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「こうべロボット夢工房2007」開催

~ロボット体験操縦や特別講演も

 3月10日と11日、神戸市立青少年科学館にて「こうべロボット夢工房 2007」開催された。

 神戸市では、ロボット開発による神戸経済の活性化とロボット技術に伴う“夢”の創出を目指す「神戸RT構想」を産学官民が一体となって推進している。神戸市立青少年科学館は、4月中旬より神戸RT構想に関わるロボットや機器等の展示スペースを設置し、入れ替え展示を行なう予定であり、「こうべロボット夢工房 2007」はそのプレイベントとして開催した。2日間で約3,300人の親子連れが来場した。

 会場では、KOBE鉄人PROJECTのブースや、ロボットによる音楽演奏隊、ロボットの操縦体験のほか、京都大学大学院工学研究科助教授 横小路泰義氏による特別講演「ロボットと人間をつなぐもの」も行なわれた。講演とイベントについてレポートする。


KOUBE鉄人28号PROJECTの紹介コーナー。鉄人28号の操縦体験も行なっていた ロボッチとVariBoによるロボット演奏隊。3月10日オープンのプラネタリウム番組のエンディングテーマを披露した

特別講演「ロボットと人間をつなぐもの」

京都大学大学院工学研究科助教授 横小路泰義氏
 横小路氏は、ロボット開発のモチベーションは、「人間がやっていることを機械に代行させたい」というところから始まるが、研究するにつれて人間が非常に高度なことを無意識に処理していることに改めて気づくと言う。

 ロボットというと、鉄腕アトムやASIMOのようなヒューマノイドタイプを一番に想像するが、ロボットにはさまざまな形があり、人間とロボット間のコミュニケーションも多岐にわたる。

 横小路氏は最初に、ロボットの操縦方式の1つである「テレオペレーション」をさまざまな事例をあげて紹介した。宇宙では、宇宙ステーションの増築にロボットアームが使用され、深海探査を行なう「しんかい6500」は、潜水艦の中からロボットアームを動かしている。宇宙や深海といった人間が作業できない場所だけではなく、医療分野でも内視鏡手術用遠隔操縦システム「ダビンチ」が実用化されている。身近なところでは、ロボット大賞2006 審査員特別賞を受賞した食事支援ロボット「マイスプーン」(セコム)もある。


操縦型ロボットは、コンピュータに変わって、人間がロボット(スレーブ)を動かす 国際宇宙ステーションでも操縦型ロボットが活用されている

しんかい6500。深海探査用マジックハンドを搭載 ダビンチ・内視鏡手術用遠隔操縦システム

 産業ロボットは、自律で動き、工程をこなしていると思われているが、ロボットに作業を教える教示の部分は人間がやっていることが多い。手動モードや半自動モードを使い、自律ロボットに拘ることなくより使い勝手のよい方法を探ることが重要。もし、マイスプーンが自律ロボットだったら、「自分で食べる」という食事の楽しみが感じられなくなるだろうと横小路氏はいう。

 このように、自律で動くことだけがロボットの必須条件ではない。テレオペレーションを採用することで、コンピュータでは判断が難しい処理を人間ができる。またロボットに動作を教示するのは、人間が直接教えたほうが容易なことが多い。そしてロボットを自分で操縦したいという願望に応える必要もあるという。

 「テレオペレーション」は、ロボットを動かす指令を人間が出していたが、逆に「コンピュータがロボットを通じて、実際のモノに触れたのと同じ感覚を操作中の人間に送り、バーチャルな体験を与える」というロボットの使い方もあると事例を紹介した。

 主に視覚情報を中心とした体験になるが、力覚人工現実感という、仮想の物体に触れる感覚を実感するシステムがあるという。

 例えば、モニターに映し出された石膏に、ロボットアームを操作して彫刻を施す。このときに、石膏を削るのと同じような力の手ごたえがないと、上手に削ることができないという。このシステムでは、硬いものを削るときの力の感覚をロボットが人間にフィードバックしている。仮想世界の中の感覚を人間に伝えるツールとしてロボットを使っているのだ。

 この技術は、医療手術やスポーツのトレーニングに応用されている。医療手術トレーニングでは、針を縫う動作の練習をこのロボットとモニターでバーチャルに行なう。実際に人の皮膚を縫うのと同じ感触で練習できるという。


力覚人工現実感。ロボットからの情報でバーチャルな物体に触れる 操縦型ロボットを使うことで、バーチャルな体験を現実感を持って体験できる

 横小路氏はロボットと人間のつながりを考えた場合、機械(ロボット)を情報媒体として使うという発想が生まれてくるという。

 例えば、既存の技術の電話やテープレコーダーも情報伝達の道具だが、今後、ロボットも同様に「記録して伝える」役割を担うのではないかと横小路氏は言った。

 電話やテープレコーダーは言葉で伝達を行なうが、動作のポイントを言語情報で伝えることは難しい。だが、ロボットを用いることで人の動きを記憶して他者へ伝えることが可能となる。

 例えば、ゴルフのスウィングフォームを教えてくれるゴルフ練習ロボットが実在する。安川電気のリハビリロボットも、セラピストが患者にリハビリのやり方を教えるのをロボットが代行するものだ。

 このようにロボットを使い、人から人へ動作を伝えるという新しいロボットの役割「メカノメディア」が今後、重要になってくるのではないかと横小路氏は語った。


理想のスイングを体感できるフォーム指導ロボットマシン セラピストの動きをロボットが覚えて、患者に伝える

 科学館での講演ということもあり、中高校生の参加者も多かった。

 横小路氏は、彼らに「ロボット開発に限らないが、机上の勉強だけでなく、自分自身の五感を使い、実際に見て、聞いて、触って壊して、痛い目にあって体で覚えることを大切にしてほしい。現実のものを調べて理解し、わかったことを元に実際にモノを作る経験をたくさん重ねて欲しい」と、アドバイスで締めくくった。


マスタースレーブでロボットアーム操縦体験

 展示会場ではこのほか、さまざまなロボット操縦体験が用意されていた。

 中でも、旭光電機株式会社のFST(フレキシブルセンサチューブ)を用いたロボットアーム操縦は、幼稚園児から大人まで列を作り体験していた。

 FSTは、瓦礫内探索用ロボットの位置探索用として開発された。5cm間隔に配置した各間接がひとつずつのポテンションセンサを持ち、長いチューブの全体の軌跡と先頭の情報位置を取得できるシステム。

 愛・地球博では、10m長のモデルを用意した。これだけの長さになると、一箇所壊れるとメンテナンスが大変になるため、1m単位のユニットにした。短くしたことで、人体に装着してロボットを操縦するマスタースレーブに応用するという新しいアイデアが生まれたという。チューブ状なので、体格を限定することなく子どもから大人まで操縦できるのは、アドバンテージが高いだろう。筆者もチャレンジしてみた。

 メガネに装着されているのは、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)である。ロボットの頭上に取り付けられたカメラから、映像が送られてくる。FSTを装着後、前へならえと両手を広げて、肩の高さの初期位置設定を行なう。

 ロボットは片手5軸、腰に旋回軸があり全身で11軸。FSTの先にボタンがあり、左右それぞれ人差し指のところにあるボタンを押すと、ロボットの手で対象物を掴むことができる。旋回は、右手親指のアナログスティックで操作する。自分の腕を動かすと、ロボットが同じように腕を動かす。

 カメラから送られてきた映像を頼りに操縦するのだが、距離感が掴めなくて苦労した。距離感については、しばらくロボットを操っていると感覚の微調整ができてくるのだが、手ごたえがないというのは慣れない。手元のボタンを押すとロボットの手が握られるのだが、その感覚が伝わってこないし、そもそも手元にスポンジがあるのかどうかが判らない。日常生活の何気ない動作は、視覚情報だけではなく五感が補完しあっているのだということが、よく理解できた。さきほど講演で、横小路氏が「感覚のフィードバックがないと、ロボットを操縦することが難しい」と言っていたのが実感できた。

 真剣な表情で緊張しながらロボットを操縦した神戸在住の小学生は「スポンジを離すタイミングや力がわからなくて難しかった」と語っていた。

 他にもアナログスティックで操縦するスーパーボールすくいロボットや、鉄人28号ロボット、画像認識で動くロボキューブなど、来場者はさまざまなロボット操縦体験を楽しんでいた。


子どもから大人まで同じ装置でロボットの操縦を体験できる 【動画】FSTを用いたマスターでロボットを操縦する

ロボキューブは、ユーザーが手にしたカラーボールを認識して移動する 水に浮いたスーパーボールをロボットですくい取る。子ども達の人気を集めていた

URL
  神戸市立青少年科学館
  http://www.ksm.or.jp/
  こうべロボット夢工房 イベント情報
  http://www.ksm.or.jp/modules/tinyd2/index.php?id=6

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( 三月兎 )
2007/03/14 00:03

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