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ホンダ、安全新技術発表会を開催
~「i-SRSエアバッグ連続容量変化タイプ」や「マルチビューカメラシステム」など4つの新技術を発表


 9月18日、本田技研工業株式会社(ホンダ)は「安全新技術発表会」を開催し、連続容量変化することでより安全性を高めた運転席用「i-SRSエアバッグ連続容量変化タイプ」、歩行者との衝突時に瞬時にボンネットをはねあげて頭部への衝撃を緩和する「ポップアップフードシステム」、周囲の視界をカメラで捉えて運転時の不安感を減らす「マルチビューカメラシステム」、股関節や膝関節を見直してより人間に近いデータが取れるようになった「第3世代歩行者ダミー」など4つの新技術を発表した。


本田技研工業株式会社 専務取締役 加藤正彰氏
 はじめに本田技研工業株式会社 専務取締役の加藤正彰氏がホンダの安全技術への取り組みの歴史について述べ、さらに今回発表された技術について「いずれも技術者の強い思いから開発された新しいシステム」と紹介して、概要を解説した。

 救命救急技術の向上もあって自動車事故による死者数は減っているものの、まだ年間6,000人以上が死亡している。また、負傷者は非常に多く100万人を超えている。車の安全技術は「予防安全技術」と「衝突安全技術」からなる。今回発表された技術のうち、マルチビューが予防安全、他3つは衝突安全技術である。ホンダでは「究極の目標はぶつからない車。技術を積み重ね、実現していく」という。


交通事故死傷者数推移 目標はぶつからない車 今回発表された4つの技術

株式会社本田技術研究所 四輪開発センター主任研究員 上地幸一氏
 続けて株式会社本田技術研究所 四輪開発センター主任研究員の上地(かみじ)幸一氏が技術詳細を述べた。ホンダの安全のコンセプトは「共存安全」。自車の乗員、相手の車の乗員、そして歩行者の安全を実現することが目標だ。安全技術の考え方の基本は「未然防止」「回避」「プリクラッシュ」「救命」の4分野に分けられ、同社ではこれまでも「リアルワールド」に即した安全技術の開発を行なってきたと強調した。


安全技術の考え方 安全技術の歴史 「リアルワールド」での安全技術開発

 運転席用「i-SRSエアバッグ」については乗員保護性能の向上と、展開衝撃力の低減を追及したという。だが両者の要求は相反する。小柄な人は運転時にステアリングに近づいてしまうため、エアバッグを素早く展開させなければならないし、逆に大きな人だとエアバッグを小柄な人と比べて遅めに展開しなければならない。展開時の衝撃が激しいと、乗員を逆に傷つけてしまうのだ。

 そこで渦巻状の縫製をエアバッグに施し、さらに排気制御弁を設定することによって両者を高いレベルで共存させた「連続容量変化タイプ」を開発。これまでよりもエアバッグの展開を素早く、かつ長く持続させることで、やさしく低衝撃にすることができたという。「i-SRSエアバッグ」は、2008年11月に発売予定の軽自動車「ライフ」から搭載される。なおコストは従来のものとあまり変わらないという。


「i-SRSエアバッグ」展開の様子(左から右) 渦巻き状縫製を施した エアバッグ開発の歴史

乗員保護と衝撃力低減は相反する課題だった 渦巻き状縫製と排気制御弁で展開を制御 【動画】展開の様子

展開初期でも後期でも乗員を保護する 【動画】排気制御弁がクッション性能を適度に持続させる やさしく展開できるようになった

 「ポップアップフードシステム」は、ボンネットフードを持ち上げてエンジン部との空間をつくり、歩行者の頭部への衝撃を低減するシステム。つまりはねてしまった歩行者をボンネットで受け止めて衝撃をやわらげるのだ。

 このシステムではバンパー部分に3個の加速度センサーをつけて、そのデータを積分して作動が必要かどうか判断する。必要と判断されたらシステムが瞬間的にボンネットを持ち上げて、歩行者を受け止めて頭部への衝撃を緩和する。

 身長の低い子供が時速40kmで衝突された場合、頭部衝突までわずか0.054秒だが、このシステムは0.03秒で作動を完了する。人間が瞬きする時間は0.3秒ほどなので、その1/10ということになる。また、歩行者に時速40kmで衝突した場合、おおよそ7割程度の衝撃をおさえることができるという。「ポップアップフードシステム」は2008年9月5日に発売された「レジェンド」から搭載されている。


ポップアップフードシステム バンパーに加速度センサーを3つ搭載 ボンネットを持ち上げて頭部衝撃を緩和する仕組み

歩行者傷害軽減ボディ開発の歴史 システム概要 【動画】実験の様子

身長の低い子供に対応するため0.03秒で動作が完了 7割程度の衝撃を緩和する

 また、SUVやミニバンは歩行者の腰部や大腿部への障害を与えてしまう頻度が高い。そこで下肢部分に注目し、第3世代歩行者ダミー「POLAR III」を開発した。第2世代歩行者ダミーは腰部分がリジッド構造だったが、第3世代はフレキシブルな構造へと改良。膝は構造的に進化させて小型化。それによって大腿部にフレキシブルなシャフトを入れて、より人体特性に近い障害評価が可能になったという。


第3世代歩行者ダミー「POLAR III」 腰、膝などを改良。より人体特性に近い状態になった 背面から

解説図 青いエリアが人体の特性範囲。赤い線がダミー特性

株式会社本田技術研究所上席研究員 中島豊平氏
 「マルチビューカメラシステム」は、35万画素の魚眼CCDカメラを車の四方に付けて画像処理した画像をドライバーに提示することで、見えにくい場所を見るための予防安全システム。このシステムについては株式会社本田技術研究所上席研究員の中島豊平氏が解説した。

 これまでホンダは、夜間に見えにくい前方の歩行者の存在を音と表示で知らせる「インテリジェントナイトビジョンシステム」や、追突を予測してシートベルトを締めるEプリテンショナー、ミリ波レーダーを使ったシステムや先進的なインフラ協調システムなどを開発してきた。

 「マルチビューカメラシステム」は、ドライバーに運転に不安を感じさせる要因を調査したところ、車周辺の死角が不安感を増大させているということがわかり、開発されたものだという。見通しの悪い路地の周辺死角はフロントブラインドビューで、幅寄せ時のサイドの死角はサイドビューで、駐車時の死角はリアビューと車を上から見おろしたような視覚のグランドビューで見る。それぞれの映像はスイッチで切り替えられる。左右のサイドビューはホンダ独自の技術だという。


インテリジェントナイトビジョンシステム プリクラッシュセーフティ技術 道路インフラを使った安全運転支援技術

ドライバーは車の死角が不安 周辺車両を発見したり、幅寄せ、駐車をサポートする 駐車時はリバースギアを入れると自動的に切り替わる

 また、見通しの悪い交差点で、車の鼻先を大きく出さなくても左右の様子が確認できるというのも特徴。その他にも駐車ガイド機能では、ステアリング操作を行なうタイミングを、ガイド線と使い方表示でドライバーに教えてくれる。サイドビューはミラーに付いているカメラを使うのだが、サイドミラーを折りたたんだ状況でも使用できる。そのため、立体駐車場での入庫のような、ドアミラーの格納時でも利用が可能だ。後者2つの技術もホンダ独自のものである。

 これら運転の不安感覚を解消する技術を、ワンパックで提供する「マルチビューカメラシステム」によって、より安全で安心な走行が提供できるとホンダでは語っている。なお「マルチビューカメラシステム」は2008年10月発売の「オデッセイ」から搭載される。


【動画】フロントブラインドビューの様子 【動画】幅寄せの様子 【動画】バック駐車の様子

Hマークの上に付いているフロントのカメラ この高さでないとガードレールへの接近感覚が得にくいのだという サイドミラー下に搭載された魚眼カメラと夜間照明用の近赤外線LED

後面はナンバープレート上にカメラが付く ジオラマによる説明。運転席から交差点先が見えない位置でもフロントカメラで左右を確認可能 マルチビューカメラシステムによるナビ画面

カメラ単体とECU カメラで死角支援 実際に「オデッセイ」に搭載されるサイドミラーでは外形デザインにほとんど影響を与えていない

URL
  本田技研工業株式会社
  http://www.honda.co.jp/
  衝突時の歩行者の頭部衝撃を低減する「ポップアップフードシステム」を新型レジェンドに搭載
  http://www.honda.co.jp/news/2008/4080904c.html
  世界初、運転席用i-SRSエアバッグシステム「連続容量変化タイプ」を開発
  http://www.honda.co.jp/news/2008/4080918a.html
  周囲の視界をカメラ映像で捉え、安心・安全な運転を支援する「マルチビューカメラシステム」を新開発
  http://www.honda.co.jp/news/2008/4080918b.html
  腰部、大腿部の傷害評価を可能にした第三世代歩行者ダミーによる衝突実験を開始
  http://www.honda.co.jp/news/2008/4080918c.html

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( 森山和道 )
2008/09/19 15:28

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