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日立製作所の変形ロボット「EMIEW 2」を見てきました


日立製作所「EMIEW 2」
 12月19日、本誌は日立製作所が11月21日に発表した対話型ロボット「EMIEW 2(エミュー・ツー)」のデモを、勝田にある同社機械研究所にて見学させてもらった。

 EMIEW 2は、身長80cm、体重13kgの小型2足歩行ヒューマノイドロボット。外形寸法は幅30cm、奥行き25cm、高さ80cm。バッテリはリチウムイオン電池で、動作時間は約1時間。自由度は27で、足の先端は車輪となっている。

 基本的な移動機構は倒立2輪で、最高時速6kmで移動できる。脚部は先端のスタンドを出すことで普通の脚として使うこともできる。また、膝頭部分に受動的な車輪を持ち、膝をついたような姿勢を取ることで四輪移動のロボットとなることもできる。変形する脚車輪型移動機構を持つことが大きな特徴だ。脚部を使って、3cmまでの段差を乗りこえられるようになり、座った姿勢のまま、4輪移動で物を運んだりできる。

 「EMIEW 2」は、オフィスビルなどの環境での利用をめざして小型化された。13kgという重量は成人女性の平均可搬重量基準である15kgを下回るものとして設定され、いっぽう身長は、頭部に搭載された2眼のカメラを使って物体認識を行なうことを想定、大抵の机の高さである65cm~75cmよりも高くなる80cmと設定された。

 「EMIEW 2」は、2005年3月に発表され万博でデモされた倒立二輪移動機構を使ったロボット「EMIEW」をさらに発展させた機能を持っている。頭部に搭載された14チャンネルのマイクアレイによる認識分解能5度で3Dの音源分離・音声認識能力などの音声コミュニケーション技術や、筑波大学との共同研究の成果である複数障害物の間を縫って移動できる障害物回避技術に加え、2006年3月に別のロボットに搭載した形で発表された、レーザレンジセンサーを使って自分で再現精度5cmの地図を作成し、人込みを縫って目的地に向かう自律移動機能を搭載している。

 これによって、オフィスの通路や机の配置に応じて自分で経路を見つけ、行きかう人の間を縫って訪問者を目的地に案内したり、飲み物や書類を届けることが可能になるという。なおレーザーレンジセンサーは首部分に搭載されている。


全身。身長は80cm 側面。電源は入っていないが自立できる 背面。腰部分はバッテリ

2つのカメラを持つ頭部ヘルメット部 上面から。ブツブツはマイク 頭部側面。自転車用ヘルメットや車をイメージしてデザインされている

首位置に置かれたレーザーレンジセンサー ハンド スタンドを立てた状態の脚部。4輪状態では膝の白い球体が前輪になる

正座したような状態の4輪移動形態 後面 側面から

身長は頭部先端のカメラ位置がテーブルより高くなる80cmに設定 テーブルより高くなっているのはテーブル上の物体を見るため 胸のメタリック状の箇所はパネル振動タイプのスピーカになっている

【動画】EMIEW 2の挨拶と4輪への変形 【動画】4輪での移動

日立製作所機械研究所 都市・ロボティクスプロジェクトの中村亮介氏と網野梓氏(右)
 日立では、「EMIEW 2」において人と対話しながら人をサポートするサービスロボットの実現に向けた研究が、さらに前進したと言えるとしている。「EMIEW 2」は日立社内でのさまざまな技術を搭載する研究開発用のプラットフォームロボットとして開発された。EMIEW2を「他のロボット開発で生まれた技術を活用する横串としていきたい」と、開発にあたった一人である同社機械研究所 都市・ロボティクスプロジェクトの中村亮介氏は語る。

 同社では「近未来マーケットの拡大」をサービスロボットの目標の1つとして開発に取り組んでいる。人間共生ロボットが人と密接した場で活躍するためには、移動能力、安全性の確保、そしてコミュニケーションの3つが重要だと考え、その1つの解答が「EMIEW」で開発した二輪による時速6kmの高速移動動作の継承と、停止時や作業時における安定性が高い四輪姿勢への変形移動機構だったという。そこで、軽くて速いロボットを作ることを目指した。

 いくつかの処理は外部で行なうリモートブレイン方式を採用している。障害物回避機能はロボット内部で行なっているが、それほどリアルタイム性が要求されない音声認識や自己位置認識はリモートブレインだ。

 脚部の機構やハードウェアは同研究所の網野梓氏らが担当した。駆動機構は車輪の外にあり、力はベルトで伝達されている。4輪移動する上で腕を使わなかった理由は、やはり人型をあまり崩したくなかったことと、移動に関してはできるだけ足だけで完結させたかったからだという。

 なお手はグリッパーになっており、いまのところ、缶コーヒー程度のものならば持つことはできるそうだ。しかしながら主として開発のターゲットは移動機構にあり、今後、例えば書類運びをやらせるロボットを作るとすれば、書類運び専用の腕を持たせるべきだと考えていると中村氏は語る。

 今回、脚車輪という方式を取った理由は、「人が行けるところには全部行きたい」と考えたことだったという。2足歩行は突き詰めることができればロバスト性が高いがエネルギーを使うし、車輪は機械として見るとやはり素晴らしい特質を持っている。しかしながら倒立2輪のままでは電源が落ちると倒れてしまうし、段差を乗り越えたり溝を越えることは難しい。だからスタンドを付け、さらに足を生やした、という経緯だったそうだ。

 万博やイベントでのデモに用いられた「EMIEW」に対し、「EMIEW 2」は主に日立社内での研究プラットフォームとして活用される予定で、オフィスを訪問した顧客の案内や巡回監視など、具体的なサービス実現に向けた技術開発を進めていくという。特に移動することそのものの可能性をもっと探り、都市インフラやビルインフラと組み合わせたアプリケーションを探索していくという。


日立のロボット研究開発のビジョン EMIEW 2の特徴 ハードウェア

一部の処理はリモートブレイン方式 日立の考えるロボット展開分野

URL
  日立製作所
  http://www.hitachi.co.jp/
  ニュースリリース
  http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2007/11/1121.html

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( 森山和道 )
2007/12/20 02:28

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