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【写真1】東野氏の「現代の名工」受賞を祝うパーティ。赤坂・日本自転車会館において催された
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11月26日、東京・赤坂の日本自転車会館において、からくり製作の第一人者である東野進氏が厚生労働省の「現代の名工」を受賞したことを祝い、記念パーティが催された【写真1】。
この賞は、伝統工芸や工業技術などの分野で卓越した技能をもつ名工に贈られるもの。東野氏は、ロボットの原点ともいうべき「からくり人形」の世界で、その鮮やかな修復技術や調整技術によって数々のからくりを再現。その功績が認められ、「現代の名工」受賞の運びとなった【写真2】。同氏は建具屋に生まれ、幼少のころから父親に木工技術を徹底的に叩き込まれたという。
そして、国内外に散らばった人形を、私財を投売りながら買取っては修復し、さらにそれらを博物館などに売って、また新しい人形を修復するという作業を繰り返すことで、すでに60体以上もの人形に命を吹き込んできた。2002年には「日本からくり研究会」を発足させ、理事として就任。世界に誇れる日本の伝統芸能を伝承すべく、後進の指導にもあたっている【写真3】。
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【写真2】パーティで展示・紹介されていた、からくり人形。東野氏は、すでに約60体もの人形に命を吹き込んできた
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【写真3】「日本からくり研究会」の若手メンバーの紹介。東野氏は、世界に誇れる日本の伝統芸能を伝承すべく、後進の指導にもあたっている
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東野氏は、江戸時代のからくり技術を利用し、高さ7.5cmの世界最小の茶運び人形などを製作・復元してきたが【写真4】、このパーティにおいて、今度は世界最大級となる茶運び人形の新作を発表した【写真5】。この作品は幅23cm×奥行40cm×高さ73cmほどのサイズ。江戸時代の技術をベースにしたゼンマイなどを採用し、からくり人形として動かせる最大限度の大きさにしたという。機構部の歯車は32枚の木片を組み合わせて作り、その直径は21cmにもなる。また、スズなどの合金で作ったゼンマイの長さも約7mとロングサイズだ。
また、この人形はサイズが大きいだけでなく、機構部についても工夫がなされている。茶運び人形は、お盆に置かれた茶碗を運び、客が茶碗を取ると元の位置まで自動的に戻ってくるメカニズムが仕込まれている。従来の人形は茶碗1つのみ運べるものだったが、これは4つの茶碗を同時に運べるほか、人形の移動速度も調整できるようになっている。江戸時代の天才技師、からくり儀右衛門こと田中久重のからくり考案図をもとに再現したそうだ【写真6】【写真7】。
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【写真4】東野氏が製作したからくり人形の一部。中央にある茶運び人形は最小サイズだ
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【写真5】こちらは今回の目玉。世界最大級となる茶運び人形。サイズが幅23cm×奥行40cm×高さ73cmほど
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【写真6】新作の茶運び人形、正面から。4つの茶碗を同時に運べるほか、人形の移動速度も調整できるようになっている
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【写真7】新作の茶運び人形、側面から。機構部の歯車は32枚の木片を組み合わせ、直径は21cmという大きさ。ゼンマイの長さも約7mとロングサイズ
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このほかにも、久重の最高傑作である「文字書き人形」のデモや、「連理返り人形」などの展示もあった【写真8】【写真9】。文字書き人形は、長らく海外に渡っていたものを東野氏が買取り、苦労の末に復元・再生したからくり人形だ。「松」「竹」「梅」「寿」の4種類の文字を筆で書くことができる。デモではその見事な達筆ぶりに大きな拍手が巻き起こった。
また、東野氏が所蔵している貴重な「根付からくり」も披露された【写真10】。こちらは日本に唯一現存している屋形船のからくり人形で、黒柿の貝の根付に収納できるようになっている。江戸時代と同時期の作品としても世界最小となる大きさで、幅1.3cm×高さ2cm×奥行5cmというミニチュアだ。
この種のからくり人形では、ロシアのロマノフ王朝のイースターエッグが最小とされていたが、それよりも2.5cmほど小さいという。駆動系にはゼンマイが利用されており、ゼンマイを巻いて動かすと、船に乗った小さな船頭が櫓(ろ)を漕ぎながら、船が前進していく【動画1】。これも東野氏の修復により蘇った傑作の1つだ。現代の名工、東野氏が血心を注いで再生したからくり人形たちは、時代を超えて伝統技術の素晴らしさを再認識させてくれるものばかりだ。
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【写真8】久重の最高傑作である「文字書き人形」のデモ。「松」「竹」「梅」「寿」の4種類の文字を筆で書くことができる
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【写真9】「連理返り人形」のデモ。動力源に水銀を利用したからくりで、2組の唐子人形が曲芸のように階段を下りてくる
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【写真10】東野氏が所蔵している貴重な「根付からくり」。日本に唯一現存している船漕ぎのからくり人形だ
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【動画1】船に乗った小さな船頭が櫓(ろ)を漕いでいる様がわかる。船頭は8mmという極小サイズだ
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■URL
日本からくり研究会
http://www.nippon-karakuri.com/
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( 井上猛雄 )
2007/12/27 22:16
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