株式会社アサンテとNPO法人国際レスキューシステム研究機構(IRS)は「家屋調査・シロアリ防除ロボット」を開発し、神奈川県、かわさき・神奈川ロボットビジネス協議会と協力して鎌倉市の「鎌倉宮」拝殿にて公開デモンストレーションを行なった。
ロボットの名前は「ミルボ」。大きさは21.5cm×26cm×10.7cm。重さは約4.4kg。電源はDC12Vで有線で供給される。13m/分程度の速度で走行できる。床下に入るため防水防塵機能を備えており、構造材はアルミとステンレス。床下作業員が補助具として使うロボットだ。名前は「見るロボット」にちなんだもの。
先端部にはカメラと照明がつけられており、上下に動作する。カメラの画角は70度程度で、画素は40万画素。将来的には点検だけではなく、シロアリ防除の薬剤を噴霧させることも検討しているため、カメラ部分は簡単に脱着できるようになっている。
また外したカメラ部分は、壁の中や天井裏を調べる別の器具に取り付けが可能。トータルシステムとしてパフォーマンスを上げ、コストを下げることを狙っている。駆動系に不整地でよく用いられるクローラーを使わなかったのも、メンテナンス性をあげるためだという。
デモは比較的床下高さのある鎌倉宮拝殿で行なわれた。
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家屋調査・シロアリ防除ロボット「ミルボ」
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大きさは21.5cm×26cm×10.7cm。重さは約4.4kg
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ロボットからの画像。比較的見やすい
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操縦システム
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操縦はジョイスティックで行なう
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床下画像を撮影し、点検結果を閲覧可能
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ミルボに搭載されたカメラモジュールを取り外したところ
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カメラは別のユニットで流用が可能
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壁の中や天井裏を調べる道具にカメラを取り付けたところ
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先端のカメラ部分を薬剤噴霧用のユニットに交換することもできる
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デモ会場となった鎌倉宮の拝殿
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【動画】ロボットからの画像
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【動画】床下点検中のロボット
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【動画】走行中のロボット。人と一緒に働くためトルクは抑えてある
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災害救助ロボットシステムをサービス産業分野のビジネスツールとして共用したいというニーズと、シロアリ防除業界での人間の手が及びにくいところの家屋・防除作業を機械で行なって3K作業を効率的にしたいというニーズが合致。経済産業省による「サービスロボット市場創出支援事業プロジェクト」に2006年から採択され、開発したもの。2008年の実用化を目指している。
人の手によるところの大きい業務にロボットテクノロジーを注入し、新たなプロセスを構築することで、シロアリ防除業界全体のイメージ向上にも繋がるものと考えているという。
アサンテ以外のプロジェクト参加法人は下記のとおり。
・株式会社アサヒ電子研究所 (ロボット製造管理・通信システム開発)
・NPO法人国際レスキューシステム研究機構 (ロボットシステム研究開発)
・有限会社RTソリューション (プロジェクト総括・ロボット製造責任者)
・高菱エンジニアリング株式会社 (カメラ関連部品製造)
・有限会社スリーディーデータ (各種計測システムの導入検討・性能試験)
・NPO法人安全工学研究所 (安全工学に基づく安全認証指導)
・有限会社ナカタテクスタ (ロボット本体製造)
・株式会社スリーS電器製作所 (制御部品製造)
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神奈川県 企画部 京浜臨海部活性推進課 課長 林秀明氏
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川崎には国際レスキューシステム研究機構のラボがあったが、昨年、5年間の研究プロジェクト終了にともなって閉所した。だが神奈川県ではロボットを地域活性化につなげたい、ロボットを切り口に新しい産業を作りたいと考えて、フォーラム等を開催していた。
そのような取り組みの中で、社会的ニーズに合わせたロボット技術の活用を考えていたときに、シロアリ防除を業務とする株式会社アサンテとの思惑が一致し、今回のプロジェクトが始まったという。神奈川県企画部京浜臨海部活性推進課課長の林秀明氏は「科学技術振興だけではなく、安全・安心を創出する社会的に意義のあるプロジェクト。今後もお手伝いをしていきたい」と語った。
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NPO法人国際レスキューシステム研究機構、大阪府立工業高等専門学校准教授 土井智晴氏
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NPO法人国際レスキューシステム研究機構、大阪府立工業高等専門学校准教授の土井智晴氏は、このロボットは「安全設計をベースにした次世代の実用ロボット」だと語る。
ポイントは、狭い場所で作業をする作業員と一緒に働くことを大前提をしているため、両者の安全確保を考慮したこと。経済産業省の安全基準ガイドラインに準拠しているという。
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株式会社アサンテ常務取締役 飯柴正美氏
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株式会社アサンテ常務取締役の飯柴正美氏は、「ユーザー、コーディネータ、メーカー含めて全員が共同して、やっとここまでこぎつけた」と、シロアリ防除業務におけるロボット導入について熱く語った。
もともとはレスキューロボットの参考にするために、IRSから床下などレスキュー現場に似た状況で働くノウハウを豊富に持っているアサンテにアプローチがあったという。数年間、人が入ったことがない場所を作業現場とするアサンテと、瓦礫が崩れた場所で働くロボットを作るIRS、それぞれのフィールドが似ていることから、レスキューロボットにその技術が生かせるのではないか、目的は違うが同じような場所で働けるロボットがいるのであれば、より効率的に行えるのではないかと両者の思惑が一致。そうしているときに経済産業省から公募の話があり、アサンテから応募して採択されたという経緯だという。
飯芝氏によれば、アサンテがロボットに期待するテクニカルな面を3つあるという。1つ目は調査・施工を可視化すること。実際に床下をお客さんに見せることだ。2つ目は人が入れない場所への適用である。通常の床下は20cmから25cmしかない。そこに人間が入って作業している。同社のベテランの作業員たちは、頭が入れるスペースがあれば入っていけるのだという。だがそれでも、どうしても人間が入れない場所が床下にはある。そのような人間の手が届かないところまで入って作業・施工ができれば、より作業を完全に近づけられる。3つ目が映像情報の共有である。昨今、シロアリ防除業務における詐欺事件などが話題になっているが、作業員、本社、また家屋の持ち主だけではなく、その知人などにも実際の床下映像を見てもらうことができれば、安心にもつながる。
経営面でも、ロボット技術の導入は、総合的に営業効率と作業効率のアップ、信頼度のアップに繋がる、高生産性を生み出せるものだと考えているという。飯芝氏は、ロボット技術の導入によって「当社を、いままでにないシロアリ防除会社に変革させる」と意気込みを語った。
こうして、実際に現場で使えるロボットを目指して開発作業を行なった。コンセプトは、過酷な条件下で使用することができるか。使用者にとってストレスフリーであること。誰が使っても安全であり、壊れにくく、操作が簡単であり、持ち運びが容易、使い勝手がよいこと。人の能力を最大に発揮させることだったという。「ロボットを入れて人を減らすわけではない。人の力では対応できないところをロボットで補うということ」と強調した。
飯芝氏は、多くのメーカーがこれだけの力を入れて、シロアリの予防・駆除を目指すことそのものの社会的意義についても熱く語った。
飯芝氏によれば、シロアリの被害は大きく分けて3つある。ひとつは安全を脅かし、財産が毀損されること。日本では中古住宅を買うときにも床下を点検する人は少ないのだという。ちなみにアメリカでは売却側に点検が義務付けられているそうだ。2つ目は、個人の財産のみならず、歴史的文化遺産を食い荒らされること。3つ目は建物の耐久性を減じることで、建て替えが増え、結果として森林伐採が増えること。これらは、シロアリ防除技術で減じることができるという。
地震のときの被害もシロアリ食害があるかどうかで変わる。阪神大震災のときのデータによれば、シロアリに食われている家屋の倒壊確率は93%。なんと倒壊のリスクが食われていないときに対して3.9倍になるのだという。なおシロアリに食われている家は3軒に1軒あるといわれており、こういう面からもシロアリ対策が必要であることがわかる。
だがいっぽうで悪質業者による詐欺事件も続発し、業界の信頼は落ちている。そのような面においてもロボットを取り入れることで、業界の信頼度を上げていきたいと語った。
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IRS理事 石黒周氏
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IRS理事の石黒周氏によれば、この点は、IRS側としても非常に共感したところだという。そもそも災害被害を減らすことがIRSの目的だからだ。ロボットによって事前にシロアリ被害を発見・防ぐことができれば、そのぶん、災害時の被害を減ずることが可能になる。
ロボットは今後、テストを繰り返してブラッシュアップされていくことになる。実際の床下は高さもほとんどなく、濡れている場所もあるし、障害物も多い。環境が床下によって全く違うため、なかなか一筋縄ではいかないそうだが、今後の発展に期待しよう。
■URL
株式会社アサンテ
http://www.asante.co.jp/
シロアリ防除ロボット開発について
http://www.asante.co.jp/news/robot01.html
NPO法人国際レスキューシステム研究機構(IRS)
http://www.rescuesystem.org/
かわさき・神奈川ロボットビジネス協議会
http://www.robot-net.jp/
鎌倉宮
http://www.kamakuraguu.jp/
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( 森山和道 )
2007/08/02 00:07
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