5月9日(金)、10日(土)の日程で、東京・秋葉原にある秋葉原UDXアキバ・スクエアにて「東北大学機械系フォーラム2008東北新大陸」が開催されている。ブースでの研究室の展示紹介、教授たちによる公開セミナーのほか、オープンスペースでのロボットのデモンストレーションも行なわれている。入場は無料。ここではロボット関連を中心にレポートする。
まずアキバ・スクエア前のオープンスペースにて行なわれているロボットのデモについて。デモされるロボットは愛知万博でロボットファンには既にお馴染みの「PBDR(Partner Ballroom Dance Robot、ダンスパートナーロボット)」のほか、千葉工大ほかと共同研究開発したレスキューロボット「ケナフ」、惑星探査ローバー「エルドラード2」、そしてセグウェイの4種類。写真と動画でご紹介する。
なおロボットのデモは一種類につき15分弱。2時間置きくらいの間隔で行なわれている。
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【動画】普段はリアルタイム学習の研究をしている学生とのダンス
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【動画】レスキューロボット「ケナフ」
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【動画】段差を乗り越える
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【動画】階段や瓦礫の模型を乗り越えていく
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【動画】惑星探査ローバー「エルドラード2」
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【動画】ロッカーボギー機構を採用、車輪の直径よりも大きな段差を乗り越える
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会場内案内図
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会場のブースは、航空宇宙コース、機械システムデザインコース、ナノメカニクスコース、流体科学研究所、バイオロボットシステムコースと分けられている。ロボット関連の研究室のブースは、それぞれのコースのなかに点在しているので、やや見つけにくい。
宇宙探査工学の研究を行なっている吉田・坂本・中西研究室/永谷研究室ブースでは、宇宙探査ロボット・惑星探査ローバーのほか、間もなく打ち上げられる予定の観測衛星「SPRITE-SAT」の模型などが展示されている。「SPRITE-SAT」は理学研究科と工学研究科が共同で開発している衛星で、雷雲上空で発生する超高層大気の発光現象を3台のカメラで観測する予定。
惑星探査ローバーのほうは、主に砂やレゴリス上での滑りによる経路計画からのズレの補正を研究しているという。オープンスペースでデモされていたロボットも同じだ。
また飛行ロボットのほか、「ARLISS(A Rocket Launch for International Student Satellites)」と呼ばれる、小型ロボットをペイロードとしてロケットで高度4,000mまで打ち上げて、そのペイロードをパラシュートで着地、目的地まで自力で帰還させる「カンバックコンペティション」に参加したロボットも展示されている。車輪自体が柔らかい素材となっており、着地の衝撃をやわらげる。吉田研究室では2005年にこの競技で優勝している。
また内山・姜・阿部研究室/近野研究室ブースでは、宇宙で活躍することを想定した双腕ロボットでのハンドリング作業に関する研究成果がパネルで解説されている。「仮想ステッキ」という考え方を導入、実際に物体に接触している手先から把持している物体の制御対象中心まで、仮想の腕が伸びていると考え、位置と力のハイブリッド制御を行なう。
また愛知万博でデモを行なっていたHRP-2を使ったインパクト動作(太鼓叩き)の解説や、宇宙のロボットを操作するときの5秒程度の時間遅れを簡単に体験することのできるデモも行なっている。そのほか脳神経系外科シミュレーションの研究も行なっているそうだ。
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「SPRITE-SAT」
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月・惑星探査ローバーのテストベッド
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飛行ロボット
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カンバックコンペティションに参加したロボット
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ARLISSの解説
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自律走行ローバー
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宇宙空間で活躍する双腕ロボットの研究
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ジョイスティックの操作に応じて、右はリアルタイム、左は5秒の時間遅れで動く
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堀切川・山口研究室は電動車椅子用駆動ユニットTRD-1を出展している。株式会社アクリテック、出光興産株式会社との共同開発で、既に実用化されている。通常の電動車椅子が車軸に駆動部を持ってくるのに対し、遊園地の観覧車のように2本の駆動ローラーで車椅子の車輪を掴み回転させるため少ないトルクですむ。ギアを用いていないため静かで、減速機もないので小型。既存の折り畳み式の車椅子に後付けできる優れ物だ。
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電動車椅子用駆動ユニットTRD-1
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2本のローラーで車輪を挟む
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折りたたみ式の車椅子にも後付け可能
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ギアを使わないため静か
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【動画】動作の様子
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知能ロボティクス学講座知能制御システム学分野の橋本・鏡研究室では「視覚情報によるロボット・生物の運動制御」と題したパネル展示を行なっている。視覚情報処理とロボットの動きを結合する「ビジュアルサーボ」という枠組みの研究を主に行なっており、高速カメラによる特徴抽出や、複数台カメラを用いたロバストな小型移動ロボットの制御技術、顕微鏡カメラを使った微生物のトラッキングならびにその内部のイオン濃度の変化の計測などを行なっているという。
またレスキューロボットで知られる田所研究室のブースでは能動スコープカメラが置かれていた。
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1/1000秒で認識可能な高速カメラ
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ゾウリムシの動きを追いかけられるカメラ
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能動スコープカメラ
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バイオロボットシステムコース出口・嵯峨研究室/岡谷研究室のブースでは、プロジェクターを使った「仮想反射特性」の再現デモがおこなわれている。石膏像に対して一台のプロジェクタから光を投影することで、その物質の表面を、違った様相に見せようとしたものだ。予めキャリブレーションしたときの反射光特性から逆光学で投影する光を計算している。
そのほか、2台のカメラを用いてボール軌道を予測させてロボットに適切な姿勢を取らせる研究や、マルチプロジェクタを使うときの簡単な較正システム、視覚を用いた柔軟物把持の研究などをビデオを交えて紹介している。柔軟物把持においては、具体的には自動車のハーネス(配線ケーブル)を扱えるようになることを目指しているという。
ダンスパートナーロボットほかで知られるバイオロボティクス専攻 小菅・菅原研究室/平田研究室ブースでは、「パッシブ型知的歩行支援機 RT Walker」のデモを行なっている。立っているか座っているか、近くにいるかといった人間の状態をセンサーで把握し、後輪のブレーキトルクを制御することで歩行や立ち上がりの支援を行なう。特に転倒を防ぐことを重視している。
そのほか同研究室では装着型の歩行支援装置など、ロボットと人間の協調をテーマに研究を行なっている。
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プロジェクタを使った仮想反射特性再現の研究
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【動画】デモの様子。石膏像の表面が、違う特性の物体のように見える
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ビジョンを用いた接触センサーの研究も。触れた表面のわずかな歪みをビジョンで捉える
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パッシブ型知的歩行支援機 RT Walker
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機械と人間の協調をテーマに研究を進める
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土曜日には引き続き研究展示・ロボット実演が行なわれるほか、特任教授で作家の瀬名秀明氏による講演「夢にかける私」や、各研究室の教授、准教授による講演、そして「航空宇宙のフロンティアを語ろう!」と題された「サイエンス・カフェ」も行なわれる。
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会場内には仙台観光コーナーも
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グッズ紹介コーナーもある
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■URL
東北大学機械系
http://www.mech.tohoku.ac.jp/
東北大学機械系フォーラム2008 東北新大陸
http://www.mech-tohoku.com/
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( 森山和道 )
2008/05/09 20:58
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