bari-IIは前部が階段状になっていて、下端の先端部分は5mmのすき間があれば差し込むことが可能。さらに、そこから油圧の力で600kgもの重量物を25cmもジャッキアップできる(持ち上げられる)という能力を持つ。実際に説明してくれた研究室の学生さんふたりが乗っても苦もなくジャッキアップしていた。ちなみに25cmというのは、おおよそ人間の胸部の厚みを確保できる寸法で、ガレキなどに押しつぶされて呼吸ができないという事態を回避するように考えられているわけである。また、Bari-bari-IIにはカメラが搭載されており、遠隔操作が可能。マイクとスピーカーもあるので、要救助者を発見した場合にコミュニケーションを取ることもできる。重量は25kg。軽々というわけにはいかないものの、大人ひとりでも運搬できる範囲内に収められている。また、サイズ的にはバイクの後部座席にも搭載できるので、被災現場で機動力を持って使用できる形といえるだろう。


Bari-bari-II 正面奥にはカメラがある

コントローラとモニタ 【動画】大人ふたりを余裕でジャッキアップする様子

 ロボットの要素技術を利用して作られているのが、インターネットを介したマスタ・スレーブ方式の「マルチ利用在宅遠隔リハビリシステム」だ。空気圧駆動となっており、通院による肉体的、精神的、経済的な負担を回避できるよう、片麻痺患者が在宅でもリハビリ治療を受けられることを目的に開発中だ。機器に腕をセットすることで(現在は腕部のみを対象としている)、機器がマスタ側の理学療法士の動きを伝えてリハビリを行なう。左側に理学療法士が腕をセットし、右側に患者が腕をセットして、1対1でのリハビリも行なえるが、理学療法士ひとりで複数の患者に対応できる点も特徴だ。インターネットを利用できるので、自宅にいる複数の患者に対し、運動データを配信できるのである。運動データの保存ができるので、リアルタイムで運動をする必要もない。運動データのコンテンツ配信というイメージだ。


マルチ利用在宅遠隔リハビリシステム 左側に理学療法士が腕をセットして右側に患者が腕をセット 患者のモデルとしてセットされている腕も実はかなりロボットっぽい

 続いては、同じ東京工業大学だが、精密工学研究所の香川利春教授と川嶋健嗣準教授の研究室だ。同研究室は、4テーマの出展を行ない、そのうちのひとつが「力覚提示機能を有する腹腔鏡手術用ロボットシステムの開発」というタイトル。展示されていたのは、マスタ・スレーブ式のロボット手術システムだ。

 同手術ロボットシステムのスレーブ部分の「鉗子マニピュレータ」だが、空気圧シリンダを用いている。鉗子の自由度は7あり、その内訳は並進3自由度、姿勢3自由度、把持1自由度だ。各関節は5ポートのサーボバルブで制御されており、鉗子に作用する外力は空気圧アクチュエータの良質に生じる差圧から推定するようになっている。

 マスタ部分の「ハプティックマスタマニピュレータ」は、並進部にデルタ機構を、姿勢部にジンバル機構を採用しているのが特徴。それにより、コンパクトでいながら広い可動範囲を実現しているのだ。各軸はACサーボモータによって駆動される方式で、術者の操作力は力センサによって計測される仕組みだ。


ロボット手術システム 別の角度から

鉗子マニピュレータの先端 【動画】動作の様子

 手術ロボットに空気圧システムを利用することのメリットは、丸洗いによる洗浄ができること。手術は、いうまでもなく絶対的に清潔な環境で行なうべきものなので、機器の丸洗いによる殺菌洗浄が行なえることが重要だ。現在、まだ鉗子マニピュレータの方には1種類だけセンサがついているのだが、それも今後は外して完全に電子機器がないシステムにする予定。それにより、鉗子マニピュレータを丸洗いしての殺菌洗浄も可能となり、手術室で実際に使いやすくなる、というわけである。

 岡山大学工学部 システム制御研究室が出展したロボットのひとつが、「空気式パラレルマニピュレータ型手首リハビリ支援装置」。理学療法士がまず手首を赤いリストバンドの方に通して同装置にリハビリ訓練の手の動かし方を覚えさせる。そして青い方のリストバンドに患者が手を通して、ロボットが覚えた動きを行なってリハビリ運動をする仕組みだ。このシステムは、理学療法士の絶対数が全国的に不足していることに対する解決策として考え出されたのだそうだ。リハビリ支援装置は患者のリハビリを支援するものだが、一方で理学療法士のサポートをすることで、ひとりの理学療法士が担当できる患者数を増やせるというメリットが生まれる。理学療法士の分身を作るようなイメージというわけだ。またコンパクトなシステムなので、患者宅のスペースを気にすることなく置けるという特徴もある。


空気式パラレルマニピュレータ型手首リハビリ支援装置 別角度から 【動画】動作の様子

 電気流体力学(Electro-Hydro-Dynamics:EHD)現象を利用した新しい流体アクチュエータを利用して、「ロボットハンド」や「人工筋ロボットアーム」を出展したのが、東京電機大学工学部機械工学科の三井和幸教授の医用精密工学研究室だ。

 EHDとは、絶縁性の流体中に電極を挿入し、電極間に高電圧を加えると電極間で流体の流れが発生するという現象だ。一般的なフルードパワー系の機器は、機械的な駆動部分を持つポンプやコンプレッサーなどが必要となり、システムとして小型化が難しく、なおかつ騒音や振動の問題もある。そうした問題を解決するために考案されたのが、EHD現象を利用した流体アクチュエータだ。外部機器を使用せず、流体自らが流動するので、小型化が可能になり、なおかつ騒音や振動の問題も解決できるというわけである。研究室では、板状電極の上方に傾斜させた形で平板電極を配置することで、強い流れが発生することを確認。それを応用したアクチュエータのひとつとして、稼働部レスEHDポンプが開発されている。同ポンプは圧力が比較的高く、最大55kPaの出力が可能で、電極の直列数によって約1MPaまで出せるそうだ。

 その稼働部レスEHDポンプを使っているプロダクトのひとつが、「EHDロボットハンド」だ。液圧駆動のため、柔らかい動きが可能なソフトアクチュエータとなっており、万が一指を挟むようなことがあってもケガをすることもない。人と接するような環境で使用されるロボットや介護機器などへの応用を検討しているという。ちなみに、実際にEHDロボットハンドで指を挟んでもらったのだが、事実痛くなかった。また、今回は不調だったそうで動作するところを見られなかったのだが、「EHD人工筋ロボットアーム」というプロダクトも開発されている。こちらは人工筋肉も使用されているのがポイントだ。


EHDロボットハンド 【動画】EHDロボットハンドの動作の様子。指で実際に挟んでみた

EHD人工筋ロボットアーム。黒いケーブルが人工筋肉だ EHDポンプ

 冒頭で紹介したウェアラブルパワーアシストスーツを開発している神奈川工科大学の山本・吉満研究室と、明治大学理工学部機械情報工学科の小山紀教授のメカトロニクス研究室は、共同でブースを出していた。共同開発が行なわれているのは、空圧アクチュエータ式の「歩行アシストシステム」だ。今回は動作できなかったが、学生さんに装着してもらった。


装着前の歩行アシストシステム そのアップ

 歩行アシストシステムは空圧式なので、ウェアラブルパワーアシストスーツの下半身バージョンかと想像してしまうかも知れないが、システム的には異なる。同じ空圧式だが、エアバッグを使っているわけではない。仕組みとしては、太ももとスネで固定し、靴(サンダル)を履く。脚部の側面に沿ってフレームがあり、フレームは靴につながっているため、フレームなどの自重は足にかからないというわけである。

 その靴には圧力センサがあり、太ももの角度を検出するセンサと合わせたデータを、ルネサステクノロジ(日立製作所から子会社として独立)製H8マイクロプロセッサーが受け取り、圧縮空気の量をコントロールしているというわけである。かつては、装置がずれ落ちてしまうなどしてセンサがうまく働かなくて苦労したそうだが、現在は改良が進んで問題なく稼働するようになったそうである。ただし問題として、コンプレッサーなどを現在はDバッグに詰め込んで背負っている形なので、重量面の問題が完全に解決していない点が挙げられる。また、あらゆる人の歩行時のクセに対応するのも難しいようで、今後の課題としている。


装着したところを前から 横から

側面にあるフレーム部分上部のアップ 脚部上方を後方から

脚部下方を後方から 背中にはコントロールやポンプなどの機器が入ったDバックを背負う そのアップ

そのほかのロボットたち

 最後は、産業系ロボットを紹介。自動車組み立てラインで、ウィンドー類やダッシュボードといった重い部品を組み込むのに利用されているのが、バランサーである。何十kgもあるような部品でも持ち上げて保持してくれるので、高齢者や女性でも片手で押せるようになり、腰を痛めたりする心配がなくなるというわけだ。タイヨーはそうしたバランサーの空気圧式の「持っ太郎」シリーズをリリースしている。

 今回会場で「持っ太郎」の展示およびデモが行なわれていたのは、40kgの重量物をつり上げる「TMA-40-I」という機種。ガラス面を吸着させて保持する25kgのハンド部を備えているので、この場合は実際には15kg相当の物を持ち上げられるというわけだ。実際に触らせてもらったが、動かしてみるとハンド部の25kg+ガラス重量の合計の質量分に値する慣性は感じられるが、重さそのものは感じない。10kg以上の物を担ぎ上げては壊さないように静かに設置して、という動作を繰り返していたら、腰を痛めるのも致し方ないのがよくわかる。それがスーっと動くのだから、現場で働く人にとっては非常にありがたい機械だろう。同社のバランサーは最大のものになると、つり上げ過重で300kg、ワーク重量(ハンド部を差し引いた、実際に物品を持ち上げられる重量)で200kgまで対応しているそうだ

 ちなみに他社製品は油圧式のものが多いのだが、なぜ空気圧式を採用しているかというと、やはり油を使うためにどうしても汚れるという問題点があるから。清潔さを求められる環境もあり、空気圧式が開発されたというわけだ。またモータなどの場合、万が一停電などといったトラブルがあると、最悪の事態になると一気に全重量が作業者にかかってしまったり、物品が落下するなどして大事故につながる恐れがある。もちろん、そうした場合の安全措置を各社取ってはいるのだろうが、空気圧式の場合は空気が逃げないように封じてしまえば、例え停電になったとしても重量物が落下するといった事故が発生しないということから、システム的に最も安全ということで採用しているのだそうだ。


持っ太郎シリーズのTMA-40-I 【動画】その動作の様子

 製品としてのロボットではないのだが、日本ピスコは自社の真空発生器を応用して、壁に貼り付くクモ型ロボットを製作。自社ブースの一角にある真空発生器「VN」のコーナーでは、急斜面を右に左にクモ型ロボットが行ったり来たり。4本ある足の内(クモだけど4本しかない)、2本を真空状態で壁に吸着させ、残り2本を動かすという形で移動する仕組みだ。これだけ動作できるのであれば、ビルや橋梁などの建造物の点検用途や、移動式の監視カメラなどいろいろと使えそうな気がするが、同社はあくまでも真空技術の証明という形で今回のクモ型ロボットを披露したそうである。


クモ型ロボット 【動画】クモ型ロボットの動作の様子

 ロボットというとサーボを使うのが当たり前のようなイメージがあるが、空気圧や水圧、油圧などフルードパワーを利用したタイプは、確かに生き物の動作に近い“柔らかさ”が感じられた。特に五指を動かすには、フルードパワー系の方が人の手に近い柔らかさが確実に出せるだろう。ただし、正確さやパワーの面ではサーボの方が優れているだろうし、それぞれのシステムに一長一短があるといったところだ。システム的にサイズや重量面で問題が出てくるだろうが、サーボとフルードパワーのハイブリッドなシステムなどというのも見てみたい気がする。一見ロボットとは縁のなさそうなフルードパワーだが、立派に活用されているのを知って、感心させられた展示会であった。


URL
  第22回フルードパワー国際見本市
  http://www.ifpex.net/


( デイビー日高 )
2008/05/12 20:38

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