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メーテルのいる空港で搬送・案内ロボット「RoboPorter」実証実験
~3年後の実用化目指す


 2月7日、福岡県北九州市小倉南区にある新北九州空港で、搬送・案内ロボット「RoboPorter」の実証実験がマスコミに公開された。

 新北九州空港は、2006年3月16日に旧来の北九州空港に代わる新空港として開港された。周防灘の埋立地に作られ、海上空港として24時間の航空機の離着陸が可能となっている。

 国内線の空港会社としては日本航空・全日空、それにスターフライヤー社が、主に北九州-羽田便を運行している。また上海との間にも国際便が就航している。


新北九州空港ビル 新北九州空港は海上に作られた空港だ 空港内部の実験会場

北九州市小倉北区に本社を置くスターフライヤー社の飛行機 スターフライヤーの飛行機のデザインは、「PINO」「Posy」をデザインした松井龍哉氏の手になるもの

新北九州空港のロボットたち

 北九州市はロボット開発に熱心な都市として知られており、この新北九州空港でもロボットを見ることができる。

 その中で最も有名なロボットは、インフォメーションカウンターにいる音声案内ロボット「メーテルロボ」だろう。「銀河鉄道999」の作者である松本零士氏が北九州市小倉の出身であるため、その協力で実現したものだ。

 ロボット本体は九州工業大学、音声認識システムは九州工業大学発のベンチャー「KIT HIT」が担当し、新北九州空港開港時から案内を続けている。

 また新北九州空港の近くには日産自動車苅田工場があるため、空港内のロビーで自動車製造用の産業ロボットが動くデモを見ることができる。


空港の入り口すぐ左手のインフォメーションカウンターにメーテルロボはいる メーテルロボとは、タッチパネルモニタとマイクで会話する。メーテルの声優である池田昌子さんの声でしゃべってくれるのは結構感動もの メーテルロボのアップ。外装は東映の手になるもの。科学的な実験ということで、キャラクターの使用料は特別に免除されているそうだ

メーテルロボは首と肘、それに体全体を回す部分が可動するようになっている。わかりにくいが、帽子の部分にカメラが仕込まれている メーテルロボの詳細 日産自動車が展示している自動車組み立てモデル。ボタンを押すと、安川電機のモートマンが動きだすようになっている

RoboPorterの実験

 RoboPorterは、福岡県ロボット産業振興会議の助成を受けて、株式会社安川電機が2年間の研究期間を経て開発したものだ。

 音声ガイドの部分に関しては株式会社ゼンリンデータコムが担当。ゼンリンデータコムは地図で有名な北九州市の企業ゼンリンの子会社で、本社は東京にある。元々はカーナビのソフト開発から始まり、現在は携帯電話のソフト開発を主な事業としている。RoboPorterへの開発に参加した理由は、やはり北九州市小倉北区に本社を置くゼンリンの関係とのこと。


RoboPorter。利用者はモニターを見ながらついていく形になるため、モニターがついている方が後ろになる 真ん中の穴がメインカメラ。ここから得た画像情報で、RoboPorterは自分の位置を把握して移動する。なお、メインカメラがふさがれた場合も停止するそうである 周囲にある丸い穴は超音波センサー。周囲に人がいないかどうかを検知し、また利用者がついてきていないと判断すると、やはり一時停止する

 このRoboPorterは、高さ120cmで重量130kg、最大で20kgの荷物を運搬する能力がある。実際には50kgまでの荷物を運ぶことが可能だが、でこぼこした床面だと安定した走行が難しいため、最大積載重量を20kgに押さえているとのこと。空港の利用客が音声で空港内部の場所を指示すると、荷物を載せたまま自律で時速約2kmのスピードでその場所へとオムニホイールの車輪で移動する(ただし、荷物の積み下ろしは個人で行なわなくてはならない)。

 またタッチパネルディスプレイと受話器を使った音声によるガイドも可能で、新北九州空港内部の情報や時刻表のデータも知ることができる。

 RoboPorterの最大の特徴は、周囲にICチップの埋め込みなどを必要とせず、ロボット単体で自分がどこにいるのか判断して移動できることだろう。

 基本的にはカメラで見た周囲の光景を画像処理し、前もってデータとして組み込まれた空港内の光景とのマッチングにより、自分がどこにいるのか判断し移動する。画像のデータを入れ直せば、全く別の場所であっても活動が可能だ(この画像処理システムは安川電機が開発)。

 今回の実験では、宅配便の受付カウンターの前から空港の建物の外にあるタクシー乗り場まで、荷物を載せて自律で移動し、荷物を降ろした後に自動で元の場所に戻るデモを披露した。その安定度は高く、光量的に周囲の画像を収得することのできない夜以外は安定して運用できるとのことだった。

 また音声ガイドシステムもしっかりと機能している感じで(受話器システムにより、周囲の雑音をシャットアウトしているのが大きい)、搬送・案内ロボットとしての完成度は高いように思えた。

 ただし、移動にオムニホイールを使用しているために、ほぼ同じ平面が続いていないと移動できない欠点があり(オムニホイールは乗り越えられる段差の高さが低い)、もし、歩道から道路を横切ってまた歩道へ移動するような使用法が必要となれば「車輪の形態を根本から見直す必要があるだろう」とのことだった。

 また実際に空港の利用客に使用してもらうことによって、今まで見えてこなかった欠点を探し出すことも必要だと開発者は語っていた。

 2月いっぱいは新北九州空港で毎日実験を続け(基本的には午後13時くらいから15時くらいまで)、その後も1年に渡って週1のペースで空港での実験を行なってデータを収集し、3年後を目処に実用化にこぎつけたいとのことだった。

 RoboPorterは稼動中であれば、短い距離ではあるが実際に使用することが可能なので、新北九州空港で見かけたら使ってみてほしい。


利用者はまず受話器で行き先を告げる 荷物を載せたまま、RoboPorterが動き出す 自動ドアを通過しようとするRoboPorter。実は自動ドアの左右の柱のみマーカーがついていて、それを目標にRoboPorterはドアを通り抜けられるように左右に微調整してから、ドアに向かう

タクシー乗り場に向かうRoboPorter。さすがに雨天の日は屋外に出られないらしい タクシー乗り場に到着すると音声で知らせてくるので、ここで利用者は荷物を降ろす 荷物が降ろされてから一定時間が経つと、仕事が完了したものと判断して、RoboPorterは向きを変えて元いた場所に戻っていく

帰っていくRoboPorter。進路上に人がいた場合は、とりあえず停止するようになっている 帰りも無事に自動ドアを通過 モニター画面。画面の女性は「さつき」といい、ゼンリンデータコムで5月にソフトが開発されたため、この名前なのだそうだ。なお、「さつき」の声は声優のサンプリングを使用している

新北九州空港の案内画面 新北九州空港の案内地図 行き先を指示したところ。こちらからの音声は受話器でないと受け付てもらえない

タクシー乗り場へ移動中の画面 わかりにくいが、画面がタクシー乗り場に到着したことを知らせるものに変わっている

マスコミ陣の質問に答える、安川電機の松熊研司氏(右) メーテルロボとRoboPorterのツーショット

URL
  新北九州空港
  http://www.kitakyu-air.jp/


( 大林憲司 )
2008/02/13 00:21

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