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シリーズ全作を網羅した「ターミネーター展」開催レポート
~デザイナー リチャード・J・ランドン氏インタビューも収録


ターミネーターシリーズで撮影に使われたさまざまなプロップスが集結した展示会だ
 日本科学未来館では3月19日(木)より6月28日(日)までの3カ月以上に渡り、企画展として「ターミネーター展 戦いか、共に生きるか? ~ロボットとボクらの未来~」が開催されている。それに先立ち、18日には内覧会が実施された。その際、スペシャルゲストとして、レガシー・エフェクト(旧スタン・ウィンストンスタジオ)のキー・メカニカル・デザイナーで、映画「ターミネーター」シリーズ4作の制作すべてに関わってきたリチャード・J・ランドン氏も来日。昨年6月に急逝したハリウッドのVFXの鬼才といわれた故スタン・ウィンストン氏率いるスタジオに所属している人物だ。今回も複数の媒体での合同インタビューとなったが、その模様も合わせてお届けする。

 また、ターミネーター展(以下T展)のZONE-4においては、千葉工大fuRoのHalluc IIなどのデモンストレーションも実施された。そのほか、元プロレスラーの高田延彦氏がターミネーター展応援団として来場、ランドン氏に展示されている各種プロップス(映画撮影用の小物)などの解説をしてもらったほか、T-800型のエンドスケルトン(内骨格)・ロボットとのツーショットなども披露していた。


ターミネーターシリーズの撮影で実際に使われたプロップスが集結

 T展の会場は、日本科学未来館1Fの企画展示ゾーンで行なわれている。コンセプトは、第1作(以下T1)から最新作「ターミネーター4」(以下T4)までの撮影に使用された本物のプロップスを初公開すると同時に、故ウィンストン氏のクリエイティブの神髄を披露するというものだ。ちなみに、米テレビドラマシリーズ「ターミネーター:サラ・コナー クロニクルズ」(以下TSCC)からの出展もある。

 故ウィンストン氏は1946年生まれで、シリーズの生みの親であるジェームズ・キャメロン氏が彼のもとにターミネーターをスケッチしたコンセプトイラストを持ち込んだところから始まったという。「エイリアン2」でもキャメロン氏とコンビを組み、第59回アカデミー賞視覚効果賞を受賞。T2では第64回アカデミー賞メイクアップ賞/視覚効果賞を、「ジュラシック・パーク」では第66回アカデミー賞視覚効果賞を受賞している。昨年弊誌でも取り上げたSF映画「アイアンマン」も彼が関わった作品だ。ハリウッド・ウォーク・オブ・フェームに名を刻んだほどの才能あふれる人物が、骨髄腫により、62歳で他界されたのは何とも残念な話である。しかし、今回来日したランドン氏らお弟子さんたちががんばっているので、「ターミネーター5」も「ターミネーター6」も心配ないというわけだ。


エントランスゾーンにはT-700のスカルが

 T展は5つのゾーンに区切られており、エントランスゾーンとZONE-1~4となっている。エントランスゾーンでは、「ターミネーター2」(以下T2)のT-800と、「ターミネーター3」(以下T3)の液体金属をまとった女性型のターミネーター「T-X」型の超精巧なミニチュアが出迎えてくれる。どちらも身長は60cmほどだ。ランドン氏によれば、これらは映画撮影に使われたものではないそうだが、撮影用に使われたミニチュアを原形として製作された、コレクター向けの超高額製品だそうだ。


T-800のミニチュア T-Xのミニチュア

 そして、中へ入っていくと、暗闇の中で複数「T-700 スカル」が迎えてくれる。当初、T-600型がT4の西暦2018年時点での最新型と思われていたが、T-800と合わせ、このT-700も登場するというわけだ。その頭部が複数飾られているのである。ちなみにT-700は、T-600と比べると細身で、身長もほぼ人間と同程度。さらに、動作も非常に機敏というターミネーターだ。T-800とは系統が違う感じなので、T-600→T-800→T-888(TSCCに登場する)というタフネス&パワー型の流れと、T-700→T2の液体金属ターミネーターT-1000型→T-Xという、(タフネスさとパワーさもあるが)やや小型で俊敏性や隠密性を重視しているようなふた通りの開発系統があるのかも知れない。

 ちなみに、TSCCの美少女ターミネーターTOK715=キャメロン・フィリップスは、T-OK-715と分割してみると、OKの意味は不明だが(人類の味方だからOKとか(笑))、T-700系の可能性も考えられる。何しろTOK715はバレエもしなやかに踊ってしまったりするほど柔軟性に富んだ関節構造を有しているので、T-700の俊敏な動きには通じるものがあるのではないだろうか。身体は機械だが人間だと主張する謎の男マーカス・ライトは、元死刑囚で生体実験によってアンドロイド=ターミネーターに改造されたとされている。T-700やT-800とサイズ的には近いが、また異なる設計のようだ。もしかしたら、TOK715同様にT-700系のフレームが使われているのかも知れない。


T-700の頭部。手前に金網があるため、写真だと見づらいが、会場ではちゃんと見える T-700の頭部を別角度から

ZONE-1「ターミネーターの世界-プロローグ-」は荒廃した未来の都市

 エントランスゾーンを抜けると、ZONE-1「ターミネーターの世界 -プロローグ-」だ。T2の未来世界シーンのT-800のエンドスケルトン・ロボットが骸骨を踏み潰す有名なシーンを模した、廃墟を舞台にしたディオラマが現れる。巨大な銃を構えるT-800エンドスケルトン・ロボットはスタン・ウィンストン・スタジオ製で、設定よりは小さめに作られているようだが、身長は183cmあるフルフィギアだ。そのため、迫力がある。エントランスゾーンほど暗くはないのだが、ディオラマの雰囲気を出すために少し暗くしてあるのと、骸骨の顔をした等身大のロボットが巨大な武器を構えて威嚇して立っているので、小さいお子さんの中には怖がる子もちょっといることだろう。お子さん連れで見に行く時は、エントランスゾーンとZONE-1は、目隠しをしてあげるといいかも知れない。


T2の冒頭、T-800エンドスケルトン・ロボットが未来の廃墟で戦うシーンを再現したディオラマ T-800エンドスケルトン・ロボットのフルフィギアを別角度から。身長は183cm

ZONE-2「ターミネーターヒストリー」はシリーズのプロップス展示ゾーン

 ZONE-2「ターミネーターヒストリー」はT展のメインといえ、これまでのシリーズのプロップスが複数展示されているほか、物語と歴史、さらにはウィンストン氏のVFXの数々を映像やパネルで見ることができる。展示されているフルフィギアはT-800とT-Xのエンドスケルトン・ロボット、T2のラストでズタボロになりながらグレネードランチャーでT-1000型を吹っ飛ばすT-800、T3のT-850の4体。すべてスタン・ウィンストン・スタジオ製だ。さらに、T4で登場する大型のT-100型もある。こちらは実際に動かせるロボットとなっている点が大きな特徴。

 ちなみにT-100とは、T3のサイバーダイン・システムズ社内で暴れた、ターミネーター第1号のT-1型の発展形で、移動方式に同じくクローラが採用された戦車タイプだ。両腕に6連装ガトリングガンを備えていることなどは同じだが、より禍々しい雰囲気をまとっている。こちらは、スタン・ウィンストン・スタジオから社名を変更したレガシー・エフェクツが担当した。

 そのほか、T4で登場する下半身が吹っ飛ばされたT-600(レガシー・エフェクツ製)や、T2の紅蓮の炎が燃えさかるオープニングシーンのT-800の頭部(スタン・ウィンストン・スタジオ製)、TSCCのメインビジュアルを模したバストアップのTOK715(アメージングスタジオ製)なども見ることが可能だ。


ZONE-2の風景 ランドン氏の解説を聞く高田氏 T-800のエンドスケルトン・ロボットのフルフィギア。こちらは歩行姿勢。身長は183cm

バストアップ 後ろ姿 T2のラストのT-800のパペット。シュワルツェネッガー氏の代わりにスタントをした。身長は180cm

バストアップ。このシーンの時点で顔も傷だらけ 串刺しにされて大ダメージを負ってしまう腹部 左ヒザもメカがむき出しの状態

後ろ姿 T-Xのエンドスケルトン・ロボットのフルフィギア。身長は190cm。女性型らしく非常に細身 バストアップ。演じたクリスティナ・ローケンの体型に合わせてあるのだそうだ

顔のアップ。眉の辺りが動き、目がつり上がってより怖い表情を取れる仕組みなだそうである 後ろから見ると、ヒップラインの辺りに丸みがあって女性らしさを感じられる T-100。幅160cm×奥行き170cm×高さ225cmの大きさを誇る、実際に稼動するロボット

頭部 ガトリング砲 脚部

胴体部背面 脚部背面 側面

胴体部を斜め後ろから T3のT-850のパペット。ほとんどシュワ氏のまま 美少女型ターミネーターTOK715。DVD-BOXのメインビジュアルを模したフィギアだ

TOK715の背面 胸から下の内骨格やメカがのぞいている様子

T-800の頭部 下半身が破壊されたT-600

 パネル関連に関しては、シリーズ1作ごとに分けられて複数のパネルで当時のVFXなどの解説がなされている。T1では、キャメロン監督がウィンストン氏のもとに持ち込んだスケッチの一部や、アーノルド・シュワルツェネッガー氏に行なわれたメイク、そっくりのパペット(レプリカ)、エンドスケルトンをどのように動かしたか、などが紹介されている。

 T2の解説では、T-1000のスケッチ、T-1000の液体金属のリアルさをいかに表現したかということ、そのほかT2時代のVFXなどが扱われている。T1よりも進化しているのが如実にわかる形だ。

 T3では、T-Xのデザインに関する秘話や、初めてT-1が実際のロボットとして造られたこと、徐々に痛み方が激しくなっていくT-850のパペットなどが語られている。T4に関しては解説ではなく、イメージコンセプトがいくつも展示されており、類推したり妄想したり(笑)することが可能だ。詳しくは、ぜひT展に足を運んで読んでいただきたい。


旧3部作については、それぞれ複数のパネルで解説。これは、T1でのキャメロン監督のスケッチ 破損したT-600の左右にはT4のイメージコンセプトを展示

 なお、ランドン氏が直接解説してくれたことで面白かったのは、T1撮影段階でのキャスティング変更について。映画ファンならご存知かもしれないが、T1でシュワ氏は最初、サラ・コナーを助けに未来から来たレジスタンスの兵士のカイル・リース(ジョン・コナーの父親)役だったという。それが、キャメロン監督がシュワ氏の体格を見て、ターミネーター役に変更したということである。T1は当初、やや細身の体格のターミネーターと、筋骨たくましいシュワ氏のカイル・リースが激闘を繰り広げる予定だったらしいが、ご存知の通り逆になり、エポックメーキング的な作品となったというわけだ。

 こんなことを書いたらファンに怒られるかも知れないが、T1当時のシュワ氏は俳優としてまだまだ駆け出しで、演技力は正直なところ微妙だったので、演技をそれほど求められない無口で無表情なT-800役は、ハマリ役だったといえよう。シュワ氏がターミネーターを演じていなかったら、これほどまでに作品の人気も、またシュワ氏自身の人気も出なかったのではないかと思われるので、キャメロン監督の見事な判断としかいいようがない。思わず感心してしまった次第である。

 そのほか、T-850に関する話も。T3公開当時(2003年)は、鑑賞したファンの間でT-800とT-850の何が違うのかよく不思議がられたものだったが、ランドン氏によれば、シュワ氏自身が年齢を重ねたため、T1やT2の頃と比べて肌の張りなどがなくなっているといった加齢による致し方のない状況のため、T-800よりも「オジサンモデル」というわけでT-850とマイナーチェンジをしたというわけだ。T-800が壮年(20半ばから40前半ぐらい)バージョンとすれば、T-850は中年(40半ばから60前半ぐらい)バージョンということのようだ。

 また、T-1000が最初はロックシンガーで俳優活動もしているビリー・アイドル氏だったことも新鮮な話。アイドル氏がクランクイン直前にケガで降板となり、そこでロバート・パトリック氏に白羽の矢が当たったという次第だ。これもまた運命の不思議さというか、T-1000は今ではパトリック氏以外は考えられず、T-1000を超える悪役ターミネーターはもう創造不可能とまでいわれたほどで、シュワ氏のT1の時のT-800とはまた異なる、なんとも不気味な感じのする無表情さは見事だったといえる。パトリック氏がT-1000を演じていなかったら、やはりT2は大ヒットとはならなかったのではないだろうか?


ZONE-3「新作ターミネーターの世界」は世界初公開のプロップスも

 ZONE-3「新作ターミネーターの世界」は、T4にフォーカスしたコーナー。予告編が上映されるほか、T-600、ハイドロボット(水中用のヘビ型ターミネーター)、モトターミネーター(機動力が持ち味のバイク型ターミネーター)が展示されている。T-600とハイドロボットはレガシー・エフェクツが手がけ、モトターミネーターはトランスFX製だ。また、初公開となるプロップスとして、T4の撮影で役者たちが実際に着用したコスチュームも展示されている。

 ちなみに、ハイドロボットはランドン氏が開発に携わっただけでなく、撮影時も手動で動かす役割を担当するなど、かなり思い入れが深いという。ZONE-2のT3の解説パネルとT4のイメージパネルの間にモニターがあって、ランドン氏の上司でレガシー・エフェクツ社長のジョン・ローゼングラント氏が解説する映像が流れているのだが(世の中にふたりしかいないT1~4すべてに携わったもうひとり)、そこでは、ランドン氏らが潜水服を着てハイドロボットと共に川に入り、撮影に挑んでいるシーンも見ることが可能だ。


T-600。レガシー・エフェクツ製。身長は215cm T-600のバストアップ ヒザ関節。アクチュエータで動いているのがわかるし、サビが浮いているのもわかる

ランドン氏がデザインに関わり、操作も担当したハイドロボット。レガシー・エフェクツ製 顔部分のアップ。ドリルが恐ろしい。全長は120cm 別角度から

しっぽの先端は普段はしまわれており、展開して蠍の尾のように突き刺する。管状なので流血させやすい モトターミネーター。全長244cm×全幅122cm×全高122cm 側面から。背骨や手があるのが不気味。人型への変形もありそうな雰囲気だ

頭部のアップ。左右非対称に多数のセンサーが並ぶ 武器は6連装ガトリング砲2門、2連装マシンガン×2など ジョン・コナーの衣装。常時戦闘服を着用しているようで、その戦闘服も傷んでいる

ジョンの奥さんのケイトの衣装。だいぶお腹が大きい。T5とT6は子供が主役!? マーカス・ライトの服装。マーカスは元死刑囚で、実験でターミネーターに生体改造されたらしい? 詳しい資料がないが、女性登場人物のひとり、ブレア・ウィリアムズの衣装

ZONE-4「人間とロボットの未来は?」では現実のロボット最前線の紹介コーナー

 最後のZONE-4「人間とロボットの未来は?」では、実際のロボットによるデモンストレーションを見られる。ロボットと人間のコミュニケーションにテーマを絞っており、パネルなどで解説もされている。T-800をスカイネットが1984年に送り込む2029年、今年からちょうど20年後だが、その時にロボット研究がどうなっているかを、実際に科学者たちの考えも見られるというわけだ。「認知する」「触れる」「ふるまう」といった視点からの解説や、映画の中の技術やシーンなどを例にとって考察したり、今回は展示されていない日本製のロボットを紹介したりしている。

 展示されているロボットは、ココロ製女性型「アクトロイド」およびその一部分の前腕、綜合警備保障のガードロボットなど。内覧会では、普段は同館3階で操縦用コックピットと共に常設されている千葉工業大学fuRo製の「Halluc II」もスタンバイし、ランドン氏にデモンストレーションを見せていた。

 ランドン氏に「T5で使えそうなロボットはありますか?」とうかがったところ、「Halluc IIは使えそうですね。偵察・侵入用途として、人型のターミネーターが入っていけないような場所でも入っていけそうです」と回答してくれた。さすがにそのまま出るということはないだろうが、T展の日本製ロボットには大いにインスパイアを受けたようで、Halluc IIをモチーフにした小型のスパイ・ロボットが次回作以降では出てくるかも知れない。


ココロ製アクトロイド。あともう少しで完全に人と間違えそうなリアルさ 【動画】アクトロイドがアピールする様子 【動画】ココロ製の前腕。指の動きが不気味なぐらい柔らかい

【動画】綜合警備保障のガードロボ。T展用のコンテンツを搭載 先端から消火剤を噴射して、初期消火に対応できることがアピールされていた

Halluc II 【動画】Halluc IIのデモ ランドン氏も興味津々でデモを鑑賞していた

 ちなみに、記者が得意とする(?)変な質問もぶつけずにはいられなかったので、してみた。「スカイネットは日本のロボット技術の情報を吸収して、ターミネーター開発に使っていませんか?」と聞いたところ、「あり得ますね。ASIMOなんか、2足歩行という観点で見ると、T-600やT-800のおじいさんですよ」という。やはり、記者の思ったとおり、ターミネーター開発には日本のロボット技術がかなり利用されているに違いない(さしずめ、綜合警備保障のガードロボはT-1(T-100)のおじいさん?)。なので、ロボット開発をしている大学や企業のみなさんは、スカイネットのハッキングに備えてプロテクトを固めいてください(笑)。

 なお、ランドン氏に対し、「あなたがスカイネットなのでは(笑)?」と聞いたところ、「人間スカイネットかも知れませんね(笑)。たくさん情報収集をしています」と冗談で答えてくれた。T-800のエンドスケルトン・ロボットやパペットと並んでもまったく見劣りせず、たぶん上背は190前後あるだろうランドン氏はターミネーターだったとしてもおかしくない。なにはともあれ、日本のロボットたちがT5やT6のデザイン作業に貢献したのであれば、嬉しい限りである。

 以上、T展レポート、いかがだっただろうか。特に、ターミネーターのエンドスケルトン(フレームだけの状態)タイプをつぶさに見たいという人にとっては、たまらない内容のはずだ。しかも、T4の隠し球的存在のT-700やTSCCのTOK715も展示されており、かなり充実している。なお、日本科学未来館への入館料だけではT展を鑑賞できない。大人1,200円、18歳以下500円となっている。逆にT展へ入場すれば、日本科学未来館の常設展示も見学可能だ。つまり、日本科学未来館の見学もするのなら、T展は700円(子供は300円)というわけで、べらぼうに高いというわけでもない。本誌読者のみなさんはご存知だろうが、日本科学未来館はロボット系の展示も充実しているので、春休みにお子さんや友人と連れだってT展と日本科学未来館の見学に行ってみてはいかがだろうか。

 続いては、リチャード・J・ランドン氏へのインタビューだ。


リチャード・J・ランドン氏インタビュー

 ランドン氏へのインタビューは、T展内覧会の18日に同じ日本科学未来館の別室で実施された。マックG監督へのインタビューとはまた異なる、貴重な話を聞けたと思う。T4の内容に関しても若干触れている。さすがに断定した答えはもらっていないのだが、シュワ氏の登場についても語ってもらうなど、若干のネタバレ的な部分もないわけではないので、読む際は注意していただきたい。

 ランドン氏のプロフィールだが、生年は1960年、ターミネーターシリーズの舞台であるロサンゼルス生まれ。1983年にスタン・ウィンストン・スタジオに入社以来、映画4作品のプロップス制作を初めとする特殊効果演出を担当してきた。現在は、キー・メカニカル・デザイナーの肩書きを持つ。ターミネーターシリーズ以外にも、昨年レポートしたSFアクション映画「アイアンマン」など数多くの作品に携わっている。


インタビュー中のランドン氏 40歳後半だが、かなりはつらつとしていた

――これまで携わったシリーズ4作で、どの作品を最も気に入っていらっしゃいますか?

【ランドン氏】T4を最初から最後まで通してすべて観たわけではないのですが、たぶんT4になりますね。最も期待しています。それまでは、T2でした。

――これまで製作されたターミネーターでは、どれを最も気に入っていらっしゃいますか?

【ランドン氏】T4ではハイドロボットですね。ハイドロボットの製作そのものは私が担当したわけではないのですが、撮影の際の操作に関しては関わっています。思い入れがあるので、ハイドロボットがいまは一番ですね。それから、T4ではT-600の製作や動作にも関わっておりまして、目や首の動きなどさまざまな動きを私の方で操作して撮影しています。よく機能しますし、いいパペットに仕上がっていると思いますね。製作する際もとても楽しくできましたし、とてもチャレンジングな仕事でもありました。

――マーカス・ライトの存在について教えていただけますか?

【ランドン氏】マーカスの存在はトップシークレットで、私が話していいかどうかはわからないんです(笑)。しかも、脚本をすべて読んでいませんし、見てはいけない映像を見てしまったりもしているので、詳しくはお答えできないのですが、自分が関わったシーンに関しては教えられます。少なくとも、ハイドロボットよりは強いです。

――クリスチャン・ベイルは撮影でいかがでしたでしょうか?

【ランドン氏】仕事に対して非常に集中する人ですね。本当にそのロボットのことを生きている物だと信じているということを伝えてくれるような俳優です。私としては、すごく仕事のやりやすい方ですね。

――現実が進歩している中で、映画の中に出てくるロボットなどのデザインも変わっていっているのでしょうか?

【ランドン氏】例えば、T-600とT-800とありますが、前者の方が一世代前のモデルであることはご存知かと思います。しかし、T-800の方が1984年の映画に出ていて、25年経って技術も大きく進歩していますが、T-600の方が古く見えるようにしないとなりません。現実の進歩とは逆方向にやっていかないとならないので、そこら辺がチャレンジングでしたね。新しい技術を採り入れながらも、25年前のT-800よりもT-600の方が品質的に劣っているように見えないとならないので、そこら辺が苦労した点です。ただ、コンピューターテクノロジーの発展と共に、非常に作業をしやすくなったというところもあります。以前は、後ろの方で見えないようにしつつ、ワイヤーやケーブルなどを使ったりして撮影していたのでとても大変でした。しかし、いまはもっとヘビーデューティーな物もコンピューターテクノロジーを使うことで、簡単に撮影ができるというわけです。しかも非常に力強く、正確に、スムーズに、そしてデリケートに動きを撮影できるようになりました。


T-100とのツーショット。片足を載せて、T-100の頑丈さをアピール? T4では最も思い入れの深いハイドロボットとツーショット

――レガシー・エフェクツやスタン・ウィンストン・スタジオにおいて、ひとつの作品のデザインを仕上げていく作業について教えていただけますか?

【ランドン氏】まずは脚本からすべてが始まります。クリエイティブデザイン担当が脚本を読んで、まずビジネスの観点からどのようなプロップスを作っていけばいいかの一覧を作成します。リストができましたら、それを基にしてアーティストの方でデザインコンセプトを考えるわけです。アーティストには複数のタイプがいて、紙と鉛筆でスケッチする人もいれば、3DCGでモデリングする人もいます。デザインが完成するまではまだまだで、この後、私のようなメカニカルデザイナー(日本のメカデザイナーはランドン氏のいうアーティストの方で、ランドン氏自身のメカデザイナーとは、実際にメカとして動作するかどうかの観点からデザイン作業に加わる、工業デザイナーに近い感じ)も加わり、アーティストの方々と一緒になって、その動作が本物らしさを出しているかとか、もう少し動きやすくするにはどうしたらいいか、見た目をよくするにはどうしたらいいかといったさまざまなことを、メカニックの観点からアーティストと一緒になって作品を作り上げていきます。

 最終的にデザインができあがりましたら、今度はその部分ごとにクレイなどを使ってパーツを作っていきます。それから、3DCGに関しては外注に出すなどの作業もします。各パーツやピースは個別に作られていますので、最終的にそれがひとつのデザインとしてマッチするように調整していきます。それらをひとつにするためには、モーターや関節、ケーブルなどもすべて組み込まなければならず、それにはフレームがまずあって、その上にさまざまなものを載せるというわけです。私は、その中で、動きの部分、モーションについて技術的な観点からすべてを見ています。全部のパーツが組み合わされましたら、その後はリハーサルということになりまして、試験や塗装をしたりします。いろいろな行程がありますね。

――リアルさを出すためにどのような工夫をされているのでしょうか?

【ランドン氏】動きのリアルさはスムーズさが必要だと思いますので、動きの柔軟性を作品のパーツごとに提供していかないとなりません。例えば腕部なら、油圧シリンダーなどを使います。そういうところをきちっと見ていくということですね。それから、撮影時にちゃんともたなくてはいけないので、耐久性も備わっていることが重要です。前もって脚本を読ませてもらっていないので、まさかT-600がマシンガンで至近距離から実際に撃たれるとは知らなかったので驚きましたが、耐久性の点からクリアできているので、概ね大丈夫でした。実際に戦闘で使われるような実弾は使っていませんが、実際にマシンガンから撮影用の弾丸を発射してT-600を撃っています。なので、実際にはさすがに無傷というわけではなかったので、T-600をワークショップに連れ帰りまして、壊れたところを修理する必要はありました。


――そのシーンは、トレーラー映像でも観られる、ジョン・コナーの乗っていたヘリに踏み潰されたところを、降りてきたジョンに頭部を2発撃たれるというところですか?

【ランドン氏】その通りです。あれは序盤なのですが、そのシーンです。あれで一見倒したように見えますが、その後も復活してきて、とても2発撃った程度ではやっつけられない頑丈さをT-600は持っています。その後のシーンでも何度もT-600を撃つことになります。

――シュワルツェネッガー氏をモデルにした、T-800型は出てくるのでしょうか?

【ランドン氏】どのぐらいのアーノルドの部分を映画に採り入れようかと検討している最中でして、T-800(エンドスケルトン・ロボット)自体はT4で登場します。どこまで使うかはまだ決まっていません。なお、T4の撮影セットにはアーノルドは来てないですね。

――映像的には写真がチラっと出るという話がありますが?

【ランドン氏】いろいろな噂は私も耳にしておりますが、どれが本当でどれが嘘なのかは私にもわからない状況です。ただわかっているのが、実はエンディングが全然決まっていなくて、3日おきにエンディングの内容が変わっているという状況です。マックG監督は、ちょっとクレージーな人で(笑)、もちろんいい意味でのクレージーなのですが、クルーの方もとても大変だと思います。

――T5のデザインはもうスタートしているのですか?

【ランドン氏】まだまったくデザインスケッチも始めていませんし、我々のスタジオの誰も脚本を読んでいないですね。

――話は変わりますが、欧米のコミックで「エイリアン vs プレデター vs ターミネーター」という作品がありますが、もし映画化するとしてデザインのオファーが来たら、引き受けますか?

【ランドン氏】もちろん(笑)!

――最後に、T展の感想をお聞かせください。

【ランドン氏】非常によくできています。すばらしく、非常に美しい展示会だと思います。シリーズの歴史の流れもきちんと表現されていますし、それと同時にT4のプロモーションの要素もきちんとなされています。本当によく考えられた、素晴らしい展示会だと思います。

――ありがとうございました。

 以上でランドン氏へのインタビューは終了。シュワ氏の出演があるようなないような、全米での公開が5月だというのにまだラストが決まっていないなど、貴重な話を聞けたのではないかと思う。T展でしか見られないT4のプロモーション映像もあるし、この春休みは親子でT展&日本科学未来館を楽しんでみてはいかがだろうか。ただし、前述したように、小さいお子さんにはエンドスケルトン・ロボットはちょっと刺激が強いかも知れないので、注意してあげよう。


URL
  日本科学未来館
  http://www.miraikan.jst.go.jp/
  ターミネーター展
  http://wwwz.fujitv.co.jp/events/t-ten/
  ターミネーター4
  http://www.sonypictures.jp/movies/terminatorsalvation/

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( デイビー日高 )
2009/03/25 18:49

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