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「第1回 姫路ロボ・チャレンジ ミニ」レポート
~技術講習会と競技で、参加者のレベルアップを目指す


 3月21日(土)、姫路市市民会館において「第1回姫路ロボ・チャレンジ ミニ」が開催された。主催は、姫路ロボ・チャレンジ実行委員会。

 姫路ロボ・チャレンジ実行委員会は、2005年から冬と夏の年2回、姫路科学館を会場に「姫路ロボ・チャレンジ」を実施してきた。初心者も楽しく参加できる競技会であると同時に、レベルの高い自律競技もあり、姫路ロボ・チャレンジは全国から二足歩行ロボットビルダーが集う大会に成長した。そして、姫路市を中心に近隣の小中高や社会人にも、ロボット製作者が増えつつある。

 そうした中で、「年2回の競技会だけでは、物足りない。もっと技術交流する機会がほしい」という声があがり、ミニ競技会「姫路ロボ・チャレンジ ミニ」が企画された。競技参加者のレベルアップを主目的とし、技術講座も設けた。年間を通じたポイントランキング制を取り入れ、12月に年間チャンピオンを選出する。


第1回姫路ロボ・チャレンジ ミニ。クロガッパ VS ocean boy の対戦 近隣からロボットビルダーが集まった 姫路市市民会館

技術講座で自律競技とロボカーナの攻略方法を伝授

 第1回目の技術講座は、この春に飾磨工業高校を卒業したあらしば氏と、姫路工業高校のはっし~氏が講師となった。両名は姫路ロボ・チャレンジの常連で、毎回上位の成績をおさめて各校のメンバーを牽引してきた。


あらしば氏(飾磨工業高校金属実験部OB) はっし~氏(姫路工業高校)

 最初にあらしば氏が、自律競技「さがしてポン」の攻略方法について解説をした。「さがしてポン」は、リング上に置かれた大小3つのボールをロボットが見つけて落とす競技だ。制限時間は3分間。ロボットがリングから落ちた時点で終了となる。

 あらしば氏は、前回の姫路ロボチャレンジで自律競技に初挑戦している。KHRで姫路ロボ・チャレンジに参加するまでは、プログラムの勉強をしたことがなく、学校内で自律プログラムを作成している人は他にいないため、手探りで取り組んでいるそうだ。

 そのため、ロボットを自律で動かすために最初は何をしていいのかわからなかったという。そこで、「もし、自分がボールを見つけるとしたらどう動くか?」と考えてメモを取ったそうだ。次にメモした動きを「前進」「回転」「後退」「キック」、センサーの働きを「ボール確認」「地面確認」といった具合にパーツに分類。それぞれの動きを小さなパーツと考えてプログラムを作成した。最後に競技に応じて、そのパーツを組み合わせ、自律動作を実現したそうだ。

 あらしばさんは、「大切なことは、センサーの特性を理解すること。そして、ケーブルが断線や接触不良していると、センサーと正しい通信ができないのでしっかりとした配線をすること」と注意を促した。「さがしてポン」を自律でクリアするためには、最低限ボールを見つけるセンサーとリングを見るものがあればOKだという。そして「何よりも、完成したら必ず動かして動作を確認し調整を繰り返すことが大切です」と締めくくった。

 その後の競技会で、あらしばさんの「あすら」は大・中2つのボールを落とすことに成功した。前回と比較すると、ボールの発見がかなり早くなっているようだった。これは、左足の踵にセンサーを1つ取り付けたからだという。胸元のセンサーと踵のセンサーで旋回しながらターゲットを探し、遠くにある時は前進でボールの近くまで行くが、踵がすぐ近くのボールを見つけた時には、そのままバックで近づきキックしていた。ロボットの動きを見ても、以前より複雑なプログラムになっていることがわかる。また、あらしばさんがあすらの自律モーションを見守っている時の様子からも、しっかり作り込みしてきたことを感じた。


自律競技「さがしてポン」のサンプルプログラム 自律プログラム作成のポイント 【動画】あすら(あらしば氏)の「さがしてポン」。前回よりターゲットの発見が早く確実になっていた

 続いて、はっし~氏が前回優勝タイムをたたき出した「ロボカーナ攻略のポイント」についてレクチャーした。ロボカーナはクランクやカーブ、直線で構成された5mのコースをロボットが走るタイムを競う競技だ。コースの素材はパンチカーペットだが、ゴールの手前にはゴム板のスロープが設置されている。

 はっし~氏は、ロボカーナ攻略には3つのポイントがあるという。1つ目はロボカーナ用の移動プログラムの作成で、クランクやカーブを効率よく走行するためにシームレスな歩行が必要だという。特にターンする際には、微妙に旋回しつつ前進するプログラムがあると有効だ。そしてタイムを競う競技のため、1度の転倒が大きなダメージとなる。そのため、不安定な最速の歩行ではなく、スピード的には劣っても絶対に転ばない安定した歩行で確実にクリアすることが重要だと強調した。

 2つ目のポイントは、ロボットには個体特有の癖がある点を指摘した。調整やプログラ無修正で癖を修正できなければ、オペレータがその癖を掴み操縦でカバーしなくてはならないという。3つ目として、大会当日に実際のコースを走らせることが重要であるとアドバイスした。最後に「競技前に本コースを何度も試走し、コースの特性を身体で覚えて、自分のロボットが最も安定して走行できるコースを見つけなくては最速は望めません」と、講演を締めくくった。

 はっし~氏の講演が終わった後、小学生や高校生が早速、ロボカーナのコースで試走を初めていた。今回のはっし~氏のロボカーナの記録は31秒だった。競技前に「講義した手前、失敗すると恥ずかしいんですが」と笑いながらの走行だったが、2位に20秒以上差をつけた記録だ。しかしはっし~氏にとっては「今日はスロープがないから、もうちょっといい記録が出せる筈なんだけど……」と、満足とはいかないようすだった。


ロボカーナコースの見取り図 攻略ポイント1:ロボカーナ向きの移動プログラム作成 【動画】ロボカーナで優勝したエクセリオン(はっし~氏)。記録は31秒

 両名の話は、実体験に基づいていてとてもわかりやすかった。とはいうものの飾磨小学校のメンバーにはちょっと難しすぎるのでは? と心配だったが、一番前の席でちゃんとポイントをメモ取りながら聞いているのに感心した。


さっそく、ロボカーナの練習に励む参加者達 他の参加者のロボット動きも熱心に研究していた

交流と練習が主目的の競技会

 午後には「ロボカーナ」「さがしてポン」「バトルゲーム」の3競技と、ランキングには無関係の「団体戦」が行なわれた。もともと「ロボカーナ」と「さがしてポン」はスタンダードクラス用の競技のため、チャレンジ ミニでは、自由参加となる。

 ロボカーナは前述の通り、はっし~氏のエクセリオンが優勝。記録はゴールしたタイムを計測し、タイムアウトの場合は、走行距離を目算しているため参考記録となる。

【ロボカーナ リザルト】
順位ロボット名製作者記録ポイント
1位エクセリオンはっし~31秒3p
2位シャボザックシャボルト52秒2p
3位スケアクロウおぢさま75秒1p
4位ブラックヂャップリンK86秒-
5位あすらあらしば103秒-
-プレジデント飾磨工業高校金属実験部4,750mm-
-penpenN3S2,500mm-
-ソボットイインチョウ2,500mm-
-クロガッパタカミ2,200mm-
-ocean boy南部俊1,750mm-
-カレントN3S1,750mm-
-イーグルーうじ1,750mm-
-シカタン飾磨小学校ロボットクラブ1,200mm-
-プロト飾磨工業高校金属実験部750mm-


 自律競技の「さがしてポン」は、姫路ロボ・チャレンジでは二足歩行ロボットに限られているが、チャレンジ ミニでは車輪や四足歩行ロボットの出場もOKだ。今回は、実行委員の増本氏がキャタピラ式ロボットで挑戦した。テストの時にはうまく動作していたが、本番ではボールを発見するものの落とすことができなかった。

 「第7回大会 2008年冬の陣」のエントリークラスでデビューして総合優勝したシャボルト氏のシャボザックは、自律競技に初挑戦し見事に課題をクリアした。実は、リング端を検知する“落ちまセンサー”は搭載していないそうで「今回はラッキーでした」と謙虚に喜んでいた。シャボルト氏は、今回は全競技で2位に入賞している。今年からエキスパートクラスに参戦を宣言しているので、今後の活躍が楽しみだ。

 プレジデント(飾磨工業高校金属実験部)も自律競技にチャレンジした。プレジデントのベースは、姫路科学館で開催されるロボット教室の教材にもなっているGogic5だ。Gogic5は、入門者向けの機体と思われがちだがCPUボードは各種センサーを搭載できる拡張性を有しており、こうして自律競技にも対応できる。今回、プレジデントはボールを落とすことはできなかったが、リング端を検出して後退していた。旋回が大きすぎて、残念ながらリングから落ちてしまったが、頭を下げて足下を確認しながら歩く姿がユーモラスで可愛かった。


【動画】「さがしてポン」に初挑戦したシャボザック(シャボルト氏)が、ミッションクリア 【動画】プレジデント(飾磨工業高校金属実験部)の挑戦。Gogic5はオプションのセンサーを搭載して、自律プログラムを作ることもできる 【動画】姫路ロボ・チャレンジミニでは、キャタピラ型ロボットでも自律競技に挑戦できる
【さがしてポン リザルト】
順位ロボット名製作者クリア記録ポイント
1位エクセリオンはっし~大・中・小29秒9p
2位シャボザックシャボルト大・中・小106秒8p
3位あすらあらしば大・中-4p


 一番人気競技は、やはりロボットバトルゲームだ。優勝したのは中村三姉妹の末っ子まりんさんが操縦するカレントだった。完成したばかりのロボットで、バトルの練習する時間はなかったというが、1回戦でエクセリオンに勝った後とんとんとトーナメントを勝ち上がった。

 決勝戦前のインタビューでは「優勝したいです!」と力強くコメントして試合に臨んだ。対戦相手のシャボルト氏は、可愛いロボットとオペレータ相手にかなり戦いづらそうだった。ロボットバトルゲームを制するためには、ロボットの性能以上にオペレータのメンタル面も鍛える必要がありそうだ。


【動画】決勝戦は、カレント(N3S) VS シャボザック(シャボルト氏)。カレントの攻撃ポーズがカッコイイ 優勝したカレント(N3S) ロボットバトルゲームトーナメント結果
【ロボットバトルゲーム リザルト】
順位ロボット名製作者ポイント
優勝カレントN3S3p
準優勝シャボザックシャボルト2p
ベスト4シカタン飾磨小学校ロボットクラブ1p
ベスト4XO3Ryuya1p


 競技の結果、総獲得ポイントはエクセリオン(はっし~氏)とシャボザック(シャボルト氏)が12pで同点となったが、ロボカーナとさがしてポンで優勝したエクセリオンが今回の総合優勝となった。


次回は5月に開催。年間ポイントによりチャンピオンを競う

 姫路ロボ・チャレンジ実行委員会は、今年から年間を通じ獲得ポイントを競うポイントランキングを取り入れた。ポイント対象となるのは、姫路ロボ・チャレンジと姫路ロボ・チャレンジ ミニで実施した競技だ。次回は、5月24日(日)にチャレンジ ミニの第2回大会が開催される。


URL
  姫路ロボ・チャレンジ ミニ
  http://www.sk-pang.co.jp/robochamini/
  姫路ロボ・チャレンジ
  http://www.city.himeji.lg.jp/atom/robo/robo_challenge/index.html

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( 三月兎 )
2009/03/26 15:50

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