8月30日、ロボットベンチャーのスピーシーズ株式会社は、同社が発売している小型2足歩行ロボット「SPC-101(MI・RAI-RT)」の新型モデル「SPC-101C」を発表した。新たにカメラ機能を頭部に搭載し、人間の顔を検出する機能がついた。価格は336,000円(税込み)、販売目標数量は1,000台。9月1日から受注開始する。主な対象は一般ユーザーではなく、ソフトウェア開発者。
仕様は、頭部に搭載された27万画素のカメラ以外は、2006年4月に発表されたモデルと特に変わっていない。身長33cm、重量1.5kg。関節自由度は22。手と胸にLEDを装備している。電源はリチウムポリマー(7.4V 780mA)。CPUは双葉電子工業のRPU-50(SH3 133MHz RAM : 64MB、FLASH : 64MB、miniSDスロット、RS485、USB、シリアル、オーディオ)。サーボは双葉電子工業のRS301CRが使われている。OSは NetBSDをベースにしたSpeecysOS Rev. 2.0。
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「SPC-101C」。外見は特に変更なし
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頭部にカメラがついた
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内蔵されたカメラを真上から見たところ
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スピーシーズ株式会社 代表取締役・春日知昭氏
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スピーシーズ株式会社の代表取締役 春日知昭氏は、「ITとロボットは繋がる」と述べた。メカ屋の多いロボット開発者と、IT技術者、ソフトウェア開発者を結び付け、ロボットの用途を広げていきたいという。
これまでスピーシーズは研究開発用のロボットをおよそ200台、大学そのほか向けに納入してきた。だがこれからは、イベント向けロボットタレント派遣やソフトウェアエンジニア向け開発プラットフォームの提供など、ロボットにかかわるサービス事業を展開していくという。
春日氏によれば、多くのロボットがどちらかというと「ハードウェア、目的指向」であるのに対し、スピーシーズのロボットは、「ソフトウェア/アプリケーション指向」だという。ソフトウェア開発者たちにロボットを触ってもらう敷居を下げるために、今回から、アプリケーション開発用API「OpenRoads」、PCアプリケーション「101-VCE」のソースコードを公開した。無料で利用できる。ソースコードは自由に改変することも、再配布も可能だ。これにより、ロボットのインターネット利用を進めていくと述べた。
SPC-101Cは、音声認識によるコマンド操作、顔検出などカメラ機能を使った画像処理、インターネット経由でのコマンド操作や画像モニタリングができるようになった。特にカメラをつけたことで、「ソフトウェア開発者たちの評判が非常によくなって私も驚いた」と春日氏は語った。
またアプリケーション開発が容易であるという点を活かして、同社では今後、ロボットのイベントを積極的に行なっていきたいという。春日氏は「ロボットが主役ではなく、脇役としてサポートするのが本当のロボットイベント」だと考えていると述べ、ロボットが動いている様子を楽しんでもらうのではなく、商品や店舗の紹介や会場案内役としてロボットを使うことを狙う。
イベント実施の費用や内容については、たとえば1分間のダンスだと製作費用は20万円、といった基準はあるものの、基本的にはケースバイケースだとしている。
具体例としては、9月4日~15日の日程で、原宿にあるKDDIデザイニングスタジオにて、携帯電話との連携によるロボットイベントが行なわれる。携帯電話を通じた会話や携帯電話の説明のほか、ダンスやじゃんけんなどのデモを行なう予定だという。
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開発用のAPIをオープンにすることでソフトウェア開発者に使ってもらいたいという
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ロボットタレント派遣事業を検討
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KDDIデザイニングスタジオでのイベントイメージ
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ロボットを使ったデモでは音声認識や画像認識、そしてインターネット上の別のソフトウェアエージェントとの接続が行なわれた。
デモで行なわれた音声認識は自由文認識ではなく予め記憶させておいた語句を認識させる方式。オープンソースのソフトウェアを使って開発したもので、音声認識の辞書や認識処理そのものはPCで行ない、コマンドに変換してロボットに送信して動かしている。
カメラ機能は、顔認識のほか、顔の表情認識、動体検知の様子がデモされた。こちらも音声認識同様、オープンソースのソフトウェアを用いて開発したもの。開発担当のスピーシーズ品質保証部部長の戸倉幸治氏は「カメラは、光学センサーとしての使い道が面白い」と語った。
また、IP電話を用いて、インターネット経由での音声認識によるコマンド送信の様子もデモされた。デモの各ソフトウェアは同社サイトからダウンロードできるようにするという。
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顔を認識する様子
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顔の各パーツを別々に認識することで表情の認識も可能
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表情認識の様子
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画像の差分を用いた動体認識
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【動画】IP電話を使うことで遠隔からも音声認識でロボットを操作できる
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C2cube株式会社・執行役員兼チーフエバンジェリスト 谷口佳久氏
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また、会見にはC2cube株式会社・執行役員兼チーフエバンジェリストの谷口佳久氏も出席。同社は言語解析のエンジンを使ったビジネスを行なっている会社。スピーシーズと近いビジョンを持っていることから、コラボレーションすることになったという。
谷口氏は、「これから『インターフェイス革命』が起こるのではないか。101Cは体験という意味でのインターフェイスを持っている。これからはこのような形のコンピュータがどんどん出てきて、インターネットの世界も広がってくる」と語った。たとえば「セカンドライフ」のような空間では、GUIだけではなく、文字会話をベースにした「ダイアログ・インターフェイス」が必要になるのではないかと考えているという。
デモでは、セカンドライフ内に存在するC2cubeのチャットロボット「バズロボ」が、スピーシーズのロボット101Cと接続。バズロボからの「祝辞」を101Cが音声とモーションで出力した。
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セカンドライフ内の「バズロボ」。横の女性アバターはマネージャー
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「バズロボ」と接続する「101C」
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【動画】バズロボの祝辞を読み上げる「101C」
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スピーシーズの春日代表取締役は「将来の目標はコンシューマー」としながらも、「いきなりコンシューマーというよりは、道筋をつけていくことが重要。パソコンと同様、最初は開発者やマニアックな方から普及していくと思っている。101Cはあくまで開発者用のプラットフォーム。次の段階はコンシューマー向けを考えているが、価格も10万円を切る必要があると思う。そのようなハードウェアが出来たときのためにもソフトウェアを開発してもらいたい」と述べた。
■URL
スピーシーズ株式会社
http://www.speecys.com/
C2cube株式会社
http://www.c2cube.com/
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( 森山和道 )
2007/08/30 19:34
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