パシフィコ横浜にて「Embeded Technology 2006/組込み総合技術展」が11月15日~17日の日程で開催されている。入場料は1,000円だが、事前登録することで無料になる。
テーマは「デジタルコンシューマ」、「オートモティブ」、「モバイル/ユビキタス」、「FA/ロボティクス」の4つ。
ここではロボット関連の展示を紹介する。特に目立ったのが、教材としてのロボット利用だ。企業内の組込み機器技術者向けの教材から、学生など、より初心者向けの教材まで、さまざまなレベル向けの教材としてロボットが活用されていた。
株式会社北斗電子は倒立制御学習キット「PUPPY」をデモ展示している。角速度センサ、ロータリーエンコーダなどを持ち、ルネサステクノロジ製のTinyシリーズ実装CPUボードを使って状態フィードバック制御の実験ができる。
いっぽう、ルネサステクノロジのブースでは飛行船が浮いていた。スプーンを打ち鳴らしたときに出る超音波を使って飛行船を動かす。主に中学生向けに「符号化」の教材として使われているそうだ。まだキット化はされていないが、そういう話もあるとか。
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倒立制御学習キット「PUPPY」
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【動画】「PUPPY」の動作の様子
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ルネサステクノロジブースの「マジカルスプーン」の飛行船
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スプーンを打ち鳴らしたときの超音波で飛行船を制御する教材
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飛行船ロボットは、大学関連のブースを集めた「University Pavilion」コーナーにもあった。東海大学清水研究室では「MDDロボットチャレンジ」に出場するための飛行船ロボットを出展している。ただし、飛行船の袋の部分がないので、パッと見では飛行船に見えない。
また拓殖大学工学部早川研究室のブースでも教材ロボットを展示していた。「港プロジェト」の一環で、ワンボードコンピュータを使うだけでは動作が分かりにくいことから、ロボットを使って組込み技術の学習を行なうことが狙いだという。
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東海大学清水研究室の「MDDロボットチャレンジ」用飛行船ロボット
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拓殖大学ブース「港プロジェクト」の教材ロボット。SH3を使っている
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かなり大きな面積でブース展開していた「TOPPERSプロジェクト」は、ITRON準拠のOSほか組込みシステム開発における各種オープンソフトウェアを開発している団体だが、こちらでも、株式会社ソフィアシステムズが組込みシステム技術者育成のために「バイオロイド」をベースにしたロボット教材「eMaster GEAR & PAL」を開発・製作している。
シリアル通信によるコントロール制御ではなく、組込みC言語でのプログラミング制御が可能。センサの活用などタスク制御ルーチン開発実習に活用できるという。
「eMaster GEAR」は身長32.5cm、重量1.4kg、16自由度(足5×2、腕3)。アクチュエータはDynamixel AX-12。CPUユニットはAtmel製AT91SAM7S128(ARM7)。開発ツールとして「GCC Developer Lite」が付属する。「GCC Developer Lite」とは、GNUコンパイラ(GCC)での開発を、Windows上で行なうためのヘルパーソフトウェア。
「eMaster PALは」は、片腕3軸とセンサを使った学習キットだ。今後、リアルタイムOS組込み技術教育用途として教材・テキストを充実させていく予定だという。
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TOPPERSプロジェクトのブース
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「eMaster GEAR」。中はITRON
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また、株式会社イーエスピー企画はC言語ロボット教材「Cロボ」を展開。かたつむりライントレーサほかをデモしている。
同社ブースには二足歩行ロボット「HJ-90」も並んでいる。このロボットは、二足歩行ロボット格闘技大会「ROBO-ONE」を見ている人ならばピンと来るはずだ。
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C言語ロボット教材「Cロボ」
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各種要素も販売されている
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二足歩行ロボット「HJ-90」。998,000円
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ライントレーサがデモを行なっている
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「はじめロボット」の最新型、ロボカップ2006ブレーメンにもドイツのDarmstadtDribblersとのジョイントチームを組んで登場し、3位入賞した機体は、株式会社ブレインズのブースで見ることができる。ブレインズのボードが使われているからだ。
最新の「はじめロボット」は身長55cmだが、重量3kgと軽量。この機体は有限会社はじめ研究所から販売されている。10台限定で1台200~250万円。
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はじめロボット。でこぼこ道(Rough Terrain)競技ではぶっちぎりの1位だったとのことだが、残念ながらデモはなし
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頭部のカメラ
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ブレインズのボードが使われている
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同社ブースではマイクロサーバやカメラ用ボードが出展されている
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サンハヤト株式会社とNECソフトウェア東北株式会社、NECエレクトロニクス株式会社は、東北学院大学の岩本正敏氏を会長とする「メカトロで遊ぶ会」で作成された自走ロボット「梵天丸」を改造した「隼人丸」を出展。
また同時に、サンハヤト株式会社が開発した教材「いろは姫」も出展している。マイコンに指示を与えてLEDを点灯させることができる。
共に教材として用いられている。とくに「隼人丸」に比べて「いろは姫」は短時間の授業で用いることができるので好評だという。
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自律型ロボット教材「隼人丸」
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LEDを使った教材「いろは姫」も好評とのこと
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株式会社トラスト・テクノロジーは先日リリースが出た「ロボモジュール」のデモを行なっている。ロボモジュールはメインボードとサブボードを組み合わせて使う制御ボードと、ロボット操作ソフトウェア「TrustMotion」とがセットになった商品。
ブースではロボット制御ボードそのほかの展示のほか、二足歩行ロボットのデモも行なわれた。本来は歩行するということだが、筆者は見ることができなかった。
サンリツオートメイション株式会社は、「遠隔操作IPシステム」の事例として、探査ローバーロボット、レスキューロボットなどを展示している。
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トラスト・テクノロジーのロボモジュールを使ったロボット
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制御ボード。メインボード裏はminiSDが刺さるようになっている
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【動画】デモ
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サンリツオートメイションのブース
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遠隔操作IPシステムの事例としての展示
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NECブースの「PaPeRo」は、いつものデモを行なっている
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慶應義塾大学理工学部 山崎研究室のブースでは、山崎信行氏と産総研の松井俊浩氏らの共同開発によるシステムLSI「μRMTP」が展示されている。ハードウェアによるリアルタイム処理を保証したLSIで、現在設計中のヒューマノイド「HRP-3」の分散制御に用いられる予定になっている。
岩手県立大学の新井義和氏らは枝認識システムを持った枝打ちロボットをパネル展示。3台の超音波センサで枝を認識して切断する。かなり大きく重たいということで、残念ながら実機はない。エンドミルを使った枝打ちユニットを使うことで、樹木本体を傷つけずに枝打ちできる点が特徴だそうだ。
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慶應義塾大学「μRMTP」
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岩手県立大学の枝打ちロボット。パネルのみ
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■URL
Embeded Technology 2006/組込み総合技術展
http://www.jasa.or.jp/et/
■ 関連記事
・ 組込みシステムとしてのロボット(2006/06/29)
( 森山和道 )
2006/11/17 13:40
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