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レゴ、小学校低学年を対象とした「レゴ エデュケーション WeDo」発表
~ロボティクスを本格的に学べる新教材


横断的かつ総合的に学べる、小学校低学年からのロボット教材

【写真1】新しい体験型ロボット教材「レゴ エデュケーション WeDo」。写真はワニのモデルを組み立てたもの
 レゴ エデュケーションは3月26日、東京ミッドタウン・タワー5Fのデザインハブリエゾンセンターにおいて、小学校1年生からロボティクスを本格的に学べる新教材「レゴ エデュケーション WeDo」【写真1】を発表した。

 ロボット学習教材として親しまれてきた「レゴ マインドストーム」は、すでにグローバルで100万台が出荷され、レゴのロボット大会も世界45カ国12万人の子供たちが参加。海外で35,000以上、国内では3,000以上の教育機関で導入されている。今回新たに発表されたレゴ エデュケーション WeDoは、このレゴ マインドストームに次ぐ体験型ロボット製品として位置づけられるもので、学校専売品として今年の7月から販売される予定だ。従来のターゲット層から外れていた小学校低学年からの学習をサポートし、教科の枠を超えて、横断的かつ総合的に学びを加速できる教材だという。

 たとえばカリキュラム例として、歯車・てこ・滑車・モーターなど簡単な伝達機構の観測や計測、動くモデルの設計と組み立て、ソフトウェアを活用した動きや反応のプログラミング、加減乗除・予測・確率・変数の活用、話・文章の記述、ストーリーテリング、説明・質問・解釈の仕方など、「サイエンス」「テクノロジー」「数学」「リテラシー」について、子供たちが社会に出てから必要とされる創造的思考力、問題解決力、チームワーク力といったスキルを自発的な学習プロセスによって習得することができる。


低学年の小学生が1時間足らずで完成度の高いロボットを製作

【写真2】レゴ エデュケーション日本地区マネージャーの樺山資正氏。新教材の概要とデモンストレーションを実施
 レゴ エデュケーション日本地区マネージャーの樺山資正氏【写真2】は「子供が本当に夢中になって何かをつくりあげるとき、その過程で学んだことは、誰かに言われて学んだどんな教えよりも深く沁み込んでいく」とし、「作ることで学ぶ、楽しく遊びながら学ぶ」というレゴの教育理念とレゴ エデュケーション WeDoの概要について説明した。

 まずレゴ エデュケーション WeDoの大きな特徴は、ロボット教育の低年齢化に対応し、小学校1年生から本格的に学習できるように工夫されている点だ。レゴ エデュケーション WeDoは3つの製品で構成されている【写真3】。合計158種類の部品が同梱された「9580 レゴ エデュケーション WeDo 組み立てセット」(税込み価格18,900円)【写真4】、ドラッグ&ドロップ方式で、直感的にプログラミングが可能な「2000095 レゴ エデュケーション WeDo ソフトウェアv1.1」(7,980円)、4つのテーマと12種類のモデル組み立てのガイドなどが含まれる「2009580 レゴ エデュケーション WeDo アクティビティガイド」(税込み価格7,980円、複数インストール時は別途ライセンス料35,280円が必要)が用意されている【写真5】。


【写真3】レゴ エデュケーション WeDo。 組み立てセット、ソフトウェア、アクティビティガイドの3製品が用意されている 【写真4】「9580 レゴ エデュケーション WeDo 組み立てセット」。各種ブロック、センサー、モータ、USBハブ、部品一覧カードが同梱 【写真5】「2000095 レゴ エデュケーション WeDo ソフトウェアv1.1」(写真左)と「2009580 レゴ エデュケーション WeDo アクティビティガイド」(写真右)

 組み立てセットは、女の子でも興味が持てるように、カラフルなブロックになっている。ブロックのほかにパワーモータ【写真6】、モーションセンサー【写真7】とチルトセンサー【写真8】、レゴUSBハブ【写真9】が1個ずつ付いている。教材の最大の特徴は、実はこのUSBハブにある。従来のRCXやNXTのような独立したコントローラーによる制御ではなく、専用USBハブをノートパソコンなどに接続し、パソコンからUSBハブ経由でモータやセンサーに電力を供給し、ロボットを制御する形になっている【動画1】。これにより製品コストが抑えられ、同時に取り扱いも容易になった。「IT環境として低価格なネットブックにも対応することで、デジタルデバイドが叫ばれる開発途上国での利用も視野に入れた。教材の初期導入コストが抑えられる」と樺山氏は説明する。


【写真6】組み立てセット同梱品その1、パワーモータ。動作電圧9V、回転数(無負荷)約410rpm、トルク140N・mm以上の中型タイプ 【写真7】組み立てセット同梱品その2、モーションセンサー。15cm以内にある物体を感知することが可能だ 【写真8】組み立てセット同梱品その3、チルトセンサー。上下・左右の傾き、傾きの有無などを感知するもの

【写真9】組み立てセット同梱品その4、レゴUSBハブ。パソコンのUSBポートとつなぎ、レゴ側のモータやセンサーに電力や送ったり、データを送受信してロボットを制御する。2つのポートがあり、モータやセンサーを接続できる 【動画1】ロボットの制御は、パソコン経由で行なわれる。従来のような独立したCPUコントローラがないぶん価格も抑えられる。写真はサッカー観戦客のロボット。カムによる動作で上下に首を動かす

 またソフトウェアについても「必要なものだけに機能をそぎ落とし、7歳の子どもでも感覚的にプログラミングが行なえるようにした」(樺山氏)という【写真10】。ソフトウェアは、ナショナルインストゥルメンツ社の「LabVIEW」をベースにしたもので、従来と同様にモータやセンサーなどのアイコンを並べながら直感的にプログラミングが可能だ。オブジェクトのプロパティなどは必要なものだけに絞り込まれ、よりシンプルに扱いやすくなっている【動画2】。パラメータ設定もクリックだけで変更できる。またメール受信でもイベントが発生するため、複数のPC同士(ロボット)で制御の連動が可能だ。スタートガイドには、歯車やてこの原理、センサーやモータなどの使い方など、組み立てやプログラミングのヒントも含まれている【写真11】。


【写真10】最近流行の安価なネットブック、ASUSの「EeePC」を利用。プログラムを組んで、ロボットを制御しているところ 【動画2】画面下の基本アイコンをドラッグ&ドロップしながらプログラミング。7歳の子どもでも感覚的に操作できる。モータ、センサーのコントロールのほか、キーボードからの入力、サウンド発生、メール受信でのイベント発生も可能だ 【写真11】スタートガイドの画面。センサーやモータなどの使い方など、組み立てやプログラミングのヒントも満載

 一方、アクティビティガイドの内容についいては、授業で取り組みやすいように、「面白い仕組み」「野生の動物たち」「サッカーゲーム」「アドベンチャー・ストーリー」という4つのテーマがあり、12種のモデルの組み立てガイドなどが含まれる。アニメーションによるイントロ部もあり、学習への取り組み意欲をかきたてる工夫も随所でなされている【動画3】。このガイドに沿ってレゴを組み立てていくことで、センサーを組み込んだ飛行機【写真12】【動画4】やワニ【写真13】【写真14】【動画5】などを楽しみながら製作できるようになっている。


【動画3】アクティビティガイドに含まれるアニメーション。子どもたちがモチベーションを高め、学びの動機や課題を明確にする工夫も 【写真12】アクティビティガイドの内容に従って製作した飛行機ロボットの例。チルトセンサーが組み込まれている 【動画4】飛行機ロボットのデモ。チルトセンサーによって飛行機の傾斜を検出し、プロペラ速度が一定あるいはランダムに変化するようにプログラミング

【写真13】アクティビティガイドの内容に従って製作したワニロボットの例。モータの動力をプーリーに伝達して口を閉じる構造 【写真14】口の奥にはモーションセンサーがあり、口の前で手をかざすと、口が閉じるようにプログラミング 【動画5】実際の反応。手をかざすとモーションセンサーが反応。イベントが発生したらモータを動かして口を閉じる。タイマーで一定時間が経過したら、モータの回転を反転させ、口を開く

 実際に発表会では、小学校2、3年生の子どもたちが、本教材を使ってロボット製作に取り組み、その成果を発表した【写真15】【写真16】【動画6】【写真17】【写真18】。子どもたちは顔見知りではなく、今回初めて出会ってチームを組んだ。約半数がレゴも未経験だったが、作業を分担し、お互いに協力し合って、しっかりしたロボットをつくり込んでいた。わずか1時間足らずの間に、楽しみながらロボットをつくってしまう子どもたちの潜在的な能力に少々驚いたが、レゴ エデュケーション WeDoの効果がうかがい知れる一幕でもあった。

 製品発売前までの活動については、千葉市科学館を皮切りに、新潟県立自然科学館、e-とぴあ・かがわ、日本科学未来館などで「レゴ エデュケーション WeDoワークショップ」が開催される予定だという。また、CREFUS(株式会社ロボット科学教育)でも、4月下旬より本教材を取り入れたカリキュラムを4つの教室で開始するそうだ。


【写真15】子どもたちのプレゼンテーションの模様その1。サッカーロボットを分担して製作したという 【写真16】製作したサッカーロボット。手前がシューター用ロボット、中央がディフェンス用ロボット、奥が観客用ロボット 【動画6】サッカーロボットのデモ。シュートが決まるとボールの通過に反応して観客が反応するなど、さまざまな応用が可能。デモではディフェンスが上手でシュートが決まらなかった

【写真17】子どもたちのプレゼンテーションの模様その2。飛行機ロボットとワニロボットを製作し、ストーリー性を持たせる内容にした 【写真18】近づいてきた飛行機に2匹のワニが噛み付いているという設定らしい

クリエイティブな学びのスパイラルで学習効果を高める!

【写真19】マサチューセッツ工科大学(MIT)のミッチェル・レズニック准教授。本教材の開発を初期から手がけてきた人物
 今回の発表会では、マサチューセッツ工科大学(MIT)のミッチェル・レズニック准教授が招聘され、「未来の子どもたちに必要な学び」をテーマにした講演も行なわれた【写真19】。同氏は、本教材のチーフアドバイザーとして、3年間にわたり製品開発を手がけてきた人物。MITメディアラボで「より創造性の高い社会の種まき」をスローガンに活動している「Lifelong Kindergartenグループ」の推進者でもある。

 同教授は「子供たちが何を多く知っているかということではなく、得た情報をいかに活用するできるかという知恵が重要だ。いかに知識を使えるかという点がクリエイティブな社会において成功のポイントになる」と述べ、より低学年の子供たちが、将来クリエイティブな社会で成功を収められるように、レゴ エデュケーション WeDoを開発したという。この教材は、従来のような知識詰め込み型の学習ではなく、「クリエイティブな学びのスパイラル」によって学習効果を発揮できる工夫がなされている。

 子どもたちがクリエイティブに物事を考えられるようにするためには、まずイマジネーション(想像)が大切だ。生まれてきたイマジネーションを基に、何かを生み出すステップに踏み出せるからだ。さらに、実際に製作物を利用して遊ぶことも重要だという。子どもたちは、こうした遊びの中からさまざまなアイデアを共有していく。そして、なぜこのロボットを製作したのか? など、教育者や親が質問を投げかけることで、子どもたち自身の行為を振り返り、学びを再構築できるというわけだ。


【写真20】イメージ、創造、遊び、共有、振り返り、という一連のプロセスを繰り返す「クリエイティブな学びのスパイラス」が重要だと説く 【動画7】クリエイティブな学びのスパイラスを実現できるレゴ エデュケーション WeDoのプロモーションビデオ

 レズニック准教授は、クリエイティブな学びのスパイラルによるプロセスとして、レゴ エデュケーション WeDoを利用した8歳の女の子の学習例を挙げた。この女の子は動物が好きだったため、まず始めに多くの動物が生息する池をイメージした。それがワニのロボットを製作する動機になった。次にワニのロボットで遊ぶために、ワニの口が開くような仕組みを考え、プログラムでモータを動作させるようにした。またストーリーも考え、人が近づくと噛み付く「意地悪なワニ」という設定にした。そこでモーションセンサーによって、物体が近づくと口が閉じるようなアイデアを思いついたという。

 ここで、できあがったアイデアを友達に話すと、彼女は別のアイデアを持っていたため、お互いにそれをシェアし、共同作業を始めたという。そして今度は「意地悪なワニ」から「フレンドリーなワニ」へシナリオが変化していったそうだ。ワニが人に噛み付くのではなく、キスをするという設定にして、ロボットを製作したそうだ。しかし、ここで彼女らはいったん自分たちのプロセスを振り返ることで「ワニは本当にキスをするの? ワニに家族はいるの?」など、いくつかの疑問がわき、Webサイトで疑問点を調べた。これにより、彼女らはさらに深く動物について学ぶようになったという。

 このようにレゴ エデュケーション WeDoを導入することで、「物事をクリエイティブに考える、系統立てて論理的に考える、さらに協力して取り組む、という3つのスキルが活動の中から生まれてくる」とレズニック准教授は説く。そして「これらはクリエイテイブな社会で成功し、幸せをつかむために重要なキーとなるもの」として、講演を締めくくった。

LEGO, the LEGO logo and WEDO are trademarks of the LEGO Group. (C)2009 The LEGO Group.


URL
  レゴ エデュケーション
  http://www.legoeducation.jp/

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( 井上猛雄 )
2009/03/30 15:19

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