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「第4回高校生ロボットアメリカンフットボール全国大会」レポート
~オープン参加の全日本プレ大会も併催


今年も高校生と彼らが自作したロボットたちが熱い闘いを繰り広げた
 「第4回高校生ロボットアメリカンフットボール全国大会」が2月8日(日)、パシフィコ横浜で開催された。主催は、社団法人全国工業高等学校長協会で、後援は文部科学省、経済産業省など。「全日本ロボット相撲大会」と同じく、株式会社富士ソフトがシステム面や大会運営などで協賛している。全日本ロボット相撲大会の団体球技戦バージョンともいえるロボット競技だ。また今年は、オープン参加の「全日本ロボットアメリカンフットボール」のプレ大会も実施された。両大会の模様をお届けする。


ロボットアメリカンフットボールのルール

 ロボットアメリカンフットボールは、無線操縦式のクルマ型ロボットを使用して争われる。当然といえば当然なのだが、ヒューマノイド型ロボットによるサッカーとは比較にならないスピードが出るため、おそらく現在行なわれているロボット球技の中で、最も迫力があるといっても過言ではないだろう。

 ルールだが、高校生ロボットアメリカンフットボール(以下、高校ロボフト)も、全日本ロボットアメリカンフットボール(以下、全日本ロボフト)もともに同じ内容となっている。試合には最大4台まで出場可能で、1チームで交代用の1台も含めて最大5台まで登録することが可能だ。仮に5台すべてが故障してしまったとしても、登録したロボット以外は出場させてはならない。ロボットの寸法は幅×奥行き×高さが各20cm以内、重量は3kg以内となっている。無線操縦のシステム部分に富士ソフトが開発した技術が使われており、最大200台のロボットが同時に稼動できる。この日も、予選では高校ロボフト4試合と全日本ロボフト1試合が同時に行なわれ、最大40台が混信することなく同時に動いていた。

 試合コートは縦7m×横3mで、両エンドから50cmがゴールエリアとなっている。その後ろに操縦エリアがある形だ。ボールはアメフトらしく楕円形のゴム製を使用。サイズは長さ16~19cm、直径10~12cm、重量160~220g。得点は、相手の陣地内のゴールエリアにボールをキープした状態で入るか、相手ゴールエリア内にフリーの状態で転がっている(はねていて空中にある状態も含む)ところをロボットが触れば、タッチダウンで得点1となる。試合時間は3分間で、決勝戦のみ1分間のハーフタイムを挟んだ前後半3分ずつの計6分で試合が行なわれる。また、いずれの試合も7点差がついた時点でコールドゲームとなる。


ロボットたち。後方の選手と比較すると、おおよそのサイズがわかってもらえるはず 試合コート。エンドの白いゾーンがゴールゾーン。手前の青いゾーンは操縦エリア ロボットとボール。ロボットに対してボールが大きめ

 ロボフトの名称にラグビーではなくアメフトが冠されているのは、ボールをキープしていないロボットにも自由にタックルをしかけられることによる。よって、ボールを奪い合っている最中は、相手のポイントゲッターを先につぶしておくと有利になる。また、ボールをキープした後は、ポイントゲッターをゴールに確実に向かわせるため、相手のディフェンスをいかにつぶしていけるか、といったことがポイントとなるわけだ。このロボット同士のぶつかり合いは、かなりの速度での衝突となるため非常に迫力があり、最大の見せ場となっている。3kgのロボットが複数台でガツンガツンとぶつかり合うので、時には部品が吹っ飛んだり、ロボットがコートの周囲の段差を越えて外に飛び出すこともあるほどだ。また、ボールプレイスで試合再開の時は、各チームそれぞれオフェンスとディフェンスのフォーメーションを用意しているなど、その辺もアメフトらしいところである。


アメフトらしいぶつかり合い・つぶし合いで乱戦は必至。非常に迫力がある オフェンスのフォーメーションのセットにいく選手たち こちらはディフェンスのフォーメーションで備えているところ

 試合の流れとしては、試合開始時とどちらかのチームが得点した後は、ボールをセンターライン中央のボールプレイスに置き、ホイッスルで試合開始/再開となる。その時、ロボットはゴールライン(ゴールエリア内)に待機し、試合開始・再開のホイッスルの音とともにボールを取りに行く。本来のアメフトのように攻撃と防御が分かれているわけではなく、また得点された側がキックオフするといったルールでもない。理由は、ロボフトはボールをキープした状態で始めると得点できる確率が高くなるから。そのため、ただ点を取り合うだけの試合展開になってしまう可能性も高く、それを防ぐためのルールと思われる。

 ボールがサイドラインを割った場合は、センターボールプレイスのほか、各陣地中央(センターから150cmの位置)にそれぞれボールプレイスがあり、最も近くのボールプレイスから試合再開となる。ボールの権利がある方がボールプレイスのすぐ後ろからスタートでき(サッカーのフリーキックのような状態)、有利となる。どちらが出したのかどうしても判断がつかない場合や、双方のロボットがボールを間にして押し合って動けなくなってしまった場合などは、両チームともに一定の距離を置いて、ボールプレイスに置いたボールを取りに行く。

 非常に激しいぶつかり合いをするため、ロボットはひっくり返ったり、コート外に吹っ飛ばされたりすることは当たり前のように起きるのだが、ゴールするか、ボールがサイドラインを割って一度プレーが中断しない限りは、選手は自分たちのロボットには一切触ってはいけない。壊すか壊されるかが当たり前の激しいルールなので、いかに連戦を重ねても壊れないよう頑丈に作るか、いかに吹っ飛ばされたりひっくり返されたりしないように作るかが、ロボット製作のポイントとなる。選手交代はアメフトらしく、プレー中断時に主審に伝えれば何度でも可能。攻め時と守り時でロボットのタイプを考えて交代させることも可能なら、故障で急遽交代といったこともある。


コート外にロボットが吹っ飛ばされてしまうのは普通 一番奥の4号機は、激しい闘いの最中に右後輪が吹っ飛んでしまった模様

ロボットの特徴

 ロボフトのロボットたちは、前述のとおり無線操縦によるクルマ型。寸法と重量さえ守れば、モーターの種類などの規定はなく、車輪も4輪でも6輪でも構わない。変形機構の搭載もOKで、多くのロボットに採用されている。この変形に関しては、各選手の設計・製作上の創意工夫の見せどころの1つでもある。ロボットのタイプとしては、オフェンスとディフェンスの役割分担をさせているところと、そのどちらもこなせるバランス型を揃えているところと、チームによって個性があった。中には全機ほぼ同じ作りというチームもあったが、多くのチームが1台ずつ大なり小なり異なる部分があるようだ。おそらく、細かい部分は選手の設計・製作上の工夫が採り入れられているのだろう。


重量の問題と思われるが、4輪タイプが若干多いように見受けられた(写真は葛西工シンプルズ) チーム樟陽は、4輪と6輪の混成で闘っていた。もちろんパワーは6輪の方が上 大沢野工サジタリウス。全機ほぼ同一というチームは意外と珍しい

 オフェンス型のロボットも大別して2種類に分かれ、タックルなどには不向きだが高機動性とキープ力を重視したフォワード(ポイントゲッター)型と、タックルなどのディフェンスもこなせるバランス型がある。オフェンス型は総じて機動力が高く、ボールをキープしやすい構造を持っているようだ。操縦者の操縦テクニックにもよってくるが、中には10代の反射神経じゃなければ操縦できないだろうという高機動型も存在する。オフェンス型にボールのキープ力が求められるのは、いうまでもなく奪取してからゴールまで確実にボールを運ぶことを求められるからだ。

 また、左右のアームが前方に展開するといった変形機構を多くの選手が持たせていた。アームの間でボールを転がすようにすれば、タックルで吹っ飛ばされない限りはゴールへ持ち込めるという寸法である。中には、よりキープ力を上げるため、2本のアームの上側にネットを張っていたり(ボールがはねてロボットの上を飛んでいってしまわないようにするため)、ボールを機体正面にとらえたらアームを降ろして囲ってしまったりするような(さすがに完全に隠してしまうと反則)機体もあった。高トルクモーターを使用しているため、どこのロボットもとても俊敏な動きをするのだが、キープ力が低いとクイックに動いた時にボールをこぼしてしまうので、キープ力というのは大きなポイントである。

 ディフェンス型は、相手の進路を妨害したりボールを抑え込んで相手に触れないようにするようなブロックするタイプと、相手をひっくり返したりコート外に追い出したりして行動不能に追い込むタイプの2種類があるようだ。ブロックタイプは、変形すると横に広がって相手から見て少しでも面積が広くなるような工夫をしているものもある。相手を行動不能にするのを狙っているタイプは、機体前面に斜めの鉄板を張っており、相手ロボットの下に先端を突っ込み、そのまま持ち上げて転ばしたりコート外に出したりする仕組みだ。


形状は若干異なるが、全機が攻防兼用のバランス型という石川県工 チーム羅威。右の機体はひっくり返し狙い、真ん中は押し合い用。左は変形ありのオフェンス用 コート外に追い出すのを狙う10ARMSのディフェンス寄りの機体(黒いロボット)

全日本ロボットアメリカンフットボール

 まずは、高校生ロボフトの決勝トーナメントに先立ち、決勝戦が行なわれた全日本ロボフトからレポートしよう。

 今回参加したのは以下の6チーム。高校ロボフトの校名とチーム名に合わせ、所属組織とチーム名となっている。カッコ内は、予選ブロックだ。

・四中工OB会 四中工OB(Aブロック)
・千葉工 チームKLT(Aブロック)
・春日部工+α チームKM(Aブロック)
・SANUKI-OB'S SANUKI(Bブロック)
・瀬戸水軍 瀬戸水軍(Bブロック)
・メカトロファイター ミモレット(Bブロック)

 予選は総当たりで行なわれ、Aグループは四中工OBが、BグループからはSANUKIが決勝戦進出を果たした。ちなみにSANUKIは、香川県工業高校のOBチームだ。予選の勝敗などの詳細は、【画像1】を参照いただきたい。

 全日本ロボフトの決勝戦は、高校ロボフトとは異なり、試合時間は予選同様の3分間で行なわれる。スタートして序盤は四中工OBがリードし、このまま押し切ってしまいそうなペース。しかし、徐々にSANUKIのエンジンがかかり始め、逆転に成功。シーソーゲームになるかと思いきや、今度はSANUKIがそのまま点を伸ばしていく。しかし、四中工OBも食い下がり、一時は開いていた点差を1点差まで戻したが、そこでタイムアップ。四中工OBvsSANUKIの決勝戦は、7-8でSANUKIの勝利となった。試合時間は3分だが、プレーが中断している時間が結構長く、トータル16分20秒と長くなってしまったため動画は4本に分けて掲載した。また、試合後に優勝したSANUKIの長尾義理(ながおよしみち)キャプテンにコメントをもらったので、合わせてご覧いただきたい。


【画像1】全日本ロボフトプレ大会の予選リーグ戦表 予選Aグループを勝ち抜いて決勝戦進出を果たした四中工OB 予選Bグループを勝ち抜いて決勝戦進出を果たしたSANUKI

【動画】全日本ロボフトプレ大会決勝戦・四中工OBvsSANUKIその1 【動画】全日本ロボフトプレ大会決勝戦・四中工OBvsSANUKIその2

【動画】全日本ロボフトプレ大会決勝戦・四中工OBvsSANUKIその3 【動画】全日本ロボフトプレ大会決勝戦・四中工OBvsSANUKIその4

【動画】優勝したSANUKIの長尾キャプテンのコメント SANUKIのチーム全員でガッツポーズ

 なお、全日本ロボフトが開催されることになったのは、高校生ロボフトも2001年の第1回実験戦からスタートして回を重ね、歴史ができてきたからといえる。かつて高校ロボフトに参加し、その時の充実感ややり残した思いなどから再び同級生や先輩・後輩とチーム組んで参加したいというOB選手たちもいれば、競技として魅力を感じて参加したいという人たちもいる。ロボット球技として少しずつ浸透してきているといえそうだ。

 ただし、ここからもっと広まるにはなかなか難しい点もある。いうまでもないが、最大の魅力である「団体戦」というところがまずネックだ。少なくとも4人のチームメイトを必要とすることから(1人でも参加できないわけではないが、勝負にならない)、社会人ともなると合同練習などのスケジュールを合わせることもなかなか難しい。

 また、ヒューマノイド型ロボットによるサッカーのように、ロボットのキットが発売されているわけではない点も敷居が高い。高校ロボフトも全日本ロボフトも、すべて専門的な知識と技術を有した選手たちがロボットを自作しているため、参加したいと思っても一般人はロボットを用意することがまず大変という点もある。全日本ロボフトを、かつて高校ロボフトに参加したOBや一部の工作環境に恵まれた人たちのための大会ではなく、より大勢の人たちが参加できるようにするには、ロボットをどうすれば作れるか、どれぐらいの費用がかかるのかといったことの情報の提示や、練習場所を提供するといったサービスがあってもいいかも知れない。

 ただ、「ものづくり」が基本にあるロボット球技なので、そこをおろそかにしてしまうのも問題だろう。何はともあれ、とても迫力があって面白い競技なので、発展していってもらいたいと個人的に強く思う。高校生以外も参加できる環境が用意されるのは、とても素晴らしいことなので、大会を運営している富士ソフトにはもっと大きくなるような仕組みをぜひ考えてもらいたいところである。


高校生ロボットアメリカンフットボール全国大会

 続いては、本命の高校ロボフト。今回は初出場の5校4チームを含めた、全18校17チームが全国大会に参加した。沖縄の2校は、昨年までは那覇工が単独で参加していたが、今回は沖縄工との合同チームで参加している。予選は4グループに分かれて総当たりリーグ戦方式で行なわれた。Dブロックがほかより1チーム多い5チームとなり、死のグループとなっている。また、今回は初出場校が多く、蒼き新鋭(松翠学園 岐阜第一高等学校)、TTHS(山口県立田布施工業高等学校)、エアフレイム(愛媛県立八幡浜工業高等学校)、10ARMS(沖縄県立沖縄工業高等学校、那覇工との合同チーム)の4校が新風を吹き込んだ。


参加校一覧 予選AおよびBグループのリーグ戦表 予選CおよびDグループのリーグ戦表

 予選を勝ち抜いたのは、以下のチームだ。特筆すべきは10ARMS、TTHS、エアフレイムだ。ともに初出場ながら決勝トーナメント進出を果たした。10ARMSの沖縄工は、3回目の出場となる那覇工との合同チームだが、3チームとも立派なものである。特に10ARMSとTTHSは、昨年の優勝校の強豪校の瀬戸水軍・昇(愛媛県立今治工業高等学校)と同じ予選Bグループに入りながら、その強豪校を破っての決勝戦進出だ。エアフレイムも、連続出場している学校ばかりを相手に死のDグループで予選2位を勝ち取っているので、立派な成績である。


予選Aグループ1位通過のMITOYO(三豊工)。実験戦2回目以来、常に優勝か準優勝という超強豪校 予選Aグループ2位通過の足利(足利工)。手前の黒系の4台が足利のロボット

予選Bグループ1位通過の10ARMS(沖縄工・那覇工)。選手たちの気迫あふれる姿は今大会一番だった 予選Bグループ2位通過のTTHS(田布施工)。初見参ながらみごと決勝戦進出

予選Cグループ1位通過のチーム樟陽(茂原樟陽)。過去最高位の3位より上に行けるか 予選Cグループ2位通過のチーム羅威(新座総合技術)。新座総合技術は、昨年が初参加

予選Dグループ1位通過のチーム四中工(四日市中央工)。年々成績を上げており、昨年はついに3位に 予選Dグループ2位通過のエアフレイム(八幡浜工)。こちらも初参加で決勝トーナメント進出

高校ロボフト決勝トーナメント

 全日本ロボフトの決勝戦を挟んで、午後から高校ロボフトの決勝トーナメントが開始された。1回戦の組み合わせは、第1試合がMITOYOvsエアフレイム、第2試合が10ARMSvsチーム羅威、第3試合がチーム樟陽vsTTHS、第4試合がチーム四中工vs足利。第1試合は8-1でMITOYO、第2試合は5-0で10ARMS、第3試合は7-0でチーム樟陽、第4試合も7-0でチーム四中工の勝利となった。決勝トーナメントに出場したチーム同士の闘いといっても、各グループ1位通過のチームと、2位とでは少し実力的に開きがあるようで、決勝でもコールドゲームが相次いだ。


決勝トーナメント表 第1試合のMITOYOvsエアフレイム 第2試合の10ARMSvsチーム羅威

第3試合のチーム樟陽vsTTHS 第4試合のチーム四中工vs足利

 準決勝戦は、第1試合がMITOYOvs10ARMSで、第2試合がチーム樟陽vsチーム四中工。第1試合は9-2でMITOYOが勝利した。MITOYOは、第2回の実験戦以来、7大会連続で決勝進出を果たしている(第1回実験戦は、かなり小規模に行なったということで、結果は公表されていない)。ちなみにMITOYOは、実験戦第2回および第3回、プレ大会、第1回大会の4回連続で優勝を果たしており、第2回大会と第3回大会は準優勝。まさにV9時代の巨人軍か、皇帝ミハエル・シューマッハ時代のフェラーリかという圧倒的な強さである。

 その超強豪のMITOYOに10ARMSが挑んだ第1試合の様子をお見せしたいところだが、第2試合を撮影していたので、チーム樟陽とチーム四中工の実力が伯仲した接戦の展開をご覧いただきたい。試合時間は3分だが、プレー中断の時間を含めるとトータルで10分弱となるので、2本に分けさせてもらった。


【動画】準決勝第2試合のチーム樟陽vsチーム四中工その1 【動画】準決勝第2試合のチーム樟陽vsチーム四中工その2

高校ロボフト3位決定戦&決勝戦

 準決勝戦第2試合は、決勝トーナメントの中では最も拮抗した勝負となり、2-4でチーム四中工が勝利を収めた。チーム四中工はプレ大会から参加し、参加1~2年目は初戦敗退していたが、徐々に成績を上げてきて、昨年は3位をゲット。今回はさらに上の決勝戦に進出となった。決勝戦はMITOYOvsチーム四中工というカードだ。

 決勝戦の前に、惜しくも準決勝戦で敗れた10ARMSとチーム樟陽による3位決定戦が行なわれた。10ARMSは沖縄の2校による合同チームで、今大会に参加しているチームとしては、おそらく最も会場の横浜から遠い学校と思われる。沖縄とは気候がかなり異なっていて相当寒かったのではないかと思うが、前述したように最も気合いがあり頑張っていた。別のコートの試合を取材していても、そのかけ声や歓喜の声などがよく聞こえてくるし、試合開始と終了時の挨拶も最も元気がよかった。スポーツマンシップに乗っ取った、自分たちを鼓舞する折り目正しいかけ声なので、聞いていて気持ちがいい。ここまでの対戦で、実はMITOYOから唯一2点を取ったのが10ARMSで、準決勝戦は身体が2つあれば……という次第であった。

 一方のチーム樟陽は、西高東低の感がある高校生ロボフトで、決勝トーナメントの上位まで何度も進出している唯一といっていい関東勢。実験戦の第2回から参加している最古参のチームの1つ(当時の校名は千葉県立茂原工業高等学校)で、プレ大会で準優勝を記録したが、本大会では3位もしくは4位(昨年のみ)。毎年、決勝戦まであと一歩という惜しいチームである。今年も決勝戦への進出は叶わなかったが、3位決定戦でも素晴らしい闘いを見せてくれた。なお、3位決定戦は実力が拮抗したこともあり、トータルの試合時間が20分以上という熱戦となった。非常に長いので、全日本ロボフトの決勝戦と同様に4分割してお送りする。


【動画】3位決定戦10ARMSvsチーム樟陽その1 【動画】3位決定戦10ARMSvsチーム樟陽その2

【動画】3位決定戦10ARMSvsチーム樟陽その3 【動画】3位決定戦10ARMSvsチーム樟陽その4

 3位決定戦は、5-8でチーム樟陽が勝利。伝統を持つチームの強さを見せ、チームワークと気合いの10ARMSを退け、3位となった。10ARMSはさすがに対MITOYO戦で燃えつきたか、予選時や決勝トーナメント序盤ほど元気がなかったようだ。それでも4位となり、初出場の沖縄工の生徒も含めた合同チームであることを考えれば大健闘といえるだろう。合同チームとなることでのメリットもあるが、コミュニケーションやスケジュール調整など、ほかのチームにはない苦労もあったはずであり、それを乗り越えての4位入賞は素晴らしい結果である。

 そしていよいよ決勝戦。MITOYO対チーム四中工だ。去年は準決勝戦で行なわれたカードだが、そのほかにもロボット相撲などでもこの2校は対戦しているそうである。決勝戦は前述したとおり、途中に1分のインターバルを挟んで前後半3分ずつで行なわれる、準決勝までの倍となる長丁場だ。予選から決勝まで、MITOYOは5試合、チーム四中工は6試合。選手の体力・集中力、ロボットの耐久力の面で、これだけの試合数を重ねてくるとかなりきつくなってくるはずで、チーム四中工の方が1試合多い分、若干不利か。しかし、それを見越した耐久力をロボットに持たせる設計・製作は必要なことだし、選手の体力の面も同じことがいえるだろう。何はともあれ、第4回高校生ロボットアメリカンフットボール全国大会の頂点が決まる試合がスタートである。


【動画】決勝戦MITOYOvsチーム四中工その1 【動画】決勝戦MITOYOvsチーム四中工その2

 なんと、決勝戦もMITOYOが7-0でコールド勝ち。いくらチーム四中工が1試合多いとはいえ、MITOYOも5試合をこなしているので、選手の体力・集中力、ロボットの耐久力の面で楽な状況ではなかったはずである。が、MITOYOはそれに備えて来たということで、ダントツの実力といえよう。こちらも、試合後にキャプテンからコメントをもらえたので、ぜひご覧いただきたい。こういう時は、他校の生徒たちのことも考えたコメントを普通はするものだが、去年優勝を阻まれた今治工(瀬戸水軍・昇)と、四中工に対する並々ならぬライバル意識をうかがえた。相当の努力を重ね、実際に結果を出した者だけに許される、実にたくましいコメントである。


【動画】MITOYOキャプテンのコメント チーム全員で記念撮影

 MITOYOの第1回大会ぶりの優勝で幕を閉じた第4回高校生ロボットアメリカンフットボール全国大会。優勝のMITOYOには、文部科学大臣賞も贈られた。また、経済産業大臣賞は山口県立田布施工業高等学校のTTHSに贈られている。


経済産業大臣賞を受賞したTTHS 高校ロボフトの上位成績を収めたチームと大会委員や来賓と記念撮影 こちらは、全日本ロボフトの上位成績のチームとの記念撮影

 閉会式では、大会委員の株式会社いすゞ中央研究所取締役の西村輝一氏から、来年の話も語られた。もっとチームプレーができるようにと、コートを現在の縦7m×横3mから拡大することを検討中だそうである。モーターの出力が上がり、ロボットの機動力が大変高くなっていることから、もっと連携して動くためには、現在のコートは少し狭いという意見が出てきているようだ。ボールがサイドラインを割ってしまう回数も多い気がするので、コートの拡大は賛成である。

 今回取材させてもらって、改めて学生たちが先輩のあとを引き継いで出場する、こうした競技会は素晴らしいと感じた。気風や試合のスタイルなど形のないものに加えて、ものづくりというジャンルならではの確実に目に見える形で残せるデータや器材といったものがあるところが、またとてもよかったりする。デザインや機体コンセプトなどを見ると、代々伝えられているチームもいくつかあり、伝統はこうして作られていくというのをとても強く感じた次第だ。今回は全日本プレ大会でOBが何人も参加していたことから、後輩たちが伝統を引き継いでがんばっているのを見られて、とても嬉しく感じたのではないだろうか。個人的に、毎年この大会に参加する生徒とロボットたちがどのように変わっていくかを末永く見届けたいので、大会が続く限り、自分の体力が続く限り取材したいと思う。


URL
  全日本高校生ロボットアメリカンフットボール大会
  http://www.fsi.co.jp/foot/
  富士ソフト
  http://www.fsi.co.jp/

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( デイビー日高 )
2009/02/12 16:58

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