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NASAのケネディ宇宙センターから打上げられたスペースシャトル「エンデバー」(C NASA/Jim Grossmann)
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宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11日、同日2時28分(米国東部夏時間)に米国航空宇宙局(NASA)がスペースシャトル「エンデバー」を打上げたことを受け、記者会見を開催した。今回のフライト「STS-123」には、JAXAの土井隆雄宇宙飛行士が搭乗、日本の実験棟「きぼう」を国際宇宙ステーション(ISS)へ取り付けることになっている。
「きぼう」は日本初の有人宇宙施設である。4名までの搭乗が可能で、ISSの一部として利用される。「船内保管室」「船内実験室」といった与圧部と、「船外実験プラットフォーム」「船外パレット」「ロボットアーム」といった曝露部から構成されるのが特徴となっており、さまざまな科学実験に対応することが可能だ。
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日本の実験棟「きぼう」。一番上に付いている円筒形のものが今回打上げられた「船内保管室」(提供:JAXA)
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これが船内保管室の実機。軌道上にはまだ本体の船内実験室が届いていないために、今回はISSに“仮留め”される(提供:JAXA)
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これら構成モジュールは3回に分けてISSに運ばれる計画で、今回のSTS-123ではまず船内保管室を打上げ、以降、5月下旬のSTS-124、来年のSTS-127と続く予定。「きぼう」はプロジェクトがスタートしてから約20年もの時間が経過しているが、スペースシャトルの2度に渡る事故の影響などがあり、今回の打上げでようやく組み立てが始まることになる。
現地で開催された記者会見では、まず立川敬二・JAXA理事長が挨拶。「打上げが無事成功して大変嬉しく思う。このミッションの成功で、ISSを中心とした有人宇宙利用計画が第一歩を踏み出した。ISS計画の中で日本が確固たる地位を確保できることを願っている」と述べた。
また同席した池上徹彦・宇宙開発委員会委員は、「3月11日は歴史に残る日として記録される。1つは、宇宙に日本の拠点ができたということ。それをどのように使うかは日本の責任だが、これは今までになかった大きなイベントだ。もう1つは、日本のプレゼンスが上がったということ。NASAからは日本の実験棟は高く評価されている」と続いた。
現場の責任者である長谷川義幸・ISSプログラムマネージャは、「有人宇宙技術をより高いレベルで学べる環境になった。『きぼう』をうまく利用できるように頑張りたい」とコメント。今回は地上からのサポートとなる山崎直子宇宙飛行士は、「日本人宇宙飛行士の第1期生である土井飛行士が、『きぼう』の第1便を宇宙に運ぶことには深い意味があると感じている。最初の道しるべを作ってくれて、その後にたくさんの人が続いて行けたらいい」と期待を述べた。
しかし、「きぼう」にはその名称とは裏腹に、課題が山積している。ISS計画はその時々に米国の都合に振り回され、計画が二転三転してきた。その米国自身の興味は、いまや月・火星探査に移っており、2010年でのスペースシャトルの退役も決まっている。JAXAは「設計寿命は10年だが、検査や交換などで30年程度は利用できる」とするが、今後のISSの運用に関しては不透明さが残る。
「きぼう」の開発・打上げ・運用にかかったこれまでの経費は、1987年度からの20年間でおよそ5,500億円。さらに今後、定常運用段階になると、年間400億円のコストが必要になると見込まれている。それに見合った成果が得られるかどうかの判断について、立川理事長が「(まだ完成前であり)もう少し結果を見てからにして欲しい」と述べるのは正論ではあるが、その道のりは厳しい。
■URL
米国航空宇宙局(NASA)
http://www.nasa.gov/
宇宙航空研究開発機構(JAXA)
http://www.jaxa.jp/
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