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ASIMO、実社会へ一歩踏み出す
~複数台による協調動作を公開


 12月11日、本田技研工業株式会社は、複数のASIMOを協調して働かせる知能化技術を開発し、青山にある同社本社ビル2Fロビーでの案内・飲み物のデリバリーの試験運用を12月12日から2008年1月31日まで行なうと発表した。試験運用は平日のみで(12月29日から1月8日までのぞく)、午後3時から午後5時まで行なわれる。

 11日には、ASIMOのある一日という設定でのデモンストレーションが報道関係者向けに公開され、2台のASIMOが飲み物をデリバリーしたり、人とすれ違ったりする様子が披露された。デモ中にはカメラのフラッシュがバンバン炊かれていたが、ASIMOは認識に問題なく動作していた。

 各ASIMOはネットワーク経由でサーバーに接続されており、サーバーは各々のASIMOの現在位置と作業位置までの距離を算出、バッテリ残量を考慮しつつ、全体としてもっとも時間効率のよい作業分担を導き出し、各ASIMOに仕事を割り振る。各ASIMOはそれぞれが自律的に作業をこなし、手が空いたASIMOがいたら、そのASIMOも手伝う。

 ASIMOはバッテリ残量が少なくなると自動で充電台に戻り、その間は他のASIMOがサービスを提供する。複数台のロボットが協調しつつ、連続して、オペレーターなしでサービスを提供できるようになった。

 またASIMOは人の動きにあわせて一歩下がって道を譲ったり、そのまますれ違ったりできるようになった。近づいてくる人をアイカメラでとらえ、進行方向と速度を割り出し、その後の動きを予測しながら人の動きを妨げない最適な進路をとる。従来は障害物があると地図上の決められた経路をとっていたが、自由に経路を生成して迂回できるようになった。また人とすれ違うための十分な場所がない場合は、一歩下がって道を譲ることができる。人間かほかの障害物かどうかはシルエットの形から判断しているという。

 トレイ運搬やワゴン押しなど移動の知能化技術も向上した。従来は人がASIMOにトレイを渡すしかなかったが、ASIMOが自らトレイを取れるようになった。ワゴン押しではより小回りがきくようになり、ワゴンを押したまま壁際を歩くこともできるようになった。

 ASIMOそのものの外見はバッテリコネクタが追加されたこと以外はほとんど変わっていない。しかしながらソフトウェアを大幅に改良し、タスクの動的な割り振りが可能となった。


ホンダ青山本社・受付前に待機中のASIMO もう1台のASIMOはドリンクサーバー横で待機 充電ステーションに接続されている

コネクタでASIMOに繋がって充電中 充電台は新規に開発された ASIMOにデリバリーしてもらえる机

ASIMOに飲み物を注文するタッチパネル端末 実際に飲み物のトレイを置かれるビジュアルマーカー 床面にはところどころにASIMOが自己位置を確認するためのマーカーが貼られている

掃除機で掃除しても剥がれることはないという 来客者の右胸にはホンダが独自に開発した光通信カード。来客の情報をやりとりする

 会見ではまずはじめに株式会社本田技術研究所 専務取締役川鍋智彦氏が、今回の技術発表の趣旨について述べた。これまで開発してきた受付案内機能の個別機能をベースに、人間が介在しなくても自律的・連続的にサービスを提供する技術の開発に挑戦してきたという。川鍋氏は「今回、ロボットの技術に加えて、知能化技術を加えて目標を達成した。ASIMOが人間と共存し役に立つにはまだ未熟だが、実用化に向かって大きな一歩を踏み出したと思っている。いつかはホンダジェットのようにASIMOも実用化していくことを目指している」と語った。


株式会社本田技術研究所 専務取締役川鍋智彦氏 株式会社本田技術研究所 主任研究員 大津明彦氏

 続けて今回の技術の開発責任者である株式会社本田技術研究所 主任研究員 大津明彦氏が、以下のように今回の技術開発の概要を解説した。

 ホンダは人の役に立つロボット開発を目指しているが、現在のASIMOは基本的にはオペレーターが動かしている。役に立つためにはオペレーターが介在せずに刻々と変化する実環境に対応しなければならない。たとえば自らものをつかんだり、人を避ける能力が必要となる。

 ホンダは現状、接客サービスロボットをASIMOのアプリケーションとしている。そのためには実環境下で自律で動ける能力が必要になる。また接客はタイムリーにサービスを提供し、仕事をこなさなければならない。そのためには複数台のロボットが必要となる判断し、開発にあたった。今回の一連の技術開発によって自律・連続でサービスを提供し続けることが可能になった。

 ASIMOはまずお出迎えを行ない、座席まで案内し、トレイによる飲み物運搬、共同作業でのデリバリーを行なえるようになった。またバッテリ残量が少なくなったら自ら充電することができるようになった。これらの統合によって、連続的なサービスの提供が可能になった。


今回の技術の位置づけ 連続稼動できるシステムを目指した 試験運用概要

システム概要。動的に機能を割り振る スムーズなすれ違いが可能に 【動画】すれ違いの動画

【動画】道を譲る動画 画像認識でトレイを取る 記者会見でのデモの概要

【動画】充電台を離れ、来客を待つ 【動画】来客を迎え、机まで案内 【動画】案内する様子を別角度から

【動画】ASIMOは着席を促し、客は端末で飲み物を注文 【動画】もう1台のASIMOが登場、別のお客を待ちにかかる 【動画】飲み物を待つASIMO

【動画】1台が飲み物を待つ間にもう1台が来客を待つ 【動画】1台がトレイを受け取り、もう1台が別の来客を案内 【動画】トレイを運ぶASIMOの前を別のASIMOが横切る

【動画】トレイを運んでテーブルに置くASIMO。トレイの置き方も少し変わったように見える 【動画】ワゴンをひきながらバックし、回転させて押すASIMO 【動画】ワゴンの向きと進行方向を独立に制御、ワゴン押しもさらにスムーズになった

【動画】ワゴンを旋回させて、壁際を押しながら歩く様子 【動画】ワゴンに載せられたトレイを見つめながら歩き、トレイを自分でつかんでテーブルへデリバリ。もう1つのトレイは別のASIMOが運ぶ

【動画】その様子を別の角度から。手が空いたASIMOがいたら手伝う 【動画】さらに別角度から。ASIMOがワゴンを押して、配膳の様子を終了するまで

【動画】狭い通路で人と出会ってしまったら一歩下がって道を譲る 【動画】人に道を譲るASIMO 【動画】止まっている人とASIMO2台のすれ違い

【動画】別角度から 【動画】人が動く場合のASIMO2台のすれ違い 【動画】動いているASIMOの前に人が出ても大丈夫

【動画】別の角度から回避の様子を通しで 【動画】用が済んだら充電ステーションに戻る。ほとんど位置を修正しないことに注目 【動画】充電の様子。充電器から端子が伸びて、ASIMOと接続する

 ホンダでは今回の試験運用を踏まえて新たなサービスを模索、2010年以降の実用化を目指しているという。なお、試験運用では安全のため、1人、PDAを持った監視員がつく。たとえば出会い頭に人とASIMOが衝突しそうなことがあったら緊急停止させるという。同様の問題は今後も残るが、インフラ整備や運用などでカバーしていく予定だという。

 専務取締役の川鍋智彦氏は「人と交わる実環境で本当に人と共存するためにはまだ問題も出てくるだろう。どうやって問題を回避できるのか探っていきたい」と今回の試験運用の意義について語った。

 またASIMOの開発責任者である株式会社本田技術研究所 上席研究員 広瀬真人氏は、とにかく動き続けるようにすることがミソだったという。一定の環境である研究室の中と違って、受付ロビーのような実環境では、人は動き回るし、外光も朝昼晩と変化する。そのなかで認識精度を出すためにはどうすればいいか。

 例えば認識対象が見えなければ、見えやすい位置まで移動すればいい。カメラを能動的に動かして3次元空間を把握する、いわゆるアクティブビジョンである。絶え間なく変化する実環境でそのような機能を実現するためには、プログラムによって決め決めで動きを作るのではなく、動作をリアルタイムで自律生成させることが必要になる。

 動作を自動生成させると、人間が予想していなかった動きをロボットが行なうことがある。システムが複雑になると、原因がハードウェアにあるのかソフトウェアにあるのかすらも突きとめることはむずかしくなる。それを一つ一つ調べていくのに時間がかかったという。

 なお今回のデモは商談スペースまで案内するところまでだったが、会議室へ案内するところまで既に可能になっているそうだ。今後は、来客の属性や来訪回数に応じた案内を可能にしていくという。

 広瀬氏は記者達の質問に対して「人間型ロボットの価値はどこにあるのか。車輪型ロボットと何が違うのか。それはまだ模索中です。ですが人間型ロボットは何となく見ていて楽しい。それと、何より自分自身がASIMOにデリバリーされると何かが違うんですよ」と語った。


株式会社本田技術研究所 上席研究員 広瀬真人氏 ASIMOによるデリバリーが行なわれていないときの端末画面

URL
  本田技研工業
  http://www.honda.co.jp/
  ニュースリリース
  http://www.honda.co.jp/news/2007/c071211.html
  ヒューマノイドロボット開発の歴史
  http://www.honda.co.jp/ASIMO/newmodel/2007/

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( 森山和道 )
2007/12/12 03:40

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