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マシンビジョンに役立つさまざまな画像処理装置が出展
~「’08画像センシング展」レポート【展示会編】


特殊環境で用いられるユニークな画像センサやカメラユニット

【写真1】パシフィコ横浜において開催された「'08画像センシング展」。合計508社が出展し、3日間で1万7,000人ほどの来場者が集まった
 6月11日から13日の3日間、パシフィコ横浜において「'08画像センシング展」が開催された【写真1】。この展示会は、外観検査・計測をはじめ、リモートセンシング、ロボットビジョン、生体認証などの技術が集結したマシンビジョン関連機器の総合展示会だ。ここではロボットに関連した機器の展示やデモを中心に紹介しよう。

 展示会の性格上、画像センサや画像処理デバイスの出展が目立った。センサ類で特に目を引いたのは、特殊環境で利用されるもの。たとえばCypress Semiconductor社のCMOSイメージセンサのように、通常のイメージャでは耐え切れない放射線環境下でも使用可能な耐放射性タイプが展示されていた【写真2】。これは10Mrad以上のトータル線量にも耐える構造を持っており、宇宙科学や宇宙船、原子力関連の分野で利用できる。

 同様に、ニスコの「Niscam IVシリーズ」も10Mradの耐放射性を備えたCMOSセンサーとレンズを内蔵したCMOSカメラユニットだ【写真3】。リモートフォーカス機構を装備し、モニタを見ながら焦点を合わせられる。また防水構造のため水中での使用も可能だ。プラント管内の検査をする、東芝テリーのカメラシステムもあった【写真4】。ケーブル先端部には高輝度照明を備えたカメラヘッドが付いており、配管にケーブルを押し込みながら検査していく。カメラヘッドは配管径やワーク形状に応じて選択できる。

 コンパクトな筐体にVGA解像度の撮像素子を25個ぶん配置したビュープラスの小型カメラシステム「ProFUSION25」もユニークだった【写真5】。PCI Expressダイレクト接続により、毎秒200MB以上で25眼分の非圧縮画像をリアルタイムにPC側に取り込める。さらに同ブースでは、用途は不明だが、このカメラシステムを応用した100眼ものカメラシステムを展示していた。


【写真2】耐放射性CMOSイメージセンサ「STAT-1000」。画素数は1,024×1,024ピクセル 【写真3】耐放射性モノクロCMOSカメラユニット「Niscam IVシリーズ」。防水構造のため、水中でも使用もできる

【写真4】プラント管内検査用のカメラシステム。対角160度の超広角レンズを搭載し、広い視野を確保できる 【写真5】トンボのような複眼カメラ「ProFUSION25」でモニタリング(写真左)。VGA解像度の撮像素子を25個分配置し、PCに撮像データを高速に取り込める。このカメラを4台配置した100眼カメラシステムも展示(写真右)

 ソニーのブースでは、200万画素のCMOSを搭載した高精細ビジョンカメラ「FCBシリーズ」によるデモを実施していた【写真6】。この機種は「Auto ICR機能」を備えており、自動的に近赤外領域に対応するため、昼夜を問わず利用できるというメリットがある。

 このほか、画像処理エンジンを搭載したインテリジェントカメラ「XCIシリーズ」において、ハイエンドセキュリティ向けの新モデルなども参考品として発表していた【写真7】。新機種はVGAとSVGAの2タイプで、それぞれモノクロとカラーのモデルがある。耐震性に優れたオールインワンのボディに、USB2.0×2、RS-232C、Gigabit Ethernet、デジタル入出力などの各種インターフェイスを備えている。

 東芝テリーは、産業用の高精細CMOSモノクロカメラ「CSC12M25BMP19」を展示していた【写真8】。自社で開発した4,096×3,072ピクセルのCMOSイメージセンサを搭載し、1,258万画素のイメージを毎秒25フレームで高速読み出しできるもの。展示では新聞紙を大型ディスプレイに映し出していたが、文字がはっきりときれいに読み取れた。


【写真6】「FCBシリーズ」のデモ。Auto ICR機能をオンにした場合の画像出力。夜でも自動的に近赤外領域に対応し、鮮明な画像が得られる 【写真7】インテリジェントカメラ「XCIシリーズ」に加わるハイエンドセキュリティ向けモデル。x86系CPU、512MB・SDRAM、画像処理エンジンとしてカスタマイズ可能なFPGAを内蔵 【写真8】高精細CMOSモノクロカメラで大型ディスプレイに新聞紙を映し出していた。4,096×3,072ピクセルの解像度で、新聞の文字が読み取れた

画像処理装置とロボットが結びついたマシンビジョンシステム

 ここからは各種の画像機器とロボットシステムを利用したマシンビジョン関連のデモを紹介する。たけびしは、ソニー製のカメラと三菱電機エンジニアリング製の卓上3軸ロボット「LR100-3A」、同社の画像処理ユニット「iC2300-Cシリーズ」を組み合わせた製品検査システムのデモを行なっていた【動画1】。

 画像ユニットの処理部は、高速で信頼性に優れたコグネックス製の「VisionPro」を利用。さらにユニットのシステムOSにはWindows XP Embeddedを採用し、コンパクトフラッシュ(CF)から高速ブートを可能にしている。一方、ロボットは小型で設置スペースを取らないため、セル生産現場での組立て装置や試験検査システムなどに適している。最高速度600mm/sec(PTP制御時)で、最大可搬重量3.5kgでの繰り返し位置精度は±0.01mmだ。

 三菱電機のブースも同様のデモを行なっていた。同社のPLC(シーケンサ)、コグネックスの「In-Sight Micro」、回転テーブルなどを組み合わせ、指示されたマークのコインを認識して、それを外側に正確に押し出す【写真9】【動画2】。ビジョンセンサ、モニタ、各種コントローラなどのユニットは、すべてEthernetで結ばれている。C言語に対応しているコントローラを利用しているため、従来からシーケンス制御で使われている「ラダー言語」を利用しなくてもよいというメリットがある。

 このコントローラ側から画像をサンプリングしたり、転送するトリガー信号をIn-Sight Microに対して出す。In-Sight Microは、ロボットアームの先などに装着できる小型ビジョンセンサで、カメラ、画像処理機能、工業用通信プロトコルを一体化。また、Ethernetで電源を供給するPoE(Power over Ethernet)にも対応している。


【動画1】たけびしの画像検査システムのデモ。同社の画像処理ユニットと三菱エンジニアリングの卓上3軸ロボットを組み合わせ、サンプル上面のマークを読み取って、指定の場所に再配置する 【写真9】三菱電機のブースでは、同社のC言語対応PLC(シーケンサ)、コグネックス製の小型ビジョンセンサ「In-Sight Micro」、回転テーブルなどを組み合わせたデモを実施 【動画2】In-Sight Microでコインを認識し、指示通りのコインを外側に押し出す。In-Sight Microは、□30mm×D60mmの小型サイズで、ロボットアームの先などに装着できる

 コグネックス関連では、複数のカメラを使用して並行処理することで検査を高速化するシステムが紹介されていた。デモではタイヤの角度・品種・品質、ブレーキレバーの角度、スプリング長、部品間寸法、ギア欠け、タンクの液面高などを1度に検査するマルチインスペクションを実施【写真10】【動画3】。こちらもIn-Sight MicroやPLC、PC、モニタはすべてEthernetで接続されている。処理速度を落とさず、コストを抑えながら多数の検査ができるメリットがある。

 オペレータ・インターフェイス・モニタ「VisionView」や、専用ソフト「EasyBuilder」を使うことで、誰でも簡単にモニタリングの設定が行なえ、9台までのカメラ画像や情報をPCレスで表示することが可能だ【動画4】。

 もう1つユニークだったのは、参考出品として紹介されていた「OmniView」を利用したデモだ。ボトルや缶のような円筒形状の部品を4方向から4つのIn-Sight Microで1度に撮影し、それらを合成して360度の側面像として外観を検査できるシステムだ【動画5】。本邦初のお披露目だという。

 缶を回転させてラインセンサで周囲を読み取る方法よりも、生産ラインの組み込みが簡単で、検査も毎分1,200個以上と高速、かつコストも安くなるというメリットがあるという。ただし精度はラインセンサのシステムには適わない。ラベルの位置ズレ、バーコードの読み取りなど、それほど精度を要求されない用途に向いているそうだ。


【写真10】一度に複数の検査を可能にするマルチインスペクション。モニタにはタイヤの角度・品種・品質、ブレーキレバーの角度、スプリング長、部品間寸法、ギア欠け、タンクの液面高などの画像や検査項目が表示される 【動画3】マルチインスペクションのデモ。PLCとプロポによって、自動車が載ったテーブルを左右に振りながら、複数のIn-Sight Microで検査対象を撮影しているところ

【動画4】オペレータ・インターフェイス・モニタ「VisionView」。誰でも簡単にモニタリング設定が行なえ、最大9台のカメラ画像や情報をPCレスでマルチ表示。このデモは、回転する検査対象を4つのIn-Sight Microで取り込んでいた 【動画5】円筒型パッケージ向け外観検査システムのデモ。対象物を回転させてラインセンサでスキャンするのではなく、4方向から4つのIn-Sight Microで1度に側面を撮影し、それらを合成して360度の側面像にして検査

 このほか検査対象が面白いものだったのは、シー・シー・デーの錠剤検査システムだ。このシステムは、錠剤の目視検査機に自動検査装置と排除装置をセットしたもので、目視検査ラインへ簡単に組み込める。ベルトコンベア上に並列で流れる錠剤の表裏に付いた汚れや傷・異物などをラインカメラで読み取って、NG/OKを判別することが可能だ【写真11】。コンベア搬送のため、高速な検査による錠剤の破損を少なくすることができる。

 エム・アイ・エルは、産業用ロボットと画像処理検査装置を組み合わせて、人が苦手な精密な欠陥検査を実現するデモを実施【写真12】【写真13】【動画6】。同社の画像処理検査装置は、独自のアメーバ処理を行なうことで、複雑な形状に合うように自動的に検査範囲を決定でき、液晶・感光ドラム、フイルム、容器などのキズや異物混入を検査する。デモでは、冷間鋳造部品を検査して良・不良判定を行ない、監視モニタで直行率や不良件数の推移などをグラフで表示していた。


【写真11】シー・シー・デーの錠剤検査システム。検査対象が薬だという点がポイント。検査処理能力は、6列処理、毎秒5mの流れ速度で、1時間あたり15万個ほどだ 【写真12】ファナック製の産業用ロボット「LR Mate200iC」とカメラを利用した、エム・アイ・エルの冷間鋳造部品検査装置のデモ

【写真13】冷間鋳造部品検査装置用の検査監視モニタ。直行率や不良件数の推移などをグラフで表示。同社では、システムとしてハードからソフトまでをサポートしている 【動画6】冷間鋳造部品検査装置のデモ。多関節ロボットでによって、固定カメラの下に検査部品を持っていき、品質を検査していく

 動くラインに同期しながら、画像認識とピッキング整列処理を実現するデモを行なっていたのは芳賀電機だ。同社の「VISION&MOTION」と呼ばれるシステムは、マシンビジョンシステム「MYVIS」とエリアセンサカメラに加え、安川電機のサーボモータ/ドライバ「Σ-Vシリーズ」×7軸、これらを同時制御するマシンコントローラ「MP2300S」などで構成【写真14】【写真15】。シート素材の欠陥を検出し、その位置にペンでマーキングできるユニークなモーションコントロールを可能にしている。これらすべての機器は安川電機の高速モーションネットワーク「MECHATROLINK-II」で接続されている。

 デモでは、バラバラになっている6つのサイコロをカメラで認識し、それをライン同期制御によって1から順番に整列させるようにしていた【動画7】。動いているラインに載ったサイコロをピックアップして、そのライン上で一列に整列していることがポイントだ。


【写真14】芳賀電機の「VISION&MOTION」によるデモ。マシンビジョンシステムとエリアセンサカメラ、サーボモータ/ドライバ×7軸、マシンコントローラなどで構成 【写真15】「VISION&MOTION」のモニタ/制御部。サーボモータ用ドライバ、マシンコントローラなどが見える。モニタには各軸ごとの位置やトルクなどが表示されている 【動画7】バラバラになっている6つのサイコロをカメラで認識し、それをライン同期制御によってピッキングして、1から順番に整列。対象ワークが動いているが、一列に整列させる作業をうまく実行していた

 ヒカリの3Dカメラによるロボットシステムのデモも面白かった。これは、産業用6軸ロボットに、独自開発の3Dカメラを組み込むことで、最適なピックアップ状態を瞬時に判断できるシステムだ【写真16】。デモでは、重なり合った将棋のコマを1個ずつ、うまくピッキングしながら箱に入れていた【動画8】。通常の画像処理では、重なりあう複数のオブジェクトは1つのオブジェクトとして認識されてしまう。そのためピッキングすることが難しくなる。ところが本システムでは、異なる形状の対象物(将棋のコマ)を3Dカメラによって立体的に認識し、対象物の傾きに対してロボットアーム先端部を垂直に保持するように姿勢制御しながら吸着することが可能だ。

 このような制御を実現できたポイントは、特許出願中の「レーザ変調格子プロジェクタ」に秘密が隠されている。1次元のMEMSスキャナの走査角度に同期してラインレーザを変調させ、対象物にスリット光のパターン投影を行なう。

 次に光切断法と同じ原理によって、レーザが当たった断面方向の高さをカメラで読み取る。さらにレーザーで走査した高さ情報を、位相SHIFT法によって合成し、対象物全体の高さ情報を濃淡で表現することで、重なり合う個々の対象物の形状や傾きなどを認識できるというもの。

 また、同社の「iCam」を利用し、コインの微妙なサイズの相違や、欠け、ホールなどを高速に判別するシステムも展示【写真17】。iCamは、130万画素のCMOSイメージセンサとDSPなどを内蔵し、Gigabit Ethernetで画像を転送できるFA専用のオールインワン型インテリジェントカメラだ。


【写真16】ヒカリの3Dカメラによるロボットシステムのデモ。エプソン製の産業用6軸ロボットに、独自開発の3Dカメラを組み込んでいる。重なり合った将棋のコマを認識しながら、1個ずつピッキングして箱に入れる 【動画8】通常の画像処理だと、重なりあう複数の将棋のコマが全体的なまとまりとして認識されてしまう。ここでは将棋のコマを立体的に個別認識し、ロボットアームで対象物をうまく吸着していることが分かる 【写真17】コインを高速判別するシステム。FA専用のオールインワン型インテリジェントカメラ「iCam」を利用。判別するコインは、φ25mmとφ24.5mmサイズ、一部に欠けがあるもの、穴が開いているものだ

画像処理ライブラリによるシステム事例も多数展示

 リンクスのブースでは、同社が扱う画像処理ツール「HALCON」によるシステム事例が数多く取り上げられていた。HALCONは、ドイツの国家プロジェクトで活用されていた技術を、ミュンヘン工科大で汎用製品にしたもの。1,300個以上のライブラリ関数を組み合わせて、効率的に画像処理システムを開発できるツールだ。開発環境「HDevelop」によって、GUI画面でプログラミングができ、C、C++、C#など各種言語への自動コード生成も可能。高精度な位置決め、欠陥部の外観検査、文字認識、ロバストなデータコード認識、高精度計測、3次元処理、フーリエ変換などの各種フィルタリングも容易に行なえる。

 たとえば、HALCONで開発した画像処理システムとして、ロボットビジョンによるピッキングシステムや、自動車の3次元計測、ボトル外観検査、異色同形の対象物認識検査など、具体的な事例が実演されていた。ロボットビジョンによるピッキングシステムでは、産業用ロボットにカメラを取り付け、3次元形状のベースマッチングを行なう【写真18】【動画9】。1台のカメラで3次元情報を取得。あらかじめCADデータ(DXFフォーマット)からパターンマッチング用のモデルを自動生成しておく。対象物の任意の位置・姿勢を取得できるため、カメラ1視野でも高速マッチングが可能だ。

 一方、自動車の3次元計測では、前述の光切断法を利用【写真19】。光切断法は、レーザ光を対象物に当てる際に、斜め方向から見たレーザラインの位置が対象物の移動に伴って上下移動することを利用し、その変動量を高さに換算して立体情報を得る方法だ。デモでは自動車の高さを光切断法によって測定し、正規モデルとパターンマッチングさせる【動画10】。もしボンネットなどが開いてパターンが異なると、形状エラーが出ることになる。

 ボトル外観検査の例では、4台のカメラから同時に画像を取得し、HALCONにより別処理を実行することが可能だ。今回のデモは、キャップの印字検査と打刻文字検査、QRコード読み取り、バーコード読み取りを同時に行なっていた【写真20】。また異色同形の対象物認識検査では、クレヨンをテーブルに配置して回転させ、それぞれのカラーを読み取って高速で認識していた【写真21】。


【写真18】「HALCON」による画像システム事例その1。ロボットビジョンによるピッキングシステム。デンソーの産業用ロボットにカメラを取り付け、3次元形状のベースマッチングを行なう 【動画9】カメラ1視野で3次元形状のベースマッチングを行なうため、高速な処理が可能だ 【写真19】「HALCON」による画像システム事例その2。光切断法による自動車モデルの3次元計測。測定だけでなく、正規モデルとのパターンマッチングも行なってNG判定をする

【動画10】自動車がリニアテーブルで移動し、照射しているラインの位置が上下移動する。この変動量を高さに換算して、立体情報を得ているのが光切断法。全体の形状を把握するには1つ1つの断面をSHIFT法でつなげていく 【写真20】「HALCON」による画像システム事例その3。ボトル外観検査の例。4種類の異なる検査を4台のカメラによって同時並行して処理する 【写真21】「HALCON」による画像システム事例その4。異色同形の対象物認識検査のデモ。クレヨンをテーブルで回転させ、カラーを読み取って認識

URL
  '08画像センシング展
  http://www.adcom-media.co.jp/sensing/


( 井上猛雄 )
2008/06/19 17:02

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