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JAXA、宇宙ステーション補給機「HTV」をプレス公開
~初めて実証機を全機結合、2009年4月には種子島へ


 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は25日、現在開発中の宇宙ステーション補給機「HTV」(H-II Transfer Vehicle)を報道陣に公開した。実際に宇宙に行く「技術実証機(PFM)」と呼ばれるもので、公開は2回目。今年4月の公開時は各モジュールが分離した状態だったが、今回は初めて、統合された形の機体が披露された。


公開されたHTVの技術実証機(初号機)。人間と比較するとその大きさが分かる。ほぼ完成形だが、まだ艤装は一部、フライト時とは異なる その裏側は太陽電池で覆われている。開口部は常に地球側を向くようになっているので、こちらは上側ということになる 左から、中村富久・H-IIBプロジェクトマネージャ、虎野吉彦・HTVプロジェクトマネージャ、塩谷雅人・SMILES代表研究者(京都大学教授)

HTVアップデート

 HTVは、国際宇宙ステーション(ISS)に必要な物資を運ぶための宇宙機である。輸送物資を搭載するための補給キャリアと、宇宙機として機能するための電気モジュール・推進モジュールから構成され、補給キャリアにはさらに空気がある与圧部と、真空に曝露される非与圧部がある。無人機ではあるが、ISSに接近・ドッキングするため、有人機並の信頼性が必要となる。


一番上が補給キャリアの与圧部。上面にはドッキング用のハッチがある 次は補給キャリアの非与圧部。実験装置やISSの交換部品も運ぶ 上が電気モジュール、下が推進モジュール。主エンジンは冗長で4機搭載

 HTVの全長は約10m、直径は約4.4m。日本の宇宙機としては過去最大となる(大きさとしては「きぼう」の船内実験室の方が大きいが、これはISSのいわば1部屋であって、宇宙機ではない)。この与圧部に約4.5t、非与圧部に約1.5tの合計約6tの補給物資を輸送することができる。ただし、実証機は燃料・バッテリを通常より多く搭載するため、物資は約4.5t程度に抑えられる予定だ。


HTVの主要スペック 輸送する主な品目 将来的には発展構想も

 この非与圧部がHTVの大きな特徴となっている。HTVは、船外実験に使用する装置のほか、ISSで定期的に交換される姿勢制御機器やバッテリなども運ぶのだが、スペースシャトルの退役後は、これらをISSに届けることができる唯一の機体となる。ESAのATVやロシアのプログレスでは運ぶことができないのだ。


船外実験装置はこの曝露パレットに搭載され、非与圧部に入る。実証機では2台運ぶが、最大3台まで搭載が可能 左の写真の船外実験装置はダミーで、本物はこちらの「SMILES」。もう1つはNASAの装置が搭載されるそうだ

 現在、HTVの実証機では、各モジュールを結合させて推進系配管や電気的導通などの確認を行なっているところだ。この「全機機能試験#1」を来年1月中旬にかけて実施した後、再びHTVはバラバラになってしまうため(電気的な結合のみ残して実施する全機機能試験#2)、このタイミングでのプレス公開となった。残る電磁適合性(EMC)試験、電力系ジョイント試験をパスしたら、来年4月に種子島へ輸送される。


試験の実施状況。この後、再び分解されてそのまま種子島へ 今後の予定。各種試験の後、種子島へは来年4月に運ばれる

H-IIBアップデート

 HTVは全備質量約16.5tと非常に重いため、新たに開発しているのがH-IIBロケットだ。特徴は第1段のLE-7Aエンジンがクラスタ化(2基)されていることで、これにより打上げ能力をHTV軌道へ約16.5t、静止トランスファ軌道(GTO)へ約8tと強化した。推進薬の量を1.7倍に増やすために、機体の直径も5.2mに大型化している。


H-IIAロケットからの変更点 主要スペックの比較

 現在の開発状況だが、以前の記事でレポートしたように、「厚肉タンクステージ」での燃焼試験(BFT)はすでに終了している。今は試験機(初号機)の製造を行なっており、1段・2段単独での機能確認試験はすでに完了、1段と2段を電気的に結合して行なう全段機能試験を実施しているところだ。


構造系の開発状況 推進系の開発状況 フェアリングの開発状況

試験機の製作状況 開発スケジュール

 今後、種子島宇宙センターにて実機を用いた燃焼試験(CFT)を実施し(今年度第4四半期~来年度前半)、その後エンジンを交換してから本番に臨む。試験機の打上げは、2009年9月頃を目標にしているそうだ。


SMILESも公開

 また同日、「きぼう」の船外実験プラットフォームに取り付けられる観測装置「SMILES」(超伝導サブミリ波リム放射サウンダ)のフライトモデルも公開された。これは、大気中の微量分子が発するサブミリ波を観測することで、その分布と変化を明らかにするもの。オゾン層破壊のメカニズムを解明することが期待されている。

 一般に、こういったセンサーは冷やせば冷やすほど感度が増すが、このSMILESには世界で初めて、4Kまで冷却できる機械式の冷凍機が搭載される。このくらいの極低温だと、通常は液体ヘリウムが使われることが多いのだが(例えば赤外線天文衛星「あかり」やX線天文衛星「すざく」など)、使い切ってしまうと冷却できなくなるほか、何らかのトラブルで気化してしまう恐れもある。機械式ならばそういった心配はなく、小型化も可能だ。


下の2つは姿勢検出のためのスターセンサーで、上がサブミリ波アンテナになる 冷凍機の同サイズ模型。3段階に冷却する仕組みで、原理はスターリングエンジンの逆

URL
  宇宙航空研究開発機構(JAXA)
  http://www.jaxa.jp/

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( 大塚 実 )
2008/12/26 14:09

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