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【 2009/04/17 】
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「第7回全国中学生創造ものづくり教育フェア」が開催

~ユニークなアイデアロボットが筑波に集結

創意工夫を凝らしたユニークなロボットたちが集結!

 1月27日と28日の両日、つくば国際会議場(エポカルつくば)において、「第7回全国中学生創造ものづくり教育フェア」が開催された【写真1】【写真2】。主催は全日本中学校技術・家庭科研究会。このイベントは全国の中学生が作品展や競技会を通じて、「ものづくり学習」の成果を発表し、創作の喜びや意欲・関心を抱いてもらうことを目的として開催されたもの。創造アイデアロボットコンテストから、エネルギー利用技術の作品展示、木工製品の製作など、優秀な作品が全国津々浦々から集まった。


【写真1】つくば国際会議場(エポカルつくば)において、開催された「第7回全国中学生創造ものづくり教育フェア」。フロアーの吹き抜けには、飛行船が飛んでいた 【写真2】大盛況だったフェアの様子。創造アイデアロボットコンテストから、エネルギー利用技術の作品展、ものづくり体験コーナー、木工製品の製作など、多数のイベントが目白押し

 本イベントの目玉のひとつは、何といっても創造アイデアロボットコンテストだろう【写真3】。本コンテストは3つの部門に分けられ、2日間にわたって実施された。よく行なわれているロボット大会とは異なり、得点主義に偏らず、発想や製作技術・努力を評価しあうことを第一の目的としている。

 創造アイデアロボットコンテストでは、1対1でロボット競技を行なうA1部門、2台のロボットが協力しあいながら競いあうA2部門、大型コートで1対1で対戦するB部門、ダンスや作業で魅せるロボットや、オリジナル競技に取り組むロボットを紹介するC部門がある。なおC部門はビデオ上映のため、ここではA部門とB部門の内容を中心に紹介する。

 A1部門のルールは、自陣コートに設置されたタワーを崩さずに、90秒以内にアイテムを取り出して得点の合計を競い合うというもの。1対1の対戦で、有線リモコンによってロボットをコントロールし、所定の位置にアイテムを置いて得点をかせぐ。ロボットのモータは4個までに制限されている【写真4】。

 前日に予選リーグを勝ち抜いた8組の中から決勝戦に進んだのは、越谷市立光陽中学校(埼玉)の「ダースベーダー」と可児市立中部中学校(岐阜)の「パスカル」【写真5】。


【写真3】イベントの目玉、創造アイデアロボットコンテストの模様。コンテストには3つの部門があり、それぞれ別のフロアーにおいて、同時進行で開催された 【写真4】A1部門の競技。タワーを崩さずにアイテムを取り出して得点の合計を競い合う 【写真5】A1部門の決勝戦。写真後が「ダースベーダー」(越谷市立光陽中学校)、写真前が「パスカル」(可児市立中部中学)

 パスカルは、アームを長くすることで、どの高さのアイテムでも確実に取り込め、一度に8つのアイテムを保持できる点が大きな特徴。アームの移動には細いワイヤーによる糸巻き式を採用している。本体移動は、バックのままでもスムーズに段差を乗り越えられるようになっている。特に工夫した点は、段差でアイテムの落下を防止するために、マシンの間に小さなタイヤを設置して、衝撃を吸収したことだという。

 一方のダースベーダーは、9本の長いアームの先端に薄いアクリル板を付け、アイテムを簡単に取れるようにした点が特徴だ。ほとんどの部品を廃材でつくり、制作費は精密ギアだけ。1,000円という低コストで作品を完成させたそうだ。

 善戦の末、パスカルが優勝を手にした【動画1】。ダースベーダーは惜しくも優勝は逃したものの、栄えある文部科学大臣奨励賞・茨城県知事賞(ロボコン大賞)を授賞した。

 A2部門は、A1部門と基本的には同じルールだが、2体のロボットで競技を行なう点が異なる【写真6】。モータの数は1台あたり3個までに制限されている。うまく両方のロボットを連携させてコントロールすることがポイントだ。決勝戦では、桜川市立岩瀬東中学校(茨城)の「サムライブラック」【写真7】と可児市立中部中学校(岐阜)の「Win gread」【写真8】が進出。


【動画1】A1部門の決勝戦。あっという間にアイテムを運んでしまったパスカルに驚きの声。ダースベーダも短時間でクリア。まさに善戦だった 【写真6】A2部門の様子。2体のロボットで競技を行うため、それぞれのロボットの役割をいかにうまく分担させるかが重要になる

【写真7】「サムライブラック」(桜川市立岩瀬東中学校)。サムライブラックは準優勝だったが、厚生労働大臣賞(準ロボコン大賞)も授賞 【写真8】「Win gread」(可児市立中部中学校)を手に優勝の喜びを語る可児市立中部中学校の皆さん

 Win greadの製作では、2台のロボットで効率よくアイテムを運ぶ方法を試行錯誤し、一度に4つのアイテムを効率的に運べるロボットを作ったという。それぞれのロボットは、アイテムの置かれる高さによって分担を決め、1台目はフロアのアイテムを、2台目は高いところに置かれたアイテムを担当。連携プレーがとても上手だった。

 善戦の末、「Win gread」が栄冠を勝ち取ったが、同校は別のチームがA1でも優勝し、ダブル授賞となった【動画2】。なお、サムライブラックは厚生労働大臣賞(準ロボコン大賞)を授賞した。

 B部門のルールはユニークだ。1体のロボットで競技エリア内のアイテム(笠)を取り込み、これをお地蔵の胴体を模した5つのポールの上に載せて完成させるというもの【写真9】。完成したお地蔵はゴールエリアに移動させる。また、5つのポールのうち1つだけは笠ではなく、手ぬぐいをかけることになっている。ロボットは最大7個のモータを使用できる。

 決勝戦に駒を進めたのは、下妻市立東部中学校(茨城)と「チームKAN」【写真10】、七宗町立神渕中学校(岐阜)の「神渕っくきら~」【写真11】。

 チームKANは、バックドロップ式のアームを装備し、走りながらアイテムを完成させるスピード重視のロボット。操作性が良く、確実にポイントをあげていった。対する神渕っくきら~は、双方アームを備えており、一気にアイテムを取り込めるように工夫されていた。それぞれのアームは独立で回転でき、アイテムを反転させられる。

 またアームをスムーズに上下に移動するためにベアリングを用いている。両チームとも競技の内容はパーフェクトだったが、チームKANが優勝した【動画3】。また、準優勝の神渕っくきら~は、全日本中学校技術・家庭科研究会会長賞(敢闘賞)も授賞した。


【動画2】A2部門の決勝戦。2台のロボットをうまくコントロールし、アイテムをスムーズに運んでいることがわかる 【写真9】ユニークなB部門のルール。お地蔵の胴体を模した5つのポールの上に笠のアイテムを置く 【写真10】見事に優勝した「チームKAN」(下妻市立東部中学校)。バックドロップ式のアームでアイテムをロボットに素早く取り込めるように工夫を凝らした

【写真11】準優勝の「神渕っくきら~」(七宗町立神渕中学校)。全日本中学校技術・家庭科研究会会長賞(敢闘賞)を授賞 【動画3】B1部門の決勝戦。チームKANの笠アイテムの取り込み動作はとてもユニークだ

ロボットコンテスト以外にも、ものづくりを鼓舞するコーナーが目白押し

 競技大会が終了した後に、大ホールにおいて、ヒューマノイドロボット「ASIMO」のデモンストレーションも行なわれた【写真12】。ASIMOが登場すると子供たちの目は輝き、驚きの歓声をあげた。このデモでは、会場の子供たちにASIMOを操作する機会が与えられた。またとない幸運をつかんだ子供たちが、コントローラを使ってASIMOに招き猫のポーズなどをさせて大喜びしていた。

 このほか、ものづくりに関する体験セミナーも数多く企画されていた。たとえば、ロボットや機械、電子などの技術に関連するものとしては、アザラシ型の癒し系ロボット「パロ」【写真13】や、茨城県工業技術センターの車輪型ロボット【写真14】【動画4】、ライントレースカーのプログラミング体験コーナー【写真15】、ラジオ・デジタル温度計製作セミナーのほか【写真16】【写真17】【写真18】、レーザー加工など、役に立って楽しめる体験コーナーが目白押しだった。


【写真12】大ホールにおいて、ヒューマノイドロボット「ASIMO」のデモンストレーションも行われた。このデモでは、ASIMOを操作する機会が与えら、子供たちも大喜び 【写真13】産業技術総合研究所は癒し系ロボット「パロ」を出展。まるで本物の動物のようで、生々しく感じた 【写真14】茨城県工業技術センターの車輪型ロボット。あまり見慣れないロボットだが、海外の製品だという

【動画4】手元のコントローラを操作しながら、センサ情報を収集するロボット 【写真15】ライントレースカーの体験コーナー。PCを利用してプログラムを組み、黒いラインに沿ってライントレースカーを走らせる。組み立てキットも展示されていた 【写真16】ラジオ製作の体験コーナー。ハンダごてを初めて握る子供たちが奮闘中

【写真17】2進数を勉強するのに役立つデジタル温度計の製作コーナー。丁寧な解説の組み立て説明書を見ながらハンダ付け作業。こちらも盛況だった 【写真18】完成したデジタル温度計。温度センサで測定した温度をマイコン内蔵のADCでデジタル値に変換し、それをLEDの点滅で表わす

 電子工作セミナーでは、初めてハンダごてを持つ子供たちが大奮闘。理科離れが著しいと言われる昨今だが、いずれのコーナーも子供たちの反応は大変よく、熱心に作品を製作をしていたのが印象的だった。

 また、中学生の作品以外にも、工業高校の作品展示もあった。土浦工業高校ではマイコンラリーカーを出展【写真19】。スターリングエンジンの原理を利用したユニークなエコカーも目をひいた【写真20】【動画5】。

 また、カニのようなユニークな多関節ロボットもあった【写真21】。日立工業高校ではホンダエコノパワー全国大会に出場したマシンを披露【写真22】。高専ロボコンで優勝した茨城高専の「なわとびロボット」の実演も行なわれた【写真23】【動画6】。小山工専では、ロボコンで特別賞を受賞した「特急かんぴょう号」のデモを実施していた【写真24】【動画7】。

 また、協賛企業として、パイオニアがDVDプレイヤーの組み立てや【写真25】、紙コップのスピーカーを制作できる体験セミナーを開いていた【写真26】。モビリティランドツインリンクもてぎは、自動車のシャーシを模したゴーカートに、サスペンションやタイヤを取り付ける体験コーナーを設置【写真27】。ファナックは、同社の高速ハンドリングロボットや視覚機能を応用して、食品の知能化整列・箱詰めシステムを実演していた【写真28】。


【写真19】土浦工業高校のカーラリー体験コーナーで展示されていたマイコンカー製作キット。CPUボードは別売だ 【写真20】スターリングエンジンの原理を利用したエコカーもいくつか展示。バーナーで熱を与えて、クルマを走らせる準備をしているところ 【動画5】スターリングエンジンカーのデモ。プロペラを回転させながらスイスイ滑らかに動く

【写真21】カニのようなユニークな多関節ロボット。CPUボード、サーボモータは浅草ギ研製だという 【写真22】ホンダエコノパワー全国大会に出場した日立工業高校のマシン。どれだけ少ない燃料で一定の距離を走行できるかを競う。空気抵抗を少なくする流線形。排気量は50cc未満 【写真23】昨年の高専ロボコンで優勝した茨城高専の「なわとびロボット」。上部にアイテムを乗せて両サイドのアームでホールドしながらジャンプする

【動画6】なわとびロボットのデモ。ペットボトル内で空気を圧縮させ、それを動力として変換。3回連続で縄跳びをするが、本体の重量は10kgほどあるため、ジャンプ力が必要だ 【写真24】小山高専の「特急かんぴょう号」のデモ。ロボコンで特別賞を受賞した作品 【動画7】本体がパックリと2つに割れて、中から栃木県のふるさとオブジェ「かんぴょう君」が現れる。キャラクターがとても可愛らしい

【写真25】パイオニアのDVDプレイヤー組み立て体験セミナー。DVDプレイヤーのしくみから勉強できて大変役に立つ 【写真26】パイオニアの紙コップ組み立て体験セミナー。身近な素材を利用している点がグッド

【写真27】モビリティランドツインリンクもてぎの体験コーナー。サスペンションやタイヤを取り付ける未来の整備士が誕生!? 【写真28】ファナックは産業用ロボットを展示。コンベアで搬送される食品の位置と姿勢をビジョンで検出。2台のハンドリングロボットで食品の取り出しと整列をさせ、もう1台のロボットでで箱詰め作業をする

エネルギーを有効利用する、ものづくりの知恵を支援!

 本イベントでは、日本産業教育学会主催による「エネルギー利用コンテスト」の作品展示コーナーも併設されていた。エネルギー消費や、それに伴う環境の影響は、我々の生活にとって身近でありながら大変重要な問題だ。このコンテストでは、ものづくりの視点から、「エネルギーをつくり出すことと使うこと」「エネルギー利用技術の長所と短所」という観点から。生徒たちが研究した成果を発表。太陽エネルギー、熱エネルギー、風力発電、ゴムの収縮現象、形状記憶合金など、さまざまなエネルギー源を利用したユニークな発想の作品がとても面白かった【写真29】【写真30】。


【写真29】「エネルギー利用コンテスト」の作品展示コーナー。手前の2作品は、文部科学大臣奨励賞を授賞した「野菜促成栽培器」と「ゴムバンドエンジン」 【写真30】こちらもユニークな作品。左側は「形状記憶合金を利用したロボット」(中小企業庁長官賞)。右側は「手作りバッティングマシーン」(日本機械学会会長賞)

 文部科学大臣奨励賞には、「ゴムバンドエンジン」(東京都 筑波大附属中 山田佳林さん)と「野菜促成栽培器」(鹿児島県 与路中学校 泰綾香さん)の作品が選出された。

 ゴムバンドエンジンは、熱を与えるとゴムが収縮する性質を利用して動力にするもの。車輪に対して放射状に付けたゴムを照明で温めると、重心が移動して車輪が回転を始める。野菜促成栽培器は、アクリル板をうまく加工し、日中は太陽エネルギーを注ぎ込むように工夫し、夜は天板に取り付けた発光ダイオードで照射するアイデアが斬新。また、植物の育成に最適な光の量や色、二酸化炭素の濃度も研究したそうだ。これにより、かいわれ大根が1日から2日早く収穫できるようになった。

 このイベントを見る限り、子供たちの理科離れはあまり進んでいないように思えた。むしろ、彼らがとても頼もしく感じられたぐらいだ。しかし、これは日ごろから技術・家庭や科学への発露を与えようと努力している学校関係者の尽力の賜物といえるかもしれない。中学の技術家庭科の重要な役割について再認識できたイベントであった。


URL
  全日本中学校技術・家庭科研究会
  http://ajgika.ne.jp/page.php?p=fair_7


( 井上猛雄 )
2007/02/01 00:01

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