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「2008国際ウエルディングショー」レポート
~世界三大国際溶接展示会の1つが大阪で4年ぶりに開催


 2008年4月9日(水)~12日(土)まで4日の日程で、インテックス大阪において「2008国際ウエルディングショー」が開催された。主催は、社団法人日本溶接協会と産報出版株式会社。今年のテーマは、「ものづくりルネッサンス ~溶接のトータルソリューション~」だった。

 国際ウエルディングショーは、ドイツ、アメリカの展示会と並んで世界三大国際溶接展示会と言われている。1969年に第1回を東京で開催以来、隔年で実施し、今年で20回目を迎えた。会場は東京と大阪を交互に使用しているため、大阪では4年ぶりの開催だ。

 出展社数は202社で2004年大阪開催時より109.2%増、そのうち新規出展が全体の4分の1を占める52社、また海外からの出店も全体の約2割と活気がある展示会となった。

 社団法人日本ロボット工業界によると、2006年度の世界で稼働する産業用ロボットの稼働台数は約95万台。そのうち37%にあたる、35万台以上のロボットが日本で稼働しているという。

 産業用ロボットと言っても、組立ロボットや搬送ロボット、溶接ロボットなど用途に応じてさまざまなロボットがある。溶接は作業中に出る光や音、金属が溶けた時に微小な固体粒子(ヒュームという)が空気中に浮遊するなど作業者に過酷な作業であるため、溶接ロボットは、産業用ロボットの中でも需要が高い。

 会場で見たロボットをいくつかピックアップし、写真と動画で紹介する。

 神戸市に本社を置くビー・エル・オートテック株式会社は、スポット溶接ロボット用のガンチェンジャ「クイックチェンジ GCシリーズ」を展示していた。

 作業用ロボットの先端部は、ワーク(加工対象物)のサイズや周囲の環境によってサイズを変える必要がある。これを自動化することで、迅速・確実なツール交換ができ作業効率の向上、ならびに1台のロボットを多機能に活用できるようになる。


正面に見えるオレンジの金属部分が「クイックチェンジ」 【動画】先端部(ガン)を取り外すデモンストレーション。先端部はコードレスで電源が供給できるようになっている 現行の150kg、220kg、300kg対応に加えて、新たに70kgと、500/700kg対応のクイックチェンジを開発中

 小池酸素工業株式会社のベベルマスターは、鋼板同士を繋ぎ合わせるために角を斜めにそぎ落とす開先切断ロボットシステムだ。パソコンで切断データを作成し、ロボットの動作シミュレーションができる。実際に稼働する時は、ロボットが自動センシングして切断をする。

 扱う部材のサイズや機体の周辺スペースにあわせて、走行台車式、天吊方式、自立固定式から設置方式を選べる。動画で紹介しているのは走行台車式で、ロボットが移動するレール部分を延長することにより大きな部材を開先切断できるようになる。


小池酸素工業株式会社のベベルマスター 【動画】ベベルマスターが、自動センシングをした後に開先切断する実演

【動画】直線だけではなく、円弧、表・裏開先も切断できる ロボットが稼働中に、PC上で切断データを作ることができるため稼働率が向上する

 川崎重工業株式会社のブースでは、「フリクションスポット接合法(FSJ)」のロボットがデモンストレーションを行なっていた。

 FSJとは、摩擦攪拌溶接法だ。ロボットが接合ツール(ピンツール)を回転させながら、加圧力でワーク表面に押し付けると、ワークとツール先端のピン(ネジ状の突起)の間に摩擦熱が発生する。そのツールの回転で発生した高温の摩擦熱と、回転と軸方向に発生した塑性流動によりピン穴周囲が接合される。アルミニウムなど高温で歪みが生じやすい軽金属の接合に効果を発揮するという。


【動画】フリクションスポット接合法(FSJ)ロボットのデモンストレーション FSJのプロセス紹介

 パナソニックは、溶接ロボット「TAWERS(タワーズ)」を展示。TAWERSは、ロボットが動作に合わせて直接、溶接波形をコントロールするのが特長。今回は、さまざまな用途にカスタマイズしたTAWERSデモンストレーションを実施していた。


アルミの溶接に対応したカスタマイズ 厚さの違うアルミの溶接が可能 部材同士の間に3mmのギャップがあっても、きれいに溶接できる(写真左)

2ワイヤチェンジシステムの説明。省エネ・省スペースが可能になる 【動画】実際にトーチを切り替えて、条件の違う溶接を1台のロボットで行なうデモンストレーション 溶接したサンプル部材

 株式会社安川電機は、ロボットシステム溶接設備の高密度配置と簡素化による溶接ラインの省スペース化を実現した7軸構成の新形アーク溶接最適化ロボット「MOTOMAN-VA1400」を発表した。

 「MOTOMAN-VA1400」は、回転軸(θ軸)をロボットの下アーム(下腕)中間部に設け、ロボット姿勢の自由度を拡大した7軸制御を実現。これにより6軸では、ロボットアームとワーク(鋼材)や治具が干渉していた溶接部分もアームが回り込んで作業できる。θ軸の追加でロボットの姿勢自由度が拡大して動作特性が向上した。各軸の動作速度も同社従来機と比較して最大5%アップしたという。動作特性の向上と高速化で生産性のアップが期待できるという。


【動画】ロボットに赤と青の丸印がついている部分が7軸目の回転軸。7軸目を動かさないと、障害物と干渉して一番奥の溶接箇所に入っていかない 【動画】7軸目を使うことにより、障害物を避けて回り込んだり、円柱に沿ってぐるりと溶接が可能になる

【動画】MOTOMAN-VA1400が実際に溶接を実演 【動画】2台のロボットが互いに干渉せずにトーチを操り溶接作業を行なうことが可能

 また7軸双腕ロボットが、狭いスペースで部材を操って作業するデモンストレーションを行なっていた。人間は体の脇にあるものを、腕の角度を調整して掴むことができる。これまでの6軸アームロボットでは、この動作が再現できなかった。6軸アームロボットで本体の脇にあるものを掴むためには、ロボットが位置をずらして取らなくてはならない。7軸双腕ロボットは人間が立っているのと同様のスペース内で、人と同じ動作ができる。

 また双腕であるために、物を持ち上げるときにバランスを保つことが容易になった。ロボットが部品同士の接着を行なう際も、ビジョンセンサー等に頼らずにロボット自身が双方の腕の位置を微調整するだけで、位置あわせが可能となる。


7軸双腕ロボット。頭は飾りだが、やはりあると可愛いし安心感がある 【動画】7軸双腕ロボットのデモンストレーション。狭いスペースで効率よく作業をこなす 【動画】複数のロボットが狭いスペースに並んでも干渉せずに動作する。巨大なアームロボットが一斉に動くさまは八岐大蛇のようだった

 ファナックはロボット3台が協調してアーク溶接を行なうデモンストレーションを披露した。

 両側2台のロボット「M-10iA」が、内蔵のカメラでパレットから部品を認識して取りだし、マフラーの上に配置する。パレットの中の部品は、ばらばらに置かれておりロボットがちゃんと部品を認識していることがわかる。

 中央のロボット「ROBOWELD 100iC」が部品を仮止めすると、左右のロボットが本溶接のためにマフラーを持ち上げる。そして、ROBOWELD 100iCが部品の周囲をぐるりと溶接するのに合わせて、マフラーの角度を調整している。3台のロボットがエンドレスで休みなく協調動作を続けていくのを見るのは楽しかった。


実際の溶接を行なう前に、動作だけをデモンストレーションで見せていた 【動画】実際に3台が動いているところを見ると、一糸乱れぬ動きが見事で面白い 知能化3台協調アーク溶接システムの解説

 会場で一風変わった展示をしていたのが、富山市の株式会社生産技術だった。

 ここのブースでは、アームロボットが獅子舞のコスプレをしたり、頭上で編笠を被ったロボットが「おわら風の盆」を踊っていた。

 また、双腕ロボットが頭にあるセンサで色を認識して、ルービックを解いていた。観客が面をばらばらにしたルービックキューブを渡すと、両手で持って各面を眺めてから手先で器用にキューブを捻っていく。残り手数が10手以下になると、「あと5手です」とカウントしながら行なっていた。私がバラバラにしたパズルは38秒で解いていた。このロボットは、約4,325京2,003兆の組み合わせを瞬時に計算する演算処理能力を持っているという。なのに、時々、頭を傾げて考えたふりをするのが可愛い。

 通常、産業用ロボットは、顧客との守秘義務があり技術公開ができない。そこで同社は、上記にような面白いロボットを作って一般公開することで、技術の一端を紹介しさまざまな業種にアピールすることを考えたという。

 同社は、溶接ロボットや切断ロボットを製造・販売するだけではなく、レンタル事業も行なっている。一時的な増産やロボットの故障などの緊急時に応じるため、年中無24時間対応でレンタルしているそうだ。産業用ロボットのレンタル事業を行なっているのは同社だけだという。


【動画】富山市八尾の民謡行事「おわら風の盆」を踊るおわらロボット 【動画】ルービックキューブは治具にいれて完全に6面を整えてあげないとロボットがつかめない 【動画】頭を傾げて考えながらパズルを解くようすが可愛らしい。頭部のセンサで色を認識している

アームロボットが獅子舞のコスプレをして踊っていた 【動画】UFOキャッチャーロボットで、指でしっかり握ったボールを穴に向けて落とすゲームができる。成功率は0.01%だという

【動画】ゲームをしていない時は、ポールダンスで稼働性能をアピールしていた 【動画】タッチパネルで指示を与えるとスラスラ絵を描いてくれる「お絵かきロボット」

URL
  2008国際ウエルディングショー
  http://www.weldingshow.jp/
  日本溶接協会
  http://www.jwes.or.jp/
  産報出版
  http://www.sanpo-pub.co.jp/

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( 三月兎 )
2008/04/16 00:09

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