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空間ロボットRoomRender
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日本SGI株式会社は、人間の音声や感情などによってIT機器や家電、什器などを自在に操作できる「空間ロボットRoomRender」を開発したと発表し、東京・恵比寿の日本SGI社内会議室に設置されたデモ環境の記者公開を行なった。
「空間ロボット」は、日本SGIが子会社の株式会社AGIと共同で開発を進めている「ST(Sensibility Technology)、感性制御技術」を中核とし、株式会社アドバンスト・メディアの音声認識技術「AmiVoice」を組み合わせて機器を制御する技術。
ウェブ会議システム用のマイクから音声を広い、そこからST技術を使って部屋全体の雰囲気を認識し、人間の感情に合わせて空間の雰囲気を演出する。それによって、快適空間を実現することが目的だ。たとえば、空間ロボット技術を導入することで、音声を使って個別に設置されたプロジェクタやスクリーンなどさまざまな情報機器を統合制御できる。
今後、このシステムを会社の役員会議室などのほか、ホテルのスウィートルーム、高級マンションなどのほか、肢体不自由な人でも簡単に身の回りの機器操作ができるように福祉・介護施設などに展開していくという。
なおSTは、人の発話音声のリズム変位から、6つの感情(怒り、喜び、哀しみ、平常、笑い、興奮)を認識する仕組み。辞書との照合ではなく関数を使った表現を使っている点が特徴だという。同社では、人間と同等レベルの高い感情認識を実現し、STは人間と機械のインターフェイスとして使えるとしている。
当日は、ふだん実際に経営会議が行なわれているという日本SGI社内の会議室でデモが行なわれた。RoomRenderのシステムを使った音声認識も使われたが認識に失敗するシーンもあった。なお同システムは基本的に既存のシステムを組み合わせたもので、新規に機器制御用ミドルウェアの開発などは行なっていない。従来どおり、リモコンでの制御も行なえる。またインターフェイス開発などは今後、顧客からのニーズに応えて行なっていくという。
同社では今年3月、NEC、NECデザインと共同開発した、人の気持ちを光の色で表現する通信端末のコンセプトモデル「言花(KOTOHANA)」を開発しリリースしている。
空間ロボットRoomRenderの一部、「FeelingWall」は、このコンセプトを応用したサービスのひとつ。会議で交わされる人の音声から感情を分析して、会議の雰囲気をライトによる色で表現する。会議を和ませるなど円滑なコミュニケーションを支援する効果が期待されるという。
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【動画】例えば「疲れたな」といったら部屋が暗くなり、音楽が流れ、香りが漂い始めるというデモの様子
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FeelingWall。部屋の音声の状況に合わせて色を変える壁
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香りも出る
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RoomRenderをコントロールするPCディスプレイ
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タッチパネルでも制御できる
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NECとの共同開発「言花(KOTOHANA)」。音声から感情を判断して色を変える
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日本SGI戦略事業推進本部 執行役員本部長 大塚寛氏
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日本SGIのロボット事業の取り組みについて、同社の戦略事業推進本部 執行役員本部長の大塚寛氏は、「ロボットはテクノロジー・ドリブンの発想が強いが、では本当に便利になっているのか」と問い直したという。
大塚氏は「ITに対して冷たい印象を持つ人もいる。できればITと言いたくない。人に優しさを伝えたいと考えた」とコンセプトの背景を述べた。企業内機器はどこの会社でもかなり充実してきており、また空間を知能化する研究もあちこちで進められている。
そのようななか、新しい価値を考えたときに「心地よい空間」の実現がテーマになった。また、同社ではロボットの取り組みを行なうなか、介護を通じて高齢者と接する機会があり、リモコンすら使わず、1つの言葉で制御できるようなインターフェイスを模索したのだという。
そこで「形のないロボット」において重要なものはインターフェイスであり、次世代インターフェイスとしての音声に着目した。同社では音声認識ではなく、まず感情認識をキーポイントに開発を進めている。その具体化の第一歩が、「空間ロボットRoomRender」だという。
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日本SGI 戦略推進事業本部 池田曜司氏
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「ロボットが空間そのものであるとイメージしてほしい」と戦略推進事業本部インキュベーション事業推進システムズ・エンジニアの池田曜司氏は言う。たとえばFeelingWallによって人が目にしない感情や部屋の雰囲気を視覚化して演出することが、ブレインストーミングにおいて、何かのヒントになるのではないかという。
これまではITとは遠かった世界をインテグレーションしてこれまでになかった刺激をもたらす場とすることで、「場の空気」を動かしていきたいと語った。
今後、顧客からの要望に応じてシステムインテグレーションしていく予定だという。考えられる空間演出サービスとしては、Feeling Wallとアロマのほかに「何か面白いサービス」を提供したいと考えているという。たとえば会議で疲れたときにロボットが甘いものをもってくるとか、テーブルから箱が出現するとか、あるいは送風するなど、空間そのものを楽しくするようなサービスを考えているそうだ。
また、セグウェイなどのサービスを組み合わせることで、「空間ロボット」と「空間内ロボット」が互いに補完しあいながら、人にやさしい空間サービスを実現していくことも目指す。人とロボットの距離を縮めて、「触れるロボットから包み込まれるロボット技術へ」の展開を行なっていくという。
現状での基本構成セット(Feeling Wall、アロマ含む)の最低導入コストは500~600万円。デモルームでは2.4GHzのPentium 4のマシンで動作しているが「それほどハイスペックのPCでなくても動く」そうだ。
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日本SGIの歴史
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産学連携のながれ
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ロボット研究・開発のながれ
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空間ロボットのコンセプトは心地よさ
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室内機器を空間の一部として捉えて、声で制御する
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さまざまなインターフェイスで扱え、五感を刺激する
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なお日本SGIではフラワー・ロボティクス株式会社の松井龍哉氏とコラボレーションしてマネキンロボット「Palette」を開発し、2005年2月に発表しているが、今年度中に同マネキンロボットの量産を発表する予定だという。
■URL
日本SGI
http://www.sgi.co.jp/
ニュースリリース
http://www.sgi.co.jp/newsroom/press_releases/2006/dec/robot.html
株式会社AGI
http://www.agi-web.co.jp/
アドバンストメディア
http://www.advanced-media.co.jp/
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( 森山和道 )
2006/12/06 00:01
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