3月18日、東京大学「IRT研究機構発足記念シンポジウム」が開催された。東京大学130周年記念事業として実施されたもので、東京大学総長の小宮山氏によるオープニングスピーチ、下山機構長によるIRT研究機構の概要紹介のほか、各研究部門の発表が行なわれた。また、協働7社の代表らをパネリストとした「少子高齢社会を支えるテクノロジーの役割」と題したパネルディスカッション、産業技術総合研究所理事長の吉川氏による記念講演も行なわれた。
なお「IRT」とは、「IT(情報技術)」と「RT(ロボット技術)」とを組み合わせた言葉である。
● 課題先進国日本とロボット技術
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東京大学総長 小宮山宏氏
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東京大学総長の小宮山宏氏は持論である「課題先進国・日本」の話からオープニングスピーチを始めた。日本は「21世紀地球の未来像」だという。日本には少子高齢化、資源不足そのほかさまざまな課題がある。これらの課題には答えがないし、課題を解いた国もない。日本が率先して課題を解決していく必要がある。だから日本は「課題先進国」なのだという。現在の日本が抱えている課題はほどなく世界的な課題になる。日本が自分たちの課題に答えを作ることができれば、それが世界のデファクトになる可能性が高い、というのが小宮山氏の主張だ。
先進的な課題ばかりである以上、海外の事例ばかり引いていても今日の問題は解決できない。また、人類の知識は20世紀の間に爆発的に増えた。そのため全体像をつかむことが難しくなっている。ITとRTの融合においても、全貌をつかんでいる人は誰もいないという前提で事を進めていかなければならないという。
20世紀は、知的な成果と経済的な価値の距離が近づいた時代でもある。これからの課題は高齢化ではなく「活気をいかに作るか」にあるという。そのためには教育のあり方も変わらなければならない。自ら未来図を描くためには実験が重要だという。小宮山氏自身は2001年に家を建て替えたときに、エコハウス化した。その後、ハイブリッドカーや省エネ冷蔵庫の導入により、当時に比べて現在での二酸化炭素放出量はおおよそ81%減少したという。東京大学自体も、柏キャンパスを中心に、街作りを中心としたさまざまな実験を行なっている。
ものづくりは、何を作るかを決めるところから始める。そのためには、これからの生活をどうするか、どうなるかを決めなければならない。それがものづくりを決める。それを誰が決めるかが今後の産業の勝負を決める。その上での日本の役割は極めて重要だという。21世紀を「活気ある持続型高齢化社会」とするのが世界の課題である。日本は「課題解決先進国」になるようにするのが東京大学の目的であり、IRT研究機構の目的でもあると語った。
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日本は課題先進国
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これからの大学の役割
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課題「解決」先進国へ
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● 「IRT研究機構」機構の概要
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「IRT研究機構」機構長 下山勲氏
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機構長の下山勲氏はIRT研究機構の概要を述べた。文部科学省科学技術振興調整費“先端融合領域イノベーション創出拠点の形成”「少子高齢社会と人を支えるIRT基盤の創出」によって始まった「IRT研究拠点」を基に「IRT研究機構」が総長室直轄として立ち上がったのは3月1日。背景には少子高齢化がある。人口動態はだいたい予測ができる。将来、労働者人口が現在よりも少なくなることは、ほぼ間違いない。これからの時代、老人を支えるだけではなく労働者人口の減少に応えるためにもIRTは寄与しイノベーションを起こす必要があるという。
東京大学にはIRT関連研究の長い歴史がある。これまでは大学にあったシーズを社会に出すというのが基本だったが、これからは社会とキャッチボールをしながら議論していくべきだというのが小宮山総長の考え方だという。繰り返しになるが「IRT」とはITとRTを組み合わせた言葉である。実世界に働きかける計算機システムのことだ。
IRT研究機構は、どのように考えていいのか分からない課題に対して企業と初期の段階から相談してビジョンの提言を行なうこと、技術が社会に出て行くうえでの知識を再利用可能な形に構造化すること、そしてさまざまな課題を解決していくことを目的としている。必ずしも具体的なロボットを作ることが目的ではない。
下山氏は「IRTコンテンツ研究会」の活動の一端を紹介しながら話を進めた。
2055年には日本の総人口は8,993万人、おおよそ1950年の水準になると予測されている。そのときの高齢者率は41%になる(2005年の2倍)。世帯構成も変化する。単身、高齢夫婦、要介護世帯が増加し、標準的な「夫婦と子供」世帯は1/4になる。
日本の未来を示しているかもしれない国の例としてスウェーデンがある。スウェーデンでは高齢者や要介護の人々のために、さまざまに工夫された機器が使われている。では、いわゆるハイテクはリハビリに貢献できるだろうか。現地で下山氏が脊椎損傷の方に質問したところ「ヒューマノイドロボットの完成に期待している。お風呂やトイレの介助は人間には手伝ってもらいたくないから」というコメントが返ってきたという。
IRTでは「アシスティブテクノロジー」という支援技術の開発を目指している。機械がでしゃばらず、使いたい人が使うアシスト技術だという。それを使って労働支援、健康支援、家事介護支援を行なっていく。これを研究する基盤技術は5つに分かれている。ロボット化情報化した環境を実現するIRT環境、ソフトウェアでそれらをつなぐIRTシステム、腕などを制御するIRT制御、人とつなぐサイバーインターフェイス、そしてスマートなセンサーを実現するIRTデバイスである。
IRT研究機構のもう一つの目的は産業化における「死の谷」を超えること。また人材育成も目的の一つである。人材流動をしやすくするためのシステム改革、若手研究者の雇用などを積極的に行なっているという。
文部科学省科学技術・学術政策局長の森口泰孝氏は科学技術振興調整費の説明そのほかを行なった。資源が乏しい日本においてはロボットを含む情報通信分野はきわめて重要だという。なおこのプログラムは、採択後3年後に再審査を行なう。再審査を通るとそのあと7年間続くが、落ちるとそこで終わりとなる。18年度に採択された18課題は21年度に第3者から再審査が行なわれるが、1/3しか通らないことになっている。1) 達成目標(ミッションステートメント)の着実な達成、2) 企業など協働機関との関係、3) 研究成果の状況と見通しの3点で審査されるという。
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IRT技術の可能性
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東大のIRT関連研究の歴史
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IRT技術のターゲットは労働支援、健康支援、家事介護支援
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5つの基盤技術研究
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若手研究者の積極的雇用を行まっているという
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文部科学省科学技術・学術政策局長 森口泰孝氏
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● 研究発表「IRT環境研究部門」
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IRT研究機構副機構長 佐藤知正氏
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このあと、各研究部門の代表や関連企業から、「IRT研究拠点」時代に行なわれた研究、そしてこれからの研究の概要が発表された。まず「IRT環境研究部門」について、副機構長の佐藤知正氏ほかが講演した。
高度なロボット社会はロボットだけでできるわけではない。インフラが重要だ。IRT環境研究部門は、高度なロボットが活躍するためのロボットインフラの研究を行なう。すなわち環境に埋め込まれた各種センサー類コンポーネントとその連携である。個体のロボットが働きやすくなる環境を作ること、そして環境そのものが人間支援することでさりげない支援を可能にすることが目標だ。そのためには人間計測そのほかの技術が必要となる。
佐藤氏らは10年以上、RTルームの研究を行なってきた。現在は、ロボットシステムにより家庭内でのモノへのアクセスを支援する、平たく言えば家の中でどこに何があるのか人間に知らせるシステムなどの研究を行なっている。必要なものを必要なときに人間の手元に運ぶことは重要だ。また、病院ではすべて枕元におかれるが、そのような環境では、産業用ロボットのような「モノのパレタイジング」が有効だという。
「家庭内物流支援ロボットシステム」は、インテリジェントコンテナ、天井移動型運搬ロボット、コンテナ収納ロボットなどからなる。コンテナは無線タグがつけられたものから簡易化されたものまでさまざまなバリエーションを作り、使い分ける。それらはロボットにとっても扱いやすいものとなる。
天井移動ユニットは、コンテナを部屋の任意の位置まで持ってくるためのロボットである。コンテナ把持ユニットの動作をいまは検証中だという。また手作業を支援する環境も研究開発中だ。動けるロボットパーツが作業手順に応じて作業者の手元にまでやってくるようなものだ。今後は生体データの活用によって、より適切な支援を行なえるようにするという。
また分散されたデータ処理のための情報環境も重要だ。分散オブジェクトによる透過的なデータアクセス、イベントハンドらを簡単に書ける、タスク実行環境を明示的に指定できるようなものを、バックエンドの計算機クラスタ、ロボット内部の計算機で計算させることを目指す。
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ロボット環境の必要性を車とのアナロジーで比較
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IRT研究環境
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IRT家庭内物流支援
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家庭内物流支援ロボットシステム
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インテリジェントコンテナ開発計画
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インテリジェントコンテナ概要
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天井移動型運搬ロボット
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コンテナ把持クレーンユニット動作の様子
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コンテナ位置認識システム
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手作業支援システム
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分散されたデータ処理システム
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この研究を協働で進めている松下電器産業株式会社の小林昌市氏からも発表が行なわれた。松下電器産業では煩雑な作業、すなわち家事の代行を目指して研究を行なっている。そのためにカメラやRFIDタグなどさまざまなセンサー類を使って、どこに何があるのかを推定する必要がある。センサーモデルによって異種の情報を統一尺度に変換し、物体数の演算の爆発や誤認識を除去し、どこに何があるのか、素早く特定する。この技術によってロボットによるお手伝いなどを目指すという。
また三菱重工業株式会社・見持圭一氏も発表を行なった。パートナーロボット「wakamaru」で知られる三菱重工は、生活支援ロボットの知能化技術向上を目指す。ロボットは環境に埋めこまれたカメラやロボットのカメラを通じて画像処理・自己位置推定を行なう。そのときに、事前に取得していた人体モデルの時系列データを使って認識機能を画像処理システムに適用し、人間動作の認識を行なうための技術研究を行なっているという。
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松下電器産業株式会社 小林昌市氏
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松下電器の開発目標
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異種センサ融合による位置特定システム
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三菱重工業株式会社 見持圭一氏
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生活支援ロボット知能化ロボット技術
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● 研究発表「IRTシステム研究部門」
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東京大学大学院情報理工学系研究科 教授 稲葉雅幸氏
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「IRTシステム研究部門」の発表は稲葉雅幸教授のほか、協働企業であるトヨタ、富士通から行なわれた。「IRTシステム研究部門」ではRT要素をシステム化することを目的としている。実験するためのプラットフォームは、ヒューマノイド、社会生活支援システム、パーソナルモビリティである。ヒューマノイドは人の機能をベースとして人の活動を支援するロボットである。
稲葉研究室では、視覚、聴覚、内部モデルなどを組み合わせて、ヒューマノイドに高度な認識能力を持たせてさまざまな日常生活支援を行なう研究を行なっている。今年度は、人が皿を洗っていることに視聴覚でロボットが気づくと、過去のモデルから、洗った皿を運ぶべきだと気づき、運搬するという研究を行なっているという。
これらを統合するのが統合ソフトウェア技術である。ロボット本体が変わっても、あるいはシミュレーション環境においても同じソフトウェアを使うことができる。
パーソナルモビリティでは屋内・屋外でのロボット自身による環境マップ生成の研究を行なっており、最終的には、東大から秋葉原までロボットが自律で移動することを目指すという。また、ヒューマノイドを電動車椅子に乗せて、視野や、人あるいはヒューマノイドがどの程度の振動を受けるのかといった計測も行なっているそうだ。
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東大でのヒューマノイド研究
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稲葉研究室での日常生活支援を目的とした道具操作研究
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記憶モデルや視覚結果をもとにした環境物体視覚認識技術
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聴覚をもとにした注意制御技術
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【動画】状況に対応した支援行動生成の様子。皿洗いしている人に応じて皿を片づける
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統合ソフトウェア技術
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パーソナルモビリティ研究
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ロボットによる自律環境マッピング
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レーザーセンサを使った屋外環境3次元マップ生成
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市街地建物モデル地図生成
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車両を使った東大ー秋葉原ルートの環境モデリング
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【動画】電動車椅子に乗って移動するヒューマノイド
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トヨタ自動車株式会社 山下勝司氏は「パートナーロボットを支える要素技術」と題して講演し、トヨタのパートナーロボット研究の方向性そのほかについて紹介した。トヨタではパートナーロボットのほか、スキルアシスト技術を使ったリハビリ向けの下肢ロボット、スイングアームを使って段差や斜面をスムーズに走破する「モビロ」、自律移動技術やハンドリングに力を入れた介助犬ロボットや案内ロボット「ロビーナ」の開発を行なっている。
全身運動は走ること、道具を使う能力は把持と技能の再現を目標にしているという。今後、トヨタ自動車のものづくりと東大の先端技術を融合し、環境に対する適応性自律性、汎化性を持たせ、患者の支援や医療介護を行なわせたいと考えているとのことだ。
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トヨタ自動車株式会社 山下勝司氏
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トヨタのものづくりと東大の先端技術を融合することが目標
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人に役立つロボットを作るための要素技術
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パートナーロボットが目指す全身運動能力のロードマップ
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【動画】トヨタパートナーロボットの走り
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【動画】足踏み中のロボットを押しても安定
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介護・医療現場でのロボット活用シーン
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人が行けるところにはどこでも行けることが目標
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2008年から実用化トライアルを開始予定
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株式会社富士通研究所の森田俊彦氏は、富士通のロボット開発の流れについて紹介した。現在、一番力を入れているのはサービスロボットだという。サービス産業の比率は増加傾向にあるが、労働者人口は減少しているからだ。
ロボットが公共施設や商業施設で活躍する際には視覚センシングが鍵だと考えているという。いまの富士通のサービスロボット「enon」には3次元ビジョンLSIを使って環境の三次元計測を行なっている。3次元認識を目標として最近開発したのが特徴抽出機能を負荷した「ステレオビジョンLSI」で、リアルタイムでの計測点4,000点弱のオプティカルフロー計測、3,000点以上の特徴点抽出が可能だという。
テーマは「インテリジェント・ヒューマン・インタラクション」で人と機械の相互作業を高度化する技術、すなわち、人と目を合わせたり、声をかければこたえるといった機能を実現し、「気配り感のあるロボット」の実現を目指したいという。その技術は他の機械にも適用できる。現在は広視野、高視力で人を見守ることのできるロボットを目指し「アクティブステレオズームヘッド」を製作し、人が見ているものが何なのかを把握できるロボットの実現を目指しているという。
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株式会社富士通研究所 森田俊彦氏
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富士通のロボット
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視覚センサー開発の歴史
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ステレオビジョンLSIのオプティカルフロー計測
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ステレオビジョンLSIの特徴抽出処理例
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インテリジェント・ヒューマン・インタラクション
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広視野、高視力で人を見守ることのできるロボット
irt_p1350954.JPG アクティブ・ステレオ・ズーム・ヘッド
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アクティブ・ステレオ・ズーム・ヘッド
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最大広角で画角65度、最大望遠で10倍ズームができる
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人の行動を見守ることのできるロボット開発を目指す
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富士通の共同研究ロードマップ
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● 研究発表「IRT制御研究部門」
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東京大学大学院情報理工学系研究科 教授 中村仁彦氏
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中村仁彦氏が部門長を務める「IRT制御研究部門」は、数理的な手法から人間の身体行動の計測・推定、ロボットの運動制御のアルゴリズムなどの研究開発を目的としている。ニューアクチュエータとロボットハンド、ヒューマノイドの力学パラメータ同定、ロバスト制御、部分観測から対象の全体を推測する技術の研究開発などを行なっているという。
アクチュエータには効率の問題がある。摩擦があるからだ。そこでロボットハンド用のハイドロスタティックアクチュエーターを開発した。油圧アクチュエータの一種だが、バルブはなく、5角形のトロコイドポンプを使って油を圧縮し、それをそのままモーター駆動に変える。現在はロボットハンドの2次試作を行なっている段階だという。
ヒューマノイドの力学パラメータ推定においては、ロボットが自分の足首につけられた6軸力センサーを使って何歩か歩いているだけで、ロボット自身の慣性モーメントや質量分布などの全身のパラメータを把握できるようにするアルゴリズムを開発したという。ある瞬間のデータだけを見ていても決めることはできないが、時系列データのなかのダイナミクスのなかから推定できるのだそうだ。これはどんなロボットにおいても使えるアルゴリズムだという。またロボットだけではなく、たとえば6軸力センサーが家庭にあれば人間の身体の質量分布も計算可能なので、健康診断的な用途にも応用できるという。
また商品としてはドイツのKUKAが扱っている軽量構造マニピュレータを示し、分散制御の研究も行なっていると語った。ドイツDLR Institute of Robotics and Mechatronicsが開発したマニピュレータは、関節のトルクを非常に精密に計測してロボットを力制御することで、腕全体が力センサーであるかのような敏感な動きを可能にしたマニピュレータ。高応答性を持ち、人にあたっても柔らかく制御することで怪我をさせない。その背景にあるのは計測技術や受動性の研究だ。中村教授らも、分散制御を使った運動制御の仕事を進めていくという。
人間の運動を見守って、意味を表すところを切り出し、それを記号として記憶し、それを新しいものを見たときに再利用することでロボットに自然な運動をさせるための研究も行なわれている。統計データを自然に自己組織化させ、記号を作らせるのだという。また、たとえば上半身だけ見ていても下半身の状態を推定できたり、カメラが1台しかなくても、過去データを使って別視点からの映像を生成できたりすることもできるという。
たとえば道具の動きから手の動きを推論し、そこから全身を推定することも可能だ。これらの技術を使えば人の動きからどのような力が発生しているのか、神経がどのように活動しているのか推定できるのではないかという。これらの計算技術は、ヒューマノイドを人の生活に入れることにも役立つが、人の体の中での神経活動や筋肉の緊張など何が起こっているか知り、その情報を活用することにも役立つという。
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ロボットハンド用ハイドロスタティックアクチュエータ
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作成したロボットハンド
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DLRマニピュレータを使った研究
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運動の一部分から全体を推定する技術
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1アングルから全体のモデルを生成することもできる
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人間のモデルの運動を簡単に振り付けるための研究も行なわれている
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● 研究発表 「サイバーインターフェース研究部門」
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東京大学先端科学技術研究センター 教授 廣瀬通孝氏
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バーチャルリアリティ関連研究で知られる廣瀬通孝氏が部門長を務めるサイバーインターフェース研究部門は、「IRT」のなかでは「IT」に近い。この部門では、実空間の情報を計算機システムに取り込む技術(広域ポジショニングとライフログ)、逆に実空間に情報を提示する技術(3D画像伝送、実体情報ローミングほか)、そして計算機と人間をより密に繋ぐ技術の3つが進められている。
ロボットが動き回るためには大きな面積で環境を計測しなければならない。GPSでは精度が足らない。そこで同グループではRFIDや内装模様のビジュアルマーカを使ったポジショニングの研究を行なっている。
ライフログは、ロボットや環境のカメラを使った、人の行動記録の記録、構造化・可視化の研究である。写真を組み合わせることで、3D空間を再構成したり、昔の情報を取り出したりできる。ロボットと直接の関係はないが、ロボットの普及によって可能になるサービスの一つだという。3D画像伝送では多眼カメラを使うことで、3Dの世界をのぞきこめるようなものを研究開発している。
実体空間上の情報を取得・認識し、それを実体空間にフィードバックする技術「実体情報ローミング」については凸版印刷株式会社の安藤真氏から講演があった。これまでディスプレイのなかで提示されていた情報が実体空間に出てくるのが情報実体ローミングだ。現在は特にロボットによる高齢者や障害者の健康維持とQOL向上支援をターゲットに研究を進めており、博物館・美術館を舞台に、情報技術を使って展示物に情報を重畳を表示したり展示物へのタグ埋め込みを使った個別情報提示などを行なっているという。どのような情報提示をすれば閲覧者が分かりやすいと感じるか研究を続けていくそうだ。
また脳から機器を操作するBCI(ブレイン・コンピュータ・インターフェイス)や、バーチャルリアリティ技術を使った触覚生成などについても研究を行なっている。
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RFID等を使った広域ポジショニング
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内装模様をマーカとして使ったポジショニング技術
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東大内での実験の模様
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ライフログのためのウェアラブルカメラ
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リアルタイム3D画像伝送技術の研究
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実体情報ローミング技術
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凸版印刷株式会社 安藤真氏
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情報重畳提示の実験の様子
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触覚インターフェイスの研究も
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東京大学大学院情報理工学系研究科 教授 下山勲氏
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「IRTデバイス研究部門」の下山勲教授は「ロボットにはロボットのセンサーがあっていいのではないか」と語る。人間の5感に相当するものをコンピュータが持てば、良いことがたくさんある。センサーがよくなってくれば、コンピュータの計算負荷も減る。だが良いセンサーはあまりない。そこでIRTデバイス研究部門では、人の感覚、あるいは人の受容器にはない感覚センサーをMEMS技術で小型化して、細やかな行動や研究を行なっている。
触覚は力によるひずみの計測、視覚は光の波長・強度の計測、聴覚は音波による弾性波の計測、味覚嗅覚は化学量の計測で実現することを目指す。触覚センサーにはカンチレバー、化学センサーには脂質二重膜センサー等を用いる。現在、触覚においてはカンチレバーを使ったフレキシブルなせん断応力センサーを作っている。これを使って押し付けたり回転したりする力を検出できているそうで、現在は、ボットの指先のようなところに貼るために多面体上の構造を作っているところだという。
視覚は、液体プリズムと油滴のレンズを使って、パンやチルト等の基本機能を実現することを目指している。これまでの複合レンズとはまったく違ったものだ。液滴はモーターとしても使えるため、レーザー光源の上でプリズムを回転することで小型のレーザースキャナーも実現できるのではないかという。また、液体の上に有機膜をつけて封止することもできる。電圧をかけるとこの幕は変形するので、それでスキャナーを作ることにも成功している。
嗅覚味覚については、細胞の膜である脂質2重膜をシリコンの上に再構成して、化学量を計測しようとしている。同時に細胞そのものをセンサーとして使うことにもチャレンジし、細胞のアレイ化と、その光学的・電気的応答を計測しようとしている。
聴覚は空気を伝わってくる弾性波をカンチレバーで検出することで実現しようとしている。受信だけではなく、発振も可能で、測距センサーとしても使えるという。
またオリンパスMEMS開発部長の太田亮氏によれは、オリンパスは分子レベルの生体情報計測とロボット技術の融合を目指しており、下山研究室で作ったデバイスの評価などを行なっているという。
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MEMS技術による五感センサー実現を目指す
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視覚聴覚センサー実現のロードマップ
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触覚味覚嗅覚センサー実現のロードマップ
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フレキシブル剪断力センサを使った触覚センサー
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センサを使った計測の模様
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液滴を使った視覚センサー
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液滴を使ったレーザーセンサーも可能ではないかという
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細胞膜を模した嗅覚センサー
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聴覚センサー
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IRTによる細胞診断治療用プローブ実現を目指す
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オリンパス株式会社MEMS開発部長 太田亮氏
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オリンパスとセンサーを共同開発中
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● 拠点形成活動紹介「IRTコンテンツ研究会」
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コンテンツ研究会の活動について紹介した東京大学大学院情報理工学系研究科 特任研究員 プロジェクトマネージャーの石川勝氏
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IRT研究機構には「コンテンツ研究会」が設置されている。ロボット単体だけではなく、ロボットと社会、社会とIRTとの関連を考えるのがコンテンツ研究会だ。ロボット単体ができても、それが何かしらできないと誰も買わない。ITでは既にそのような議論はかなりされているが、ロボットにおいてはまだプラットフォームの議論がほとんだ、IRTがイノベーションを起こすためにはコンテンツの議論が不可欠だと「コンテンツ研究会」の廣瀬教授は述べた。
将来開発されるロボットが、1960年代あるいは今日の家庭にそのまま入ることをイメージしてもあまり意味はない。ロボットが入ることでで生活自体がどう変わるか議論しないといけない。そこでロボットコンテンツにはどのようなことが必要なのか、定性的要件について考察を行なっているという。特に「コンテンツ研究会」では社会の変化に伴うニーズからどのような技術が必要かを考えており、そのために人口学やジェロントロジー、経済学、プライバシー、住居、心理学、バリアフリーなどさまざまな専門家たちと研究会を進めているそうだ。
将来、日本の人口は3,000万人減る。それによる国内市場の縮小、国際競争力の低下、現在の社会インフラ維持が難しくなるといったことが懸念されている。これに対してIRTが何らかの貢献ができるのではないか、それがIRTのコンテンツだという。
また世帯構成も変化が予想されている。2025年には、単身者世帯が一番多くなる。高齢者世帯も増える。家事や介護の負担が今以上に増す。これらのことから労働支援、健康支援、家事介護支援をする支援型技術がIRTコンテンツだと考えているという。
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コンテンツ研究会
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日本の人口は2055年にはおよそ9,000万人になる
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高齢者率も増える
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世帯構成も変化する
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電通総研・美和晃氏
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「コンテンツ研究会」の電通総研・美和晃氏は、財団法人機械産業記念事業団(TEPIA)と共同で行なった「少子高齢社会における次世代ロボットの導入がもたらす社会経済効果」に基づく発表を行なった。2025年の社会経済の状況がどうなっているのか検討し、その上で、IRTイノベーションによる技術、すなわちロボットが社会に導入されたと想定した場合の経済効果を試算したという。
現状のまま進むと非製造業でおおよそ427万人の労働力が不足すると考えられ、そのうち将来実現すると考えられるIRTが担えるのはおおよそ352万人分。うち138万人分は代替レベルまで可能だという。
また健康支援分野においては将来のIRTは、おおよそ2兆1,200億円の介護給付費抑制効果をもたらし得るという。家事負担のサポートにおいては、さまざまな技術によって、25歳~64歳の人たちにおいては一日平均おおよそ1時間14分のゆとり時間創出を見込めるという。これは労働力率の向上に繋げることができると美和氏は語った。
質疑応答では会場から「労働力不足は外国人受け入れなど政策で考えるべき問題ではないか。ロボットによる介護には現実感が感じられない」という質問が出た。それに対し石川氏は「これは一つのオプション。IRT導入でもまかなえることを示した」と答えた。
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IRTを使った健康支援による効果
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介護給付費への効果の試算
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家事・介護軽減によるゆとり創出
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● パネルディスカッション
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パネルディスカッションの様子
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研究発表のあと、井上博允 特別顧問をモデレータとしてパネルディスカッションが行なわれた。パネリストは下記の8名。
・芝浦工業大学学長 柘植綾夫氏
・トヨタ自動車株式会社 パートナーロボット部 理事 高木宗谷 氏
・オリンパス株式会社 MEMS開発本部 執行役員 MEMS開発本部長 唐木幸一氏
・松下電器産業株式会社 上席理事・コーポレートR&D戦略室長 産学連携推進センター長 宮部義幸氏
・凸版印刷株式会社 常務取締役 増田俊朗氏
・株式会社富士通研究所 取締役 (兼)ストレージ研究所長 (兼)ビジネスインキュベーション研究所長 内山隆氏
・三菱重工業株式会社 神戸造船所 技師長 長島是氏
・IRT研究機構機構長 下山勲氏
前総合科学技術会議委員で芝浦工業大学学長の柘植綾夫氏は「IRT研究機構は、知の創造と社会経済価値創造とを結ぶイノベーションパイプライン・ネットワークのロールモデルになってほしい」と述べた。この10年が21世紀の国づくりの勝負が決まるからだという。だが行政も政治も大学も危機感が少ない、と訴えた。必要なことは要素技術への重点的投資と社会的ニーズへの接続だという。そのためには府省連携施策マネージメントや協働の場作りが重要だと協調した。
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トヨタによる「ロボットのいる未来の暮らし」
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トヨタの高木宗谷氏は、トヨタは自然の循環と調和するサステナブルなものづくりを進めていこうと議論していると述べた。ネガティブなものは減少し、ポジティブなものは増やしていく。それによって車だけではなく都市の構造なども将来的には変わっていく必要があるという。職住隣接のコンパクトシティでの移動形態を考えた場合、コンパクトシティ内の移動は、人との一体化を追及したようなパーソナルモビリティや公共交通機関が用いられるのが望ましいと考えているという。そのためには自律移動計画機能などのロボット機能がついた使いやすいモビリティの登場が待たれる。またさまざまな生活支援機能を持ったロボットによるアシスト、スキルや力をサポートする機械の登場による職場の状況の変化などもロボットに期待しているという。
オリンパスの唐木幸一氏は医療機器面からロボット技術への期待を述べた。早期発見・治療、そして最後まで高齢者を診ることのできる機械の実現がメーカーとして目指すべきことだという。ゆくゆくはセンサーを使って常時人間の身体をモニターし、最後まで人間の身体をメンテナンスすることを目指したいと考えているという。
30年前に東大でロボットの研究で卒論を書いたという凸版印刷の増田俊朗氏はユニバーサルデザインや歩行者ITSの技術を紹介した。また子育て支援サイトやNPO法人キッズデザイン協議会などを立ち上げて少子化に対応しようとしているという。まだロボットという切り口はない。IRT研究機構を通じてITアプローチにロボットを足して少子高齢化に対応したいという。
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富士通が研究開発している「くまロボット」
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富士通研究所の内山隆氏は、同研究所の福祉介護ロボットへの取り組みなどを紹介した。1994年から1998年まで通産省委託で安川電機と共同開発した高齢者障害者用食事搬送自動ロボットシステムを作った。うまくいったが問題はコストだった。当時2,000万円かかったが、400万円以下でなければなかなか難しいと判断されたという。MARON-1は携帯電話で遠隔操作できるロボットカメラである。これは100台程度モニター販売した。今は、くまのような認知症高齢者向けパートナーロボットの研究開発を行なっているという。また同社ではそのほか、電子カルテ、ケアマネジメントなどのソリューションシステムの提供を行なっている。
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松下電工の生活支援ロボット技術
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松下電器産業の宮部義幸氏は、人口問題は2つの側面があると述べた。人口増加が問題になっている国と、少子化に悩んでいる国である。日本は後者だ。松下電器では、介護・自立支援、家事支援、運搬支援の3つから生活支援ロボットの開発を行なっているという。家庭で動くロボットは何をおいてもまずは安全性が重視される。また使いやすさ、ユニバーサルデザインも重要だ。白物家電においてはこれまでは主婦の意見を聞くことが多かったが、最近は男性や高齢者などあらゆる人の意見を聞いて開発しているという。またユビキタスセンサを使った子供見守り技術の開発も行なっている。
三菱重工業の長島是氏は「wakamaru」に関する話を述べた。人を代替するのは現状の技術では難しい。いかに人の負担を軽減して共存するかが重要だと述べた。今ある技術をうまく世の中に出していって、世の中の人に対してロボットが確かに役に立つことを示すことが今後のポイントだと思っているという。
以上の各協働企業のプレゼンに対し、東京大学の下山氏はスウェーデンの例を出した。スウェーデンは日本の将来例の一つとして捉えられる面が少なくないが、出生率は2.0を上回っているのだという。下山氏は「少子高齢社会は、技術だけで対応が可能だとは考えていない。社会制度そのほかを踏まえて議論されるべきことだ。オプションの一つとして我々はこういうものを提案していきたいと考えている」と述べた。
パネリストのプレゼンテーションを受けて、モデレータの井上氏は「日本は人口減少フェーズに入っている。2030年になると単身世帯が一番多くなり、65歳以上も4割を占める。少子高齢化社会では高齢者など、現在は弱者と言われている人々の率は増えてくるわけで、特別な存在ではなく普通の存在になる。それがもうすぐそこまできていることを考えて社会のデザインを考えなければならない」と受けた。
どんな感想を持ったかと井上氏から話をふられた柘植氏は「感想は3つある」と答えた。「1つ目は結局産業側が本気にならないとダメ。2つ目は、IRT研究機構は本当の意味で協働の場になってほしい。3点目は、東大はバックヤードに独自の知の創造を持っていること。そのバックヤードを持って産業側が本気になってもらいたい」と述べた
井上氏にコメントを指名された会場のミュンヘン工科大学教授のマーチン・バッス(Martin Buss)氏は「ロボット技術の研究は進んでいる。だがテクノロジーがいくら進んでも、人が使いたいと思うかどうかが問題だ。ドイツでは、機械は便利でも使いたくないという意見も少なくない。テクノロジーが社会的に受容されるかどうかという研究もこれからは重要ではないか」と述べた。
最後に井上氏はまとめとして「ロボットは各国で期待され、研究されている。決して日本だけが進んでいるわけではない。ロボットに対する期待は大変大きい。だがいっぽう開発されているテクノロジーも実際に使おうとすると不備な部分が多い。そのギャップを埋めて本当に使えるような事例を作り出していくことがIRT研究機構には求められているのではないか。それが共感を得るものであれば人は入ってくるだろうし、IRT研究機構が一つの核となって21世紀のあたらしい社会の創造に繋がるし、そうあってほしい」と語った。
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IRT研究機構 特別顧問 井上博允氏
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芝浦工業大学学長 柘植綾夫氏
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トヨタ自動車株式会社 パートナーロボット部 理事 高木宗谷氏
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オリンパス株式会社 MEMS開発本部 執行役員 MEMS開発本部長 唐木幸一氏
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凸版印刷株式会社 常務取締役 増田俊朗氏
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株式会社富士通研究所 取締役 (兼)ストレージ研究所長 (兼)ビジネスインキュベーション研究所長 内山隆氏
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松下電器産業株式会社 上席理事・コーポレートR&D戦略室長 産学連携推進センター長 宮部義幸氏
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三菱重工業株式会社 神戸造船所 技師長 長島是氏
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IRT研究機構機構長 下山勲氏
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ミュンヘン工科大学教授 マーチン・バッス氏
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● 特別講演「機械の歴史と設計」
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産業技術総合研究所理事長 吉川弘之氏
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シンポジウムの最後に産業技術総合研究所理事長の吉川弘之氏が「機械の歴史と設計」と題して講演を行なった。古代は権力者が奴隷を使って大きな建造物を作った。中世は技術が一般人にまで広がってきた。技術は自然災害や戦争そのほかと打ち勝とうとして知恵を使い技術を発展させてきた。また豊かになりたいというのも人間の欲求である。そのなかからさまざまな技術が生まれてきた。現在の多くの機械は中世に起源がある。そして動力が機械化されて産業革命がおきる。さらに情報化が起きて人間の力は非常に大きくなった。
では人間が闘ってきた対象はなくなったか。まだ解消されていない。現代は新たな「邪悪なるもの」が現れている、という。「敵」は自分たちの行動や意図の中にあり、それはこれまでの可視的な敵よりも闘うのが難しい。
人間は、人工物、機械に何を期待するのか。「自然観」ではなく「人工物観」という言葉を提示して、吉川氏は問いかける。昔は生存するために技術はあった。だが産業革命以後は、豊かになるための技術が発展してきた。しかし、それらによって逆に闘う対象は増えてしまった。昔のように生き延びるための技術が必要になってしまったという。人工物観でいえば、先祖帰りしてしまったのだという。
ではどんな技術が必要なのか。たとえば貧困と闘うにしても、いま問題になっているのはかつての貧困ではなく、格差の問題である。生物多様性や、予防医療、平和とガバナンスといった問題もある。多くの問題がある。制御因子も、原子分子から個体、システム、社会へと広がっており、制御対象もローカル、ナショナル、グローバルとさまざまなレベルに広がってしまっている。持続性産業はさまざまな技術を総合しなければならない。これまでの技術は細分化してきたが、これからは一つ一つを進めるのではなく、知識と知識の関係を明らかにすることが重要だという。
ロボットは、持続型人工物観に応えるものなのではないかと吉川氏は語る。ロボットは他の機械に比べると剛性は劣るし、高速作業もできないし、精度もよくないし強力ではない。これまでの機械に比べると劣っている。だがこれが持続型に繋がるのだという。
ではロボットをどうやって作るのか。現在は、構成的あるいは擬態的なやり方が多い。世界をどこまで分けて捉えるかによって、ものづくりは変わるという。どのスケールレベルの要素の集合体としてものを捉えるかで、ものの見方がまったく異なるということだ。だが我々は必ずしもマルチスケールにわたるものづくりの系統的な知識をもっていないという。
機能的にあるものを実現しようとしているときに、本当に必要な機能だけを抽出しないと無駄だらけになってしまう。だが機能がユニットになっていればそれを組み合わせるだけでさまざまなものを作ることも可能になる。
吉川氏はこのような考えをベースにかつて「Amooty」という9自由度の原子力発電所メンテナンスロボットを作った。だがまだ原子力発電所メンテナンスロボットはいまも実現していない。介護ロボットもある意味、人間のメンテナンスだと言える。機械技術が非定型な仕事をする上ではメンテナンスというのは良い切り口だったのではないか、この領域は社会的にも大変発展が期待されるのではないかと述べた。
■URL
東京大学IRT拠点
http://www.irt.i.u-tokyo.ac.jp/
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( 森山和道 )
2008/03/31 22:07
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