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「第22回ヒューマノイドカップ・バトル大会」レポート
~優勝はスーパーディガー、ROBO-ONE出場権はAutomo03が獲得


 1月5日、6日の両日、福岡市早良区百道浜のロボスクエアで、第22回ヒューマノイドカップ・バトル大会が開催され、22台の二足歩行ロボットが優勝を目指して戦った。

 なお、今回のヒューマノイドカップの優勝者には、3月に開催される第13回ROBO-ONEの決勝トーナメント出場権が与えられる、ROBO-ONE認定大会となっていた。


ロボスクエアのあるTNC放送会館 予選の開会式 会場の全景

スプリントとキックの予選

 5日は、3mのパンチカーペットの上を走る「スプリント」と、4個のボールをキックでゴールに入れていく「フリーキック」の2競技による予選が行なわれた。それぞれ競技の順位によりポイントが与えられ、2競技で獲得したポイントの合計の上位16台が、6日のバトルトーナメントに出場できる。

 スプリントは3台が並んで同時に走るスタイルで行なわれ、2回トライしていい方の成績で順位が決まる。

 1回目のトライでは、スーパーディガーが5秒85で首位に立ったが、2回目のトライではAutomo03(Sandan)が5秒76でスプリントの1位となった。


スプリントは3台並んで同時スタート(写真は左からAutomo03、スーパーディガー、Gパワーローダーネクスト)。三台とも横歩きをしているが、ルール見直しの話も出ているため、横歩きは今回限りかもしれない 左からフロスティ、ヤマギワデンキ、ドカ1。フロスティは前歩きで最速の7秒49の記録を出した スーパーディガーの2回目はコースアウトしてしまい、逆に奥のAutomo03が最高タイムの5秒76でゴールした

 フリーキックは4個のボールを2分以内にゴールへとシュートしていくゲームで、2回トライしたうちのいい方のタイムで順位が決定する。8月の第21回ヒューマノイドカップの予選でも行なわれたが、その時はゴールの横にボールが転がってしまうとリカバリーできず、そのままタイムアップする機体が多かった。

 それで今回は枠を設けてゴール横にボールが転がらないようにしたが、それでも2分以内にクリアできた機体は22台中12台にとどまった。

 なお、2分以内にクリアできなかった機体に対しては、2回のトライでゴールに入れることのできたボールの数で、順位を決めてポイントが与えられた。

 その中で最初に好記録を出して会場を沸かせたのは、HAUSERだ。安定した高速歩行でボールを次々と入れていき、30秒91のタイムを出し、1回目のトライが終了した段階では1位となった。しかし、2回目のトライでスーパーディガーが30秒82の記録で逆転して1位を取り、スプリントで獲得したポイントと合わせて、予選を1位で通過した。


フリーキックのコート。写真の機体は、RB2000ベースのトレイン2(左)とKHR-2ベースのQ キックで次々とボールを入れていったHAUSER 30秒82の最高タイムでフリーキックを制したスーパーディガー

フリーキック1回目で、Autotomo03は無線トラブルでリタイヤ フリーキック2回目でのAutomo対決 予選の閉会式

 予選通過ロボット16台は次の通り。

1位 スーパーディガー(ひろのっち)
2位 Automo03(holypong)
3位 HAUSER(クラフトマン)
4位 Gパワーローダーネクスト(カクさん)
5位 九共大ー疾風(水井雅彦)
6位 九共大ーZERO(武田真実)
7位 九共大ーGenex(菊竹裕之)
8位 フロスティ(FrostyDesign)
9位 DOKA1(ドカファイターKAZU)
10位 成龍(湯前裕介)
11位 トレイン2(YOUSUKE)
12位 Automo01(勝野宏史)
13位 トレイン1(YUKI)
14位 スーパーディガーJr(しゅんくん)
15位 Q(林慎一)
16位 ヤマギワデンキ(ぺんぎん副社長)


優勝者の決まる2日目

 大会2日目は16台によるバトルトーナメントだ。組み合わせは予選1位と16位、予選2位と15位というように自動的に決定し、予選順位の高いものほど有利になる組み合わせとなっている。

 試合は3分間で、3ダウンか10カウントダウンで決まるのは他の大会と変わりはないが、今回のヒューマノイドカップから「3スリップで1ダウン」のルールが加えられた(このルール自体は、11月に熊本県荒尾市のグリーンランドで開催されたロボットバトル大会から実施された)。

 また3分以内に決着がつかなかった場合は、先にダウンを取った方が勝ちとなる延長戦が行なわれる。

 今回、試合の始まる前から意外な波乱が起きた。予選4位のGパワーローダーネクストのカクさん氏が、風邪による発熱で来られなくなってしまったのだ。ランブルをやるために会場入りしていたアームドールとHADESのうち、予選順位の高いアームドールがトーナメントに出場し、予選1位のスーパーディガーと戦うことになった。


ロボスクエア所有のバトル用リング トーナメント表。エキシビジョンマッチは総当りリーグ戦になっている バトル大会の開会式

1回戦の目立った試合

 今回のヒューマノイドカップは家族での参加者が多く、お子さんが操縦する機体も見られた。その中でも金星を上げたのが、しゅんくん(実はひろのっち氏のお子さん)の操縦するスーパーディガーJrだ。

 1回戦の相手は九州練習会のリーダー・水井氏の操縦する疾風。さすがに荷が重いと思われたが、試合の途中でスリップした疾風の起き上がりができなくなってタイムを申請し(タイムを取ると1ダウン取られる)、1-1で延長戦に突入(スーパーディガーJrは3スリップによる1ダウン)。

 延長戦でも疾風はスリップして起き上がれず、軍配はスーパーディガーJrに上がった。

 今回の大会は、初めてアメリカからの参加者があった。ハワイからやってきた勝野宏史氏である――と書くとすごいが、実は勝野氏はワイルダー01のオーナーで九州三銃士の一人だった。現在はハワイ大学に勤務しているが、福岡に帰省中に、九州三銃士の一人であるholypong氏からAutomo01を借りて出場することになったのである。

 Automo01は以前に比べて相当改造が加えられており、1回戦を勝ち上がっての「Automo対決」も期待されたが、九共大ーGenexの前にあっさりと3-0で敗北。やはりしばらくロボットから離れていたブランクは大きかったようだ。

 いきなり決勝トーナメントに出場が決まったアームドールだが、ペットボトル(中は空)をつけてスーパーディガーとの戦いに臨んだ。ひたすらペットボトルでスーパーディガーをどつきまわすが、スーパーディガーはびくともしない。逆に自分からスーパーディガーに当たって倒れる始末で、試合は3-0で完敗だったが、大いに会場を盛り上げ、繰上げ出場の責任を見事に果たした。

 その他の試合は次の通り。

・成龍 1-0 ドカ1
・Automo03 3-0 ヤマギワデンキ
・フロスティ 3-1 トレイン2
・HAUSER 3-0 Q
・九共大ーZERO 3-0 トレイン1


スーパーディガーJr VS 九共大ー疾風。なお、スーパーディガーJrはロボファイトSRC部門の優勝機体 タイム中に疾風の修理をする水井氏 延長戦でスリップした疾風はそのまま起き上がれず、スーパーディガーJrが勝利

ロボスクエアのサイトでもアメリカからの参加となっていた勝野氏とAutomo01 しかし、試合は九共大ーGenexが3-0で勝利

ペットボトルを装備したアームドールの勇姿(?) ペットボトルでスーパーディガーをぼっこぼこにしてやんよ! でも、通じませんでした……

Automo03、ペンギンロボのヤマギワデンキを撃破 フロスティのパンチがRB2000ベースのトレイン2に命中 HAUSERの豪腕一閃!(対戦相手はQ)

順当勝ちの2回戦

 2回戦第1試合は、1回戦で金星を上げたスーパーディガーJrと成龍の戦い。2回戦でも金星が期待されたが、成龍は間合いの取り方が絶妙でダウンを取らせない。結局、2-0で成龍が勝利し、スーパーディガーJrを操縦するしゅんくんは涙を流した。

 第2試合は、Automo01を破った九共大ーGenexとAutomo03の対決。Automo03はパンチ3発でGenexを沈め、ベスト4に進出した。

 第3試合は、九州以外で唯一勝ち残っているフロスティと、最近めきめきと実力を上げているHAUSERとの試合。フロスティが3スリップで1ダウンを献上した後、HAUSERの豪腕が炸裂。パンチを食らったフロスティは場外まで転落したほどだった。HAUSERがもう1パンチ決めて3-0でベスト4進出。

 第4試合は、スーパーディガーと九共大ーZEROとの対決。九共大ーZEROは、スーパーディガーのひろのっち氏が同ブロック内で一番警戒していた相手だ。しかし、バトルの経験ではスーパーディガーに一日の長があり、短い時間で3-0の決着がついてしまった。


成龍 VS スーパーディガーJr やはりバトル経験の差が出て、成龍が勝利

九共大ーGenex VS Automo03 正拳突き三発で、Automo03は九共大ーGenexを撃破

フロスティ VS HAUSER HAUSERのパンチがフロスティを場外まで転落させる

九共大ーZERO VS スーパーディガー 意外と早いタイムでケリがついてしまった

九州の強豪同士が戦った準決勝

 準決勝は、Automo03 VS 成龍、HAUSER VS スーパーディガーという九州勢同士の戦いとなった(しかも全員、地元の福岡市在住)。

 準決勝のAutomo03 VS 成龍は、どちらも簡単にダウンを奪えない戦いとなった。しかし、しゃがんだAutomo03が前方向にバランスを崩したところに、成龍が飛び込み攻撃をしかけた。Automo03のスリップにも見えたが、レフェリーはAutomo03のダウンを宣告。成龍はこのダウンを守りきり、1-0で決勝に進出を決めた。

 準決勝の最後の試合は、HAUSER VS スーパーディガー。両者ともリング上を高速で走り回り、パンチを出し合う。しかし、やはりバトルとなるとスーパーディガーが経験の差を見せ付けた。パンチでHAUSERからダウンを奪い、最後はしゃがんだ状態のHAUSERを倒して3-0で決勝にコマを進めた。


成龍 VS Automo03 お互い走り回って相手の攻撃を当てさせない Automo03が「ダウン」を取られた瞬間。ただ、正面から見ると、スリップしてAutomo03の手が着いた後に成龍の攻撃が決まったように見えた

HAUSERを豪快に倒すスーパーディガー 危ない場面もあったが、スーパーディガーはうまく逃げた 3-0でスーパーディガーの勝利が決まった瞬間

2つの決定戦

 優勝決定戦の前に、Automo03 VS HAUSERの3位決定戦が行なわれたが、実は結果としてこの試合が、この日の一番重要な戦いとなった。

 Automo03、HAUSERの両者共に高速でリング上を駆け回り、鋭いパンチを出し合う激しい戦いとなった(この試合が、今大会のベストマッチだったと思う)。両者ともダウンを奪い合う展開で、2-2のイーブンスコアで両者譲らず、延長戦に突入。

 延長戦でAutomo03は突き上げるようなパンチをHAUSERにヒットさせ、3位の座をもぎとった。

 優勝決定戦は、スーパーディガー VS 成龍という、かつてヒューマノイドカップ・バトル大会を制してROBO-ONE出場権を獲得したことのある機体同士の戦いとなった。後で、ひろのっち氏が「今回一番手ごわかったのは成龍」と語ったように、成龍は微妙に攻撃の間合いを外し、スーパーディガーの攻撃が当たってもなかなか倒れない。しかし、それでも第12回ROBO-ONEで軽量級3位となったスーパーディガーは強く、リングアウト、パンチによるダウンと成龍を追い込んでいく。そして終了直前3秒前にパンチでダウンを奪い、終わってみれば3-0で優勝した。


Automo03とHAUSERによる3位決定戦 両者の攻撃が交差する Automo03がダウンを奪えば――

HAUSERもダウンを奪い返す 2-2のスコアで、延長戦に ついにAutomo03がダウンを奪って決着がついた

優勝決定戦 リングアウトした成龍 最後はパンチで勝負を決めた

ヒューマノイドカップ・バトル大会で連続優勝を決めたひろのっち氏 勝者を称える成龍の倒立

ゲストによるエキシビジョンマッチも

 今回のヒューマノイドカップは、ゲストロボットによるエキシビジョンマッチも別に行なわれた。参加したのは、トコトコ丸、タマ、OmniZero.5、それにヴイストンのRobovie-Xとなかなか豪華。この4台がパフォーマンスを織り交ぜながら、総当りトーナメントを行ない、こちらはOmniZero.5が優勝した。

 なお、最後に特別試合として、OmniZero.5とスーパーディガーの対戦が行なわれ、この戦いもスーパーディガーが勝利し、予選・本戦・特別試合のすべてを制して完全優勝を決めた。

 また負けたロボットによるランブルも行なわれ、こちらは九共大ー疾風が制した。


観客を巻き込むタマのパフォーマンス 踊るトコトコ丸。オーナーの網野氏は、ROBO-ONEGP大会への出場を断って、この大会に参加した―と書くと格好いいが、正月休みの帰省の関係でこちらに出場したらしい 顔の横に距離センサーをつけて、自律で的を蹴り倒すデモを見せたRobovie-X

エキシビジョンマッチでトコトコ丸をプラスチック弾で攻撃するRobovie-X。しかし、ロボファイトルールではないので、何の意味もない(笑) タマの惨劇! OmniZero.5がタマの頭を割った瞬間。もっとも、ネタとして仕込んでいたようですが(笑) あのー、そのタマの破片でスリップしてますけど……

トーナメントとリーグ戦の勝者が対決するスペシャルマッチ。ボディはOmniZero.5の方が遥かに大きいが、足裏はスーパーディガーの方が大きい スーパーディガーはOmniZero.5の足を攻撃して、2回ダウンを奪う。これに対してOmniZero.5は身長差が災いしてなかなか攻撃が当たらなかった ランブルは九共大ー疾風が取り、1回戦負けの憂さを晴らした

最後に最大のサプライズ

 スーパーディガーの完全優勝で幕を閉じた第22回ヒューマノイドカップ・バトル大会だったが、最大のサプライズは表彰式の後に待っていた。ROBO-ONE決勝トーナメント出場権を手にしたひろのっち氏が、「前にROBO-ONE出場権をもらったことがあるから」と出場権を辞退したのである。準優勝の湯前氏も同じ理由で辞退し、3位になったAutomo03のholypong氏がROBO-ONE決勝トーナメント出場権を獲得することになった(結果として3位決定戦が出場権を獲得する戦いになったのである)。

 3位で出場権獲得とはラッキーなようにも見える。しかし、スーパーディガーのパーフェクト達成を阻止したのは、Automo03だった(予選のスプリント1位はAutomo03)。またひろのっち氏が「もし、決勝の相手がAutomo03だったら優勝できていたかどうかわからない」と語ったように、Automo03の実力を認めていたからこその辞退だったのだろう(なお、湯前氏は試合前から「優勝しても出場権は他の人にゆずる」と明言していた)。

 ちなみに出場権を獲得したholypong氏は、翌日胃腸炎で病院に行き点滴を受けたそうで、その点では本当にラッキーだったのかもしれない。


優勝の副賞としてマノイPF-01がプレゼントされた 参加者による記念撮影 親子での記念撮影

URL
  ロボスクエア
  http://www.robosquare.org/

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( 大林憲司 )
2008/01/11 17:53

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