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アサンテ、シロアリ防除ロボット「ミルボ3」の実証実験を大阪四天王寺で実施
シロアリ防除ロボット「ミルボ3」
2月19日に、株式会社アサンテとNPO法人国際レスキューシステム研究機構(IRS)が、「家屋調査・シロアリ防除ロボット“ミルボ3”」の公開実証実験を実施した。実証実験には、ロボットラボラトリーと四天王寺が協力し、四天王寺の聖霊院(しょうりょういん)床下で走行実験等を行なった。
ロボットは“見るロボット”で「ミルボ」と名づけられた。
2007年夏に鎌倉で1号機
、国際ロボット展で2号機を発表した。
1号機は、家屋の床下で調査員と協働することを前提としていたが、2号機はロボットが単体で床下に潜り、調査員は外で操縦するようにコンセプトが変更になった。そのため2号機は機能が複雑になり、重量が増しボディも大きくなったために狭いところに入れなくなった。そこで小型軽量化を目指して3号機の「ミルボ3」を開発した。ミルボ3は、経済産業省の次世代ロボット安全基準ガイドラインに沿って開発されている。
ミルボ3は、サイズが300×480×200mm(幅×奥行き×高さ)、本体重量は約15kg。電源はAC100V(ロボット本体はDC12V)を使用する。走行速度は2段階に切り替えが可能で、高速は10m/分。床下に入って薬剤を噴霧するため防水防塵仕様になっている。構造材はジェラルミン。
ミルボ3の駆動系は、4輪駆動のタイヤだ。レスキューロボットでよく用いられるクローラーは、不整地走行にはよいが、木っ端やシートなどを巻き込んだ時に走行が不能になる。メンテナンス性を考慮してタイヤを採用した。
床下にある障害物は、配管等で高さが5cm程度なので、ミルボ3の車高は8cmになっている。高い障害物に乗り上げると、ミルボ3が身動きが取れなくなるため、想定以上の段差に乗り上げないように前輪を後輪の直径より小さくしてある。
ロボットの先端部にカメラと照明が搭載されていて、水平から上方に45度の角度で動作する。ボディ中央部には俯瞰カメラ、後部にもカメラが搭載されている。カメラの映像は、ケースに収められた3台のモニタに映しだされる。
ロボットの操縦は2本のジョイスティックで行なう。左のスティックでカメラの角度を変更、右のスティックでロボットの前後走行、旋回を行なう。安全性確保のため、コントローラーは鍵をささなければ使えない。また、緊急停止スイッチも搭載されている。
コントローラーがシンプルなのは、防塵手袋をはいていてもロボットを操縦できるように考慮してあるためだ。
実証実験会場となった四天王寺の聖霊院
ケースに前方、俯瞰用、後方用のモニタが入っている。コントローラーはシンプルな構成
調査員は3つのモニタを見ながら、コントローラーでミルボ3を操縦する
【動画】
「ミルボ3」からモニターへ送られてきた映像。下の画面が前方のカメラが捉えた映像。土埃がひどいことがよく判る
シロアリが発生している場合、柱の基礎となっている束石にシロアリが蟻道をつくる。その段階で早期発見できれば、被害を防除できる
【動画】
床下にシロアリの被害にあった木をテスト用に置いてあった。このように被害の状況をユーザーに示すことができる
【動画】
「ミルボ3」床下走行の動画。高さ20数cmの隙間をくぐっている
【動画】
前方に搭載した照明で床下を照らし、カメラで映像を外部へ送信している
車体後方のカメラ。後退する時に使用する
「ミルボ3」は小型軽量なので、作業員1人で扱うことが可能
実証実験を行なった床下。一般家屋での床下は、正面の横木くらいの高さになるため、人が調査する場合は、匍匐前進するしかない
シロアリに腐食された木。年輪にそって柔らかい部分がシロアリ被害にあう。この状態になると強度が全くないという
シロアリの被害を発見した場合、ミルボ3で薬剤を散布する。今回は戸外で水を散布するデモンストレーションを行なった。
ミルボ3は、境内の玉石の上を走行し3cmほどの段差を超えて、石畳の上で方向転換。その後、ターゲットとなっている木に近づいた。ミルボのポジションが定め、オペレーターが薬剤(今回は水)の入っているタンクのバルブを解放すると、散布が始まる。
薬剤噴霧ノズルはカメラと連動しているため、オペレータは映像を見ながら的確に薬剤を散布できる。薬剤は粘度が高いため、チューブは使い捨てになるという。そのため、チューブが簡単に取り付けられるように工夫されている。
【動画】
明るいところで不整地走行と方向転換のデモンストレーションを行なった
【動画】
車体の位置を変えたり、噴霧器の角度を上下に移動して、まんべんなく薬剤を散布する
チューブは使い捨てのため、セッティングが簡単に行なえるように設計されている
左側のタンクに薬剤が入っている。ロボットを遠方から遠隔操縦して散布デモンストレーションを行なった
石黒周氏(IRS理事、ロボットラボラトリーリーダー)
本プロジェクトは、2006年に経済産業省の「サービスロボット市場創出支援事業プロジェクト」に採択されてロボットの開発がスタートした。
IRSは、レスキューロボットシステムの研究開発を行なっている。災害救助ロボットは必要性が高いが、いつ起こるかわからない災害のためにロボットの研究開発を継続するためには、いくつもの難しい問題をはらんでいる。
例えば、日常使わないシステムは運用上の課題や改良点を具体的に見つける機会が少ないため、ロボットの性能を高めることが難しい。
日々使うロボットシステムならば、ロボットの機能やユーザビリティの改良が進みより使いやすいシステムに発展する。またRTを使ったサービス事業を行なうことで、経済合理性が生まれ利益の一部を研究開発に還元することもできる。
IRS理事の石黒周氏は、「このような問題点を打破するために、レスキューロボット開発で培った技術をサービス業分野に導入する試みが検討された」と、アサンテにアプローチした経緯を語った。
一方、アサンテの業務は、家屋の床下に潜りシロアリ被害を調査し防除することだ。
今回の実証実験会場は床下が高かったが、実際に作業する家屋では、高さ25cmくらいしかないという。25cmというのは、本記事でご覧いただいた映像のロボットがぎりぎりくぐっているような高さだ。作業員は、釘等の危険物が散乱する狭い空間を、土埃にまみれて匍匐前進で調査しているのだ。こうした過酷な作業をロボットが代替できれば、作業員の労働環境改善につながる。
また、最近は悪質業者による詐欺事件が続発しているため、業界へ不信を持つユーザーもいる。これまでは、作業員が床下に入って被害状況や原因を確認し、調査後にユーザーへ写真等で報告していた。今後、このシステムが実用化されると、ロボットが床下から送ってくる映像をリアルタイムでユーザーに示しながら調査員が状態を説明できるため、コンプライアンスの徹底が望める。
そして、映像データはネットワークを通じて、本社に転送することも可能だ。アサンテは、シロアリ防除作業を実施したあと5年間のサポートを行なっている。本社へ転送した映像をデータベース化し、毎年の定期点検で過去の映像とチェックして経過の確認ができるようになり、今まで以上にきめ細やかなサービスを提供できるようになるという。
はからずも実証実験が行なわれた前日の18日に、国の
中央防災会議
が、京都や奈良に直下地震が発生した場合、国指定重要文化財(重文)の建造物が京都で約260件、奈良の地震で約220件被災する恐れがあるという
被害想定を公表した
。
関西は、1995年に阪神淡路大震災を経験している。この時のデータによると、シロアリ被害・腐食がある家の全壊率は93%で、シロアリ被害がない家屋の倒壊率が約25%であることと比較すると、危険度が3.7倍も高いという。
株式会社アサンテ常務取締役の飯柴正美氏は、「家屋のみならず重要文化財を災害から守るためにも、日頃から点検を行ないシロアリの被害を防ぐことが重要である」と語った。
本プロジェクトは、ミルボ3以外に壁内や天井裏を探索するロボットや、床下、天井などの間取りを3次元データとして計測しコスト計算を行なうシステムを平行して開発している。
アサンテでは、ミルボ3を単体で販売するのではなく、調査、施工、アフターサービスにロボット要素技術を組み込んで「作業員と協働点検するロボットシステム」としてパッケージ化を目指し、開発を続けていくという。
飯柴正美氏(株式会社アサンテ常務取締役)
ミルボ3を開発した土井智晴氏(NPO法人国際レスキューシステム研究機構、大阪府立工業高等専門学校准教授)
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URL
アサンテ
http://www.asante.co.jp/
シロアリ防除ロボット開発について
http://www.asante.co.jp/news/robot01.html
レスキューシステム研究機構(IRS)
http://www.rescuesystem.org/
ロボットラボラトリー
http://www.robo-labo.jp/
四天王寺
http://www.shitennoji.or.jp/
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