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身長22cmのリカちゃんとツーショット
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2006年3月に株式会社トミーと株式会社タカラが合併して発足した株式会社タカラトミー。彼らが、5月末に行なわれたアナリスト向けの決算説明会で、小型ロボットを開発していることを明らかにした。名前は「マイクロマシン(仮称)」。
大きさは15cm程度で、手のひらに収まる。重量は300g。日本ビクターが試作している小型ロボット「J4(20cm、770g)」よりも二回りほど小さく軽い。しかしながら関節自由度で17軸、ジャイロを1つ内蔵した本格的なロボットだ。歩行や起きあがりはもちろん、腕立て伏せやドラム演奏もできる。サーボは自社製だ。
驚くべき点は、販売予定価格をなんと3万円弱としているところ。カメラとBluetoothなどを付けた高機能版は4万円程度で出したいという。従来のロボットの1/3だ。発売は来年3月を予定し、既に生産準備に入っているという。
このロボットが出るとなると、まさに価格破壊である。これまでにはなかったトイ・ロボット市場を出現させるだけではなく、自作キット系ロボットの業界地図をも、一気に塗り変えるほどのインパクトが予想される。いったいどんなロボットなのか。取材に伺った。
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タカラトミー「マイクロマシン」正面
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背面
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左側面
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右側面
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脚部
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試作機では脚部にリチウムポリマー電池を設置。発売される商品では胴体部分に搭載される
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アクチュエーターは仕込まれてないが、人差し指と親指が可動する
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頭部にはLED、胸部にはモノラル・スピーカーを内蔵
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軽いため、サーボに通電しなくても自立し、ポーズをつけることが可能
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身長22cmのリカちゃんに対して、マイクロマシンの身長は約15cm
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【動画】ドラム演奏。フットも使っていることに注目。動画では音を省略しているが実際にはドラムをたたいて音を出している
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【動画】動作の効果音を自分で鳴らしながら腕立て伏せ。試作機のため音は変更される可能性が高い
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【動画】さよならの挨拶
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● 本格的だが安価なロボット・トイは可能だ!
最近のロボットキットでは、制御用のマイコンが、8bitから32bitへと移行しつつある。たとえば新しいLEGOマインドストーム「NXT」では32bit・マイコンのARM7が使われている。だがマーケティング統括本部 戦略開発室 シーズ開発グループ グループリーダーの渡辺公貴氏は、既存のロボットキットは「なぜあんなに高機能なチップを使っているのか」と思っているそうだ。現在のサーボ数と動きなら、もっと安価なチップで十分コントロールできるという。
渡辺氏はまず「最近になってロボットブームが来たから出すわけではない」と強調した。今回、取材を受けてくれた渡辺氏と、同グループエキスパートで設計そのほかを一人で担当している米田陽亮氏は、以前はトミーに在籍していたメンバーだ。
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株式会社タカラトミー マーケティング統括本部 戦略開発室 シーズ開発グループ グループリーダー 渡辺公貴氏
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株式会社タカラトミー マーケティング統括本部 戦略開発室 シーズ開発グループ エキスパート 米田陽亮氏
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マイクロペット。現在は発売されていない
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トミーは2002年に「マイクロペット」という小型の動物型トイを発売し、世界で1,500万個販売している。ごく小さいながら、ソレノイドアクチュエーターとLED、マイクを使った「音調認識」能力を持っていた。もちろん、ごく安いチップが使われていた。
小型ロボットの開発は、このマイクロペットをはじめとした、「マイクロ・エンターテイメント」と同社が呼ぶロードマップ上にあるものなのだという。
トミーは'91年頃に「TXR」というラジコンロボットを発売していたことがある。二足歩行はできなかったが車輪で動き、BB弾を発射するガンアームや、パンチアーム、マニピュレーター、ライトなどオプションアームをつけられる対戦可能なロボットだった。メカメカしい外観を覚えている読者も多いだろう。
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'91年に発売されたラジコンロボット「TXR」
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'84年から発売されたオムニボットシリーズ。左から「オムニボット」、「オムニボットOOM」、「オムニボット2000」
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さらに歴史をさかのぼると、トミーは'84年に「オムニボット」というロボットを発売していた。外見を見れば思い出す人は多いはずだ。今回のロボット「マイクロマシン」にも音声を再生して出力するためのスピーカーが付けられているが(渡辺氏はステレオにしたかったそうだが、残念ながらモノラルのみ)、オムニボットも内蔵したカセットテープを再生することが可能だった。また、このテープを使って動きをプログラミングすることも可能だった。今回のロボットはコンセプト的に共通点を感じる。
今回、同社が発表したロボットは、これらトミーのロボット・トイの系譜を嗣ぐロボットなのだと渡辺氏は語る。
コスト的なブレークポイントはもう1つある。自社独自開発のサーボだ。同社では「メーカーとして一気通貫で数を考えれば、安いサーボを作ることは十分できる」と判断した。1円玉ほどの大きさながらギヤ比を高く設定し、トルクは2kg・cm弱。メタルギヤを使ってギヤ欠けのリスクを減らした。ロボット全体を小さくしたことで必要なトルクを減らしたこともコストダウンに大きくプラスとなった。
● まずは所有の喜びを与えるロボット・トイ
タカラトミーが発売するとなると、どんな遊び方が想定されているのかが気になる。たとえばファイティングやキャラクターは誰でも想像できるところだ。そのあたりの詳細は未定とのことだった。だが米田氏は、「取りあえず、飾って格好いいと思ってもらうことが第一だ」という。渡辺氏も「まずは所有の喜びをもってもらいたい」とのこと。
遊ぶといっても、1日に何時間もしょっちゅういじり回すわけではないだろう、それよりはむしろ、飾っておいて眺めている時間のほうが長いのが一般ユーザーだ、というわけだ。
デザインも数十パターンが検討されたが、既存のキャラクターなどに引きずられたものが多かった。だが、元タカラの社長で現在はタカラトミー副社長を務める佐藤慶太氏の「このロボットは格好いいんだから、これでいいじゃない」という一言がきっかけとなり、ロボット本来の持つかっこよさの質感を大事にした、メカを全面に出したデザインとなったのだそうだ。少しゾイドを連想するデザインでもある。
なお、渡辺氏のイメージでは、アストロノーツ、すなわち宇宙飛行士だそうだ。同社の「リカちゃん」人形には細かい背景設定が為されているのは周知のとおりだが、このロボットも発売されるときには、宇宙探査ロボットとしての背景ストーリーが設定されるそうだ。各種オプションなども、それに合わせて発売されていくことになる。
開発が始まったのは2004年の秋、11月末のこと。「2005年の海外向け新商品プレゼンがあるから、試作機を作ってくれ」と、渡辺氏に言われた米田氏が製作に取りかかったところから始まったそうだ。当時はもちろん市販の部品を組み合わせたものだった。
しかし、そのときの試作機は今のものよりも若干大きく、社内的にもそれほどの盛り上がりはなかった。だが、他社が持っていたモーター関連の特許が切れたり、技術をじっくり考えていった結果、現在ならハイパワーのモータがより安く作れる見通しがたち、本格的にやりはじめたのだという。やはりロボットは「動きとデザインを上げないと、みんなすごいねとは言わない」(渡辺氏)そうだ。
さまざまな経験を持つ同社では、これまでのロボットトイの経験も踏まえて、「マイクロマシン」では色々な「隠し球」を用意しているという。プライベートでも、おもちゃマニアだという米田氏が、いろいろアイデアを練っているそうだ。タカラトミーならば、アイデアを実現する体力もあるだろう。
また、同社では今後これが成功すれば、ロボットを生産するノウハウを活かして、他社からの生産委託を受注するといったビジネス展開も考えているそうだ。
実際、ちょっと触っただけでも色々なアイデアが浮かんでくる商品である。オプション、キャラクター展開、部品を使った別形態のロボットへの組み替えなどなど……。一体あたりの価格が3万円しかしないのだから、気軽に購入できるし、複数台を買って何かすることもできそうだ。
「マイクロマシン」の大きな展開に期待したい。
■URL
タカラトミー
http://www.takaratomy.co.jp/
( 森山和道 )
2006/07/05 00:01
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