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e-とぴあ・かがわでヴイストン主催の「ロボJUDO競技会」を実施
~投げ技重視のルールで熱戦が展開


子どもたちが随分と集まり、大声で声援を送っていた
 香川県高松市の文化芸術ホール・サンポートホール高松にある情報通信交流館「e-とぴあ・かがわ」で、8月9日、10日に行なわれたサマーフェスティバルイベントのひとつとして、「ロボットオリンピック」が開催された。9日には、子どもたちが参加できるロボットすもう、ロボット障害物競走、ロボットサッカーが開催。

 そして10日には、ヴイストン主催による投げ技を重視したルールで、正方形の試合場で行なう「ロボJUDO競技会」が開催された。全国区の知名度を誇る大型ロボットが集まり、北京オリンピックの柔道に負けじと熱戦を展開。子どもたちの声援も凄かった、その様子をお届けする。

 e-とぴあ・かがわは、入場無料のIT系科学ミュージアム。ロボカップジュニア四国大会の会場であったり、またロボカップジュニア出場を目標として掲げたロボットワークショップ「ロボット・ラボ」を開催していたりするなど、ロボット関連に力を入れているのが特徴だ。8月2日から17日まで、サマーフェスティバル2008として「スポーツと科学~チャレンジ! とぶ・はしる・なげる~」が開催されており、子ども(一部は大人も体験可能)向けのスポーツ系体験イベントも開かれた。

 そして9日、10日の2日間に同時開催されたのが、ロボットオリンピックというわけである。9日には、同じサンポートホール高松の第1小ホールで、連携イベントとして、四国随一のロボット競技会「夏戦IV RoboCountryIV」も開催。レポート記事もアップしているので、ぜひ合わせて読んでいただきたい。


「スポーツと科学~チャレンジ! とぶ・はしる・なげる~」のコーナーの1つ ソーラーロボット工作教室なども開催された 夏戦IV RoboCountryIVの熱戦の様子

予選リーグは重量級と軽量級に分かれて実施

 まず今回のルールだが、柔道(JUDO)とあるだけあって、投げ技が重視されている。相手を投げて倒し、背中が床に着くと、「1本」で勝利となる。通常の打撃攻撃も問題なく、その際のダウンは「技あり」となり、技あり2本で「合わせ技1本」の勝利だ。有効や効果などもあるが、これは何本取っても技ありや1本にはならない。

 ただし、判定になったときはその数によって優劣がつく。また、試合場のサイズは一辺が120cmで、試合時間は3分。スリップダウンおよび場外カウントなどはなしとなっている。また、審判(さすがに副審はいない)が紅白の旗を持っていたのも柔道らしいところ。客席正面から見て左が赤、右が白で、技ありや1本が出たり、勝利が決定したロボットに旗を振ったりするようになっていた。

 今回は、エントリーしたロボットは体格・重量が大きく異なったので、2クラスに分けて予選を実施。重量級が6機、軽量級が3機参加した。重量級の予選では総当たりリーグ戦方式を採用。軽量級も総当たりリーグ戦方式だが、参加台数が少ないため、同じカードの対戦を2回行なう形だ。決勝トーナメントはその機数を考慮して、重量級が3機、軽量級が1機という枠で進出可能。4機で準決勝を2試合、3位決定戦、そして決勝という流れとなった。

 重量級の参加者は、unfix Mk2(kantarowさん)、Omnizero.6(前田武志さん)、Cavalier(えまのんさん)、で・か~る(道楽、さん)、YOGOROZA-V(だうとさん)、レグホーン(NAKAYANさん)の6名。なお、Cavalierは前日から引き続き、会場施設のサンポートホール高松を含む、港湾地区のサンポート高松のマスコット・キャラクターであるサンポくんのヌイグルミを頭の代わりに載せてご当地仕様としていた。子どもたちからは、「サンポロボ」「花丸」などと呼ばれていた。また軽量級の参加者だが、アフ・ロゥ(マサ吉さん)、SS-NANOS(sakiaさん)、Centurion(センチュリオン:兎小屋さん)の3名となっている。


試合場は120cm四方。場外に出てしまってもペナルティはない 右側の巨大なロボットがCavalierで、左側の背を向けているのがで・か~る 左側の赤いロボットがunfix Mk2で、右の青いロボットがYOGOROZA-V

左のアフロ頭がアフ・ロゥで、右の金色のロボットがCenturion Centurionの左側で、こちらに正面を向けているのがSS-NANOS 左側のニワトリ型ロボットがレグホーンで、右の黒いロボットがOmnizero.6

 重量級の予選での見どころは、Cavalier対Omnizero.6の大型対決。夏戦IV RoboCountryIVで勝利したほか、各地のロボット競技会で勝利を収めている(しかも圧勝が多い)Cavalierだが、なんとOmnizero.6が勝利したのだ。

 Omnizero.6はCavalierと比べて体格面では若干劣るのだが、それでもほかのロボットよりはかなり近いサイズなので、確かに勝てる可能性は高い。だが、Cavalierは夏戦IV RoboCountryIVでも、YOGOROZAやレグホーンという強豪と当たっているが、レグホーンが唯一1ダウン奪ったのみという結果だったので、ちょっとしたサプライズといえよう。さすがに、Cavalier対策も進んでいるということか。

 星取りは、Omnizero.6がレグホーンのみに負けて4勝1敗、Cavalierは前述のとおりOmnizero.6のみに負けてこれまた4勝1敗、さらにレグホーンはCavalierのみに負けて同様に4勝1敗となり、この3者が決勝に進出した。そのほかのロボットの成績は、YOGOROZA-Vが2勝3敗で4位、unfix Mk2が1勝4敗で5位、で・か~るが0勝5敗で6位となっている。


【動画】Cavalier対Omnizero.6の予選の様子 【動画】Omnizero.6対レグホーンの予選の様子 【動画】Cavalier対レグホーンの予選の様子

 一方の軽量級は、実力が拮抗しており、わずかにSS-NANOSがリードしているという感じだった。今回は、重量級は特に大型クラスが集まっており、それに対して軽量級はRB2000ぐらい(CenturionがRB2000ベース)なので、クラスの差がはっきりとしており、初めて見た子どもたちにもわかりやすかったはずだ。

 重量級の動作ももちろん速いのだが、どちらかというと大きさから来る迫力の方が印象として強いはずで、軽量級は小柄できびきびとした感じなので、動作にもクラスによる違いが出ており、見ていて面白かった。結果は、SS-NANOSが3勝1敗で1位となり予選通過を決めている。2位は2勝2敗のアフ・ロゥ、3位は1勝3敗のCenturionとなっている。

 なお、予選終了後は休憩時間となり、特別デモンストレーションとして、ヴイストンの最新ロボット「Vstone Tichno」がステージ上に登場した。今回は軽いデモンストレーションだったのだが、子どもたちも自分たちと同等かそれ以上の大きなロボットがしゃべったり、手を振ったりするのを見て感動していたようだ。


【動画】SS-NANOS対アフ・ロゥの2回戦。SS-NANOSの全勝をアフ・ロゥが阻止した1戦 【動画】アフ・ロゥ対Centurionの2回戦。Centurionがアフ・ロゥに勝ち、決勝進出を阻んだ1戦 Vstone Tichno

決勝トーナメントは最小・最軽量対最大・最重量の対決から

 決勝トーナメントの準決勝第1試合は、軽量級1位で予選を通過したSS-NANOSと、出場ロボット中で最大のCavalierが激突。本来は、重量級の2位が軽量級の1位と対戦するのだが、重量級は3機が揃って1位なので、最小・最軽量機対最大・最重量機というカードが演出された模様だ。

 さすがにサンポくんヘッドをつけていても、この体格差だとCavalierはヒールっぽい雰囲気に。しかし、Cavalierの意外な弱点が判明し、秒殺と思われた勝負が、思った以上の長期戦に。なんと、しゃがんで手を前後に振り回す攻撃を繰り出しても、SS-NANOSが小さすぎて、なかなか当たらないのだ。仕方がなく、ヒザから当たっていったりするが、なかなか有効な攻撃が出ない。例えてみれば、モハメド・アリ対アントニオ猪木の異種格闘技戦状態か。

 一方のSS-NANOSも翼風の腕を必死に当てていくが、まさに蚊が刺したような感じ。まったく攻撃が効かず、ヒザで押されたりして、それだけで劣勢である。しかし、攻撃が当たらないかに見えたCavalierだったが、SS-NANOSの姿勢によっては、かすることが判明。とにかく腕を振り回し、ちょっとでも当てれば軽く吹っ飛ばして、技あり。そしてもう1本技ありを決めて、決勝戦に進出した。

 試合後のインタビューでは、Cavalierのえまのんさんは、「小さくて意外と大変でした」と、攻撃が当たらなくて苦労したことをコメント。SS-NANOSのパイロットのsakiaさんは、圧倒的な体格差にも関わらず「粘れたんじゃないかと思います。遊ばれていたように見えるかも知れませんが、それは内緒ということで(笑)」と善戦にある程度の満足を得ていたようだ。

 準決勝第2試合は、互角の体格のレグホーン対Omnizero.6。予選では、レグホーンがOmnizero.6に勝利しているが、スペック的にはOmnizero.6の方が上である。あらゆる格闘技で重要なのは体重だが、Omnizero.6が5kgほどで、レグホーンは3kgほどと、2kgも軽い。身長もレグホーンのトサカを入れても、まだOmnizero.6のヘルメット風の頭頂部の方が少し上。体格的にも、レグホーンは服を着ているので大きめに見えるが、本体自体はOmnizero.6の方がガッチリしている。

 ひとつ、ややレグホーン有利に感じるのは、重心が低そうなこと。というより、Omnizero.6の足が非常に長いので、こちらの方の重心が高いといった方が正解だろう。レグホーンは横方向への突きが得意技のひとつなので、Omnizero.6はうまくしゃがんで防御姿勢を取らないと倒されやすそうである。

 試合は、しばし拮抗した状態が続くが、最初に技ありを取ったのはレグホーン。それをOmnizero.6が取り返してイーブンとするが、最後はレグホーン得意の横方向への突きがジャストミートし、Omnizero.6がバッタリ。合わせ技1本で、レグホーンの決勝進出となった。試合後、Omnizero.6の前田さんは、「とても強いニワトリなので(笑)、勝てないかと思っていましたが、1本取れてよかったです」とコメント。一方のレグホーンのNAKAYANさんは、「体重の重たい相手なので、勝てて嬉しかったです」と強敵からの勝利を喜んでいた。


 3位決定戦と決勝戦の準備のために、ここで再び休憩。クラスに関係なく予選を敗退したロボットたちによるランブルが行なわれた。参加したのは、アフ・ロゥ、unfix Mk2、Centurion、で・か~る、YOGOROZA-Vの5台。ルールは、120cm四方の試合場の枠線から出てしまったら退場というもので、ダウンは関係ない形だ。

 スタートダッシュで、決勝トーナメントに出られなかった鬱憤を晴らすかのように周囲をダウンさせまくったのが、YOGOROZA-V(勢い余って自分もダウン)。YOGOROZA-Vに倒された1機がで・か~るだったが、倒れた場所が枠線ギリギリ。立ち上がったところをYOGOROZA-Vのパンチで外に吹っ飛び、真っ先に退場となった。

 このあと、軽量級のCenturionが体の半分以上が枠線の外に出てしまうピンチを迎える。しかし、とどめを刺しに外側に行ったときに別のロボットに狙われるのを恐れたのか、誰もCenturionにとどめを刺しに行かず、生き残る。このあと、YOGOROZA-Vとunfix Mk2の重量級同士のバトルが続くが、軽量級のアフ・ロゥとCenturionはそこから離れてバトルに絡まないようにして生き残っていく。

 最後は、時間切れの時点で試合場中央にいた選手が勝者となるため、場所の取り合いに。YOGOROZA-Vが中央を陣取って手足を振りまくってほかのロボットにつけいる隙を与えないようにしたかと思うと、それをunfix Mk2が一瞬の隙を突いて真ん中に駆け込もうとする。が、それを倒してYOGOROZA-Vが最終的には中央に立ち、みごと勝者となった。


【動画】決勝トーナメントの準決勝第1試合。SS-NANOS対Cavalier 【動画】準決勝第2試合。レグホーン対Omnizero.6 【動画】予選敗退選手によるランブルの様子

決勝戦でもまさかの波乱!?

 3位決定戦は、SS-NANOS対Omnizero.6。先ほどの対Cavalier戦ほどでないにしろ、SS-NANOSにとっては攻撃が効くのか、とても疑問に感じられるほどの圧倒的な体格差だ。この両者の共通の特徴は開始時にちゃんと礼をすることで、柔道らしい素晴らしいスタートである。そして接近する両者。しかし、Omnizero.6にもCavalier同様の弱点が。やはりSS-NANOSが小柄なので、簡単に攻撃を当てられないのだ。また、ビルダー兼パイロットの前田さんのポリシーらしく、Omnizero.6はヒーローロボットなので、勝つためなら何でもありという攻撃はしない模様。ダーティーなイメージの攻撃は繰り出さないのだ。

 しかし、しゃがんで腕を左右に旋回させる攻撃が当たらないなか、SS-NANOSが腕を上げた瞬間にヒット。SS-NANOSがダウンし、Omnizero.6の技ありとなった。そのあともなかなか技がお互いに決まらなかったが、最後はOmnizero.6が左腕でつかみにいき(Omnizero.6の手のクローは挟み込めるようになっている)、捕まえるとそのまま引き倒し、技ありで合わせ技1本となった。

 パイロットの前田さんは、「攻撃が当たらなくて苦労しましたが、勝ててよかったです」。一方のSS-NANOSのsakiaさんは、「遊ばれました(笑)」と惜しくも4位となった試合の感想を述べていた。


 そしていよいよ決勝戦。Cavalier対レグホーンだ。奇しくも、前日の夏戦IV RoboCountryIVの決勝戦と同じカードである。その時はCavalierが勝っているし、今回の予選でもCavalierが勝っている。しかし、先制したのはレグホーン。開始して15秒ほどのことだ。

 レグホーンがCavalierの懐に飛び込むと、しゃがんだ状態のCavalierのヒザ下に腕を差し込んで上へすくい上げ、完全に重心を崩されて後ろへバッタリとなった。サンポくんを頭として載せているので、重心がいつも以上に高かったこともあると思われるが、この攻撃はCavalier対策のひとつの有効な技ではないだろうか。なお、そのサンポくん、この攻撃の後、うまく乗らなくなってしまって、前に倒れてしまった。まるで、Cavalierがガックリとうなだれているようである。

 その後も、レグホーンが優勢に試合を進め、惜しくも技あり以上を取れなかったが、バックドロップ風の投げ技も決める。両者しゃがんだ状態で腕を振り回す攻撃を繰り出し、まるで台風と台風がぶつかり合っているような状態だが、Cavalierが押し勝ち、技ありを取って試合はイーブンに。

 そして腕を振り回すCavalierに対し、レグホーンはサイドから回り込むと、立ち上がった瞬間のCavalierの左膝に横方向から突きを食らわす。バランス的に倒しにくい位置かと思われたが、かなり力の乗ったいい突きだったようで、ダウン。技ありとなって合わせ技1本でレグホーンの勝利、ロボJUDOのチャンピオンとなった。

 NAKAYANさんは、「Cavalierは重量級でムチャクチャ強いロボットなので、レグホーンのような、重量が3kg程度のロボットには倒せないといわれていたのですが、仕留めることができました! ムチャクチャ楽しかったです」と優勝した感想。

 一方のえまのんさんは、「やっぱりサンポくんがうなだれてしまったのが敗因ですね(笑)」と会場の笑いを取る。実際、サンポくんを載せると重心が前よりになってしまい、まともに動かなかったそうだ。「Omnizero.6にも予選で負けているので、今日は日がよくなかったようです(笑)」と締めた。


【動画】3位決定戦の様子 【動画】決勝戦の様子

 最後に、優勝したNAKAYANさんから会場の子どもたちやその親御さんに「みなさんもよかったら仲間になってください」とメッセージを送り、大会は締めくくられた。子どもたちの声援が大きくて、なかなか楽しいイベントであった。e-とぴあ・かがわには、こうした子どもや親子で楽しめるロボットイベントをどんどん開催してもらいたい。


参加ロボットで集合写真 優勝したレグホーンのNAKAYANさん(マイクを持っているMCの画面左側)

URL
  ヴイストン
  http://www.vstone.co.jp/
  ロボプロ
  http://www.robo-pro.net/
  e-とぴあ・かがわ
  http://www.e-topia-kagawa.jp/

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( デイビー日高 )
2008/08/21 13:49

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