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グリーンランド・ロボサッカー大会レポート(その1)
~熊本県の遊園地での二足歩行ロボットサッカー


 10月7日、8日の2日間、熊本県荒尾市の遊園地「グリーンランド」で、二足歩行ロボットによるヒューマノイドカップ・ロボサッカー大会が行なわれた。

 これは福岡県の西日本新聞創刊130周年を記念した事業イベント「DREAM DISCOVERY みらい九州こども博」がグリーンランドで開催され(7月21日~11月25日まで)、その中のイベントの一つとして行なわれたものである。

 「みらい九州こども博」は、子供たちに未来への夢を持ってもらおうと、「恐竜・宇宙・ロボット」に関する展示を行なうものだ。ロボットの展示はロボスクエアが担当し、その関係でロボットイベントとしてヒューマノイドカップ・サッカー大会をグリーンランドでも実施した(ただし、ロボサッカー大会の運営はROBO-PROが担当)。

 なお、グリーンランド(旧名・三井グリーンランド)は九州では著名な遊園地で、コースターなどのアトラクションの数は、日本の遊園地の中でも上位に入っている。


グリーンランド入り口。正面に「みらい九州こども博2007・DREAM DISCOVERY」の看板が出ている グリーンランドのシンボルである大観覧車 「みらい九州こども博2007・DREAM DISCOVERY」の会場。中にはティラノサウルスの骨格標本などもあった

会場内部のロボットスペース。基本的にはロボスクエアのロボットを展示していた。真ん中に展示いるロボットは、九州大学ヒューマノイドプロジェクト製作のQUBE 外装を取った状態で展示してあったPINO サッカー大会の会場となったお祭り広場と恐竜コースター

ロボサッカーの看板と恐竜コースター。まず他では見られない光景だ お祭り広場内部

 今回のヒューマノイドカップ・サッカー大会は選抜された4チームが参加し、1チーム3台による総当りリーグ戦を2日に渡って繰り広げた。

 参加したのは、東京のROBO-SPOTチーム、滋賀のカイザーオールスターズ、大阪のROBO-FC、それに地元の九州三銃士の4チーム。

 ROBO-SPOTチームは、いわずと知れた秋葉原のROBO-SPOTから送り込まれたチームで、1月に開催されたヒューマノイドカップ・サッカー大会の優勝チームだ。ただし、その時と違って今回は3人とも近藤科学の社員で固めている。参加ロボットは、くまたろう(ROBO-ONEイーグルの完走ロボット)、L7A3 Thunderbolt(第11回ROBO-ONEで軽量級4位のThunderboltの1つ前の機体)、KHR-1HV TUBASA(KHR-1HVストライカーバージョンのプロトタイプ)の3台で、KHR-1HV HYUGAを控えに持ってきていた。

 カイザーオールスターズは、ROBO-ONE界では知らぬ者がいないマルファミリーのチームで、KingKizerを中心に、サッカー用に調整されたKingKizer・F・Thunder、KingKizer・F・Fireの3台で構成されている。操縦者全員がリアルサッカーの経験者で、7月にロボスクエアのオープニングイベントとして開催された第20回ヒューマノイドカップ・サッカー大会では見事に優勝している。


リハーサルの様子。テント屋根の向こうに恐竜コースターの一部が見える サッカーコートは今までヒューマノイドカップ・サッカーのパンチカーペットではなく、パネルを組み合わせたもの。おそらくROBO-PROのロボットサッカーではこれを使用していくものと思われる

 ROBO-FCは、実はヴイストンのチームであり、第20回ヒューマノイドカップ・サッカー大会ではチーム極として準優勝している。参加ロボットは、ロボッカム、ロボウニージョ、ロボウドとなっているが、実はROBO-CUPで優勝したTeam OsakaのVision4Gのボディを使い(当然、カメラなどはない)、無線操縦できるように改造したものだ(最近発売された無線操縦タイプのVision4Gのプロトタイプと言えるものだが、少し仕様が異なっているらしい)。今回は10月ということもあって、ハロウィーンカボチャの頭を着けてきた。

 九州三銃士は地元九州最強のサッカーチームで、第1回ROBO-ONEサッカーにも参加している(その時の成績は、1回戦で優勝したロボット野郎Aチームと当たり、サッカーでは引き分けたが、バトルで敗退)。

 しかし、「九州の守護神」と異名を取っていたワイルダー01の勝野氏がハワイに戻ってしまい、代わりに九州練習会のリーダーである水井氏が愛機の九共大ー疾風で参加。第12回ROBO-ONE軽量級3位のスーパーディガー、AutomoSandanと共に地元九州での優勝を目指す。

 こうして見ると、他の大会ではまず揃うことのないメンバーが集結してのサッカー大会となった。もし、東京の秋葉原あたりで、このチームによるサッカー大会を開催していたら、かなりのセンセーションを巻き起こしていただろう。


初日のサッカー大会

 サッカー大会は、4チームによる総当りリーグ戦を6試合行ない、勝ち点によってその日の順位を決める(勝ち=3点、引き分け=1点、負け=0点。勝ち点が同じ場合は得失点差により順位を決定)。また2日間の総合成績により、総合順位も決定する。

 試合は前半5分、後半5分の計10分で、前半と後半の間にはバッテリの交換を行なう2分間のハーフタイムをもうけている。


 初日の7日は「雨が降る」との予想だったが、幸いにも雨は降らず、遠距離から来たチームも無事にグリーンランドに到着。

 しかし、九州三銃士チームのスーパーディガーがどことなく怪しい(笑)。実はスーパーディガーのオーナー・ひろのっち氏が都合で1日目は参加できず、代わりに九共大の学生が九共大ーZEROで参加。スーパーディガーの頭をつけ、「スーパーディガー」としてプレイすることになったのだ(選手交代が認められているため、ルール上は全く問題ない)。おそらく覆面レスラーならぬ着面ロボットというのも初めてではないだろうか。


ROBO-FCの3台 試合前に調整をするカイザーオールスターズ ROBO-SPOTチームの事前練習。ROBO-SPOTチームの「くまたろう」は、スターバトンを装備。暇になると回して遊んでいた

本物のスーパーディガー(写真は前日練習の時のもの) 初日に登場したディガーZERO。やっぱり違う(笑)

 第1試合目はROBO-SPOTチームとカイザーオールスターズの、ヒューマノイドカップ優勝経験チーム同士の戦いとなった。ROBO-SPOTはくまたろうが、カイザーオールスターズはKingKizerがキーパーとしてゴールを守った。

 最初にゴールを奪ったのはROBO-SPOTだった。前半、Thunderboltが先制。前半を1-0で終えて、このままの勢いで後半も乗り切るかと思われた。しかし、カイザーオールスターズには強力な武器があった。長距離を飛ばすスローインである。

 カイザーオールスターズは初めてスローインモーションを作ったことで知られ、いわばスローインの元祖である。この大会では、ラインを割ったボールをスローインでもキックインでも入れていいことになっていたが、カイザーオールスターズは当然のようにスローインを多用し、これが強力な武器になった。

 今大会のルールでは、スローイン(キックイン)から直接のゴールは認められていないが、一度でも他のロボットに触れて入ればゴールが認められていた。

 カイザーオールスターズは、スローインからのゴールを2回決めて逆転に成功。そのまま勝負を決めて緒戦をものにした。


記念すべき第1試合のキックオフ。左がROBO-SPOTチーム、右がカイザーオールスターズ 先取点はROBO-SPOTチームのL7A3 Thunderboltによるゴール

くまたろうの懸命なセーブも空しく……なお、開脚による防御は5秒までしか認められていない とにかく強力だったカイザーオールスターズのスローイン

 第2試合は、注目のROBO-FCと九州三銃士との戦い。ROBO-FCは3台とも同じ機体で、遠くから見ると見分けがつかない(実はROBO-FCチームの間でも、見分けがつかなかったとの話が……)。九州三銃士はスピードのない疾風がキーパーに回り、AutomoSandanとスーパーディガーの代わりを務めるZERO(ややこしいのでディガーZEROと呼称する)がFWのポジションに入った。

 先取点は九州三銃士が取り、前半はそのまま1-0。そして後半になるとAutomoSandanが大活躍。AutomoSandanは長距離を投げるスローインモーションを持ち、バトル用に作られただけにプレー中に接触しても当たり負けしない。ROBO-FCのロボット相手に次々と得点を決め、後半ハットトリックを達成。前半の得点と合わせ、4-0で勝利した。


ROBO-FC(左)と九州三銃士(写真は後半戦のキックオフの時のもの) ROBO-FCは3台とも敵陣に上がってきている

AutomoSandanはこの試合でハットトリックを決めた カイザーに負けじと長距離スローインを放つAutomoSandan

 最初の試合が終わったところで、ロボットデモンストレーションが行なわれた。OmniZero.5のキャッチボール、Vision4Gのサッカーデモ、RB2000によるダンスショーなどの盛りだくさんのショーが行なわれた。


キャッチボールをするOmniZero.5 サッカーボールを蹴るVision4G Vision4GとOmniZero.5による徒競走

踊る! RB2000 あっ、何か怪しい物体が(笑) 獅子舞を踊るRB2000

 第3試合は、ROBO-SPOT VS 九州三銃士。実はこのチーム、1月のヒューマノイドカップサッカーで対決しており、その時は引き分けに終わっている。両者ともその決着をつけるべく試合に臨んだ。

 前半、ROBO-SPOTのTUBASAがゴールを決め、前半はROBO-SPOTが1-0で折り返した。しかし、九州三銃士も負けてはいない。

 今回のルールでは、「ボールをロボットごとゴールに押し込んでもよい」ことになっていたが、九州三銃士は後半、「敵のキーパーを使ってボールを押し込む」荒業を使って同点ゴール。ROBO-SPOTも反撃したが、キーパーの疾風のナイスセービングもあって後半は無得点。結局1-1でまたもや引き分けに終わった。

 第4試合はカイザーオールスターズ VS ROBO-FC。前半は0-0で終わったが、カイザーオールスターズがまたもやスローインからのゴールを決め、シュートでも追加点。2-0で勝利し、2連勝で初日の優勝に大きく前進した。


ROBO-SPOT VS 九州三銃士の1場面。今大会では、ボールの回りにロボットが固まってしまう光景がよく見られた まだボールはゴールラインを割っていない。ならば―― ディガーZEROがキーパーを使ってボールを押し込み。Thunderboltがカバーに入ったが押し返せなかった

カイザーオールスターズ VS ROBO-FC。KingKizerがドリブルを開脚セービングで止めている 前に上がったKingKizer・F・Fireに、Thunder(足に稲妻のマークがある)がスローインでボールを送っている

ロボットショーに出てきたVision810。クイズで○×の旗揚げと挨拶をしていた
 ロボットデモの後、初日の優勝を決めるカイザーオールスターズ VS 九州三銃士の第5試合が行なわれた。ここまでカイザーオールスターズは2勝、九州三銃士は1勝1分で、勝利した方が初日の優勝チームとなる。

 前半が始まると、カイザーオールスターズの調子がおかしい。修理のため、コートの外にロボットを出すことが二度ほどあった(プレイ中にロボットが動かなくなった場合は、コートの外に出して修理することが可能だが、1度出てしまうと30秒間コートの中に戻れない)。後で聞いたところ、最大の武器であるスローインのやりすぎで、内部のコードが断線状態になっていたらしい。

 九州三銃士にとってはチャンスだったが、どうしてもカイザーオールスターズを攻めきれない。逆に終了間際にシュートを決められてしまい、前半は1-0でカイザーオールスターズが有利に立った。

 後半に入ってすぐにカイザーオールスターズは押し込みでゴールを決め、点差を広げる。これに対してAutomoSandanが長距離のスローインを放ち、ボールをゴール前に転がす。このボールをディガーZEROが押し込んでゴール。このゴールで九州三銃士側に反撃の雰囲気が盛り上がったが、ここで今度はAutomoSandaがスローインのやりすぎで肩のネジが外れるアクシデントが発生。コート外への離脱を余儀なくされた。

 こうなると後はカイザーオールスターズの独壇場。続けて4ゴールを決め(キーパーのKingKizerまでゴールを決めていた)、6-1で圧勝し、3連勝で初日の優勝を決めた。

 なお、カイザーオールスターズのKingKizer・F・Thunderはこの試合で3得点を決め、ハットトリックを達成した。


初日の優勝が決まる九州三銃士 VS カイザーオールスターズの1戦 Thunderが不調でコートの外に出ている 終了間際に決めたカイザーオールスターズのゴール

AutomoSandanのスローインをディガーZEROが押し込んだ AutomoSandanが外に出ている間に点を取り続けられた九州三銃士 ROBO-ONEでも見せたワンハンドスローを使うKingKizer

 初日最後の試合となった第6試合は、ROBO-SPOTとROBO-FCの戦い。ROBO-SPOTチームが前半に2点を入れてリード。後半、ROBO-FCがPKからゴールを決めたが、2-1でROBO-SPOTチームが勝利し、また得失点差で九州三銃士を抜いて初日の2位を決めた。


前半、ROBO-FCからゴールを奪うThunderbolt ついに初得点を挙げたROBO-FC

 初日(7日)の順位は次の通り

優勝 カイザーオールスターズ 3勝
2位 ROBO-SPOTチーム 1勝1分1敗
3位 九州三銃士 1勝1分1敗
4位 ROBO-FC 3敗


初日の明暗を分けたもの

 初日はカイザーオールスターズが3連勝で優勝した。機体の性能もさることながら、やはり「スローイン」という強力な武器があったことが大きい。ロボットサッカーではなかなか狙った場所にキックでボールを転がすことは難しい。それに対して、スローインはある程度狙った場所に上空からボールを落とすことができる。これを多用できたことがカイザーの強みだった。

 その点でいうと、やはり長距離スローインを持っていた九州三銃士のAutomoSandanが、優勝のかかった第5試合の後半で故障により離脱したダメージは大きかった。

 こうしてみると、「スローインは強力な武器だが、多用するとロボットの故障を招いてしまう諸刃の剣」ということができるのかもしれない。


初日の表彰式 三連勝で文句なしの優勝を勝ち取ったカイザーオールスターズ 初日の結果ボード

 思ったほど調子のよくなかったROBO-FCだが、やはり最大の原因は「経験の不足」にあるのではないだろうか。

 ROBO-FCと他のチームの最大の違いは、バトルを経験した機体でないことだろう(厳密に言うと、カイザーオールスターズの2台と、ROBO-SPOTのTUBASAはサッカー専用機体だが、元となった機体はバトルを行なうことが前提となっている)。

 ROBO-FCの機体は足踏みしながら移動するが、これだとどうしても接触プレイとなると自分たちの方が倒れてしまう。これに対してバトルでは倒れた方が負けにつながるわけで、バトル経験機体は倒れないような設計・改造がなされている。この差がどうしても出てしまったようである。

 たとえば九州三銃士は、前回のヒューマノイドカップ・サッカー大会で「キーパーのワイルダーがボールを止めながら、そのままワイルダーごとゴールに押し込まれてしまった」経験から、「当たり負けしないこと」を一つの目標としていた。そのためにルールで許される限りの大きな足裏を使用し、また足裏に人工皮革を使用してグリップ力を上げる試みもやっている。

 「無線操縦によるロボットサッカーの経験不足」もあったかもしれない。たとえば他の3チームではキーパーを敵陣に上げることはまずなかったが(ほとんど勝利を手中にしていたKingKizerは例外)、ROBO-FCのキーパーは歩行能力が高いため、つい前に出て逆にゴールを決められることがあった。実はロボットサッカーの場合、キーパーを前に出してもそれほど得点力は上がらない。むしろ転倒した場合、守備が危機に陥るだけでなく、攻撃に際しても倒れた機体が邪魔になる。

 しかし、最大の原因は「操縦者のなじんだ機体ではなかった」ことではないだろうか。実は初日にディガーZEROが参加した理由はそこにある。当初はスーパーディガーそのものを九共大の学生が操縦する案もあったようだが、「使い慣れた自分の機体でないと、決してうまく操縦できない」との理由でディガーZEROになったのである。ROBO-FCの操縦者はコントローラーのモーション割付になれていなかったようで、時々間違ったモーションを発動していた。

 これらの理由が総合して、ROBO-FCの初日の成績不振につながったのだろう。


URL
  ロボスクエア
  http://www.robosquare.org/
  グリーンランド
  http://www.greenland.co.jp/index2.html


( 大林憲司 )
2007/10/15 18:39

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