2007年5月3日~5日、大阪市・インテックス大阪2号館にて、「ロボカップ ジャパンオープン2007 大阪」が開催された。主催はロボカップジャパンオープン2007大阪開催委員会、共催が社団法人 日本ロボット学会、社団法人 人工知能学会、社団法人 計測自動制御学会システムインテグレーション部門。
ロボカップは、もともと人工知能とロボット工学の融合を目指し、その題材として「自律移動するロボットによるサッカー」が日本の研究者によって提唱されたのが始まりだ。1997年に始まったロボカップは、「2050年までに人間のサッカーワールドカップ優勝チームと対戦し、勝利する」という目標を掲げている【ロボカップサッカー】を中心として、地震などの大規模災害にロボカップで培われた技術を応用しようという【ロボカップレスキュー】や、次世代でロボット技術を背負う子供たちが競う場である【ロボカップジュニア】などの部門が設けられた、競技会形式で毎年世界大会が行なわれている。(ちなみに、ワールドカップと同じ年には、ワールドカップと同じ国で行なうのが通例らしい)
ジャパンオープンは、その世界大会に先駆けて、日本国内で行なわれる前哨戦である。今回は2004年のジャパンオープン、2005年の世界大会に続いてインテックス大阪が3回目の開催地となった。昨年ロボカップ国際委員会本部事務局が大阪市に誘致されたこともあり、大阪はロボカップにとって縁深い土地となったといえるだろう。
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会場のインテックス大阪。併催されていた別イベントから流れてくる観客も多かった
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会場入り口の看板と配置図。マスコットの「明日丸くん」は2005年世界大会から引き続き活躍
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物販や展示コーナーも充実。試乗こそできないものの、日本SGIがセグウェイの実機を展示していた
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ヴイストンのブースでは過去のVisiONが展示されていた
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来年のジャパンオープンが開催される沼津市は、11月に行なわれる技能五輪国際大会の広報を行なっていた
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● ヒューマノイドリーグ
ロボカップの「人間のワールドカップ優勝チームとサッカーをする」という最終目標に一番近いリーグが、このヒューマノイドリーグである。だからこそ、世界大会ではこの部門で総合優勝を果たしたチームにのみ、ベストヒューマノイド賞として「ルイ・ヴィトンカップ」が与えられている。
今回のジャパンオープンで最も注目を浴びたと言っていいのは、このリーグに参戦した「Team OSAKA」だろう。その名の通り、地元・大阪の産学連携ドリームチームということはもちろんだが、その「ルイ・ヴィトンカップ」を3年連続で獲得し、今年の世界大会での4連覇も期待されているチームだけに、会場の注目度も段違い。もともと観戦する人は多く、ひな壇になった観客席が設けられている唯一のリーグだったが、Team OSAKAの出番になると、立ち見が出るほどの盛況だった。
ヒューマノイドリーグはロボットの大きさによって2部門に分けられており、身長300~600mmのロボットによるキッズサイズと、身長800~1,600mmのロボットによるティーンサイズがある。今回はジャパンオープンで初めてティーンサイズの競技が行なわれた。
ティーンサイズの参加チームは「Team OSAKA」と「HAJIME TEAM」。実は「HAJIME TEAM」も大阪が地元なので、今回の対決はある意味“大阪対決”でもある。両チームともキッズサイズで実績を残しており、初のティーンサイズ対決の盛り上がりが期待された。
まず行なわれたのはティーンの「テクニカルチャレンジ」。競技は、ランダムに置かれた黒いポールを回避してゴールまで歩くタイムを競う“障害物回避”と、3本立てたポールの間をボールを通しながら自分も通過し、最後にゴールにボールを入れるまでのタイムを競う“ドリブル”、4mを歩くタイムを競う“徒競走”の3つ。
“障害物回避”ではTeam OSAKAが25秒48のタイムで快勝。“ドリブル”はTeam OSAKAのみがチャレンジし、ゴールまであと一歩及ばないながらも8ポイントを獲得し、Teen部門の優勝を決めた。
しかしHAJIME TEAMは5本勝負の“徒競走”で、初回の13秒69というベストタイムからスタートして3連勝。各回でTeam OSAKAに2秒以上の差をつけて一矢を報いた。
大会後半には1対1のPK戦が行なわれた。こちらはTeam OSAKAの前田氏(Vstone810製作者)の「ロボカップの中で、私的には一番心臓によくない試合でした」というコメントや、点が入ったときのチームの盛り上がりがよくあらわしているように、どちらが勝ってもおかしくない、非常に熱い戦いだった。
小さいロボットに比べてハードウェアの能力など難しい面もたくさんあるが、ロボカップの“最終目標”に最も近い部門として、今後のレベルアップが期待される。
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【動画】Team OSAKA「Vstone810」の障害物回避。報道発表のときにも鳴っていた“足音”は健在
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【動画】Vstone810の“ドリブル”。最初のキックがミスキックになると、リトライしていた。あとはゴールするだけだったのだが、惜しい
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徒競走ではHAJIME TEAMの「はじめロボット25号機」が完全勝利
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報道発表のときになかったVstone810の“耳”は、重心位置の規定に合わせるためにバッテリーが収納されていたようだ
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DCモーターにハーモニックドライブを組み合わせたアクチュエーターを持つ、はじめロボット25号機
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キッズサイズには6チームがエントリー。昨年のジャパンオープンと同じチーム数だが、今年は「The Orient(東洋大学 ロボット工学研究室)」や「demura.net(金沢工業大学ロボティクス学科 出村研究室)」、「CIT Brain & Hajime(千葉工業大学&(株)ブレインズ&(有)はじめ研究所)」といった、他リーグで実績と経験のあるチームが参入してきた。
それでも強かったのはTeam OSAKA。初日に行なわれたテクニカルチャレンジでは、“障害物回避”で17秒96のトップを取ると、全チームの中で唯一トライした“ドリブル”でも見事にゴール。他チームは昨年に続いてドイツから遠征してきた「Darmstadt Dribblers(Technische Universitat Darmstadt)」が障害物回避で27秒28の記録を残しただけで、ダントツの勝利となった(ちなみに、2機で行なう“パス”競技はTeam OSAKA含め4チームがトライしたが、全チーム成功なしだった)。
キッズサイズは大会2日目からはサッカーの「2on2」競技に入り、2日目の予選では2リーグに分かれた総当たり戦を行なった。AグループではTeam OSAKAがThe Orientと「Jeap(JST ERATO 浅田プロジェクト)」に2連勝して1位通過。2位通過は両チームが引き分けたものの、得失点差でJeapが決勝トーナメントに進む。BグループはCIT Brain & Hajimeが2勝で1位通過。2位はdemura.netを直接対決で9-1と降したDarmstadt Dribblersとなった。
準決勝はTeam OSAKA対Darmstadt Dribblers。昨年も参加していたDarmstadt Dribblersは4点を取ってTeam OSAKAを苦しめるものの、9失点で敗退。もう一試合はCIT Brain & HajimeがJeapに6-0の完封勝ちに。
大会の最終日、ヒューマノイドリーグの最終試合として行なわれた、Team OSAKAとCIT Brain & Hajimeの決勝戦は、今大会のラストを飾るのにふさわしい熱戦だった。調整が間に合わず、キックオフ時点で1機しかフィールドに居なかったTeam OSAKAは、転倒から調子を崩しその1機もフィールド外へ。CIT Brain & Hajimeは無人のゴールに先制シュートを打ち込む。その後加点し、3-1とTeam OSAKAが引き離すかと思いきや、CIT Brain & Hajimeが反撃の2点目を決め、1点差で前半を終了した。
はじめロボットをハードウェアに使ったCIT Brain & Hajimeは、ボールを見つけるまでに時間がかかるものの、見つけてから近づく動きは非常に速い。一方、Team OSAKAは全方位カメラでボールをすばやく見つけるものの、スピードで多少劣るため、結果的に両チームがほとんど同時にボールに到達し、同じタイミングでの蹴り合いになってしまうのだ。
後半開始後、Team OSAKAが1点を入れ、リードを広げにかかるが、CIT Brain & Hajimeは相手のシュートが少し遅れた自分の足に当たり、そのままTeam OSAKA側のゴールに吸い込まれ、差を縮める。そして、次のキックオフからこぼれたボールにすばやく寄せると、ロングシュートで押し込んで、ついに4-4の同点に追いつくのだ。
そのあとでTeam OSAKAが再び2点を奪い、結局そのまま6-4でTeam OSAKAが勝利したが、試合の展開はいつ得点が入ってもおかしくないような、競ったものだった。
Team OSAKA監督の大和信夫氏は「世界大会に向けていい課題ができたので、それを詰めて、しっかりした形で4連覇したい」と抱負を述べ、惜しくも敗れたCIT Brain & Hajimeの林原靖男氏は「初参戦でどこまでいけるかと思っていたんですが、ファイナルまでいけて満足しています」と笑顔だった。
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【動画】Darmstadt Dribblersの“障害物回避”。同チームは全方位カメラを使わず、頭を動かして「人間らしい」視界の使い方をする
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【動画】Team OSAKA「VisiON 4G」 のドリブル。後ろのほうで機体の動きを見ているスタッフの表情も面白い
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お互いに“はじめロボット”を使用していたDarmstadt Dribblers対CIT Brain & Hajimeの対戦。同じ形でも動きは違う
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昨年に引き続き、“VisiON TRYZ”をプラットフォームにしていたJeap。モヒカン頭は重心位置の規定に対応するために付けたもの
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オリジナル機とマノイAT01ベースのキーパーロボットで参戦したdemura.net
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観客の多さは3日間通してピカイチ。それを見越してこのリーグだけはひな壇が用意されていた(表彰式などもここで行なわれる)
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【動画】Team OSAKA対CIT Brain & Hajime前半
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【動画】Team OSAKA対CIT Brain & Hajime後半
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● 小型ロボットリーグ
直径18cm、高さ15cmの自律ロボット5台1チームで競技が行なわれる小型リーグ。第1回ロボカップから登場した、最も歴史のあるリーグの一つである。今年は6チームが参加し、総当りの予選リーグを行なったうえで上位4チームよる決勝トーナメントを行なった。
昨年圧倒的な強さでジャパンオープン優勝を果たした「RoboDragons」(愛知県立大学)は予選の開幕戦に登場し、社会人チームの「RISING SUN」(東亜ホールディングズ(株))に10-0のコールドゲームで圧勝。その後も「ODENS」(大阪電気通信大学)に5-0、「Owaribito-CU」(中部大学)に3-0で勝利して予選1日目を3勝無失点で終え、今年も健在であることを見せ付けた。
しかし、予選初日はもう1チームが3勝無失点で終えていた。そのチームとは、昨年のジャパンオープンでは3位を獲得した「KIKS」(豊田工業高等専門学校)である。
緒戦で「ODENS」に2-0で勝利すると、「fWing207」(電気通信大学)にも5-0、「RISING SUN」にも6-0で勝利したのである。
快進撃の原動力となったのは、自作ソレノイドのパワーを活かした秒速8mという高速シュート。小型リーグのロボットたちは既製品を組み合わせて作られていることが多いのだが、KIKSは高専のチームだけに自分たちで部品をイチから作ることかできるのである。
予選2日目に入っても両チームの快進撃は止まらず、4勝0敗、失点無しのチーム同士がリーグ1位をかけて戦う直接対決に注目が集まった。
さすがに無失点同士の対戦はお互いに相手のパスを通さない堅い守りが目立ち、何度かゴール近くまでボールが運ばれるものの、決定打にならず。解説からも「これは1点勝負になりますね」と言うコメントが出る緊張感のある試合展開を見せる。
このままドローになればPKか……? と思っていたところで、KIKSのスローインがこぼれ、RoboDragonsが攻め上がる。KIKSが対応するために下がったところで、RoboDragonsはハーフウェーラインの手前からロングシュート! これが見事に決まり、RoboDragonsが先制した。試合はそのまま終了し、無敗同士の直接対決は1-0でRoboDragonsとなった。
両チームは最終日の準決勝も無失点で勝ち、再度決勝の舞台で相見えた。また好ゲームが期待され、観客もたくさん集まったのだが、それがあだになったか、KIKSに無線トラブルが起きた。ゴールキーパーのはずのロボットがゴールを捨ててフィールドに出てしまうなど、完全に混乱した状況になってしまったのだ。携帯電話のBluetooth機能が影響しているということで、その場で観客に「電源を切ってください」というアナウンスを行なったり、繰り返しロボットのリセットをかけたりもしたのだが、結局最後まで完全に回復せず、問題なく動いたRoboDragonsが6-0で勝利。連覇を決めた。
「初期の頃はあったんですが、最近はこういったトラブルはなかったですね」と小型リーグ関係者がコメントしてくれたが、最近は携帯電話やゲーム機にも無線が付いているご時世。悪意がなくても観客が持っている機器の電波でこういったこともおこりえるわけで、観客を規制できない以上、チーム側が対策していかなければならないのだろう。世界大会には2チームとも出場するということなので、ぜひ世界の舞台で三たび素晴らしい試合ができることを祈りたい。
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フィールドの上に組まれたやぐらに取り付けられたカメラは、ロボットたちの“眼”
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【動画】カメラから得られた情報はピットのPCに渡る。PCはロボットたちの“脳”として判断し、ロボットたちに無線で動きの指令を送る
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【動画】予選リーグでのRoboDragons対KIKS。RoboDragonsは昨年に比べて車高を上げたぶん、キックにわずかなズレが生まれたためにセットプレーのミスも目立つ
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【動画】決勝のRoboDragons対KIKS。無線のトラブルでPCからの指令がKIKSロボットに伝わらず、混乱状態になってしまう機体も
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● 四足ロボットリーグ
無改造のAIBOをプラットフォームとして、純粋にプログラミング技術を競おうというのがこの四足ロボットリーグ。見た目からして他のリーグのロボットよりもわかりやすくカワイイことや、入り口から一番近いリーグだったこともあってか、常に人だかりが多く、盛り上がっていた。
出場11チームがそれぞれ2試合ずつ予選を行ない、その結果によって振り分けられた全チームによる決勝トーナメントを行なう方式。予選トップで抜けたのは2勝、得失点差+10の「Team ARAIBO」(東京大学&中央大学)で、同じ勝ち点で「asura-fit」(福岡工業大学)や「asura-kit」(九州工業大学)、「FC Twaves」(東海大学&玉川大学)が続く。
決勝トーナメントもこの上位を中心に動くと思われたが、1敗1分けで8位通過だった「BabyTigers DASH」(大阪大学&大阪市立大学&龍谷大学&ATR)が予選から一転いい動きを見せ、1回戦でSA+ITOLAB(帝京科学大学&山梨学院大学)を2-0で破ると、予選トップ通過の「Team ARAIBO」との2回戦では、なんと2-2の引き分け。PK戦に持ち込んだのだ。動画にも入っているが、四足リーグの実況&解説によれば、「Team ARAIBO」はここ2年国内で試合に負けていないのに、優勝できていないのは、PKで負けてしまうからだという。
5本勝負で行なわれたPKは、「Team ARAIBO」が1本目でセーブし、一方の攻撃ではしっかりゴール。結局これが決勝ゴールとなって、ベスト4に進出した。
しかしこれで体力を使ってしまったか、「Team ARAIBO」は「asura-fit」に敗退。世界大会で合同チームを組む「asura-fit」と「asura-kit」の決勝は1-2で「asura-kit」の勝利。昨年地元九州開催ながら準決勝で敗れた借りを返した。
四足ロボットリーグは、AIBOの生産中止とサポート終了のアナウンスを受けて、ジャパンオープンでのリーグ開催は今回で最後になる予定だ。世界大会も今年のアトランタで終了する予定だが、同時に来年、“同一プラットフォームでプログラミング技術を競う”というコンセプトに合致するハード候補が揃い、コンペを行なうようだ。
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ほぼ全チームがAIBOのERS-7を使用しているため、赤と青のシールをボディに貼って区別している
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【動画】「Team ARAIBO」対「BabyTigers DASH」後半。熱い試合にチームの盛り上がりも最高潮
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【動画】「Team ARAIBO」対「BabyTigers DASH」PK戦。「Team ARAIBO」のキーパーの守備ポーズは何だか犬っぽい
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コートの脇ではAIBOオーナーたちの“交流会”が自然発生していた。競技をしているAIBOたちよりもだいぶおっとりした動きだった
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● 中型ロボットリーグ
縦横50cm以下、高さ80cm以下のロボット4機~6機で戦うリーグで、7チームによる総当りのリーグ戦が行なわれていた。ロボットはすべて完全自律で、審判の指示(試合の開始・停止、どちらボールのキックかなど)以外はロボットが判断して動いている。もちろんカメラもロボットに搭載したものだけだ。
今年はフィールドの大きさが18m×12mに拡大された。昨年までは12m×8mだったので、ほとんど倍になったと考えていいだろう。
この広さにはどのチームも苦労していたようで、あるチームはポールが2つ見えることを大前提に処理していたものが、ポールが遠くなってしまったために見分けられず、ロボットが「自分がどこにいるかわからない」状態になってしまったという。遠目にいるロボットがボールを見失ってしまい、近くの2、3機しか動いていないような状態のときも見受けられた。
そんな中、圧倒的な強さを見せたのがEIGEN Keio Univ.(慶應義塾大学)。初日に昨年のジャパンオープンで後塵を拝したHibikino-Musashi(九州工業大学&北九州市立大学&(財)北九州産業学術推進機構)を2-0で破ると、あとは1点も失わずに6戦全勝の完全勝利を果たした。
Hibikino-Musashiはその後は全勝、失点もEIGEN Keio Univ.戦の2点だけという強さだったことを考えると、同チームの強さがわかるだろう。伝統的に日本チームが強いリーグだが、昨年の世界大会は久しぶりに王座を明け渡した。王座返り咲きを目指すEIGEN Keio Univ.を筆頭に、日本勢の巻き返しに期待したい。
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コートの大きさはついにバレーボールコートよりも広くなった。国際規格のフットサルコートと比べると約1/2くらいだ
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【動画】WIN KIT対EIGEN Keio Univ.
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● シミュレーションリーグ
実機を使う他リーグと違い、あくまで人工知能の戦略で勝負しようというのがシミュレーションリーグ。ゲーム画面のようにも見えるが、ボールがコンピューターの都合で移動したりせず、プロのサッカーコーチに見せても感心されるような高度な戦術が駆使されているのが、このリーグなのだ。
大まかに2Dと3Dに分かれているが、今年は3Dリーグがソフト変更の年だったと言うことで、開発したエージェントの動きをプレゼンする程度にとどまっていた。来年以降のダイナミックな試合に期待したい。
2Dリーグは昨年に続いてHERIOS(産業技術総合研究所)が連覇。ちなみに2位になったのは、予選同リーグで0-1という惜しい敗戦を喫していたOPU_hana_2Dで、決勝戦はスコアレスドローの末のPKで決着が付いた。
今年は何度か解説や実況に出会うことができたが、それにも増してありがたかったのはホワイトボードに書かれた「シミュレーションリーグの解説」。これを見てから画面を見れば、“今何が起こっているのか”が一目瞭然になっていた。筆者は2Dのプログラムに3Dのイメージをかぶせたもの(動画参照)のほうがサッカーっぽいと思っていたのだが、この解説を読んだ後では、むしろ2Dの画面のほうがわかりやすかった。
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スクリーンの手前に設置されたホワイトボードにはルール解説や画面の見方が書かれており、非常に参考になった
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【動画】現在プレー中のチームの人に、試合を見ながらプレーの意図などを解説をしてもらえるのは、PCにお任せのシミュレーションリーグならでは
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昨年は展示のみだったシチズンの「Eco-Be!」を使用した、マイクロロボットサブリーグ(フィジカル・ビジュアライゼイション・リーグ)のデモも行なわれた
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「Eco-Be!」の体験操縦を行なうと、実物大よりちょっと小さいペーパークラフトが記念品でもらえた
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● ロボカップレスキュー
自律型ロボットが集まるロボカップで、唯一「操縦する」ことが許されている、レスキューロボットリーグ。
他の競技のようなゲーム性はなく、非常にシビアな設定になっているのが特徴だ。例えば、競技開始時にロボットをスタートラインに置くことはできず、「ロボットやオペレーションシステムなどの荷物を積んだトラックで現場に着いた」という設定で15分の競技時間がスタートする。機材をオペレーションルーム(フィールドは仕切られていて見えない)に設置し、ソフトを立ち上げ、フィールド内をロボットで探索して被災者を発見、その位置と状態をマップにしてレスキュー隊に渡すと、競技終了となる。
今年は自律あり、四足ありと、挑戦的なコンセプトのロボットが目立った。シビアなぶん観客は盛り上がりどころが難しいが、逐一状況を伝える解説が行なわれたり、スクリーンを使った説明などがあるおかげで、足を止める人も多かった。
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【動画】無限軌道が主流のレスキューロボット界に突然現れた4足歩行ロボット「C-Rescue」(中京大学)。最後のほうはその操作画面。揺れが激しい
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自律ロボットを投入して予選をトップで通過したSHINOBI(電気通信大学松野研究室、稲見研究室&日本SGI)
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優勝したNutch-R(長岡技術科学大学 木村研究室)。4本のフリッパーで、段差でも安定した動きができる
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参加ロボットの簡単なプロフィールがわかるチラシが置かれていた。これはとてもありがたいサービスだった
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制限時間内に作られたマップ(右)と、正解のマップ(左)。マップが自動で作られるようになれば、さらにスピードは上がるのかも
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● ロボカップジュニア
大学が中心となった研究色の強いロボカップとは異なり、小学生から気軽に参加できる競技会として企画されているのが、ロボカップジュニアである。
最も参加者が多い“サッカーチャレンジ”では市販のキットを使うこともできるので、気軽に参加できるそうだが、「お父さんが作ったものを子供が持ってきた」なんてことがないように、参加するメンバー自身がどうやって動くのかや、どんなことを工夫したのかといった質問に答えられなければならないというあたりは、「教育」を念頭においているからだろう。
フィールドは複数用意され、多くの子供(とその親御さん)が応援と観戦に余念がないので、ロボカップ会場の中でもひときわ人口密度が高いリーグでもある。競技自体はロボカップの他の競技にならい、すべて自律動作するロボットなので、子供向けとはいえある程度高いレベルが要求されている。
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“チームプレゼンテーション”と呼ばれる、チームを紹介したポスター。これを貼り出すことも競技のうち。さながら夏休みの自由研究である
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【動画】サッカーチャレンジ・プライマリ(15歳未満)決勝、「チーム高浜」対「チーム信長」。ロボットはボールから出る赤外線を見ながら競技している(撮影:三月兎)
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【動画】ダンスチャレンジ・プライマリ優勝の「Makin' The History!」。ロボットの製作から作詞作曲、振り付けまで一人で作ったらしい(撮影:三月兎)
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【動画】テープで引かれたコースをたどり、被災者を早く発見しようというミッションを持つレスキューチャレンジ。時々途切れている部分もある(撮影:三月兎)
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● 昨年よりもずっと「見やすい」大会
観客視点から見て、昨年に比べて大きくプラスだったのは、各リーグが積極的に解説を行なっていたことだ。3日間、ふらっと立ち寄ってみても、「今何をやっているかわからない」とか「どこが見所なのかわからない」という状態になることはなかったといっていい(あまりに数が多くて把握できないジュニアは例外)。たとえ試合が止まっていたとしても、対戦しているチームがどんなチームなのかの紹介や、なぜ止まっているかの解説があるので、どのブースでも興味を引かれるのだ。
すべてのリーグがフラットに配置されていたので、各リーグ間を移動しやすかったのも良かった。
2007年のロボカップ世界大会は、7月1日~7月10日まで、米国・アトランタで開催される。今回ジャパンオープンに参加したチームの中から多くのチームが参加するので、その結果を楽しみにしたい。
■URL
ロボカップ ジャパンオープン2007 大阪
http://www.robocup-japanopen.org/index.html
ロボカップ日本委員会公式ホームページ
http://www.robocup.or.jp/index.html
ロボカップ(英文)
http://www.robocup.org/
【2006年5月11日】ロボカップ ジャパンオープン2006開催
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0511/robocup.htm
■ 関連記事
・ TeamOSAKA、ロボカップ4連覇へ向けた新型機を発表(2007/04/27)
( 梓みきお )
2007/05/24 00:07
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