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姫路ロボ・チャレンジ第5回大会「冬の陣」レポート
~子ども達の大声援の中、二足歩行ロボット達が熱戦


 12月22日~23日、兵庫県姫路市の姫路科学館において、二足歩行ロボット競技会「姫路ロボ・チャレンジ第5回大会“冬の陣”」が開催された。主催は姫路ロボ・チャレンジ実行委員会、姫路科学館。2日間で1,500人の親子連れが来場した。

 姫路ロボ・チャレンジはロボット競技会を通じて、地域の子ども達に先端技術に触れる機会と、子ども達が年齢に応じたロボット競技に自ら参加する場を提供することを目的としている。第5回大会を迎え、大会のファンも確実に増えている。当日は、多くの親子連れが早くから開場待ちをしていた。

 競技は、初心者向けのエントリークラスと、第13回ROBO-ONE決勝出場権認定大会のスタンダートクラスに分かれて行なわれた。エントリークラスに17体、スタンダートクラスは19体が出場した。

 本稿では、スタンダートクラスのレポートをする。


ロボットの性能アピールする「デモンストレーション」

 最初は、持ち時間2分間のデモンストレーションを行なった。このデモンストレーションと次の「さがしてポン」で観客にロボットの性能をアピールし、優勝予想投票をしてもらう。その投票数もポイントに加算され、総合優勝に影響する。

 「さがしてポン」が自律競技のため、参加ロボットは自律機能を搭載している。デモンストレーションも自律をアピールするものが多かった。面白かったロボットを動画で紹介しよう。


【動画】シンプルファイター(製作者:zeno氏)。ロボットが自律で的を見つけて、左手の発射システムで射的するデモンストレーション シンプルファイターの3連式発射システム。スペーサーが弾になっている 【動画】ケルビム(製作:ロボットフォース/岩機氏)は、車両モードにトランスフォームする。改良を重ねて、車両形態は毎回カッコよくなっている

【動画】プログレス(製作者:羽柴タカユキ氏)は自己防衛機能があり、目の前に敵が現れると自律でパンチを繰り出す。羽柴氏は高校1年生。姫路ロボチャレンジの常連だ 【動画】Gogic Soul(製作者:ムイムイ氏)はダチョウ型二足歩行ロボット。変形してムシ型になるとシャクトリ虫のような移動をする。目につけたセンサーで対象物を見つけ攻撃をする

自律競技の「さがしてポン」

 「さがしてポン」は、ロボットが自律でステージ上のボールを見つけて落とす競技だ。ボールの位置は、競技開始時に出場者がサイコロを振って決める。全てのボールを落とすタイムを競い、上位3名がそれぞれ1位5点、2位4点、3位3点を獲得する。ボールを落とすと大1点、中2点、小3点がボーナス得点になる。制限時間は3分間。ロボットがリングから落ちた時点で、競技は終了となる。

 この競技では、「ボールを発見する」「ボールを落とす」「リング端を検知してロボットが落ちないように回避する」「ロボットが転んだときに起き上がる」といった機能を全て自律で行なう必要がある。全国各地でROBO-ONE認定大会が開催されているが、参加種目に自律競技がある大会は姫路ロボチャレンジの他にはない。

 「さがしてポン」は、7月の“夏の陣”から始まった競技だ。前回は課題をクリアしたロボットがいなかった。前大会から5カ月の間にロボットがどのように進化したのかが、今回の見所となった。

 競技結果は、レグホーンとケルビムの2体が見事に競技を成功した。

 レグホーンは、右手の中指を挟んで2つのPSDセンサを取りつけた。レグホーンが旋回して、手の甲側のセンサでボールを見つけると、手のひらチョップでボールを攻撃する。攻撃後に立ち上がり、まだ障害物があると攻撃を繰り返す。

 前回は、旋回でボールを検出する時に、ボールが遠くにあって見つけられない場合の処理を組み込んでいなかった。そのため、ロボットがボールを探していつまでも旋回を続けていた。今回は、ボールを発見できない場合は、リング際まで移動する処理を追加した。

 リングのエッジを検出する時は、右手を水平に上げて手のひらのセンサを使いながら歩行している。リングの端に達すると、反対方向に横移動する。リング中央あたりに来ると、手を下ろしてボール検出のために旋回する。これにより、旋回するポジションを変えることができ、3つのボールを見つけることができるようになった。

 ケルビムは右手の甲にPSDセンサを1つ搭載した。右手を体の中央から右側に振って、斜め前方下をセンシングしながら、リングの円周に沿って歩行した。歩行中にボールを見つけると、両手でボール落とす。

 PSDは80cm位の範囲をセンシングできるが、遠くまでチェックしようとするとノイズが多いため、近くの情報だけを取得して確実にデータ処理をしたという。

 前回は、センサでチェックして反応があるとすぐにモーションを実行していた。だが、それではセンサの誤動作を感知できないことがわかったため、今回は同じ位置で10回センシングしているという。センサが値を得たら、もう10回チェックして、確実なデータを取得したことを確認してからロボットを動かしている。

 岩機氏は、ボールを落とすために、両手を広げてゆっくりと叩く専用モーションを作った。リング際で激しい動きをすると、反動でロボットが落ちる可能性を考慮しているためだという。


【動画】レグホーン(製作者:NAKAYAN氏)が3つのボールを落として競技をクリアした 【動画】ケルビム(製作者:ロボットフォース/岩機氏)は、前大会に比べて、センサデータの扱い方が上手くなったという

 競技をクリアできたのは上記の2体だったが、ボールを落としたロボットは全部で9体いた。前回は7体のロボットが8個、今回は、9体が計14個のボールを落とした。参加者が自律競技に挑戦する中で、レベルアップしているのが分かる。

 シンプルファイター(製作者:zeno氏)は、確実にボールを見つけて小1個を落とした。次に大ボールも発見しキックしたのだが、ボールが重くて落ちなかった。残り時間の1分40秒間、何度もキックを続けたのだが、残念ながら落とせなかった。

 昼休みにテストをすると、大ボールも近くでキックすれば確実に落とすことができた。競技の様子を見た限り、これを落としていればトップを狙える成績で競技をクリアできただろうと思う。

 実は、zeno氏は自宅で競技をテストするために小・中のボールを購入したが、大は3,000円と高かったので買うのを止めてしまったという。zeno氏は「それが敗因でした」と悔しそうだった。

 YOGOROZA(製作者:ダウト氏)は、パンチでボールを落とす時に、ロボットがリングから落下してしまった。移動中はリング際を検知できていたのだが、バトル用攻撃モーションの動きが大きいため、バランスを崩したのが原因だ。このような競技に参加する時は、派手な動きは止めて最小限のモーションにした方が安全だろう。


【動画】シンプルファイター(製作者:zeno氏)のチャレンジ。センシングと移動はスムースに行なっていた。大ボールは予想以上に重かったようだ 【動画】YOGOROZA(製作者:ダウト氏)のチャレンジ。ボールを落とす時に、自分もリングから落ちてしまった

安定した歩行スピードを競う「ロボカーナ」

【動画】ロボカーナで優勝タイムを出したYOGOROZA(製作:ダウト氏)。記録は23秒40
 「ロボカーナ」はロボットが5mのコースを走るタイムを競う。コースには直線、クランク、U字カーブがある。前進、後進、横歩きはOKだが、前転や側転での移動は禁止されている。

 他の競技はリングで行なわれるが、ロボカーナのコースはカーペットだ。すり足歩行のロボットはカーペットに足が引っかかるし、重量級のロボットは足が沈んでしまう。移動スピードとともに、環境に左右されない安定歩行が求められる。

 「ロボカーナ」はYOGOROZA(製作者:ダウト氏)が23秒40で優勝した。


子ども達の声援で盛り上がる「ロボットバトルゲーム」

 トーナメントの組み合わせは、これまでの競技成績で決定する。バトルは3分間1本勝負の6ポイント制。ロボットの規格やルールに若干の違いがあるが、おおむねROBO-ONEルールに則している。

 今大会では、レグホーンが子ども達に大人気だった。トーナメント開始前には、子ども達からNAKAYAN氏に「絶対、優勝してやー!!」と激励があったという。いざトーナメントが始まると一回戦からずっとレグホーンコールが飛んでいた。

 子ども達の期待通り、レグホーンが勝ち上がり、決勝戦はYOGOROZAとの対戦になった。試合はレグホーンがYOGOROZAをリング際に追い詰め、何度も体重が乗った突きを繰り出してYOGOROZAをリングアウトさせた。


【動画】決勝戦、YOGOROZA VS レグホーン。子ども達の声援が熱い! 子ども達は、口々に「鶏の形がいい」「しゃべりが面白い」「強いから」とレグホーンの魅力を語った

 レグホーンは、「バトルが大好き」というNAKAYAN氏が、勝負に勝つことに拘って製作している。この1年でぐんぐん戦闘能力をアップしたロボットだ。今年は、全国各地の大会に参加したので、認知度も高い。NAKAYAN氏は、最近、まだ対戦したことがないロボット仲間からも「極悪な戦い方だな~」と言われることが増えたいう。

 今大会、「人気投票」「さがしてポン」「バトルゲーム」の3種目を制して総合優勝したNAKAYAN氏は「子ども達にこんなに喜んでもらえて嬉しい。自分が考えた“強くて面白いロボット”を作ってきてよかった」と喜びを語った。

 コメンテーターの岩気氏は、大会を振り返って「レグホーンの人気で大会全体が盛り上がった。参加者は、自分の趣味でロボットを作っているが、こうやって声援をもらうと励みになる。これからは子ども達が応援してくれるロボットを作ろうとモチベーションが上がるのではないか」と語った。


総合優勝して、姫路市長賞と第13回ROBO-ONE決勝出場認定権を手にしたNAYAKAN氏 姫路ロボチャレンジ第5回大会「冬の陣」参加者達 表彰式までの時間に、子ども達がロボットを体験操縦するふれあいタイム

URL
  姫路ロボ・チャレンジ
  http://www.city.himeji.hyogo.jp/atom/robo/robo_challenge/index.html
  姫路科学館
  http://www.city.himeji.hyogo.jp/atom/

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「姫路ロボ・チャレンジ 第4回大会」レポート
~Dr.GIY氏が総合優勝(2007/07/20)



( 三月兎 )
2007/12/27 22:16

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