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双腕重機の勇姿。アームが2本になっただけでなぜこんなにカッコいい?
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東京ビッグサイトで6日、東京消防庁の年頭恒例行事「出初式」が行なわれた。昨年の遠隔操縦型の消防ロボット「デュアルファイター」(無人放水車「ドラゴン」と有人操縦も可能ながれき撤去車「セイバー」の2台1組)に引き続き、今年もロボット系の消防車両「双腕重機」が登場。2つの腕を持つロボット的な要素も持った重機で、軽々とがれきを撤去していくたくましいマシンだ。今回、コックピット内も含めて多数の角度から撮影してきたほか、消防演技(消防活動のデモンストレーション)で実際にがれきを撤去する様子も撮影できたので、その模様を紹介する。
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【動画】出初式の消防演技での活躍の様子
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消防演技の一場面。軽く見ても数百kgはあるであろうパイプ状がれきをお菓子のようにつまむ頼もしさ
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手元のがれきはすべて双腕重機が10分に満たないわずかな時間で撤去したもの。まさに百人力
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● 日本にまだたった1台の日立建機製マシン
双腕重機は、日立建機が開発している重機で、まだ日本で1台(たぶん世界でも1台)しかないスペシャルなマシン。見た感じの個人的な感想では、「パトレイバー」の作業用レイバーか、映画「エイリアン2」のパワーローダーという印象だ。
東京消防庁では、昨年の中国四川大地震や岩手・宮城内陸地震での教訓を生かし、震災によって倒壊した建造物からの救助作業や、災害現場での活動能力を検証するため、昨年10月から日立建機より本機を借り受け、第六消防方面本部消防救助機動部隊に試験的に配備している。実際に昨年12月21日には、東京都墨田区東墨田三丁目で、空き家5棟など約470平方mを消失する大火災が発生した際、初出場してすでに実戦も経験している。この時は、消防車46台が出場する大規模な火災だったそうで、現場にかなりのがれきが散乱し、そこで双腕重機の出動となったというわけだ。
双腕重機は、その名の通りで、それぞれ機能の異なるブームを備えた2本のアームを持っている。アームは、左右独立して操作することが可能で、ボディを旋回させることなく、つかんだ対象物を横に移動させる機能を有する。ブームは、右アームのものが3t級、左アームのものが5t級。種類としては、右は全旋回式(先端だけクルクル回せる)グラップルで、さまざまな物をつかむことができる。左は油圧式ペンチカッターになっており(見たところこちらも全旋回式のようで、少なくとも90度は旋回するところを見られた)、厚さ約3.2mmの鋼材の切断が可能だ。これら2本の機能の異なるアームを備えていることで、従来の一般的な重機では不可能な「長い物を折り曲げる」「対象物をつかみながら切断する」「重量物を支えながらその下にあるものを引き出す」といった作業ができることが、双腕重機の大きな特徴となっている。
なお、双腕重機の部隊の隊員の方に話を聞いてみたところ、持ち上げられる重量は、条件がよければ(おそらくバランスのいいところをつかめれば、という意味と思われる)2tぐらいまでいけるということだ(3tと5t級といっても、必ずしもマックスに持ち上げられるわけではないらしい)。
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右ブームが全旋回式グラップルで、左ブームが油圧式ペンチカッター
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近くの隊員の方と比べると、ブームの大きさがわかってもらえるはず
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右ブームの全旋回式グラップル
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左ブームの油圧式ペンチカッター
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双腕重機の移動時は、油圧式ペンチカッターは前後になっている
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ブームの付け根のアップ
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アームのブームに近い側の関節部分のアップ
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アームのさらに付け根に近づいた位置のアップ
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アームの付け根部分のアップ
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移動方式は、がれきの散乱する不整地での運用が主目的なので、クローラ(キャタピラ)が採用されている。最高時速は5.5km/hだ。低速モードとして時速2.8km/hとあるので、スピードは2段階に切り替える仕組みかも知れない。なお、キャタピラ前面には障害物よけが設けられている。平坦な道を走る時は、障害物よけがない方を前面にして走行するようだ。また、最高時速がでないため、現場への移動は、おそらくこれまでの消防庁所属の重機やそのほか特殊車両と同様に、重機搬送車(専用の搬送車があるかどうかは確認できなかった)で行なうものと思われる。
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重機なので当然だが、不整地に備えてクローラが採用されている
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障害物よけ。小さいがれきなら、これで対処できそう
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移動時は、障害物よけを後方にしてあった
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● 操縦は意外と簡単?
アーム及びブームに関しての操縦は、コックピット内に左右に備えられたレバーで行なう。地面に垂直な操縦桿タイプではなくて、地面と水平に横から突き出している形だ(ジョイスティックを横倒しにした状態)。前後方向の操作でアームを前後に動かし(曲げ伸ばし)、上下方向の操作でブームを動かす仕組みで、感覚的に操縦しやすいよう工夫がなされているそうである。レバーには、レバー先端に親指で押すボタンがあるほか、スティック部分にも2つある。これによって、グラップルやペンチカッターを閉じたり開いたりといった操作をするのだろう。実際に操縦されている隊員の方によれば、「意外と簡単なんですよ」という返事をもらった。
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大型トラックほどではないが、コックピットは高めの位置にある
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コックピット全景。全面ガラス張りで、視界がよさそう
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コックピット内。写真左側の2本のレバーとペダルが本体の操縦に使用すると思われる
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コックピットから見るとアームはかなり大きそう。下部ガラスは飛んできたりするがれきに備えられている
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アームとブームの操縦レバー。これがあるとロボットのコックピットっぽさがグンとアップ
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操作レバーのアップ。もし記者が握ったら、動かす時は「双腕重機、出ます!!」とかいいそう(笑)
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双腕重機はまだ1台のみで、量産化に向けてデータ収集を行なっているテストベッド機的な存在。必要なときには、役立つところを世の中と消防庁および日立建機のトップの方々にアピールしていただきたい。最後に、スペックも掲載しておく。
全長:約6.2m(収納時)
全幅:約2.3m
全高:約2.7m(収納時)
機体総重量:約8,710kg
総排気量:3,059cc
移動速度:時速5.5km/h(高速)/時速2.8km/h(低速)
定格出力:40.5kW-2,100rpm
燃料タンク容量:100L
作動油タンク容量:100L
スイング角度:右腕(左35度/右45度)、左腕(右70度/左35度)
主要装備:赤色回転灯、作業灯、アタッチメント(全旋回式グラップル、油圧式ペンチカッター)
乗車定員:1名
■URL
東京消防庁
http://www.tfd.metro.tokyo.jp/
ニュースリリース
http://www.tfd.metro.tokyo.jp/inf/h20/2008-1130-22/
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2009/01/08 15:14
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