2009年2月7日(土)、山形県長井市のタスパークホテルにおいて、「第5回ナガレンジャー・ファイティングフェスタ in 雪灯り回廊」が開催された。会場を第10回ROBO-ONEと同じ場所へと戻した今大会も従来同様、第15回ROBO-ONE決勝出場権認定大会である。しかしながら軽量級のみで予選なしの選抜大会となった第15回ROBO-ONEに、GP選手でも海外選手でもない一般の参加者が参加するには、認定大会で認定権を得るしかなくなってしまったのである。
今回の参加者に対して用意された認定権は東北枠とオープン枠の2つ。東北の地から雪灯り回廊を渡って川崎へ向かうのは果たしてどのロボットなのか!? 今年も雪景色の中、28体のロボットが熱戦・熱演を繰り広げた。
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会場となったタスパークホテルのすぐ外でも雪灯りが制作され、寒いなかほんのりと温かな光を見せていた
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真っ直ぐに延びた雪灯り回廊を渡って、第15回ROBO-ONEの決勝参加認定権を得るのは一体!?
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認定権のみならず、今回も美味しい山形のお米を始めとする豪華賞品がずらりと並ぶ
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● よーいドン! で札に向かうロボットカルタ
最初の競技は、ナガレンジャー・ファイティングフェスタ(以下、ナガレンジャーFF)独自の競技である「ロボットカルタ」。ROBO-ONEやナガレンジャーFFにちなんだ文章と画像で構成された、ほぼ人間の手のひらサイズの絵札が競技台に配置され、司会者が巨大絵札を掲げながら文章を読み上げる。読み上げられた札にロボットの一部が接触した状態でロボットが停止し、かつ操縦者(もしくはロボット)が「はい!」と発声したところで札を獲得したことになり、勝ち抜けとなる。
前回はロボットも取り札も広い競技台全面を使って行なわれていたロボットカルタだが、さすがに広すぎたのか今回はセンターラインにロボットが一列に並んで、ゴール前に並べられた取り札に向ってよーいドン方式に。ロボットと取り札の距離は近くなったのだが、操作者から取り札の距離がちょっと長くなってしまい、またしても操作者の視力がモノを言う競技となった。
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このようにセンターラインに10数台のロボットが一列に並んでゴール前の取り札に一斉に向かう
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【動画】機動力が重要となるこの競技、ちなみにお手つきの場合は1回休みとなる
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なかなか取り札を見つけられないロボットに、レフェリーが絵札を差し出す場面も
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● ロボットバトルは機動力がモノをいう展開へ
「ロボットカルタ」に引き続き、全27体(1体棄権)のロボットによる「ロボットバトル」が行なわれた。今回は認定権の東北枠を選ぶ関係上、トーナメントの一角が地元ナガレンジャーを始めとする東北勢で固められ、初戦からナガレンジャー同士の対決が見られたり、高校生・大学生のロボットが1回戦からROBO-ONE本選優勝級のロボットに胸を借りることになったりと、波乱に満ちた展開となった。
ナガレンジャーFFのロボットバトルの特徴の1つは、サッカーフィールド全体を使う広い広い競技台。今回はサイドライン・ゴールラインをロボットの全身が出るとリングアウトというルールになったが、それでもリングアウトをすることはほとんどないと思われる広さである。前回大会ではその広さを利用して大型機が存分に威力を発揮したが、軽量級のみの第15回ROBO-ONEの登竜門となった今回は全体的に小型化傾向。代わりに機動力やリーチの長さを武器にしたロボットが活躍するテクニカルな試合が繰り広げられた。
また、今回目を引いたのが本選ルールでの「大技」を意識した派手な投げ技や足払い、そして攻撃時には手先1点を床につけてもスリップとはならない「3点攻撃」のルールを巧みに利用したダウン回避モーションである。その様子を動画で紹介する。
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【動画】くぱぱ氏の「クロムキッド」(右)とひっきー氏の「いぬじろう」の1回戦。「いぬじろう」の兄貴分(?)である「くまたろう」は長井の子供たちにも大人気だったために、ちょっと悪役感の漂う「クロムキッド」であるが、派手な投げ技に威力のある突きで「いぬじろう」を吹き飛ばす。そんな中でも片足立ちでアピールを忘れない「いぬじろう」
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【動画】栃木県産技大ロボワン研究部の「鬼怒(きぬ)」(左)とくまま氏の「ガルー」の1回戦。栃木県産技大ロボワン研究部もナガレンジャーFFでは常連さん。本選優勝経験もある「ガルー」からみごとに1ダウンを奪い、会場から拍手が湧いた
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【動画】「クロムキッド」(右)と吉田ファミリア・さくママ氏の「rsv3」との準々決勝戦。「rsv3」がカマキリのような腕で足払いをかけるも倒れない「クロムキッド」。逆に「クロムキッド」の突きに対して、「rsv3」は片手をついて上体をのけ反らせるような回避動作を見せるが……
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【動画】「rsv3」の仇を打ちたい吉田ファミリア・チームさくさくの「さくら2号」(左)と「ガルー」との準々決勝戦。お互いに投げを狙うが、どちらも決定打に欠ける。しかしながら今回はコンパクトなサイズも功を奏したのか「さくら2号」が片手をついた回避動作で「ガルー」の突きを次々かわす
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こうして勝ち上がってきたのは、涙を呑んで仲間のナガレンジャーを打ち倒し、東北ブロックを勝ち上がってきたナガレブラック氏の「ナガレブラック」と、大型機に見えるが実はスリムで3kg以内のえまのん氏の「Cavalier」、そして互いのファミリーを倒して勝ち上がっており、さらに仇を打ちたい「クロムキッド」と「さくら2号」である。ファミリーの強さはどちらが強いのか!? 地元の応援は後押しになるのか!? 準決勝戦2試合の様子を続けてご覧いただきたい。
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【動画】「クロムキッド」と「さくら2号」の準決勝戦。とにかく倒れない2体、先ほどの「ガルー」VS「さくら2号」と同様、こう着状態の試合が続く。しかし一瞬のすきを突いた「クロムキッド」が1ダウンを奪い、決勝戦へ進出
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【動画】「ナガレブラック」(右)と「Cavalier」との準決勝戦。何とか間合いに入って攻撃を繰り出したい「ナガレブラック」だが、入った瞬間に「Cavalier」の長い手が上からぶんぶん振りまわされ、吹き飛ばされてしまう。リーチの差がモノを言い、「Cavalier」が決勝戦進出
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決勝戦は「Cavalier」と「クロムキッド」の組み合わせ。えまのん氏の「Cavalier」は昨年11月のロボファイト8で認定権を獲得済みで、くぱぱ氏の「クロムキッド」はGP選手枠。あれ、こうなると認定権は誰の手に? と思いつつも、波乱の結果となった決勝戦をお届けする。
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【動画】「Cavalier」(右)と「クロムキッド」の決勝戦。開始早々の転倒でケーブルが抜けるトラブルに見舞われた「クロムキッド」、タイム後は果敢に投げに行くが、またしても肩部のケーブルが抜けてしまい、涙のリタイヤ。前回大会決勝戦でも「クロムキッド-verF」が、たった一回のスリップダウンで涙を呑んだことを彷彿とさせる……
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優勝し、ロボットと米10kgを担ぐえまのん氏と「Cavalier」。平行リンクの脚構造の有利さを思い知らされた1日
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第15回ROBO-ONE決勝出場認定権を獲得したのは、東北枠のナガレブラック氏の「ナガレブラック」と、オープン枠の吉田ファミリア・さくママ氏の「rsv3」。サンライズの井上氏と記念撮影
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というわけで、優勝ロボットはえまのん氏の「Cavalier」に、認定権はナガレブラック氏の「ナガレブラック」と吉田ファミリア・さくママ氏の「rsv3」へ。ゴールデンウィークに行なわれるROBO-ONE本選に向けて、ナガレンジャーFFからこの2体のロボットが参戦することが決まった。
● 今回は肉争奪戦ならず? ロボットサッカー
前回以上に時間の押した今回の大会、サッカーが始まる頃には外の雪灯りもロウソクが灯され、観客も入れ替わり立ち替わり会場へ。今回はトーナメント制でも総当たり制でもなく、1チーム5体で全5チーム、1チームは各2試合を戦うように試合が組まれた。
前回、前々回と優勝商品に牛肉が絡んでいたこのロボットサッカー、今回は全員で楽しくということで肉争奪戦になることもなく、各ロボットがのびのび(?)とボールを追いかけていた。
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【動画】頭部が2自由度になってますます表情豊かになったKENTA氏の「ザウラー」が、コーナーからナイスアシスト。「クロムキッド」がみごとにゴールを決める
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【動画】「ガルー」のみごとなスローイングから始まった攻撃、キーパーである道楽、氏の「で・か~る」の一瞬のミスで転がったボールをすかさず「さくら2号」が押し込む
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【動画】キーパーであるオマタ氏の「だんだだん」がナイスキャッチ、と思いきや、そのままとんでもない暴挙に!!
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● ロボットプロレス「できんのか!2」堂々開催!
さて、ここだけはせとふみに代わりまして「baby touch」がお送りいたしますナガレンジャーFF。前回大会のエキシヴィジョンマッチとして世界初! 「ロボットによるノーロープ有刺鉄線電流地雷爆破デスマッチ」が行なわれたのは記憶に新しいですね。地雷が次々爆発し、有刺鉄線に電流が流れるたびに白煙が立ち昇るなか、世紀の対決「こぐまたろう」と「メタリックファイター」が死闘を繰り広げました。しかし何と今回、それ以上の衝撃が! 謎のメキシコ人仮面のミステル・タマオ氏率いるナガレンジャー関東支部が、ナガレンジャーの実権を握ろうと本部へ挑戦状を叩きつけたのです! 詳しくはこちらの動画を!……どうでもいいんですけど、謎のメキシコ人仮面なのにメキシコ支部じゃなくて関東支部なんですね。いや、いいんですけど。
今回は前回よりさらにパワーアップし、3本勝負。2対2のタッグマッチに自律操縦対人間のシングルマッチ、そして金網リングによる待ったなしのガチンコバトル。イメージDVDまで放映され、何度も暗転する会場内、正直撮影している側にとっては被写体を見失うわピントは合わないわで大変だったんですが。
第1試合、関東支部を迎え撃つのは地元ナガレンジャー本部のナガレシャイニングとナガレイエロー、実はロボットバトルではナガレイエロー氏が止むに止まれぬお子さんの授業参観のため、ナガレイエロー機を操縦することができなかったのですが、本部の危機に間に合いました! そのナガレイエローにロボットバトルでは初戦で倒されてしまったナガレシャイニング、休養はばっちりです!
そんな地元ナガレンジャーコンビに向けられた刺客は、関東支部の生え抜き、SLAN氏の「ナガレラベンダーMk-II」とさっきまでは「ザウラー」という名前だった気もする「ナガレゴールド」。「ナガレゴールド」のKENTA氏、イメージDVDではミステル・タマオ総統に悪知恵を耳打ちをする役回りでしたが、ああいうタイプはきっと後で下剋上を狙うので総統は気を付けた方がいいと思います。
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【動画】イメージDVDの再生後、「rsv3」の戦太鼓によって登場する選手一同
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【動画】第1試合、なぜか会場が暗転したと思ったら、いつの間にかこのような舞台装置が! 「本当にやるのか!」という悲鳴に近い会場の声援のなか、「ナガレゴールド」が「ナガレシャイニング」にまさか、まさかのダイビングボディープレス! 決まったー!!
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後のないナガレンジャー本部、認定権を獲得した長井の星、ナガレブラックがナガレンジャーを背負って登場です。対する関東支部、生え抜きを第1試合で使い切ってしまったため、助っ人作戦に出ます。演技力もみごとなIKETOM氏の自律ロボット「BLACK TIGER NEO」が、「ナガレブラックタイガー」として参戦。正直どっちもブラックで機体も黒くてサイズも似ているのでぱっと見で区別がつきません。モノアイが赤いのが「ナガレブラックタイガー」、黒獅子の角が付いているのが「ナガレブラック」です。
自律のためのセンサーがロープを敵と認識してしまうため、上2本のロープを外した状態で行なわれた第2試合。しかしコーナーを敵と認識して攻撃してしまったりする「ナガレブラックタイガー」、ついに2ダウンと後がない状態に持ち込まれます。しかしそこでとどめを刺すために「ナガレブラック」が繰り出した長井に伝わる秘術が……。
そして1対1のドローとなって迎えた第3試合。関東支部はくまま氏の「ガルー」を強力助っ人として迎えていたのですが、ここは長井、そしてくまま氏は「お米ゲッター」の異名を取る長井米LOVE。米50kgの成功報酬につられて、関東支部からナガレンジャー本部へと寝返ってしまうのです。対するは「ミスターG」との文字、結局ちょっとバタバタした後でひっきー氏&「いぬじろう」がBGMのさびを狙って登場したのですが、実際あれは本当はだれか別の人が登場するのだったでしょうか?
さて待ったなしの3分3ラウンド金網マッチ、審査委員長であるサンライズの井上氏も「金網越しの犬は可愛いねぇ」とたまらないご様子です。しかしお米がかかった「ガルー」は強い強い。ロボットバトルでの憂さを晴らすかのように「いぬじろう」へと猛攻撃です。「いぬじろう」危ない、「いぬじろう」転倒で頭を打ったか、「いぬじろう」脳しんとうかー!? 誰かタオルをー、レフェリー!! ということでレフェリーの神の手が入ったのですが……。
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【動画】後がない「ナガレブラックタイガー」(左)を追い詰めるために「ナガレブラック」が繰り出したのは影分身の術! しかし、影が倒されても1ダウンということで、どちらも後がない展開に。最後はTKOで「ナガレブラック」が勝利
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【動画】レフェリーの神の手により倒れても、倒れても立ち上がる「いぬじろう」(右)。しかし「ガルー」の大技、ジャーマンスープレックスがその度ごとに大炸裂!
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最後は「いぬじろう」(手前)が「ガルー」に腕ひしぎ十字固めを決め、「ガルー」の肩を脱臼させてレフェリーストップ。勝者「いぬじろう」!
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というわけで2対1で関東支部が勝利し、何とナガレンジャーの主導権は本部から関東支部に渡ってしまったのです!!(主導権が渡っても関東「支部」?)どうなる長井、どうなるナガレンジャー!? その顛末は、次回のロボットプロレス「できんのか!3」(開催未定)まで、乞うご期待!
● 地元山形の工業高校生が大活躍!
さて、ナガレンジャーFFも年2回開催で5回目を迎え、同じ長井市で開催された第10回ROBO-ONEもカウントすると3年の月日が流れている。その中で、トップビルダーたちの機体と操縦テクニックに触れ、また運も幸いしてどんどん成長していく地元山形の工業高校生たちのロボット。特に今回注目したのは、鶴岡工業高校ロボティクスクラブの1年生チームのロボット「Maximum」。名前の割に小型の機体はほぼKHRベース、特別なハードウェアもモーションもないのであるが、ロボットの女神は「Maximum」にほほ笑んだのである。
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【動画】初戦から優勝ロボット「Cavalier」(左)に当たってしまった「Maximum」。必死の反撃を試みるも、腕の一薙ぎで容赦なく吹き飛ばされ、最後には足に挟まれ押しつぶされる。まだ女神はほほ笑まないが、トップビルダー&ロボットの洗礼を存分に味わう
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【動画】敗者復活戦のランブル、危うく「起き上がれない」と失格判定されかけるが、「まだ大丈夫!」との周囲の声に助けられる。そして気がついたら他のロボットが次々自滅し、1体無傷で競技台の上に
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【動画】栃木県産技大ロボワン研究部の「みんみん♪」(奥)との一戦、サイズ的にも「みんみん♪」有利かと思われたが、スリップからの復帰で「みんみん♪」がタイムを取る。タイム後も周囲の心配をよそに果敢に攻撃する「Maximum」、その熱意が功を奏したのか、終了直前に「みんみん♪」がスリップダウン! ここまで来ると女神が付いているとしか思えない
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【動画】そして次の試合でまたしてもトップビルダーであるMorinaga氏のロボット「金属的戦士」(左)の胸を借りることになった「Maximum」。「金属的戦士」も手を抜くことなく、攻撃を受け止め、最後は大技でダウンを奪う。トップビルダーに次々当たって本気で勝負した、この経験がきっと次回のナガレンジャーFFで生かされることであろう
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また、地元長井にある長井工業高校では課題研究として機械システム科と電子システム科の学生がそれぞれ二足歩行ロボットに挑戦し、ナガレンジャーFFに参加している。また、第10回ROBO-ONEから構想して長井工業高校生が設計・製作、地元菓子店との協力のもと、ついに完成した「ロボット人形焼」がお土産として販売されていた。
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長井工業高校生は競技の休み時間を利用して実際のロボットを手に登場、課題研究の発表を行なった
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お土産として販売された「ロボット人形焼」は一箱10個入りで600円。こしあんとカスタードの2つの味があり、パッケージも高校生のデザイン
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5柄2個ずつのロボット人形焼が並ぶ。ロボットの形をしていても、味は普通の人形焼なので心配ない
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ロボット人形焼の型。ちなみにテフロン加工済み
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ROBO-ONEが予選なしとなって認定大会の重要性や緊張感が高まるかもしれないが、地域色豊かでさまざまなレベルのロボットビルダー同士が触れ合える地方大会ならではの良さが再確認できる。そんな大会の1つが、ナガレンジャーFFではないだろうか。
■URL
第5回ナガレンジャー・ファイティングフェスタ in 雪灯り回廊
http://www.nagai-cci.or.jp/robot/nff.html
フラワー戦隊ナガレンジャーの日々
http://blog.livedoor.jp/fsn0601/
長井工業高校:ロボット焼の製作
http://www.nagai-th.ed.jp/yakusin/yakusin2008/robokata0803.htm
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( せとふみ )
2009/02/17 20:03
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