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「第6回わんだほーろぼっとか~にばる」レポート
~ストリート最強のロボットがROBO-ONE決勝の舞台へ


 2009年1月11日(日)、神奈川県・川崎市産業振興会館にて、二足歩行ロボット競技会「わんだほーろぼっとか~にばる」が開催された。第6回を迎えた今回も、5月に行なわれる予定の「第14回ROBO-ONE」の決勝出場認定権がかけられており、41名のエントリーを集めた。史上初のコメントをつけられるWeb生中継もあり、年の始めにふさわしい、にぎやかで楽しい大会となった。


ダッシュ!2000&ボトルトラクション

 4競技行なわれる予選競技のうち、最初から対戦相手が決められているのが、この「ダッシュ!2000」と「ボトルトラクション」である。1対1の対戦の勝敗が得点にも影響するため、本人のWebサイトや自己申告、他イベントでの成績などを考慮して、対戦する相手との実力差が小さくなるように組まれているという。

 2009年の1走目は、「ガルー」(くまま)と「トコトコ丸」(あみの)という、両者ともにROBO-ONEの優勝経験がある2機の対決となった。「前進→横歩き→旋回→横歩き」と、機体のスピードを最大限に活かしたガルーは10秒54でゴール。一方、トコトコ丸はスピード的には不利でも高度なシームレス歩行を披露して31秒88でゴールした。「ガルー」は今大会から“わんだほー殿堂入り”として、ROBO-ONE決勝出場権を獲得することはできないのだが、のっけから本気である。

 だが、この日最高タイムをたたき出したのは、スピードスターとして名を馳せている「サアガ」(イガア)。前回(第5回)も7秒台でトップだったが、今回は6秒99。1mでターンして戻ってくるコース設定になってからは、初の6秒台を記録した。同時に走った「さくら2号」(吉田ファミリア)もほぼ同じタイミングでターンのパイロンに到達していたが、コース取りが「サアガ」とかぶってしまい、タイムロス。悔やまれる一走となった。


【動画】左側コース「ガルー」対右側コース「トコトコ丸」のダッシュ。特記ない限り、以下同様の並びで紹介 【動画】スピード自慢の「サアガ」対「さくら2号」の対決 【動画】まったくよどみなく回った左コースの「デシュミット」(GR2)は全体2位のタイム10秒18でゴール

 あくまで決勝を目指すために行なわれる、予選競技としての「ダッシュ!2000」なのだが、試合が進むにつれて純粋な勝負とは別のベクトルも合わせ持った対戦が混じってくる。たとえば「黒かじろう」(ナベ☆ケン)対「だんだだん」(オマタ)は、大学の研究室の先輩の機体(だんだだん)と後輩の機体(黒かじろう)という、おそらく主催者が“狙って”組み合わせた対戦だ。後輩は普通にダッシュ競技をこなした(19秒35)が、先輩の方は後輩がゴールした後、ロボットがくわえていた鯛をフィールドに放出。「これはまさに“めで鯛”。おめでとーございまーす!」という、お正月にピッタリの実況とともにゴールした(37秒01)。タイムは後輩の方が優秀だったが、見ていた人の印象に残ったのは先輩の方だろう。どちらが“勝負”に勝ったのかは、観客の心の中にアリ。

 「ラムダ」(シマケン)は、画像認識でパイロンを見つけて戻ってくるという自律型ロボット。対決する相手が棄権したために、1機での競技となり、フィールドを広く使えたのはラッキーだったかもしれない。大学の研究室レベルの課題が、先ほど鯛が放出されたのと同じ競技フィールドに突然出現するあたりが、“わんだほー”の懐の広さなのだろう。観客だけでなく参加者のほとんどが見に来る大注目の1本。ラムダはパイロンを見つけてはいるものの、それをうまく判断に結びつけることができていなかったようで、一進一退を繰り返す。それでも最終的に7分2秒78でなんとかゴール。会場からは大きな拍手が起きていた。


【動画】「黒かじろう」対「だんだだん」 【動画】わんだほーの誇るキャラクター対決「Kinopy」(小田利延)対「マヌイ」(カイン技師)。マヌイのスピードには驚き 【動画】「ラムダ」の自律ダッシュチャレンジ。製作者のシマケン氏は、スタッフのTシャツがパイロンの色と似ていて困っていた

 シンプルなスピード競技の次は、パワーを自慢する競技である。予選2競技目の「ボトルトラクション」は、制限時間1分間でどれだけ多くのペットボトルをどれだけの距離運んだか(本数×距離)がポイントとなる競技だ。対戦は「ダッシュ!2000」と同じ組み合わせで行なわれた。

 基本的なルールは前回までと同様だが、今回は500mlペットボトルが15本までで打ち止めとされ、それ以上の本数を積載したい場合は1.5Lペットボトル(1本で500mlペットボトル3本分に換算)を積むように指定された。逆に500mlを運べない非力な機体は、200mlの紙パックを1本として運ぶことができた。あくまで救済措置なので、200mlを30本、なんて積み方は認められないという。

 開始すぐに「ガルー」が1.5L・5本を200cm引ききって、15本×200cm=3,000ptを記録。といっても、前回は17本を200cm運んでいるので、余裕の記録と言えるだろう。同時に競技を行なったトコトコ丸は、かごを引っ張るときに自分の足でカゴの動きを止めてしまうという、モーションの不具合で記録が伸びず、12本×51cm=612ptで終了した。

 ここでも注目だったのは、およそ2kgの機体重量ながら、1.5Lを6本(18本相当)を169cmも運んだ「サアガ」。専用の足裏とハンドユニットを装着しており、この競技に賭ける思い入れが感じられる。ざっと計算して自重の4.5倍(9kg)の重さを運ぶとは驚きだ。記録は3,042ptということで、わずかに「ガルー」を上回り、全体のトップとなった。


【動画】「ガルー」がスタートする前、サポートするくぱぱ氏がフィールドと足裏を少しでもきれいにしようと整えていた。この“準備”が記録を生むのかもしれない 【動画】奥側コース「ガルー」対手前側コース「トコトコ丸」。特記ない限り、以下同様の並びで紹介 【動画】「サアガ」対「さくら2号」

 ちなみにこの競技、最大で200cmしか運べないので、少ない本数を200cm運びきるよりも、多く積んで制限時間いっぱいまで距離を運んだほうがポイントを多く獲得できることがある。1本を200cmなら200ptだが、2本を110cmなら220ptというわけだ。これが如実に出たのが「おふじゃんびぃZ」(B作)対「DirestradaII」(あっきー)の試合。ROBONOVA-Iベースの「DirestradaII」は200cmを運びきり、「おふじゃんびぃZ」は154cmで時間切れとなったのだが、ポイントは3本運んだ「DirestradaII」が600pt、10本運んだ「おふじゃんびぃZ」が1,540ptと、大きく差がついてしまった。このあたりは作戦が大きく影響するところだろう。


【動画】「おふじゃんびぃZ」対「DirestradaII」 【動画】「小雪」(シムカ)対“背面押し”でゴールした「ローリング・ピラニ」(法政大学電気研究会) 【動画】クラフトハウス製キットメリッサ(トライブ級)を使った「鏑(かぶら)」(mota)が着実なモーションを披露。キットベースでもモーションを作れば8本×186cm=1,488ptもいけるのだ

サイコロシュート&キューブ

 予選の前半が終わると、前半2競技の成績がほぼ同じ者同士の対戦になるよう組みかえられ、3競技目・サイコロシュートが行なわれた。スピードとパワーが似た者同士の対戦となるのだが、この競技は相手のゴールに入れた「さいころの目」が得点となるので、実力もさることながら、この日の「運」が試されることになるのである。

 前半の予選競技は成績に応じた順位に対して得点がつく(たとえば「サアガ」はそれぞれ14pt+12ptの26ptを獲得していた)のだが、サイコロシュートは出目がそのまま得点になる。そのため、ここで出目がいいと一気に順位を上げることができるし、その逆もまたしかりなのだ。わんだほーで優勝するには予選上位4機に入り、決勝トーナメントに進む必要があるため、見ていて楽しい競技だが、大きな鍵を握る競技でもある。


【動画】この日の最高得点・20点をたたき出した「ホワイトドワーフ」(えまのん)対「おふじゃんびぃZ」。パワーももちろんだが、圧倒的な安定性が勝利の決め手
 予選トップを走っていた「サアガ」が9点(7点+勝利者ボーナス2点)と足踏みしている間に、「ガルー」が14点(12点+勝利者ボーナス2点)を獲得して、総合35ptで同点に。また、安定度を活かして22点(20点+勝利者ボーナス2点)を稼いだ「ホワイトドワーフ」(えまのん)が総合34ptで一気に2位まで順位を上げる。前半2位で折り返した「デシュミット」(GR2)はここで1点に終わってしまい、総合22点で決勝トーナメントへの道が厳しくなった。

 競技も後半に入ってくると、「どうやってこのサイコロシュートを楽しむか」という目的をメインにした参加者が出てくる。今回は前回までに比べて、さらに工夫を盛り込んだ機体が多かったように思えた。そして、前半2競技の得点順に並べただけなのに、その工夫が輝く対戦が多かったのは神の配剤とでも言うべきか。

 たとえば、強力な「ハリセン」を持った「GAT」対癒しロボット「マヌイ」という、当日参加したロボットを(イメージで)善悪の物差しで計ったら両端に位置するのではないかと思われるような対戦。さいころを無視してハリセンを振るう「GAT」にかぶる、「ネット上の書き込みはブーイングの嵐!」の実況。会場は爆笑。最後はダブルノックダウンでゴングが鳴り、別の競技になってしまったかのような結果に。


【動画】「GAT」(K)対「マヌイ」その1。両者ダブルノックダウンながら、得点は5-0で「マヌイ」の勝利(もうよくわからない) 【動画】「GAT」対「マヌイ」その2

 「トコトコ丸」は「サイコロ一号」と対戦。サイコロが自分で歩いてゴールしたり、なぜかフィールド上に2個あったさいころが同時にゴールへ叩き込まれたりと、時空が歪んだような2分30秒が過ぎる。

 そしてサイコロを食べる(くわえる)ロボット「だんだだん」は「AeroStriker」と対戦。くわえたまま倒されてオウンゴールになったりもしていたが、サイコロを食べてすばやく動くなど、笑える中にも高い技術が組み込まれているのがすばらしい。

 この3戦がまた3連続で行なわれたために会場は爆笑の嵐が止まらず、終わったときには実況が息を乱しながら「なんだか(競技が)どうでもよくなってきちゃいましたね」と疲れたコメントを吐く始末。取材していた筆者もサイコロシュート前半の内容をすっかり忘れてしまうくらいだった。


【動画】「トコトコ丸」対「サイコロ一号」(東京理科大学I部無線研究部)その1。得点は9-5で「トコトコ丸」の勝利 【動画】「トコトコ丸」対「サイコロ一号」その2 【動画】「AeroStriker」(いすぜん)対「だんだだん」。得点は9-3で「AeroStriker」の勝利

【動画】「で・か~る」(道楽、)対「ローリング・ピラニ」。シュートは手でもOK 【動画】同じ対戦だが、運用を間違うと自殺点もアリ。結局この対戦は3対2で「ローリング・ピラニ」の勝ち。自殺点が響いた

【動画】「Kinopy」対「さくら2号」。最初は「さくら2号」が持ったままゴール(というかトライ) 【動画】負けじと「Kinopy」もさいころを持つが、「さくら2号」はさいころを持った「Kinopy」ごとゴールへ。しかも出目は6!

 予選の最後を締めるのは、得点上位1機・中位1機・下位1機という3機構成に振り分けられた即席チームで戦う「キューブ」。2分の試合時間が終了した時点で自陣にキューブを多く運んでいたチーム全員に8点、負けたチームは全員2点、引き分けると全員に5点が配分される。

 競技としてはキューブを争奪するものだが、フィジカルコンタクトは無制限な上にフィールド外に落ちた機体は競技から除かれるという、ランブルの要素も入っている。だからといって格闘に弱い機体が用無しかというとそうでもなく、相手陣内にあるキューブはフィールド外に落とせば中央のグレーゾーンに戻されるので、隙を突いて動き回れば生きる道はあるのだ。ロボットそのものの性能もさることながら、即席チームだけにチーム内でうまく役割を配分し、それをこなせるかどうかが勝負を分ける戦略的な競技だといえるだろう。

 初戦はここまでの得点1位「サアガ」率いる「ザウラー」(KENTA)・「ハーデス」(まつしろ)チームと、2位「ガルー」が頭を張る「おふじゃんびぃZ」・「だんだだん」チームの対戦。のっけから「サアガ」が複数のキューブを抱えて自陣に引き込む緑チームに対し、赤チームは30秒もたたないうちに「おふじゃんびぃZ」がフィールドから落下。相手陣内のキューブを落としにかかっていた「ガルー」も、操縦を誤ってしまったのか、フィールド外に落ちて退場。試合時間の半分もたたないうちに、「だんだだん」1機という状態に。こうなってはもはやなすすべもなかったか、最後は「サアガ」と「ザウラー」に「だんだだん」まで押し出されてしまい、キューブ5-0、残機体なしという、緑チームの完全勝利となった。

 全部で7戦が行なわれたが、完全勝利はこの1回のみ。事前にキューブのルールを丁寧に告知していたこともあってか、今回は相手陣内にキューブを入れてしまうような勘違いをしている機体はいなかったようだ。


【動画】「サアガ」チーム対「ガルー」チーム 【動画】「ファントム」(ブラック)チーム対「ホワイトドワーフチーム」。終盤に「ファントム」が退場して数的不利になりながら、リードを守ったのはトコトコ丸のファインプレー

【動画】「まりん」(かつ)チーム対「BLACK TIGER NEO」(IKETOMU)チーム。キューブが1つ多いように見えるが、気のせいだろう 【動画】2対2の変則的な編成になった「Gram」(芝浦工業大学SRDC)チーム対「デュミナス」(ビスコ)チーム

ランブル&決勝トーナメント

 予選全競技が終わった時点で、一日はほとんど終わり、後は決勝トーナメントの“格闘”を残すだけとなった。今回のわんだほーも、例によって「第15回ROBO-ONE決勝出場権認定大会」となっているが、その15回大会は予選が開催されないため、ここで勝ち上がることそのものがROBO-ONEへの狭き門となっている。

 決勝トーナメントに進出したのは、「サアガ」「ガルー」「ホワイトドワーフ」「ファントム」の4機。試合前に、この4機を除いた全機でのランブルも行なわれた。

 ランブルの決勝戦ではほとんど死に体から戻った「黒かじろう」と、その対角線上でばったばったとライバル機をなぎ倒した「ローリング・ピラニ」という2機が最後に残り、真正面から激突。実は同じ法政大学の別チーム同士という対決はバッテリ切れ寸前までパンチを出し合った熱戦に。観客の拍手の量で「ローリング・ピラニ」が優勝となったが、どちらもすばらしい戦いぶりだった。


【動画】ランブル第2戦 【動画】ランブル決勝戦

 そして、本日のメインイベント。ROBO-ONEバトルである。このためにわざわざROBO-ONE公認レフェリー・浅野克久氏が来るというから、締めるところはしっかり締めているイベントだ。

 まず戦うのが、今回は認定権を獲りに来たという「サアガ」と、前回ROBO-ONE軽量級チャンピオンのえまのん氏が駆る「ホワイトドワーフ」。ROBO-ONEで多くのロボットをリングに沈めた「ホワイトドワーフ」の旋回パンチだったが、あまりに体格が違う「サアガ」にはうまく当たらず、むしろ懐に飛び込まれて投げを食らってしまい、「サアガ」が2-0の優勢勝ちで決勝戦に進出。

 もう一方の準決勝戦は、わんだほー殿堂入りで、今回優勝したとしても認定権は得られないという「ガルー」に、「ファントム」が挑む。だからといって「ガルー」が手を抜くことはなく、開始直後から間合いを詰めて投げを打ち、「ファントム」が離れていればパンチでダウンを奪う、容赦のない攻撃をみせる。最後は伝家の宝刀の投げをばっちりと決め、決勝戦に進出した。

 3位決定戦は開始から圧倒した「ホワイトドワーフ」が貫禄を見せて3-0で圧勝。「ファントム」のブラック氏は、「壊されなくてよかった」とほっとした表情だった。


【動画】準決勝戦第1試合 【動画】準決勝戦第2試合 【動画】3位決定戦

 決勝戦で顔をあわせた「ガルー」と「サアガ」は、前回大会の準決勝戦でぶつかっている相手。また、製作者ということで言えば、1年前の第4回大会で、「ガルー」対「ナアガ」として戦っている。2戦2勝の「ガルー」に挑むイガア氏が3度目の正直なるか、という決勝戦となった。

 試合開始直後から投げの間合いに入ろうとする「サアガ」に対し、「ガルー」は両手突きで対抗する。だが「サアガ」はそれをものともせずにがぶり寄り、足を巻き込んでの投げと、腕を取ってひっくり返すすくい投げで2ダウンを先に奪う。「ガルー」も黙ってやられているわけはなく、1ダウンを奪い返すが、他のロボットには決まる「ガルー」の投げが、小さな「サアガ」にはなかなか決まらず、最後はリング際にいるところを「サアガ」に捨て身の“電車道”で襲い掛かられ、リングアウト。優勝は「サアガ」に決まった。


【動画】決勝戦 上位4機

 イガア氏は満面の笑顔ではあったが、喜びを爆発させるでもなく、落ち着いたもの。「今回の認定権はどうしても欲しかった」ということだったイガア氏。これまでイガア氏は「ROBO-ONEには出ません」と、ことあるごとにコメントしていたが、筆者は「ストリート最強の格闘ロボット」ではと踏んでいた。そんなイガア氏は、なぜ心境を変化させたのだろう。尋ねてみると、ポイントは「予選ナシ」にあったという。

 「今までも予選の規定演技を作っていたりはしたんですが、そのたびにルールが変わって、参加をやめていたんです」(イガア氏)。

 ROBO-ONEのロボットは、こういうロボットでなければいけない、というもの(求められているロボット像)がある気がしていたというが、今回は予選がなく、いきなり格闘から始まるということで、イガア氏いわく「多少変わったロボット」が出てもいいのではと考えたのだそうだ。

 現在の「サアガ」は重心規定こそクリアしているものの、足裏は規定から外れているので、ROBO-ONE規格に作り直すと、叩かれたら簡単に倒れるロボットになってしまうだろう、とイガア氏は語る。

 「ですから、今回(の『わんだほー』)は、打撃は無しで、ひたすら当たらないように攻撃を避けて、投げることにこだわったんです。スピードだけ速くても重いロボットは倒せませんが、投げはそれをカバーしてくれるので」(イガア氏)。

 大会に向けて、さらに投げ技に磨きをかけていきたいというイガア氏。第15回ROBO-ONEで、どんな投げを見せてくれるのか、楽しみにしよう。

 優勝した「サアガ」は、これで第15回ROBO-ONEの決勝出場権が与えられることになったのだが、今回はこの決勝出場権が1大会2枠あるため、もう1枠を参加者による投票で決めることになっていた。参加者間投票による最優秀選手賞にあたる、この“わんだほー・おぶ・わんだほー賞”に選ばれたのは、ダントツで「サイコロ一号」(東京理科大学I部無線研究部)。多くの参加者が「面白いロボットはたくさん居たけど、“最も”わんだほーらしいロボットといえば、コレしかないでしょう」と口にする、9cm四方のロボットである。

 現時点ではROBO-ONEの規格には適合していないということだったが、製作者の超二足氏は「もう1つサイコロを作って、合体することで完全体になるというのを考えています」と、大会までの改造を示唆。そして、思って見なかったという決勝出場権に興奮しつつ、「わんだほーらしくいきたいと思ってます!」と力強く決意を語ってくれた。


会場と相乗効果を発揮していたWeb中継

 今回はrobotma.comの技術・人員協力によって、わんだほーがWeb経由で生中継されており、延べで100アカウント以上のアクセスがあったという。ただ画像が流れるだけではなく、ニコニコ動画のように流れている映像に直接テキストでツッコミを入れられることもあり、関東に住みながら会場に来るのではなく、あえてWeb上から参加していた人も少なくないようだ。わんだほーは手作りの大会ということもあり、どうしても会場のキャパシティに限界があるが、こういった形で見られる人が多くなるのはとてもプラスに働くだろう。会場に居る人は画面を見ることが難しいので、「後から動画にコメントを載せた状態で見る」ことが可能になってほしいと願うばかりだ。

 一日のほとんどを予選に費やし、ある意味予選落ちしたほとんどの参加者のためにあるといっても過言ではない、珍しい競技会であるわんだほー。多くの参加者がルールに従って勝利を求める競技会は、それはそれで楽しいのだが、わんだほーのように、ルールも勝敗もあるが、“それはそれ”として、いったいどんな楽しいことが、ロボットを触媒として起こるのだろう、とわくわくさせられる競技会は、得がたいものだと思う。

 次回のわんだほーは夏に予定されているが、その前のGW中に「わんだほーろぼっとか~にばる・ぷち」の第2回が開催されるという。詳細は公式サイトにアップされるので、チェックしてほしい。


主催の株式会社大日本技研からは、学生チームに奨励賞として同社パーツが贈られた 【動画】「シロイノ」(ぴしい)はテキスト入力から自己紹介。予選競技中もいろいろとしゃべっていた。スピーカーの関係で声がどうしても小さいのが残念 【動画】ハーフタイムショーはロボットアイドルユニット(?)「per4m」のミニコンサート

協賛に名を連ねた16もの企業とお店から提供された豪華商品。上位から順にいい商品というわけではないところがわんだほー流 今回の会場も比較的広いスペースだったが、参加者と観客でいっぱいに。熱気で暑いくらいだった 全機集合の写真。中央一番手前、サイコロにしか見えないのが「サイコロ一号」

URL
  わんだほーろぼっとか~にばる
  http://www.page.sannet.ne.jp/y_ishikawa/wndrb/

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( 梓みきお )
2009/02/27 17:25

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