【予選編】に続いて、10月12日(日)に行なわれた決勝トーナメントの様子をレポートする。
決勝トーナメントは軽量級16機による1回戦→重量級16機による1回戦→軽量級2回戦……と続き、それぞれの1~3位が決まったあと、軽量級1位と重量級1位が直接戦って「総合優勝」を決める。各級の優勝者に賞金100万円とトロフィーが贈られるが、チャンピオンベルトは総合優勝者だけに与えられることになる。
試合形式は3分1ラウンド。3回のダウンでKO(もちろん相手が10カウント以内に立ち上がれなければ、その時点で勝利)。また、移動中の転倒や攻撃が空振りして転んだもの、そして「有効でない攻撃」で転んだものを「スリップダウン」としてカウントし、2回スリップダウンすると1回のダウンとして加えるというルールが設定されている。このダウンに関する規定はややこしいので、詳細は公式ページにアップロードされているPDFファイルで確認してほしい。また、機体の規格も重心規定がより厳しくなる(前大会にあった救済措置がなくなった)など、いくつかの変更もあったが、こちらも細かい部分なので省略する。
● 軽量級トーナメント
16機のうち、7機が認定大会からの出場となった軽量級(3kg以下)は、最軽量が2.5kgの「竜鬼II」(AZM LAB)、最重量は2.99kgの「レグホーン」(NAKAYAN)という、非常に近いウエイトのロボット同士による戦いとなった。
1回戦から同じ九州勢、しかも認定大会で直接対決した「automo 03(Sandan)」(holypong)と「スーパーディガー」(ひろのっち)が対戦。お互いに間合いも動きも知っているロボット同士の、非常にスピーディーな戦いが繰り広げられた。3分間を戦って1ダウン同士となった延長戦は、「操作を間違えた」というスーパーディガーの背後を取ったautomoがダウンを奪い、決着。automoは認定大会で負けた借りを返した形になった。
同じく1回戦に登場した自律バトル機「BLACK TIGER NEO」(IKETOMU)はレグホーンにKO負け。まだまだ自律でバトルをするのは難しいようだが、無線操縦が苦手なIKETOMU氏は、今後もソフト面から自律バトルを追求していくという。「若い人にはかないません」というせりふには、前大会でグレートキングカイザーと戦った経験があるROBO-ONE委員会の西村輝一代表もうなずいていた。
認定大会の代表はさすがに格闘戦を勝ち抜いたロボットだけに強く、7機のうち5機が1回戦を突破。2回戦を抜けて準決勝に進んだのは、姫路代表「ヨコヅナグレート不知火2代目」(Dr.GIY)、秋葉原代表「アリモプレナ」(スミイファミリー)、名古屋代表「Cavalier」(えまのん)、四国代表「レグホーン」と、すべて認定大会代表という結果になった。
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【動画】「rsv3」(吉田ファミリア、右)対「YOGOROZA-V」(だうと)。ファーストコンタクトでrsv3が繰り出すパンチは片手がリングについているが、これは一定時間内であればダウン扱いにならない
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【動画】「automo 03(Sandan)」(左)対「スーパーディガー」
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【動画】「automo 03(Sandan)」(左)対「スーパーディガー」の延長戦
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【動画】軽量級1回戦「BLACK TIGER NEO」(左)対「レグホーン」
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戦うBLACK TIGER NEOの姿を心配そうに眺めるIKETOMU氏
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準決勝の第1試合は「ヨコヅナグレート不知火2代目」対「アリモプレナ」。この日絶好調の不知火は体格に優るアリモプレナと打ち合いになる場面もあったが、安定度で試合を優位に進め、最後はすばやく回りこんで背後からパンチ。3ダウンで決勝に駒を進めた。
一方の「Cavalier」対「レグホーン」は、因縁の対決。もともと重量級だったCavalierは、レグホーンを倒すために軽量級に減量してきたのだという。マークされたNAKAYAN氏のほうは「力石みたいなもんですよ」と、その気合に不安を覚えていたようだが、実際の試合はその不安が的中。軽量級としては最大クラスのリーチから繰り出される横突きに、レグホーンはKO負けを喫した。
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【動画】軽量級準決勝第1試合「ヨコヅナグレート不知火2代目」(右)対「アリモプレナ」
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【動画】軽量級準決勝第2試合「Cavalier」(右)対「レグホーン」
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3位決定戦は「アリモプレナ」対「レグホーン」。準決勝ではCavalierの勢いに負けてしまったレグホーンだが、ここでは憑き物が落ちたようにキレのある“手羽先スラッシュ”を連発。2大会連続の3位に輝いた。
決勝戦「ヨコヅナグレート不知火2代目」対「Cavalier」は、リーチが短い不知火が近づいていくところをカウンター的になぎ払ったCavalierが、あっという間に3ダウンを奪い、ROBO-ONE初優勝を決めた。負けたDr.GIY氏による「建造物にやられたような……歯が立たずにやられてしまった」というコメントからもわかるように、完勝だったといえるだろう。「春からは勝ちにこだわってやってきた」というえまのん氏。Cavalierは大柄なサイズはそのままに、変更された重心規定に合わせるため、足の板材にマグネシウムを採用するなど、工夫を積み上げたことで「強さ」と「軽さ」を兼ね備えた機体に仕上がったのだろう。
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【動画】軽量級3位決定戦「アリモプレナ」(右)対「レグホーン」
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【動画】軽量級決勝戦「ヨコヅナグレート不知火2代目」(右)対「Cavalier」
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優勝したCavalierは、足首のピッチ軸より上にほとんどの重量物を集中して重心規定に対応していた
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ROBO-ONE軽量級入賞者。左からDr.GIY氏、えまのん氏、NAKAYAN氏
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● 重量級トーナメント
重量級には前日の予選で大きな注目を浴びた大型機が登場した。一口に重量級といっても、3.01kgの「だんだだん」(ミステル・タマオ)から、19.2kgの「OmniZero .7」までと、あまりにも大きな自重差がある戦いになった。
ほぼ同じ規格の中で技の出し入れのスピードや操縦テクニックを競うような戦いだった軽量級と比較すると、ロボットそのものの能力を正面からぶつけ合う、正面衝突的な戦いが多く見られた。
和製大型機のはしりとしてROBO-ONE GPに加わっていた「Aerobattler MON☆」(なぐ)は、1回戦で韓国からの参戦「Giant StormWaves」(RobotFactory)に完敗。50cm/5kgでもともと最大級のロボットだったのが、今回の相手は103cm/11kg。いまや重量級の中でも小さいほうに変わってしまった。なぐ氏は「1年で小型機扱いになってしまうとは思わなかった」とぼやいていたが、こんなに早くその時代が来るとは、誰も予想していなかっただろう。
「DOKA HARUMI」(ドカプロジェクト)と「クロムキッド」(くぱぱ)は、両機ともバトル中にヒューズが切れてタイムをとることになった。くぱぱ氏に話を聞いてみると、自動車用の15Aヒューズをスイッチとバッテリの間に割り込ませており、2~3個のサーボに無理な力がかかると(過電流が流れると)切れるようになっているという。
ROBO-ONEはサーボに無理をさせるのが当たり前のような世界なのだが、この2機は先日の「ROBO-ONEお手伝いロボットプロジェクト」に出場した機体を転用したものだったので、同プロジェクトのルールで義務付けられた「ロボットの過電流を検出する装置」が効いてしまったようだ。
予選で注目を浴びた130cm/16kgの「ALCNON?」(F1プロジェクト with 大産大テクノフリーク部)は、1回戦で47cm/3.3kgの「Neutrino」(飛騨神岡高校)と対戦。約3倍の身長/約5倍の重量差の戦いとなった。ALCNON?はこれだけ大型の機体でありながら歩行の安定度は抜群。リングは相対的に狭くなるうえ、耐荷重の不安があったために動きにくかったようだが、歩行が不安定になることはなかった。そうなるとNeutrinoは「何とかダウンさせる攻撃を出す」しか手はなく、一矢を報いようと捨て身技で飛び込む姿も見せたが、これほどの重量差を覆すまでにはいたらず、ALCNON?が勝利。
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【動画】重量級1回戦「クロムキッド」(くぱぱ、右)対「Heavy Metallic Fighter(森永英一郎)」
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【動画】もちろん真剣に戦っているのだが、バトルというにはあまりに平和だった重量級1回戦「DOKA HARUMI」(ドカプロジェクト、左)対「GAT」(くぼ)
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【動画】「ALCNON?」(右)対「Neutrino」
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【動画】「Giant StormWaves」(RobotFactory、右)対「Aerobattler MON☆」(なぐ)
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【動画】「ivre-VIN」(右)が落ちた試合。ココで遊んだのが失敗だった、と遊氏
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【動画】重量級2回戦「クロムキッド」(左)対「キングカイザー」
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ALCNON?はこのまま決勝まで突っ走るかと思われたが、2回戦でGiant StormWavesに勝利した同門の「OmniZero.7」(前田武志)と準決勝で対戦。倒れた段階でほぼリングアウトという、明らかにリングの広さが足りていない“不沈艦”対決は、両者がリングに立っただけでどよめきが起こる、世紀の一戦となった。
両者ともに安定した歩行ができる機体なのはわかったが、いかんせんリングの面積そのものが足りていないため、少し動けば相手の間合い。自然と「移動」よりも「足踏み」が多くなり、互いに腕を振り回しているだけのような戦いになってしまったのは残念だ。両者は2ダウンで並ぶものの、最後にOmniZero.7がALCNON?の足を掴み、ダウン→リングアウトさせて決着した。
準決勝のもう1試合は、「キングカイザー」(マルファミリー)対「ivre-VIN」(遊)。何度となく対戦し、ことごとくキングカイザーが勝ってきたライバル対決である。試合開始直後、「これが最後の大型機」と試合に臨んだ遊氏の気合が通じたのか、ivreが放った掴み投げが決まり、1ダウンを先制する。その直後にivreはスリップダウンしてリングアウトしてしまうのだが、ここで前の試合で痛めていた足のサーボに限界が来たらしく、会場でもはっきりと聞こえる異音を残してリングに崩れ落ち、そのまま棄権。キングカイザーの勝利となった。遊氏は「サーボの中の軸が折れてしまった。持つか持たないかギリギリだなと思ってたんだけど……持っていたら十分勝てたと思います」と、悔しそうな表情を見せていた。また、この直後に行なわれた重量級の3位決定戦は、ivreが短時間では修理不可能な故障に見舞われたため、棄権。ALCNON?の不戦勝となった。
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【動画】重量級準決勝第1試合「ivre-VIN」(右)対「キングカイザー」
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【動画】重量級準決勝第2試合「ALCNON?」(右)対「OmniZero.7」
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重量級決勝戦は、ディフェンディングチャンピオンのキングカイザー対OmniZero.7。決して小型・軽量ではないキングカイザーが胸の高さにも届かないほどに、両者の大きさには差があった。果敢に懐に攻め込み、肘打ちでOmniZeroを倒そうとするが、揺らすことはできてもダウンさせるまでにはいたらず。逆にゆっくりとした、だが重たいOmniZeroの“なぎ払い”に巻き込まれてダウンを喫する。しゃがみ込みを駆使しながら懐にもぐりこもうとするキングカイザーだが、逆にOmniZeroの横突きで2ダウン目、最後は攻撃のあとのわずかな隙にねじ込まれた“なぎ払い”でダウンし、3-0でOmniZero.7の勝利となった。
負けた「キングカイザー」マルファミリーのメカ担当、丸直樹氏は「重いロボットが居るのはわかっていたので、大会前に10kgのウエイト(サイズを仮定して足裏まで作ったダミーだそうだ)を相手に、勝負ができるように作ってきたんですが、さすがに4倍だと厳しいですね。動いているところを狙うしかなかったんですが、あまり動きがなかったから」と展開を悔やんでいた。もっとも、すぐに「4倍の重量の相手でも倒すことはできます」と自信のコメントをくれていたので、次回のリターンマッチを楽しみにしたい。
重量級の優勝が決まったあとには、総合優勝決定戦が行なわれ、軽量級優勝の「Cavalier」と重量級優勝の「OmniZero.7」が戦った。軽量級では無敵といえるほどの安定感で優勝を飾ったCavalierだったが、体重差は6倍強。“なぎ払い”や“横突き”を放つものの、全く揺らすこともできずに3-0でOmniZero.7が勝利した。
総合優勝を飾ったOmniZero.7の前田武志氏は、第4回から前回までに毎回参加し、10回出場して予選1位を4回、2位を4回取っているにもかかわらず、どうしても決勝で優勝することができなかった。「よく周りの人に前田さんは本気で勝つつもりがないって言われていたんですけど、毎回勝つつもりで作ってきてたんですよ。やっと勝てました。嬉しい!」と、終了後の控え室では満面の笑顔だった。前田氏の機体の詳細については、後日インタビュー記事を掲載する予定なので、そちらを参照していただきたい。
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【動画】重量級決勝戦「キングカイザー」(右)対「OmniZero.7」
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【動画】総合優勝決定戦「Cavalier」(右)対「OmniZero.7」
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重量級入賞者。左からF1プロジェクト with 大産大テクノフリーク部(2名)、前田武志氏、マルファミリー(2名)
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次回の第15回ROBO-ONEは、2009年の春に開催されることが、すでに公式サイトで告知されている。詳細は不明だが、すでに「軽量級のみ」で行なうことも発表されており、副題には「軽量級選抜大会」と掲げられている。
また、予選を行なわずに、各地で行なわれる認定大会からの代表選手とROBO-ONE GPの登録選手、そして海外選手枠で32機を決めるという。以前、地方での認定大会制度が始まった際に「将来的には導入するかも」とROBO-ONE委員会の西村輝一代表が語っていたことが、ついに実行に移されることになるようだ。
もともとROBO-ONEは軽量級の機体がほとんどで、今大会も登録ベースで全体のエントリーが114機のうち、77機(8機は重量が記入されていなかったので、少なく見積もっても約70機)が軽量級という偏り方をしている。重量級の一部の機体とは、もはや努力や戦術以前の明確な差が出てしまった今大会を考えると、ワンクッション置く意味もあるのかもしれない。
ROBO-ONEは毎回ルールが進化していくことでレベルを上げてきた大会だが、今大会はさまざまな面で運営側の想像を超えていた部分があり、評価の難しい大会になってしまったように思う。
優勝した「OmniZero.7」や「ALCNON?」は確かに規格外の大きさ・重さを持っていたが、ルールにはしっかりと適合していたし、想像を絶するような努力で前例のない機体を仕上げたのだから、なんら後ろめたいことはない。転ばず、絡んでダウンしても、リングアウトしても行動不能にならず、最後まで安定した動きを見せた。これはすばらしいことだ。
だが、この両機はリングに上がったとき、ほとんど動かずに戦う羽目になった。というのも、ROBO-ONEのルールでは重量は30kgまでOKとしていたものの、実際に30kgのロボットが上で格闘をしたときにどうなるかは想定されていなかったようで、リングは強度も広さも、とても10数kgのロボット同士が“格闘”をするように作られていなかったからである。特に破壊するつもりがなくても、ダウンした勢いだけで壊れてしまうリングでは、格闘らしい駆け引きなどできるわけもない。大型機同士の戦いに動きが少なかった原因の1つは、間違いなくそこに求められるはずだ。
次回大会には大型機は存在しないが、その先のROBO-ONEでどう扱われていくのか、ふさわしい“場”が用意されるのかどうか。おそらく初めて参加者側が運営側の想像を超えたものを見せた今回を受けて、今後のROBO-ONの進化に注目してみたい。
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ROBO-ONE委員会代表 西村輝一氏
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【動画】当日行なわれた「ROBO-ONE グランドチャンピオンシップ」のベルト争奪マッチ。ヨコヅナグレート不知火2代目(左)を駆った前ROBO-ONEラウンドガールの鈴木弥生さんが大金星を挙げた
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ROBO-ONE殿堂入りを果たした「AFURO」と菅原雄介氏(中央左)、「Metallic Fighter」と森永英一郎氏(中央右)
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■URL
ROBO-ONE
http://www.robo-one.com/
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( 梓みきお )
2008/10/28 00:31
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