5月に大阪でロボカップ・ジャパンオープン大会が開催されるが、あわせて子供たちの参加するロボカップジュニアチャレンジも開催される。その九州ノード大会(九州地区予選)が、4月7日、8日の両日、福岡市博多区のロボスクエアで行なわれた。
7日はレスキューとダンス、8日はサッカーの大会が行なわれた。
● 難しかったレスキュー
レスキュージュニアチャレンジは、ロボカップ・レスキューのジュニア版だ。さすがにロボカップレスキューのように被災者に見立てた人形を救出してくるのは大変なので、黒いラインに従ってロボットを走らせ、途中で被災者を記号化したテープを発見できるかどうかを競うものだ。コースのどこまで走破できたか、被災者を発見できたか(被災者のテープの上で音と光で合図すると、被災者発見となる)などがポイントとして計算され、最終的にはポイントで順位が決まる。
今回のノード大会では、プライマリ部門(14才以下)に5台、セカンダリ部門(19才以下)に2台がエントリーした。しかし、なかなか難度の高い競技のようで、ラインから外れることを繰り返してタイムアウトする機体や、坂を登ることができずに途中リタイヤした機体が続出。
その中で唯一ゴールまでたどりついたのはセカンダリ部門の「あめふらし☆」だった。レスキュージュニアチャレンジでは、コースの場所によって明るさを変えている(ライントレースや被災者の発見を難しくするため)が、あめふらし☆はセンサーの感度を変えるのではなく、「豆電球で照らして照度を一定にする」方式を使用し、ラインをクリアしていく。
長い坂もクローラーを使って登りきり、最後の難関のブロックも「タッチセンサーに接触したら、何回か曲がるプログラミング」でクリアし、唯一の完走機体となった。
なお、あめふらし☆の柿原さんは、去年のロボカップジュニアチャレンジでは、ダンス部門でエントリーし、世界大会に出場している。
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レスキューチャレンジのコース
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ロボットは黒いラインをトレースして進む。人型のテープが「被災者」で、緑色の「被災者」の方が反射率が低いので検出しにくい
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後一歩のところで坂を登りきれず、逆走を始めたセカンダリ部門のNAGAMURA
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銀色の「被災者」を発見し、角のライトで合図するあめふらし☆。ライン上を豆電球で照らしている
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クローラーで坂を登るあめふらし☆
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坂を登りきったところ
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ラインを塞ぐように置かれたブロックを回避していく
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あめふらし☆の製作者の柿原さん。触角があるので、あめふらし☆らしい
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● 人とロボットがパフォーマンスをするダンス
ダンスチャレンジはジュニアチャレンジだけにある競技で、ロボットと共にチームメンバーがパフォーマンスを行なうものだ。「ロボットを通しての教育」という意味合いの強い競技で、演技だけでなく事前に行なわれるインタビューや、道具の設営から片づけまでが採点の対象となる。
今大会には、プライマリに3チーム、セカンダリに2チームが参加し、プライマリ部門では「ペンギンレストラン」、セカンダリ部門では「DREAMER」が優勝した。
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ダンスチャレンジ・セカンダリ部門で1位のDREAMER。ロボット間の通信に赤外線を使用しているので、うす暗い中での演技となった
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ビル街のロボットは前脚を上げて「歩く」。その様子は「ハウルの動く城」?
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「歩くビル街」の中
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ダンスチャレンジ・プライマリ1位のペンギンレストラン。左のライントレースロボットの他に、回転するテーブル、動くペンギンと三つの異なるロボットを組み合わせている
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プライマリ部門2位のダンシング・ペンギンモドキ。地元の地層から出土した古代の鳥「プロトプテルム」(別名・ペンギンモドキ)の化石にちなんだもの
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Wild boarの演技。名前の通りに猪が暴走していた
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なお、ジャパンオープン大会に出場するレスキュー部門及び、ダンス部門のロボットは下記の通り。
・レスキュー・プライマリ
1位 ザ・サーチ
2位 ラージ
3位 MR
・レスキュー・セカンダリ
1位 あめふらし☆
2位 NAGAMURA
・ダンス・プライマリ
1位 ペンギンレストラン
2位 ダンシングペンギンモドキ
・ダンス・セカンダリ
1位 DREAMER
2位 Wild boar
● ロボカップジュニアサッカー王国・福岡
2日目の4月8日は、ロボカップジュニアサッカーチャレンジの九州ノード大会が行なわれた。
実は福岡県はロボカップジュニアサッカーの強いところとして知られている。そのきっかけは2002年に開催された「ロボカップ福岡釜山世界大会」だ。
この大会のジュニアサッカー・プライマリ部門に、北九州市立児童文化科学館(北九州市八幡東区桃園)の工作教室のチームが出場して優勝。その後、工作教室を卒業した生徒を支援する形で北九州ロボカップ会が結成され、毎年ロボカップジュニア世界大会にチームを送り込んでいる。
また福岡市においては、ロボスクエアのロボット塾の生徒を中心としてロボカップジュニアサッカーのチームが育った。それに福岡市内の塾が「ロボットを使った教育の一環」としてロボカップジュニアサッカーに力を入れてきたこともあり、福岡市を中心とする地域でも世界大会に出場するチームが出てきた。
そのため、福岡県のロボカップジュニアサッカーは、県内で「北九州ノード大会」と「福岡ノード大会」の2つの予選が存在する、激戦区となっている。
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サッカーロボットのプレゼンテーション。「ロボット製作を通じてどれだけ学習したか」を実証するため、参加チームは提出を求められる
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サッカーチャレンジの会場。4コートで同時に試合がスタートする
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ジュニアサッカーでは、オフェンス用とディフェンス用の二台のロボットでチームを作り、赤外線を出すボールを使ってサッカーを行なう
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● ロボカップジュニアサッカー予選
九州ノード大会には、「福岡ノード大会」「北九州ノード大会」のそれぞれ上位4チーム(プライマリ部門、セカンダリ部門とも同じ)、それにプライマリ部門は長崎県から参加した1チーム、セカンダリ部門は大分県から2チーム、鹿児島県から1チームが参加した。予選は、プライマリ部門・セカンダリ部門ともに2ブロックに分け、総当りトーナメントを実施(総当りリーグは最終的な勝ち点で決まる。勝ち=3点、引き分け=1点)。ブロックの1位2位が決勝トーナメントに進出できる。
予選リーグは10分間、決勝トーナメントは前半10分、後半10分で試合が行なわれた。
予選で強さを見せたのが、セカンダリの北九州高専チーム。今回はTeam KCT-I、Team KCT-IIの2チームが参加し、同じブロックで決勝トーナメント進出を目指したが、Team KCT-IIが1位、Team KCT-Iが2位で決勝トーナメント進出を果たした(直接対決はTeam KCT-IIが制している)。
セカンダリの別ブロックでは、TEAM BRAINSが1位、レッドイーグルスが2位で決勝トーナメントに進出。惜しかったのはリバーズエンド。レッドイーグルスと勝ち点10で同じ2位だったが、得失点差で決勝トーナメント進出を逃した。
プライマリ部門では、CブロックからはTECHNO KITが1位、フェニックスが2位、DブロックからはかもっこKMTMが1位、サファイア・ウェポンが2位で決勝進出を決めた。
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競技は自律で行われ、ロボットは床のグレイスケールの感知や地磁気センサーなどで、自分のいる場所とゴールの方向を把握して動く(手前の緑色のロボットが3位に入ったKCT-I、向こうの黄色いロボットは大分から来たトリプルT)
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レッドイーグルスのディフェンスを突破するKCT-IIのオフェンスロボット。ボールをロボットが抱え込むことは禁止されているが、KCT-IIのオフェンスロボットは、ボールに逆回転をかけて機体に引きつけている。またKCT-IIのディフェンスロボットは、ボールを見失わないように下がっている
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プライマリ部門準決勝のフェニックス(奥のチーム) VS かもっこKMTM(手前のチーム。)かもっこKMTMは女の子のチームだけあって、機体もカラフルだ(ちなみに北九州ノード大会プライマリ部門の1位)
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● 決勝戦
セカンダリ部門の決勝戦は、レッドイーグルスを大差で破ったTeam KCT-IIと、北九州高専チームのTeam KCT-Iに勝ったTEAM BRAINSとの戦いとなった。前半はTeam KCT-IIが3点、TEAM BRAINSが2点と接戦になったが、後半はTeam KCT-IIが地力を発揮。最終的には10-3で、Team KCT-IIが優勝を決めた。
プライマリ部門は、Dブロック1位のかもっこKMTMを破ったフェニックスと、Cブロック1位のTECHNO KITを破ったサファイア・ウェポンとの「リーグ戦では2位」同士の決勝戦になった。この決勝戦は本当に接戦となり、前半は1-0でサファイア・ウェポンがリードしたが、後半はフェニックスが巻き返し、ついに4-3でフェニックスが優勝した。
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セカンダリ部門決勝戦(奥がKCT-II、手前がTEAM BRAINS)
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派手な模様がついている機体は、TEAM BRAINSのオフェンスロボット
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プライマリ部門決勝戦のフェニックス(手前) VS サファイア・ウェポン(奥)
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後半戦に入り、逆転に成功したフェニックス
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表彰式で講評するロボカップ日本委員会ジュニアリーグ運営委員の野村泰朗氏。将来はサッカーコートの壁をなくすことも考えているとの発言があった
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● ジャパンオープン大会への進出チーム
決勝戦と同時に3位決定戦も行なわれ、決勝トーナメントの順位も確定。大阪のジャパンオープン大会へは上位3チームが出場権を獲得した。出場チームは次の通り。
・サッカー・プライマリ
1位 フェニックス
2位 サファイア・ウェポン
3位 かもっこKMTM
・サッカー・セカンダリ
1位 Team KCT-II
2位 TEAM BRAINS
3位 Team KCT-I
■URL
ロボスクエア
http://www.robosquare.org/
ロボカップジュニアジャパン公式サイト
http://www.robocupjunior.jp/modules/news/
【2006年5月11日】ロボカップ ジャパンオープン2006開催(PC)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0511/robocup.htm
( 大林憲司 )
2007/04/12 00:00
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