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「ROBO-ONE GP2007 in スパリゾートハワイアンズ」レポート


 2008年1月5日、福島県いわき市のスパリゾートハワイアンズ内「スプリングパーク」にて、二足歩行ロボット格闘大会『ROBO-ONE』の選抜トーナメント大会「ROBO-ONE GP」が開催された。


優秀な期待が選抜されたROBO-ONE、それが「GP」

 ROBO-ONE GP(グランプリ)とは、二足歩行ロボット格闘大会「ROBO-ONE」で実績を残した参加者が選抜され、招待選手として全国各地を転戦するトーナメント大会である。2007年度は、11月11日に千葉市科学館で第1戦「in 千葉」、12月9日に第2戦「in 東京ドームシティ ジオポリス」という2大会の上位入賞者が最終戦「in スパリゾートハワイアンズ」に集結し、雌雄を決する……という流れになった。


お正月のスパリゾートハワイアンズ。ダウンコートの人がゴムボートを運ぶ不思議な風景 場内の各所にはこういった掲示がされていた。ポスターに出ていたプティは不参加 スプリングパークを上から撮影。水着のままでロボットバトルを観戦できるのは、日本広しといえどもここだけでは

 最終戦に登場したのは以下の8機。

・クロムキッド(KUPAKUMA)……ROBO-ONEグランドチャンピオンシップ2007 ベスト8
・ivre(遊)……ROBO-ONEグランドチャンピオンシップ2007 3位
・ぺんと(なぐ)……ROBO-ONE GP2007 in 千葉3位
・キングカイザー(マルファミリー)……ROBO-ONEグランドチャンピオンシップ2007 優勝
・ダイナマイザー(スギウラファミリー)……第12回ROBO-ONE重量級 ベスト8
・グレートマジンガア(光子力研九所)……ROBO-ONE GP2007 IN 東京ドームシティ ジオポリス 4位
・メタリックファイター(森永英一郎)……ROBO-ONEグランドチャンピオンシップ2007 ベスト8
・アリウス(スミイファミリー)……ROBO-ONE GP2007 IN 東京ドームシティ ジオポリス 3位

 各参加ロボットには、本大会での優勝や他の大会での輝かしい戦績もあるのだが、ここではなるべく直近のROBO-ONEにおける代表的な成績を挙げた(古くからROBO-ONEに参加しているロボットは、名前が同じでも全く別の機体、ということがあるのだ)。このメンバーを見渡してみても、ROBO-ONE GPがある意味“ROBO-ONEのおいしいトコどり”なイベントということがわかってもらえるのではないだろうか。


得点関係無しにロボットをアピールするデモタイム

 この日はまずデモンストレーションからのスタート。ただし、本大会のような“予選”としてのデモというわけではない。今回のGPはもともと選抜されているメンバーゆえに“予選落ち”はないのである。

 そのため、デモの時間も「おおまかに2分」といったフレキシブルな設定になっている。規定演技もなく、実力派の参加者による一工夫を盛り込んだデモが見られるのは、本大会とはまた違った面白さだ。


【動画】クロムキッドが行なった第12回ROBO-ONEの規定演技「キャッチボール」 【動画】アリウスが行なったリンボーダンスのデモ「高い版」。会場がスパリゾートハワイアンズということで奥さんが考えたデモだという

【動画】同じくアリウスのリンボーダンス「低い版」。脚の運びが慎重になっている。これでバランスが取れるのがすごい 【動画】本大会と違って無線操縦が許されているので、グレートマジンガアのマスタースレーブも実演

さすがのバトルが繰り広げられたトーナメント

 バトルについては、基本的なルールがROBO-ONE本大会に準ずるものになっていたが、2準決勝以降は「3分を1ラウンドとして、3ラウンド制。ただし1ラウンドに3ダウンしたらその時点でKO負け」という、特別ルールが採用されていた。

 1回戦は「クロムキッド対ivre」「ぺんと対キングカイザー」「ダイナマイザー対グレートマジンガア」「メタリックファイター対アリウス」という組み合わせ。この1回戦で注目したのは、「ぺんと対キングカイザー」の一戦だ。というのも、もともと対戦相手がキングカイザーとわかっていたぺんとが「ニュータイプキャンセラー(長いので以下NCと表記)」というシステムを搭載してきたというのである。

 これにはちょっと説明が要るだろう。ROBO-ONEはロボットの格闘大会だが、ロボットの性能はもちろん、「操縦者のウデ」が結果に結びつく。そしてこの「ウデ」は単純な上手い下手だけではなく、反射神経の鋭さも関わってくるので、オトナよりも子供のほうが「ウデが立つ」ことも少なくない。そのため、ガンダム世代の多いROBO-ONE関係者の間では、操縦の上手いパイロットたちを“ニュータイプ”と呼ぶのである(ニュータイプの何たるかが良くわからない方は、ガンダム関係の書籍などをご参照ください)。

 キングカイザーの操縦者は12歳の健太くんで、第10回大会の優勝をはじめとする輝かしい戦績を誇る、まさに現在のニュータイプ筆頭とも言うべき存在だ。その反射神経に対応するため、ぺんとの操縦者なぐ氏はNCを搭載した……というわけである。ちなみにNCの正体は「自動防御+自動反撃」というシステム。攻撃を受けたことを感知して、倒れるのをこらえるロボットはコレまでも見られたが、さらに自動的に反撃するところまでを付加したのだ。すべてを操作するのではなく、一部を自動制御にするあたりは、より「ロボット」の“自律”的な部分に近づいたシステムといえるのではないだろうか。

 肝心の実線では、序盤うまく発動せず(ぺんとが棒立ちになっているのは、NCの発動をじっと待っていたかららしい)、33秒近辺に初めて反応。その後も何度か出たものの、NCによってダウンは奪えなかった。


【動画】片手をちょっと下げるようにして出したものがNC。ダウンを奪ったのは手動のなぎ払い 【動画】“不沈艦”ともいうべき強さを見せたダイナマイザー。グレートマジンガアのパイロット隼人くんは「当たっても倒れてくれない」と、お手上げ状態だった

 8機しか参加していないので、2回戦はすなわち準決勝となる。顔合わせは「キングカイザー対ivre」「ダイナマイザー対メタリックファイター」。ある意味“躍進組”の代表決定戦と“古豪組”の代表決定戦といった風情である。

 先ほど大型機(ぺんと)と戦っていたキングカイザーは、一気に身長の違う相手と戦うことになったが、小型機を相手にするためのモーションセット(それが用意してあるのだ)に入れ替えて挑む。ivreは有効打をもらわないトリッキーな動きで動き回るがいまいち安定せずに、スリップダウンの累積だけで2ダウン+1スリップまで追い込まれてしまう。最後は絡み合ったところでダウンを奪われ、ここで敗退。ivreの遊氏が「ダウンじゃない!」と抗議するも実らなかった。

 動画を見直してみると、確かにivreの防御姿勢(動画の一番最後にその姿勢が写っている)になっているだけだったようだ。もっとも、判定のあやも試合のうち。スリップダウンがかなり多かったこともあり、遊氏も試合の結果には納得していたようだ。

 一方のダイナマイザーはなんと1Rわずか44秒で3ダウンを奪い、あっさりと決勝行きを決めた。メンバー中最も重く(5kg)、18.5Vの電圧がかけられているサーボはパワーも高い。ダイナマイザーの試合運びがあまりに一方的で、周囲の観客からは「つえー」といった感嘆の声が漏れていた。このダイナマイザーに快進撃を続けてきたキングカイザーがどう挑むか、が注目される決勝戦となった。


【動画】キングカイザー対ivre 【動画】ダイナマイザー対メタリックファイター

 3位決定戦は乾坤一擲の一発を決めたメタリックファイターが勝利。昨年のGP最終戦以来の3位となった。ivreは最後までスリップダウンが多く、最後は肩のサーボモーターが壊れてしまったということで、無念の4位に終わった。

 決勝はキングカイザーのリーチの長いジャブがダイナマイザーの重さに跳ね返され、一方ダイナマイザーのパンチやなぎ払いも紙一重のところで見切られる……という流れで始まった。

 ダイナマイザーはほぼ真後ろに対してもなぎ払いを当てられるので、背中を向けた状態でも関係なく攻撃する。キングカイザーは常に相手に対して半身の姿勢をとるようにしているように見られる。

 試合が動いたのは開始48秒。背中の“ランドセル”をすくいあげる形でキングカイザーがダイナマイザーからダウンを奪う。続けて1分11秒には正面からダウンさせ、一気にリーチをかけた。ダイナマイザーは「倒されると思ってなかった(ダイナマイザーのパイロット・巧さん談)」油断もあったのか、明らかに動揺が見え、起き上がりの方向を間違えたり、モーションを二度入れたりとバタバタ。キングカイザー陣営はその動揺を見逃さず、試合再開後に3ダウン目を奪取し、チャンピオンを決めた。


3位決定戦、ivre対メタリックファイター 【動画】決勝戦、キングカイザー対ダイナマイザー

 優勝したキングカイザーの強さは、各対戦相手に対する対策をしっかりと講じていたところだろう。「ボクシングスタイル」「ジャブを打ってアウトボクシング」というところこそ同じだが、見た目でわかる「ジャブの高さ」に加えて「体重の乗せ方」も変更しているのだという。

 製作を担当する健太君の父・丸直樹さんは「ivreは軽いので、スリップダウンしないようにあまり体重を乗せていないんですが、ダイナマイザーはある程度危険を覚悟で体重を乗せています」と語っていた。ちなみにこの日用意していたモーションセットはも対戦相手と同数の7種類。文字通り「準備万端」だった。それでも「勝てると思わなかった」という丸氏だが、ダイナマイザーの巧さんが「負けると思わなかった」とつぶやいたことに触れ、「そこに隙があったんです」と教えてくれた。

 負けたダイナマイザーの製作者、杉浦富夫さんは「減量しないとだめだ」と一言。重いだけではスピードに欠けるし、ひざに負担がかかるということだ。そのあたりは人間の格闘にも通じるものがあるのかもしれない。

 結局すべての試合が1ラウンド3ダウンで決まってしまい、「3ラウンド勝負」という特別ルールが活きた場面は無かったものの、リードしている側が「このラウンドで決めたい」と追い込む場面があり、システムとしては面白そうだ。延長戦との違いは、不利になった側はうまく立ち回れば次のラウンドに出直しができるという点である。これまではリードする側は焦る必要はなく、むしろ不利な側がリスクを負って攻める必要があったが、このシステムがもし本大会に導入されれば、3分の試合時間の使い方が変わってくるかもしれない。


ニューイヤーバトル3本立て

 最初のデモンストレーションの合間には、山形県長井市から「東北代表特別ゲスト」として招待されたフラワー戦隊ナガレンジャーが、デモとエキシビジョンマッチを行なった(長井市については、本誌森山氏による2本のレポート1.2.が詳しい)。

 エキシビジョンマッチはGP選手を指名するバトル。ナガレグレー対アリキオン(この日はデモだけのために参加していた)、ナガレイエロー対MetallicFighter、ナガレブラック対グレートマジンガアの組み合わせになったが、3-0でGP選手たちの完勝。試合には負けたものの、2月2日に行なわれる「第3回ナガレンジャー・ファイティングフェスタ in 雪灯り回廊」の告知を行なって「目的の一つは果たした」と満足(?)していた。


【動画】デモで“そんなの関係ねぇ”を披露したナガレグレー。“オッパッピー”まで決めたのはこだわりか 【動画】ナガレンジャー最強との呼び声も高いナガレブラック対グレートマジンガア

地域活性化も含めて「できれば恒例化していきたい」

 最終戦が「in スパリゾートハワイアンズ」となったのは、昨年に続いて2度目。今回はいわき市にある福島工業高等専門学校の学生さんが製作した「じゃんがらロボット」がオープニングを飾っていた。「じゃんがら」というのはいわき市に伝わる伝統芸能の踊りで、それをカムを使ったからくりで再現したという。

 今回のROBO-ONE GPや福島高専の招待などを企画した社団法人いわき市観光物産協会の生駒能隆さんは「スパリゾートハワイアンズでのROBO-ONE GPはできれば恒例化していきたい。また、今回の福島高専のように、徐々にですが地域の産業や技術を集めたいわき市らしいイベントにしていければと思っている」とコメントしてくれた。

 当日は館内放送で開始時間前に何度かアナウンスが行なわれたり、スパリゾートハワイアンズにおけるお正月イベントの締めくくりとして地元TVでCMが流されるなど、イベントのサポート具合はかなりのもの。試合をやっているときにはお客さんがずらりと集まり、注目度も伺えた。

 ロボットを見るためだけに入るには入場料3,000円はちょっと高いが、冬でも水着で遊べる“ハワイ”付きとなれば話は別だろう。特に家族連れにとっては、ロボットだけで終わらない環境はありがたいはずだ。他にはない環境なので、ぜひ今後「お正月にはハワイアンズでロボット」が恒例化してくれることを祈りたい。


【動画】じゃんがらロボットの動き。音楽は本物の録音 じゃんがらロボットを解説するパネルその1 じゃんがらロボットを解説するパネルその2

じゃんがらロボットは、こういったミニサイズのものをおみやげ物にできたら、とも企画しているようだ 【動画】オープニングでフラダンスを披露したアリキオン。操縦者のアリキオンママもハワイアン風 ロボットの体験操縦も行なわれた。機体は彦根市民のマルファミリー製作による“ひこにゃんロボ(?)”

館内のイベント掲示板 お正月休みイベントが掲載されたポスター そして会場から20mも歩けば、そこはこんな光景が広がっている。キングカイザーのパイロット健太君は、GP前にひと泳ぎしていた

URL
  ROBO-ONE GP
  http://www.robo-one.com/gp/
  スパリゾートハワイアンズ
  http://www.hawaiians.co.jp/index.html

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「ROBO-ONE GP 2007 IN 東京ドームシティジオポリス」レポート(2007/12/12)


( 梓みきお )
2008/01/10 20:50

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