|
@Homeリーグを制覇した「eR@sers」のロボット
|
2008年8月7日、玉川大学・ロボット工房にて、「ロボカップ2008蘇州世界大会(7月14日~20日)」の@Homeリーグで優勝した、玉川大学、電気通信大学、独立行政法人情報通信研究機構(NICT)、株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)の合同チーム「eR@sers」の優勝報告会が開催された。@Homeリーグで日本勢が優勝したのは初めて。大会で披露した競技のデモを交えながら、競技の概要や苦労のポイントを解説していた。
@Homeリーグは、2006年のブレーメン世界大会でエキシビジョンマッチとして初めて行なわれた競技で、家庭内で人間とともに活動するロボット技術を課題としてリーグで、リビングやキッチンを模したフィールドで行なわれる。日本では2008年のジャパンオープン沼津で初の競技が行なわれ、「eR@sers」が優勝している。
蘇州世界大会の@Homeリーグは、ドイツから3チーム、中国から3チームなど、8カ国14チームが参加。日本からは「eR@sers」1チームだけが参加していた。
1次予選では、14チーム中2チームしか課題をこなせなかった競技「Lost&Found」でトップをとるなど、全体の2位となる得点で2次予選に進出。2次予選では、難しさから他チームが回避する「Cleaning」に挑戦し、見事に成功。上位5チームによる決勝に進んだ。
決勝ではそれぞれのチームが最も得意とする分野でデモンストレーションを行なう、いわばフリー演技。「eR@ser」は騒音の中でも確実に指示者の声を聞き取るデモを行なったが、これが200点満点中170点の高得点を獲得し、見事に優勝した。
|
|
|
【動画】“見た目”と名前を関連付けて覚えさせるデモ。ここでは「ポチ」という名前を覚えさせた
|
【動画】2番目に出てきたぬいぐるみを、先ほど覚えた「ポチ」だと見分けている(そのほかの2つも完璧)
|
【動画】「Who's Who」という課題。室内にいる人を見つけて近づき、「知らない人には名前を尋ねて顔を覚える。知っている人には挨拶をする」というものだ。このときはカメラの配線が輸送中に損傷してしまったということで調子が悪く、顔を覚えている段階でフリーズ
|
|
|
【動画】床に落ちているゴミを指定の場所に集める「Cleaning」。ゴミはランダムに置かれるために、形を覚えることはできない。テーブルの足や観葉植物などとゴミを見分ける技術が必要だ
|
【動画】最初に探すものの形を覚えて、部屋の中にランダムに置かれた状態のものを見つけ出す課題。最後のほうはちょっと失敗
|
|
|
【動画】決勝で披露した、適当にしゃべっている5人のうち、ライオンを持った人の「eR@ser, What's is this?」という指示だけを聞きわけ、「Lion.」と答える
|
【動画】7人で行なってみたデモ。その場の全員が失敗したかと思って油断した(筆者は動画撮影を止めてしまった)が、このあと「Lion.」と答えた。処理に時間がかかってしまったようだ
|
|
顔があるおかげで人間が自然にロボットとの距離感を保てる
|
ジャパンオープンから世界大会まではあまり期間がなかったため、確実性を上げるためのソフトウェア改良が主になったという。それでも、「Who's Who」で人間がロボットに合わせてかがまなくてもいいように、カメラの高さを上げたり、カメラを“顔”のように装飾することで、自然と人がその“顔”とちょうどいい距離感を保つようにするなど、ハード面での改良も効果を上げていたようだ。
玉川大学工学部 機械情報システム学科教授の岡田浩之氏は「もっと@Homeリーグの参加チームが増えるように、積極的に声をかけていきたい」と話し、今後の@Homeリーグを牽引する意気込みを見せていた。
今後の課題としては、同じく岡田氏が、「動きそのもののスムーズさを上げていきたいのと、今回の機体は腕がないために腕を使う課題ができなかったので、それをつけたい」という点を挙げた。
また、チームメンバーの電気通信大学 電子工学科准教授 長井隆行氏は、「画像に関しても音声に関しても、ソフトウェアでは圧倒的に良かったとは思うが、他チームは来年それを目指してくるので、さらに差をつけられるようにしたい」、ATRおよびNICTで研究員を務める杉浦孔明氏は「言葉を覚える、学習するという点ではまだまだ改良の余地があるので、それをやっていきたい」と、進化途上であることを強調していた。
|
|
玉川大学工学部 機械情報システム学科教授 岡田浩之氏
|
電気通信大学 電子工学科准教授長井隆行氏
|
|
|
ATR/NICTの杉浦孔明氏
|
優勝トロフィーと認定証
|
来年のジャパンオープンは大阪、世界大会はオーストリアのグランツで行なわれる。「eR@sers」のさらなる活躍に期待したい。
■URL
玉川大学
http://www.tamagawa.jp/
ニュースリリース
http://www.tamagawa.jp/cgi-bin/news/page.cgi?no=389
RoboCup(英文)
http://robocup-cn.org/en/index.php
■ 関連記事
・ 「ロボカップジャパンオープン2008沼津」レポート~@ホームリーグ編(2008/05/19)
( 梓みきお )
2008/08/11 18:50
- ページの先頭へ-
|