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「第5回ロボプロステーションチャレンジカップ」レポート【後編】
~2日目は新設部門ビューロボコンとヘビーウェイトクラスを実施


2日目の両競技の参加者全員で集合写真
 3月28日(土)・29日(日)に、ヴイストン旧社屋において実施されたロボット競技会「第5回ロボプロステーションチャレンジカップ」。初日をレポートした前編に続き、後編ではライントレース系の新設競技「Beautoロボコン」と、第15回ROBO-ONE認定大会の二足歩行ロボット格闘競技「ヘビーウェイトクラス」が実施された2日目をお届けする。


第1回の開催となる「Beautoロボコン」

 今回新設されたのが、ライントレース系の競技である「Beautoロボコン」。ヴイストン代表取締役の大和信夫氏に話を伺ったところ、現状の二足歩行ロボットに関して、せっかくスキルを身につけても、それを仕事に活かしにくいという現状が、新設した1つの理由だという。実際、BeautoロボコンはC言語によるプログラムの学習も含めて、センサーや制御などの技術の基礎を身につけられるのが特徴。しかも、ベースとして利用できるキットの1つである、ヴイストン製の台車型ロボット「Beauto Chaser」は、専用ソフト付属で5,985円とかなりお手頃(そのほか、シリーズとして、1万7,850円の台車型ロボット「Beauto」や、そのバリュー版で1万2,600円の「Beauto ライントレーサー」などもある)。親も購入して上げやすいので、小中学生でも参加しやすいといえるだろう。もちろん、こうした競技会があれば、ただ漫然と学習するよりも、上位を目指す、タイムを更新するといった目標をたてやすいので、学習や創意工夫にも熱が入るというもの。ロボット競技の人口を増やすためにも、入門カテゴリとして適しているといえるのではないだろうか。

 具体的なルールを紹介すると、競技内容としては、白地に黒で描かれたラインに沿ってロボットを走行させ、スタートからゴールまでの1周のタイムを競うというもの。ロボットを真上から見て、機体の一部でもラインが重なっていればオンラインで、機体中央からラインを踏み外しても問題ない。制限時間は5分で、その間であれば失敗しても何回でも挑戦でき、より速いタイムを目指してトライアルを重ねられる。プログラムをその場で書き換えてはダメだが、事前に用意した複数のプログラムを切り替えるのは問題なし。また電池交換や、逆に車輪を空転させて電池を減らしたり、タイヤの拭き取りを行なったりできるほか、非常手段ではあるがセンサーの角度調整なども行なえる。

 機体レギュレーションとしては、CPUボードに学習用途としてヴイストンから発売されている「VS-WRC」シリーズを使用するという点が1つ。Beauto Chaserは「VS-WRC003」がメインCPUなので、同キットを購入すればその点をクリアできる。また、何らかのセンサーを搭載して自律的にコースを走行できること、モータを使用する場合はマブチFA130モーターを使用すること、そして当たり前だがいかなる種類のリモートコントロールを使用してはならないのも条件。寸法としては、水平に置いた(走行可能な)状態で直径220mmの円筒に収まること、高さは100mm以内となっている。なお、機体はオリジナルでもOK。

 今回、寸法上の理由で本来はルール違反で出場不可の1台があったのだが、センサーが有利な位置につけられているわけではなく、むしろ大幅な重量増で速度が落ちるということで、参加選手全員が了承し、出走することになった。その辺は臨機応変で、ガチガチの競技というよりは挑戦してきたことを評価する親しみやすい競技となっていた。


Beautoロボコンは全14台が出走

 今回は、エントリーは16台だったが棄権が2台あり、全14台となった。ロボット名は以下の通りで出走順。カッコ内はチーム名(ない人もいる)と製作者名。スラッシュの後ろはベースロボット名だ。

【エントリーリスト】
1:みどくらげ(くさげさん・imokenpi)
2:RB2000SF(zenoさん)/Beauto Chaser
3:プライマリZ(大阪産業大学テクノフリーク部・motoぶちょうさん)
4:ごう転ごう(kantarowさん)/Beauto Chaser
5:KOSO-BotLT(のむむ)/Beauto Chaser
6:(棄権)
7:海賊船ペコ号(ヴィーさん))/Beauto
8:GEN(愼・しんちゃん)/タミヤ ロボクラフト リモコン ボクシングファイター
9:Robovie-XSF(zenoさん)/Beauto Chaser
10:モグラッチィ(ナッキィーさん)/Beaut Chaser
11:ベイビーユニバース(sakiaさん)/楽しい工作シリーズ
12:隊長(マサ吉さん)/Beauto Chaser
13:(棄権)
14:ザクとは違うマーク3(ガルマ仇討ち部隊・まさるくん)/Beauto Chaser
15:風兎2009LT(山口辰久さん)
16:RabbitChaser(兎小屋・桃色兎さん)/Beauto Chaser

 ふたを開けてみると、主催者サイドも思った以上に集まったということで、嬉しい驚き。しかも、Beauto Chaserなどのベースとして利用可能な台車型ロボットそのままがほとんどと予想していたそうだが、どれもこれも創意工夫にあふれ、デザイン的にも凝ったクリエイター魂が炸裂する競技会となった。今回は残念ながら芸術点は加味されないのだが、それはそれで行なえば面白そうである。

 外見的に素晴らしかったのは、完全にサイズオーバーなのだが、特例として参加が認められた「海賊船ペコ号」だ。女子中学生オペレーターのヴィーさんの機体で、シリーズの中でも最も高額なBeautoをベースにしているそうで、車体の上にレゴブロックの海賊船を載せているというもの。船は台車に完全に固定されておらず、マストの辺りを中心にして回転する仕組みで、カーブする際に遠心力で船首があちらを向いたりこちらを向いたりする。前編でも書いたが、ヴィーさんは関西圏のオペレーターであるCaptain PEKOさんに弟子入りしたそうで、これもその関連らしい。資料によれば戦利品ということである。タイムは完走できた中では最下位の9位だったが、1分37秒38という立派なタイムを記録した。


海賊船ペコ号。周囲の機体と比較するとどれだけサイズオーバーかわかるが、カッコいいからOK 正面からじゃないのでわかりづらいが、センサーは4つ Captain PEKOが乗っている

 そのほか、巨大なザクの頭部が載っかっている「ザクとは違うマーク3」、タミヤのロボクラフトシリーズ「リモコン ボクシングファイター」にVS-WRCボードを搭載したGEN、VisiONやクロイノなどロボプロ所属のロボットたちのフィギアが複数搭乗している「RabbitChaser」、ライオンとパンダなど動物たちが乗り込んでいるようなかわいい造りの「モグラッチィ」などなど、見ていて面白いものも多かった。

 ちなみに、自律クラスやヘビーウェイトクラスに二足歩行ロボットを出場させているzenoさんは、初日の夜の懇親会ではそれらのロボットをBeauto Chaserの上に立たせて出場する(高さ違反だけど)という話だったが、それぞれ顔のパーツが乗っているだけという具合。関西圏の競技会ではどこに出場してもいつもいじられ役になってしまうzenoさんは、ここでも約束が違うとばかりに周囲からブーイングを浴びていた(笑)。


どーんと載っかったザクの頭がインパクト大。ただし、重量面でかなりマイナスと思われる GENは車輪がスリップしてしまって、ゴールまでたどり着けたのだがタイムオーバー RabbitChaser。ロボプロ所属のロボットたちを搭乗していたが完走できず

モグラッチィ。小さな子供たちが喜びそうなデザイン。惜しくも4位だった 問題の(?)RB2000SF。RB2000SFは結局立っておらず、顔のみ。それでもかなり重量バランスが前のめり こちらは、Robovie-XSF。やはり顔パーツのみである。こちらはそれほどフロントヘビーではなかった模様

コースレイアウト
 コースレイアウトは、競技会の直前に公開された。2×2mのリノリウムの上に、幅約19mmの黒色の絶縁ビニールテープを貼ったものだ。スタートして、第1コーナーを左に曲がると、直角ターンが左→右→右→左と4連続で待ち構えるクランクがあり、その先がS字。難所のクランクが比較的手前に用意されているのは、ゴール直前で失敗するとタイムロスが大きいため、少しでも多くトライアルできるようにという配慮からだ。その後、左に大きめのRのカーブで180度旋回すると、ロングストレートが待つ。そして小さめのRで180度旋回(見た目はヘアピンカーブに近い)してさらに小さな左右へのカーブをクリアすると、再びロングストレート。このストレートエンドに再び左への90度ターンが待ち構えており、その後は左への大きなRで旋回し、再びロングストレート。そして最後の最後に左への90度ターンがあり、これをクリアしてしばらくするとゴールというわけだ。

 競技は、トライアル順に従って成功する選手が出てきて、なおかつタイムが縮まっていくという展開に。完走するだけでも感嘆のどよめきと拍手が巻き起こるのだが、次々とタイムが更新されていくので、まるでシナリオがあるかのように盛り上がっていく。かなりハラハラ感が出てきたのは、10番目のナッキィーさんのモグラッチィがトライアルを終え、同車が35秒89で暫定1位という辺りから。続いて登場したのが、sakiaさんのとても速そうなロケットの外見をしたベイビーユニバース。実際に速いのだが、その速さがアダとなりクランクを曲がりきれない。しかし、最後のトライアルで審判がポジションを変えてジャッジメントしたところ、クランクを無事通過。かなりオフラインに見えたが、おそらくはロケットの翼などが審判の角度からはライン上にギリギリ残っていたのだと思われる。このセーフ判定が奇蹟を呼んだか、そのあともグングンと快調に飛ばしていき、29秒99という遂に30秒を切るタイムで暫定1位となった。

 そして、その次に登場したのがアヒルがかわいいマサ吉さんの「隊長」。ウケ狙いかと思いきや、プログラミングはバッチリで、35秒57を出し僅差で暫定2位をゲット。モグラッチィが3位に押しやられた。13番は棄権で、14番のザクとは違うマーク3は第3クランクまでの到達で上位へ食い込むことができなかった。しかし、ここで登場したのが真打ち・山口さんの「風兎2009LT」。オリジナルの機体で、フロントバンパーの裏面には8個もの赤外線センサーが並ぶというかなりの本格派で、これまでも数回ライントレース系の競技で優勝経験ありという、本日一番の実力者。練習走行を見ていた人たちはすでに記録更新は間違いないという雰囲気で、本人も「目標は20秒を切ることです」と一気に10秒も縮める構え。


 いくつものプログラムを搭載していたようだが、まず一番無難な安全最優先プログラムで1本目を走ったところ、早くも22秒台。これでトップ確定で、あとは目標達成なるかどうかが見どころに。プログラムを何度も変えては走り、タイヤをふくなどしてトライアルを重ねた結果、遂に19秒63を記録! 本日ぶっちぎりの記録となった。風兎2009LTは、直線やRの大きなカーブではまったく揺らぐことなくスムーズに一直線に走り、直角ターンなどで行きすぎると急停止した上でバックしてラインを正しくたどり直すという、完成度が一段高い状態で(ほかにも「ごう転ごう」もバック機構を備えていた)、会場からどよめきが上がりっぱなし。本人的には、実は機体が高性能すぎてルール違反なのではないかと思ってかなり恐縮していたようだが、参加選手も観戦者もまったくそんなことは思ってなく、その芸術的ともいえる見事なライントレースぶりに惜しみない拍手を送っていた。

 風兎2009LTの別次元のタイムに、ほぼ1位は確定だろうと思われる状況下で登場したのが、ラストのRabbitChaser。Beauto Chaserベースで、3つセンサーを追加しているのだが、1つは車体後方に取り付けてあり、前部の3つの内の中央とその後方のものが並んで検知した時、直線と判断してスピードアップするというプログラムが特徴だ。焦点は、暫定3位の隊長が蹴落とされるか否か。直線でのスムーズさがタイムアップには絶対的に重要なポイントなので、後ろにもセンサーを持つRabbitChaserは好タイムが期待された。

 しかし、トライアルを開始してみると逆にそれがあだになってしまった。狭いクランクでも加速しようとし、そのために曲がれないのだ。もうワンテンポ置いてから加速を開始する仕組みにしておけば難なくクリアできたのではないかと思われるだけに、非常に残念。結果、タイムは計測されず、暫定順位がそのまま確定。1位が風兎2009LT、2位がベイビーユニバース、3位が隊長となった。

 ちなみに、非常に悔しがっていたのが、大阪産業大学テクノフリーク部のmotoぶちょうさん。ロボプロステーションチャレンジカップでは、過去に数回優勝しているライトウェイトクラスの実力者だが、愛機プライマリZは本番でまったくうまく走らなくなってしまい、結果が出なかった。後ほど、ロボットに修整を施した上で特別に計測したところ、28秒78を記録。幻の2位となってしまった。次回に期待したい。

【結果】
1位:風兎2009LT/19秒63
2位:ベイビーユニバース/29秒99
3位:隊長/35秒57
4位:モグラッチィ/35秒89
5位:KOSO-BotLT/38秒23
6位:ごう転ごう/47秒19
7位:Robovie-XSF/1分6秒9
8位:RB2000SF/1分7秒10
9位:海賊船ペコ号/1分37秒38
10位:GEN/ゴール手前まで到達(制限時間内に完走できず)参考タイム5分4秒98
11位:プライマリZ/制限時間内では最終コーナーまで到達、参考タイムは28秒78
12位:RabbitChaser/制限時間内では最終コーナーまで到達、参考タイムは55秒15
13位:ザクとは違うマーク3/第3クランクまで到達
14位:みどくらげ/第1クランクまで到達


3位となった隊長。アヒルがいい味を出している 【動画】隊長の走り。僅差で3位をゲットした

ベイビーユニバース。たった1回だけゴールまでたどり着けた時が30秒を切る好タイム 【動画】ベイビーユニバース、ワンチャンスをものにした2位の走り

風兎2009LT。安定して高速で走る様子から、マシンとプログラムの完成度がうかがえる 【動画】目標の20秒を切った際のトライアルの様子

Beautoロボコンの最後は、参加選手とロボットみんなで記念撮影 参加ロボットの集合写真

確実に大型化が進むヘビーウェイトクラス

 2日間に渡って開催の第5回ロボプロステーションチャレンジカップにおいて、メインイベントといえるのが、第15回ROBO-ONE認定大会となった二足歩行ロボットの大型機も参加できるヘビーウェイトクラスだ。昨日行なわれたライトウェイトクラスの機体も参加できるので、事実上無差別級である。今回は25選手が参加した。リストは以下の通り。ロボット名、カッコ内はチーム名(ない場合もある)およびオペレーター名。なお、オペレーター名はロボプロ公式サイトに登録されているロボットリストでのチェックのため、当日実際に操縦された選手とは異なる可能性もある。

【エントリーリスト】
・BBR6(チャーリーさん)
・Cyclops-x(HiRossiさん)
・GA-9(おおしまさん)
・HADES(ロボツク!・まつしろさん)
・Neutrino-NERO(飛騨神岡高校・TAKERUさん)
・Neutrino-RX(飛騨神岡高校・※)
・Robovie-XSF(zenoさん)
・RV-sensor(桑久保貞行さん)
・unfix MkII(kantarowさん)
・YOGOROZA-V(だうとさん)
・アフ・ロゥ(マサ吉さん)
・イージス(ロボットフォースさん)
・ガジェット・フロッグ(ドクター・ガジェットさん)
・九産大 朱鵬(九州産業大学ロボット工房・ムラカミさん)
・銀紙(芝浦工業大学SRDC・三島さん)
・サラマンダー(Shineさん)
・ストライク・ラゴウ(MBMの会・トモロウさん)
・ダイガック(大同大学・アキツカさん)
・ドカレッド1(ドカファイター・ドカさん)
・どるかす(芝浦工業大学SRDC猫大好き・ショウヘイさん)
・ハンマーヘッド(大阪産業大学歩行ロボットプロジェクト/テクノフリーク部・A4さん)
・ヒーホーハット(こそこそ団・のむむさん)
・福大_ジョウナン君(福岡大学2足歩行ロボットプロジェクト・ナカハラさん)
・やまぴー963(ペーターさん)
・レグホーン(NAKAYANさん)
※本名での登録と思われ、未成年のためオペレーター名を掲載しておりません


ヘビーウェイトクラストーナメント 参加ロボットとMCを務めた関西在住マルチタレント・愛須エリナさんと記念撮影

新型ロボットの紹介

 今回も数多くの新型ロボットが参戦した。少なくともRobot Watchでは初見参だ。なお、上位に進出した機体に関しては後ほど紹介するので、ここでは残念ながらそれが叶わなかった機体をお見せしよう。スペックなどの詳細は、ロボプロ公式サイトの登録ロボットリストで多くが参照できるほか、各ロボットやオペレーター、参加チームなどの公式サイトにリンクも張られているので、そちらをご参照いただきたい。

 個人的にとてもかっこよかった機体が、ロボットフォース製のイージス。スタイルのいいロボットを造らせたら抜群のロボットフォースだが、今回はスーパーロボット系ではなく、リアルロボット系の感じ。装甲をもっとつければ、そのまま硬派なミリタリー系ロボットアニメとかに出てきそうである。ただし、装甲のように見える部分は実は高級な厚紙。色味がとてもきれいな点と、軽量である点がメリット。減速機構を搭載し、トルク重視の機体としているそうだ。初日のライトウェイトクラスで、NeeBoManで優勝を勝ち取った佐々機さんが操縦したが、今回台風の目となった1機である全長80cmの大型機サラマンダー(こちらも新型だが後ほど紹介)に1スリップ差で惜しくも敗れ、ベスト16止まりとなった。


イージス。ロボットフォース製の機体。昨日優勝したNeeBoManの佐々機さんが操縦した 【動画】ベスト16第7試合の、イージス(左) vs サラマンダーの一戦

 それから、フィアスとの同型機(フィアス'LL PINKに続く3機目?)として、大阪産業大学テクノフリーク部のメンバーのA4さんが取り組んでいる「大阪産業大学歩行ロボットプロジェクト」で開発中のハンマーヘッドも、完全な新型とはいえないかも知れないが、実にバランスのいいかっこいい機体なので紹介させていただく。

 このほかの新型機体は、関東からの遠征組の芝浦工業大学SRDC所属の銀紙&どるかす、おおしまさんの機体GA-9、距離的には遠くないが交通の関係で東京よりもずっと時間をかけて遠征してきた飛騨神岡高校のNeutrino軍団、九州から遠征してきた福岡大学2足歩行ロボットプロジェクトの福大_ジョウナン君など。


芝浦工業大学SRDCの銀紙。名前の由来は、顔が銀紙で作ってあるから。前腕の形が剣のようでカッコよい 銀紙の頭部アップ

ハンマーヘッド。実はフィアスシリーズ。操縦に慣れてくれば、かなり上位進出できそうないい機体 【動画】新型機どうし、ハンマーヘッドと銀紙が対戦した一戦

芝浦工業大学SRDCのどるかす。初戦レグホーン、敗者復活でRobovie-XSFと、ベテラン相手は厳しかった 【動画】どるかすは敗者復活戦で、Robovie-XSFと対戦

GA-9。2回戦を突破したが、ベスト16でレグホーンと対戦して万事休す。ただし、いいフックを持っている 【動画】GA-9の必殺フックを見られる1回戦の対RV-sensor戦。パンチらしいパンチである

飛騨神岡高校のNeutrino-RX。2回戦でヒーホーハットと当たって敗北。もう1機のNEROは大活躍 【動画】Neutrino-RXは、1回戦第9試合で、小型機のつばめを迎えてそれに勝利

福大_ジョウナン君。福岡大学2足歩行ロボットプロジェクトで製作された1台 【動画】福大_ジョウナン君は、敗者復活戦に回ってCyclops-xといい試合を展開するも、不運に見舞われ……

 それから、すでに知られた機体だがHADESの闘いぶりもお伝えしたい。なんと、整備中に片腕がもげてしまい、敗者復活戦に回って対イージス戦を迎えることに。オペレーター・まつしろさんは「もののふの死に様というものを見せつけたいと思います!」と、半分破れかぶれ(?)ながら、鎧武者姿のHADESらしいコメント。痛々しい姿だが、敢闘賞ものの奮戦ぶりをご覧あれ。


腕がもげてしまったHADES。連戦を重ね、疲れが溜まっていた模様 【動画】対イージス戦。体格的には変わらないので、片腕がないのは厳しい

新型が3機も入ったベスト8レポート

 1回戦から勝ち進んだ選手、敗者復活戦から進出した選手が2回から3回の勝負を経て、ベスト8(準々決勝)に進出。さすがにここまで来ると、競技会の規模の大小こそあるものの、全国各地の大会で優勝、もしくは上位進出で活躍している機体が多くなってくる。しかし、今回初登場と思われる(少なくともロボプロ関連の競技会には初参加)ドカレッド1とサラマンダーは前者がお父さん、後者が息子さんの親子で操縦しているのだが、台風の目となって大暴れした。ドカレッド1は70cm、サラマンダー80cmの身長はなかなか迫力がある。

 また、飛騨高山からやってきた高校生のNeutrino軍団の1機、NEROも大活躍だ(本当は、RX、NEROのほかにBLUEも参戦予定だった)。ベスト8第1試合はYOGOROZA-V vs ドカレッド1、第2試合はレグホーン vs ダイガック、第3試合はヒーホーハット vs Neutrino-NERO、第4試合はサラマンダー vs unfix MkIIだ。


YOGOROZA-V。関西2強のロボット ドカレッド1。大暴れの超大型ロボット 【動画】準々決勝第1試合、YOGOROZA-V(左) vs ドカレッド1

レグホーン。関西ナンバー1といっていいナニワのニワトリケンカ番長 ダイガック。大同大学ロボット部所属で、SRCクラスの機体ながらヘビーウェイトのロボットとも互角に渡り合う。左肩が故障中 【動画】準々決勝第2試合はレグホーン(左) vs ダイガック

魔法使いっぽいけど、舌を出している感じがホラー系キャラ(?)のヒーホーハット Neutrino軍団のエース、NERO。ボディの一部にカーボンパーツを使用するお金のかかった1体 【動画】準々決勝第3試合はヒーホーハット(左) vs Neutrino-NERO

サラマンダー。今回出場した機体の中で最大の機体。今後、さらに大暴れしそうだ unfix MkII。地元関西のロボットの1機。体格差を乗り越え、果敢にサラマンダーに挑んだ 【動画】準々決勝第4試合、サラマンダー(左) vs unfix MkII

新鮮な対決となった準決勝レポート

【動画】準決勝第1試合、ドカレッド1(左) vs レグホーン
 準決勝第1試合は、HADES、福大_ジョウナン君、YOGOROZA-Vを打ち破ったドカレッド1と、どるかす、ガジェット・フロッグ、ダイガックを打ち破ったレグホーンの一戦。新参の大型機がナニワのケンカ番長を倒すのか、それとも番長が底力を見せて体格差を超えてドカレッド1を倒すのか!? これが優勝戦であってもおかしくないカードとなった。試合は、これまで3戦ノーダウンのドカレッド1を遂にレグホーンが倒すことに成功。しかも、この時、リング際ギリギリだったため、起きあがれず落下。これで対ドカレッド1に対する戦法がつかめたか、リングアウト作戦をレグホーンが取っていく。2本目も逆地獄突きの「手羽スラッシュ」でリング外に突き落とす。3本目も手羽スラッシュの連打で、腰を落として防御しているドカレッド1を強引に押していき、リング外に叩き落として勝利となった。驚異の大型機のドカレッド1だったが、意外と足裏にかかる接地圧が少ないようで、押されると滑ってしまうという弱点を露呈。次は、その対策が必要といえそうだ。


【動画】準決勝第2試合、Neutrino-NERO(左) vs サラマンダー
 第2試合は、福大_ジョウナン君、やまぴー963、九産大 朱鵬と、大学ロボットを3連破(しかも2台が九州勢)した飛騨神岡高校の生徒TAKERUさんのNeutrino-NEROと、ドカレッド1のドカさんの息子のShineさんが操るサラマンダーの対決。Neutrino-NEROはカーボンパーツを利用している点が特徴、サラマンダーはドカレッド1の一回り大きい全高80cmという機体。Neutrino-NEROの倍はある身長のサラマンダー。その巨体でサラマンダーが押し切るか、Neutrino-NEROが臆せず果敢に懐に潜り込めるか。第1試合でレグホーンが戦い方の見本を見せたのは、Neutrino-NEROにとってかなりプラスになりそうだ。しかし、準決勝ともなるとさすがに負荷が大きくなってくるのか、サラマンダーは1スリップをしてしまい、しかもそのまま立ち上がれなくなり、タイムを取って1ダウン。Neutrino-NEROに取っては光明が差してきた感じだ。

 試合再開となり、サラマンダーの容赦ない両腕ピストンパンチや、シングルのパンチがNeutrino-NEROを襲う。ガチンガチンと金属を叩く音が響き、かなり威力がありそうだが、Neutrino-NEROも腰を素早く落とし、それらを裁いていく。そしてスキを見るや懐に飛び込み、攻撃を加えると、偶然サラマンダーがパンチを繰り出した瞬間にカウンターでその腕をとらえ、それでダウン。半分の身長のロボットが、サラマンダーを2ダウンまで追い込む予想外の展開となった。この後はリング外に落とすべく、リング際に追い込んでいく作戦をとり、結局Neutrino-NEROが決勝進出となった。なお、レグホーンが出場権を持っている関係で、2位、3位に第15回ROBO-ONE出場権が与えられる。よって、Neutrino-NEROが目標としていた出場権を見事ゲットした。もう1つは、親子対決となった3位決定戦の勝者に当てられる形だ。


3位決定戦&決勝戦レポート

【動画】3位決定戦、ドカレッド1(左) vs サラマンダーの親子対決。ロボプロでは親子対決は初めてとか
 3位決定戦は、親子対決となった。ロボットは、どちらもドカさんが製作しているそうなので兄弟対決というわけだが、ドカレッド1が小さく見え、もうこのクラスになってくると明らかにこのリングサイズでは狭い。試合は、やはり肉親同士の闘いは難しいのか、サラマンダーの方が手数が少ない感じ。一方のドカレッド1は両腕ピストンパンチを結構出しているので、息子さんの方が少々お父さんに頭が上がらなくて(?)闘いにくかったのかもしれない。それとも、動きに精細を欠いていたような気もするので、バッテリ切れの可能性も考えられる。さらに、前述したように狭いので落ちないようにするのが精一杯だったということもあるえるだろう。またはうがった見方だが、どちらが勝っても第15回ROBO-ONE出場権を獲得できることから、無駄なダメージを負わないようにサラマンダーが一歩引いていたのかも知れない。どちらにしろ、サラマンダーが1ダウンに2スリップで、計2ダウンとなり、勝利はドカレッド1に決定した。もっと広いリングで、思う存分激突してもらいたいところである。

 決勝戦は、レグホーン vs Neutrino-NERO。どちらも大型機を破っての決勝進出だけに、好勝負が期待された。しかし、レグホーンのオペレーターのNAKAYANさん、新人選手に対する厳しさを叩き込むことにしたようで、開始早々うかつに近づいてしまったNeutrino-NEROに対して手羽スラッシュをクリーンヒットさせ、5秒と経たないうちに1ダウンを奪取してしまった。ちょうと同じぐらいの体格で、手羽スラッシュのヒットポイントが胸と押しやすい場所(先ほどのドカレッド1の場合、装甲のないフレームだけの脚を狙うので、手先が挟まってしまったりしていた)にあるので、攻撃しやすいのもあったようだ。20秒弱で2ダウン目を奪い、一気に王座にリーチをかける。

 その後、さすがに後がなくなったNeutrino-NEROは距離を取って後方に回り込むようにしつつ攻撃を仕掛けていくが、レグホーンはびくともしない。王者の構えでNeutrino-NEROに好きなように攻撃させた後、手羽スラッシュ。クリーンヒットというよりはクリティカルヒットで、吹っ飛んだNeutrino-NEROは場外に落ちてしまい、1分未満であっという間の決着となった。いつもは魅せる闘い方をするNAKAYANさんだが、いつになく厳しい闘い方。「世の中にはまだまだ上がいるんだ!」という、愛のムチだったのだろう。


【動画】決勝戦、レグホーン(左) vs Neutrino-NERO。レグホーンの手厳しい闘い方だった ヘビーウェイトクラス結果

 結果、優勝:レグホーン、準優勝:Neutrino-NERO、3位:ドカレッド1、4位:サラマンダー。やはりレグホーンは強かった。当分の間、関西ナンバー1の座は渡さないことだろう。ちなみに、初日夜の懇親会でじっくり話を伺ったところ、以前から話に出ている新型機の開発の目処が立った、ということだ。ただし、レグホーンもオリジナルだが、新型機も一から徹底的に造り込むようなので、もうしばらくかかるそうだ。まったく違うキャラクターにするということだが、レグホーンに負けない、子供たちにも受ける素晴らしいロボットを創造してもらいたい。

 今回は、要チェックの新型機も多数登場し、また新部門のBeautoロボコンも実施され、見応えのある2日間だった。そして今回で、ヴイストン旧社屋での開催も最後。常連のオペレーターの方々は、ちょっとさみしいものも合ったのではないだろうか。なお、新社屋はオフィスビルのため、今後は会場を借りて行なう形になるという。

 ちなみに競技会ではないが、毎月恒例の交流・練習会「ロボプロステーション」のVol.18が5月24日(日)に実施されるが、JR環状線および大阪市営地下鉄中央線弁天町駅に近い弁天町市民学習センターで行なわれる予定だ。今後、ここが常打ち会場となるのかはわからないが、会場を借りてロボプロステーションチャレンジカップも続けていくとしている。楽しみに第6回を待とう。


URL
  ロボプロステーション
  http://www.robo-pro.net/
  ヴイストン
  http://www.vstone.co.jp/top/j_top.html

関連記事
「第5回ロボプロステーションチャレンジカップ」レポート【前編】
~初日は自律&チャレンジ&ライトウェイトの3クラスが開催(2009/04/08)



( デイビー日高 )
2009/04/10 20:44

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