2月13日、北九州市のロボットベンチャー・株式会社テムザックは、北九州市小倉駅の近くにあるアジア太平洋インポートマート(AIMビル)2Fガレリア南側歩道にて、ヒューマノイド2足歩行ロボット「キヨモリ」の屋外での公開歩行実験を行なった。キヨモリは傾斜4.5度の坂道を最大8歩、上がったり下ったりした。
今回の実験はロボット産業振興会議 平成19年度ロボット開発技術力強化事業の助成によるもの。株式会社テムザックと株式会社シンクフリーは、平成18年度から2年間のプロジェクトとして「2足歩行ロボットを用いた移動ロボット汎用安定化技術の基盤構築」(プロジェクトリーダー:早稲田大学理工学術院高西淳夫教授)を実施してきた。そのなかで技術移転された早稲田大学開発の改良された歩行安定化制御技術を「キヨモリ」に移転して実施した。
実験における目的は、屋外での歩行能力検証、基準水平面より±10mm以内の不整地歩行の実現に向けたデータ収集、基準水平面より±5度以内の傾斜路面での歩行実現に向けたデータ収集とされている。実験そのものは2月1日から19日まで実施されており、そのうち一日が報道公開された。
実験に先立ち、テムザックの高本陽一代表取締役社長は、「2足歩行ロボットはロボットのF1のようなもの。ここで開発された歩行安定化技術は車輪やクローラロボットにも応用できる。より安価に実環境に適応した実用ロボットを開発していきたい」と挨拶した。
実際の歩行実験は、2箇所で行なわれた。
まず一箇所目は、ビル屋外の通路の斜度4.5度の斜面での歩行実験。もちろんロボット専用床面ではなく床板が張られた普通の通路だ。すべりの程度も場所によって異なるし、もともと微妙にうねった環境となっている。
こちらでキヨモリは脚部のコンプライアンスを効かせた状態でクレーンから降ろされる。初期状態では斜面に対しては垂直だが重力方向には斜めの状態で立っている。ここで新規に搭載した3軸ジャイロセンサーを入れて体をまっすぐ起こし、4歩あるいは8歩、斜面を歩行した。
これまでのキヨモリは鎧兜をまとっていたが、軽量化のため今回は直垂、烏帽子へと外装を変更した(製造:丸武産業株式会社)。これによって身長はおおよそ155cm、重量はおおよそ69kgになっている。また従来は早稲田大学のWABIAN同様、骨盤機構を持ち、膝をまっすぐ伸ばした状態での歩行を特徴としていたがが今回は膝を少し曲げて骨盤はあまり使わずに歩いている。
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【動画】下り斜面に下ろされたあとジャイロによって姿勢をまっすぐ起こしていく様子
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【動画】下り斜面上で体を起こし、歩いていく様子
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【動画】下っていく様子。今回のキヨモリは膝を曲げて歩いている
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【動画】登り斜面上で姿勢を起こし、歩行する様子
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【動画】姿勢を起こす様子と歩行を脚部中心に。面接地で歩いていく
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実験に使われた通路の斜面。微妙に凹凸があり、滑り方も違う
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斜面へ接地直後の状態。ジャイロセンサーは動いていないため体は斜めになったまま
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ジャイロセンサーを使って体を起こした状態
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実験途中のバッテリ交換の模様。バッテリはニッケル水素
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株式会社テムザック 高本陽一代表取締役社長
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もう一箇所はAIMビルのなかの通路で、こちらではクレーンを外した状態で歩行した。こちらも普通の通路である。
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キヨモリ正面。外装は直垂、烏帽子に変更されて軽量化
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キヨモリ側面
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顔の面はそのまま
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首の後ろに追加されたジャイロ。Microstrain社「3DM-GX1」を使用
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足首の6軸力センサー
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会場のAIMビル
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実験の模様
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テムザック社長室副室長の井野重秋氏によれば、今後「キヨモリ」は19日の実験終了までに、斜面での直線歩行だけではなく、より技術的に難しい平面から斜面あるいは斜面から平面への連続歩行、斜面の斜め歩行なども実験していくという。なお予備実験として斜度6度での歩行や、斜面上で斜めにずれた状態から上体を制御することでまっすぐ歩かせるといった実験にも成功しているとのことだ。
また北九州市産業学術振興局 新産業部 新産業振興課主査の阪本光氏によれば、北九州市でも今回のようなロボットベンチャーの実証実験やビジネス化を、今後も推進していくという。
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「キヨモリ」ほかテムザックのロボットファミリー
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テムザック社長室副室長 井野重秋氏
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北九州市産業学術振興局 新産業部 新産業振興課 主査 阪本光氏
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■URL
テムザック
http://www.tmsuk.co.jp
キヨモリ
http://kiyomori.jp/main.html
ロボット産業振興会議
http://www.f-robot.com/
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