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「ROBO Link Forum 2007」レポート
~iRobot会長ヘレン・グレイナー氏も講演


 11月30日、「2007国際ロボット展」にて「ROBO Link Forum 2007 ~サービスロボットビジネスフォーラム」が開催された。主催は日本貿易振興機構(ジェトロ)、共催は日本ロボット工業会、ロボットビジネス推進協議会、日刊工業新聞社、後援は経済産業省。

 はじめに日本貿易振興機構副理事長の伊沢正氏が「ロボット分野は日本の戦略分野のひとつ。これからはそれぞれの強みを持った企業による国境を超えた連携が必要。グローバルなビジネスマッチングの機会を作れれば」と開会の言葉を述べた。

 経済産業省製造産業局次長の内山俊一氏は日本の製造分野でのロボット産業の強みについてふれ「ロボット産業は日本の国際競争力の維持に大きく貢献してきた」と語った。いっぽう、少子高齢化、人口減少社会の背景のなかで、自動車や電気電子以外の分野でのロボットのニーズが高まっている。ロボットは統合システムであり、新たな用途拡大は関連産業にも大きな波及効果をもたらしうる。経済産業省としても総合的にロボットビジネスへの取り組みを推進していくと述べた。


日本貿易振興機構副理事長 伊沢正氏 経済産業省製造産業局次長 内山俊一氏

基調講演「ロボット産業と世界的なR&D活動」

レンセラー工科大学アーサー・サンダーソン教授
 基調講演は「ロボット産業と世界的なR&D活動」と題してレンセラー工科大学(Rensselaer Polytechnic Institute)教授のアーサー・サンダーソン(Arthur Sanderson)氏が行なった。サンダーソン氏は1996年、日本の筑波大学システム情報工学科知能ロボット研究室にサバティカルで在籍していたことがある。

 サンダーソン氏は、ロボットの基本的研究テーマは環境情報をセンシングしながら移動する「モビリティ」、人間とインタラクションする「ヒューマノイド」、ロボット同士あるいは環境に埋め込まれたセンサー群との連携を考える「ネットワーク」の3つの関連研究に大別できると語った。そしてこの3つを組み合わせることで、アプリケーションとしては介護や受付そのほか個人的サービス、手術ロボットやマイクロマシンなどの医療・バイオ分野、屋外ロボットに大別できるものが生まれるとし、各分野のロボットを紹介しつつ概略を述べた。

 「ロボットの基礎研究はグローバルに行なわれるもの。地域によってそれぞれ違う強みがあるため、各地域が協力していくことが重要。またロボットの研究は基礎も応用も広い分野に広がっており、新しい産業、マーケットで、グローバルな協力が必要」だとし、今後はロボット同士のネットワークやセンサーフュージョンが重要になると強調して「未来について革新的かつ積極的に考えてもらいたい」と聴衆に呼びかけた。


日米欧それぞれのサービスロボット市場化について

ロボットビジネス推進協議会幹事 石黒周氏
 第2部は日米欧の代表によるサービスロボット市場化への取り組みについて講演が行なわれた。共通テーマは1) なぜビジネスがうまくいったのか、2) 今後はどのような方向に進んでいくのか、3) それぞれの立場から見た市場化の課題と解決への提案。進行役はロボットビジネス推進協議会幹事の石黒周氏。

 石黒氏は最初に「現在、多くの人がサービスロボット市場は思ったほど立ち上がっていかないな、と感じているのではないか。このパネルでヒントを見つけてもらえれば」と述べた。

 石黒氏が講演者に出した共通の質問は以下の4つ。

 1) 新たに現出しようとしている次世代ロボット産業(非産業用ロボット)が従来の産業(主にハードウェアを開発・生産・販売する産業)と異なる特徴的な点はどこか?
 2) これから5年間あるいは10年間に、次世代ロボットという製品に対して最も鍵となる技術はどのような技術か?
 3) どのような開発プロセスによって、あるいはどのような外部との連携によって次世代ロボットの製品コンセプトを生み出したり、あるいは製品の持つべき機能やそのスペックを設定しているか?
 4) 次世代ロボットの普及促進に最も障害となっていることは何か?

 石黒氏は、どういうビジネス形態でロボットビジネスが立ち上がるのかが重要だとし、ロボット事業を以下の4つに分類して示した。

 1) RTを組み込んだ製品開発・販売事業
 2) RTシステムインテグレーション事業
 3) RTサービス事業
 4) 周辺製品・サービス事業

 多くのプレイヤーは1) を手がけているが、現状の技術では他のサービスと組み合わせたり、あるいはサービスの一環としてロボット技術を提供することでサービスの競争力を上げるといったことが重要なのではないかと強調した。

 続けて日本、米国、欧州から3人が講演した。


石黒周氏による次世代ロボットビジネスの分類 ロボットビジネスのためにはネットワークジェネレータが必要だという

ロボットビジネス推進協議会会長、富士重工業株式会社取締役相談役・竹中恭二氏
 ロボットビジネス推進協議会会長、富士重工業株式会社取締役相談役・竹中恭二氏は「サービスロボットビジネス創造に向けた鍵」と題して富士重工業の掃除ロボット事業について主に述べた。

 竹中氏が子供だった時代は、ロボットは「鉄腕アトム」や「鉄人28号」に代表されるように少年漫画の夢の世界だったという。いっぽう、実業の世界では多関節ロボットが登場したあと、自動車業界がそれに生産工程に導入、ロボットの使用範囲が広がった。産業用ロボットの4割は日本国内で稼動しており、昨年の出荷額は7,350億円を超えている。

 産業用ロボットは製造作業に的を絞って、そのための機能を向上させてきた。ところが民生用開発アプローチは狙いが違った。ロボットが何をするかの機能探求ではなく、何を作るかということが研究テーマになった、という。

 1970年代から早稲田大学でヒューマノイド研究が始まり、'90年代終わりにはホンダがヒューマノイド「P2」や「P3」を発表するにいたった。ソニーの「AIBO」も人気を博した。またiRobot社の「Roomba」が発売され、世界中でヒットした。2005年の愛知万博(愛・地球博)では多くのロボットが並び「すぐロボット時代が来るようなバラ色のイメージをふりまきすぎた」(竹中氏)。

 しかしながら現在のサービスロボット市場は40億円レベルでしかなく、産業用ロボット市場には遠く及ばない。教育やホビー用途のロボットが人気を呼んでいるのも事実だが、どれだけ本格的な産業にサービスロボットを育てるかは課題のままだ。

 経済産業省では本格普及は2010年ごろとしてロードマップを作っており、現在は「プレ普及段階」と位置づけられている。少子高齢化を背景としてロボットを生活空間のなかで実際に役立つものとしたいという狙いは国の戦略でもある。新・経済成長戦略「21世紀ロボットチャレンジプログラム」は、次世代ロボット共通基盤開発プロジェクト、人間支援型ロボット実用化プロジェクト、戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト、サービスロボット市場創出支援事業、次世代ロボット知能化技術開発プロジェクトからなっている。ロボットが変化する環境の中で連続に稼動するための技術を産官学で進めていこうとするものだ。このように期待とニーズは高い。


 しかしながらサービスロボット実用例は期待に反して非常に少ない。そのなかで成功している例の一つが富士重工業の自立型清掃ロボットである。深夜に電気を消したビルのなかで自分でエレベータを使って各フロアを清掃できるロボットだ。昨年の「今年のロボット大賞」を受賞した。ロボット技術だけではなく、ロボットを使ったビジネスモデルが受賞したのだと竹中氏は強調した。

 成功の鍵は3つあるという。1つ目は用途を絞り、特化し、信頼性と安全性の高いロボットにしたこと。2つ目はロボットの技術と清掃技術の両方を同じ技術チームが共有していたため、人間よりも安く効率よく清掃できる技術を確立したこと。3つ目は現場の実際のユーザー(ビルメンテナンス会社)が、初期開発から参画して共同して新たなビジネスシステムを作り出したこと。これらによって、ユーザーも開発も利益を上げられるビジネスモデルとなった。「当たり前のことを徹底的にやってつめてきたこと」が成功の鍵だという。

 竹中氏は「将来はヒューマノイドの時代が来るだろう。しかしながら少子高齢化は未来ではなく既に喫緊の課題。形にとらわれず、人に任せるべきところは人に任せて、ロボットが担えることをロボットが担うという考え方が重要だ。そうして事業性を確保することがサービスロボット成功の鍵だ」と述べた。

 重要なことは研究室ではなく使用現場にあることを研究者は肝に銘じるべきだし、ユーザー側もロボットに過度な期待をしてはいけない、という。シーズではなく、ニーズを見つけ、それをどのように置き換えればいいのか。それを考えることが重要だと、竹中氏は何度も強調した。

 また、ロボット環境の共通規格化や安全問題の共通化、リスク対応体制づくりなどを行なっているロボットビジネス推進協議会の活動についてもふれ、産業用ロボット登場のときに自動車業界が果たしたような、サービスロボットの技術向上と普及を促すようなサービスプロバイダーの登場に期待していると述べた。

 最後に「期待だけが先行しているサービスロボットだが、いまロボット関係者に求められているのは究極のロボットの姿ではなく、個々のRTを活用した新たなサービスの創出だ。使う側と一体となって新たな価値を生み出すために、技術者は現場に降りるべきだ」と訴えた。


経済産業省によるロードマップ 富士重工業の清掃ロボット 成功の鍵は現場

iRobot Corp.共同設立者兼会長 ヘレン・グレイナー氏
 iRobot Corp.共同設立者兼会長のヘレン・グレイナー(Helen Greiner)氏は「iRobot:実用ロボット分野のグローバルリーダー」と題して同社事業の成長過程をユーモアと情熱を交えて語った。

 iRobot社には今400人の社員がおり、同社のロボット「Packbot」は軍隊も使っていることで知られる。ロボットのアプリケーションは増えるばかりだという。しかしながら最初から順風満帆だったわけではなく、最初は資金もなかなか集まらなかったという。しかしながら、ロボット事業ならではの特徴として「なにか面白そうだな」と周囲から思われ、注目は集め続けていた。

 現在、同社はもっぱら実用システムに焦点をあてている。だがこれも昔からそうだったわけではない。さまざまなロボットを作っていたが、何かが欠けていた、とグレイナー氏は振り返った。それは「ロボットを設計する前にユーザーと話をすること」だったという。「何でも作れると思っていたけれど、ロボットを購入する人の立場になっていなかった」。

 現在、2002年に発表された掃除ロボットの「Roomba」は250万台以上、軍事用のPackbotは1,000台程度出荷されているという。Packbotは「ロボットが死んでも親に手紙を出さなくてもいい」と言われるいっぽう、名前をつけられてかわいがられているロボットもあるそうだ。Packbotは「ミッションの効果を上げ、死傷者を減らすもの」であり、バラバラになって戻ってくることもあるが「誇りを持っている」と語った。


 また、「Roomba」にはコミュニティもあり、改造して楽しんだりするユーザーのコミュニティもある。氏は、いくつかユニークな改造例を示した。ジョージア工科大学の研究によればユーザーのうち2/3がRoombaに名前をつけて、パーソナル化しているという。Roomba用の洋服まで販売されているそうで、「Youtubeで検索すれば多くのユーザーがRoombaの動画をアップしていることが分かる。普通の家電、たとえば電子レンジに名前をつけたりしないでしょう。Roombaは単なる機械ではありません。家で使うだけで繋がりができる不思議なものです」と述べた。

 今後、同社ではロボットをどんどん家庭に導入し、全部実用化していく予定だという。グレイナー氏は「まだ終わりではない、これからたくさんのロボットを作っていく」と語り、「Roomba」以外の商品についてもアピールを行なった。

 グレイナー氏は「何をしなかったか」についても述べた。こうだ。高く、「これしかない」というロボットは作らない。技術のための技術開発はしない。

 あくまで、「お客が単に欲しがるだけではなく、喜んでお金を払ってくれるものを作ろうとしている」という。

 「ロボット分野ではいま素晴らしいことが進んでいる。私のようにロボットに対して情熱を持ってほしい」と述べた。


iRobotの売上とプロダクトの関係 家庭内にもっといろいろなロボットを普及させていくという iRobotの現在のホームロボット・ラインナップ

壊れたPacbot 改造されたRoombaの例 iRobotの「イノベーションエンジン」

休憩時間にも参加者からの直接質問が多く寄せられた Roomba最新バージョン。日本出荷版は日本語音声で喋る 【動画】講演会場を掃除するRoomba

生産工学自動化研究所ロボットシステム部門代表 マーティン・ヘーゲル氏
 フラウンフォーファー生産工学自動化研究所ロボットシステム部門代表のマーティン・ヘーゲル(Martin Hagele)氏は「欧州におけるサービスロボット市場、研究開発、ネットワーク」と題して「各家庭にロボット」時代が来るのか、いまの市場はどのくらいなのか、プロユース、個人ユースのロボットといったことを講演した。同社は産業用ロボットのいろいろな使われ方について研究を行なっており、特に当初は、ロボット以外の代替がないと思われる分野での研究を行なってきたが、'90年代初頭からは清掃など、家庭用でのロボット設計が始まってきたという。

 産業用ロボットの世界では人間を認識し、人間のリクエストを理解できるロボット、安全なロボット、すぐに使えるロボットがイノベーションを起こしてきた。サービスロボットにおいては、プロ用とそれ以外に分けて考えることが重要だという。プロ用のロボットとは何か特別な目的のために設計された専用ロボットのことである。いろいろな機械がさまざまなサービスセクターで用いられる。いっぽう個人用ロボットはニーズだけではなくコスト面も重要になる。

 現在、世界では200社くらいがサービスロボットを提供しているという。産業用ロボットの会社や、ロボット技術コンポーネントを提供している会社がその内訳で、ロボット関連の半分くらいは新興企業が占めており、大手企業はマルチメディア型の商品を展開しているという。

 今後もロボットの市場は広がると考えられている。これまでは特定目的特化型のロボットだったが、やがてはジェネラリスト型ロボットが生まれるだろうという。ロボットの各機能をモジュール化にしておけば、できるタスクも増える。今後は家庭内もセンサーによってインテリジェント化されていくと考えられる。


 また、サービスロボットも「使いたいと思うようなもの」であることが必要だと述べ、美しくデザインされたバトラーロボットの案を示した。ロボットは頼れるものだという認識を持たせるようなものでなければならないという。家庭に入れるのであればコストも重要な問題だ。車輪型モビリティは低コストで提供可能だが、アームはそうもいかない。ヘーゲル氏は、アームやグリッパーの構成を、まったく違う概念から考えなおさなければならないと問題提起した。

 ヘーゲル氏は、ヨーロッパのなかでも「ROBOTICS」や「EUROP」とう団体があり、ロボット関連の産業振興を行なっており、また「SEVENTH FRAMEWORK PROGRAMME」では課題の洗い出しを行なっていると団体の活動を紹介した。

 最後に講演のまとめとして「プロ用のサービスロボットは具体的要求を満たすことができれば可能性がある。産業用ロボット業界ではコンポーネントが共有されるようになる。家庭用アプリケーションは楽しく使いたいものにすることが重要で、サービスロボット市場は今後3年、成長していくと見ている。どんなユーザーにも使われるものができれば「家庭に1台ロボット」という時代も来るだろう」と述べた。


バトラーロボットのデザイン例 同じくデザイン例 3つのヨーロッパのロボット関連団体

4つの問いに応える講演者達
 3人の講演のあと、上述の石黒氏からの4つの質問がもう一度投げかけられ、3人がそれぞれ答えた。問いと答えは以下のとおり。


(1) 新たに現出しようとしている次世代ロボット産業(非産業用ロボット)が従来の産業(主にハードウェアを開発・生産・販売する産業)と異なる特徴的な点はどこか?

【竹中氏】サービスロボット産業はハードのバリエーションが増えていく側面がある。その上にアプリケーションがついていく。そういう市場構造が考えられる。パソコンのような形だ。ベースとなるハードウェアがあって、その上にアプリケーションが載るような形になってビジネスが生まれるのではないか。

【グレイナー氏】機械、生産システム、電気システム、いろいろなものが統合されていくイメージだ。ロボットは、初めてこれらを一緒にするプロダクト。時間はかかるが、いまでは複数のプラットフォームで使えるソフトウェアもいろいろ出てきている。

【ヘーゲル氏】自動化するためにはセンサーが必要。しかしながらセンサーのサプライヤーはあまり数がない。ロボットのためにアプリケーションを作ろうとするサプライヤーがまだ少ない。ロボットのサプライヤー業界ができるには時間がかかるだろう。ある意味では大きな商品チャンスがあるということだ。


(2) これから5年間あるいは10年間に、次世代ロボットという製品に対して最も鍵となる技術はどのような技術か?

【竹中氏】ロボットを研究する上流と、ユーザーがいる下流を考えると、お互いがまだ理解しあっていない。そこをつなぐコーディネーター的ビジネスが必要。ユーザーと研究者がぐるっと回るコミュニケーションが必要だろう。

【グレイナー氏】知覚技術。企業や大学では何年間も研究が行なわれてきたが、開示されてない。

【ヘーゲル氏】メカトロの側面からいうと、モビリティだ。車輪モビリティはモーターとセンサーがついているだけで安い。ところがマニピュレーションは高く、多くの人はコストを受け入れられない。家庭用プロ用ともに異なる技術上の観点が必要なのではないか。


(3) どのような開発プロセスによって、あるいはどのような外部との連携によって次世代ロボットの製品コンセプトを生み出したり、あるいは製品の持つべき機能やそのスペックを設定しているか?

【竹中氏】スペック、プライスを含めてそれを決定付けるのはユーザー。価格を決めるのはユーザーだ。いま私が考えているのは介護とロボット技術をどう結びつけるかということ。介護現場で必要なのは、お茶を持っていくことではない。現場では40人を3人の介護士が面倒見ている。労働現場はものすごく過酷だ。そのなかで一番必要なのは被介護者に対するコミュニケーション。いわば愛が必要。それは人間がすることが重要。そのためには腰痛に苦しんでいる介護士の作業負担を軽減しなければならない。現場感覚を持ったRT技術開発が必要。

【石黒氏】グレイナー氏は、なぜアプリケーションに掃除を選んだのか?

【グレイナー氏】自己資金で開発をやったときにはいろんな分野にトライした。理由は二つ。親に「ロボットを作るよ」といったら、掃除機みたいなロボットを作ってくれないか、といわれた。つまり市場にデマンドがあったのにそれを満たすものがなかった。これが理由。

【ヘーゲル氏】ロボットはそもそも複雑なもの。これという解はない。サプライ業界にはいくつかキーとなるコンポーネントがある。それを使ってシステム構築・統合を行なう。公的資金を使うこともひとつの解だろう。それによってより価値の高い製品をつくることができるようになる。プロセスを整理して問題を解決するためにはネットワークが重要になるだろう。

【石黒氏】ヘーゲル氏のロボットの定義とは? 例えばロボットと掃除機の違いはなにか?

【ヘーゲル氏】サービスロボットのきちんとした定義はない。でもニーズを満たせばそれでいいじゃないですか。定義は別にいらないと思う。ロボットの定義なんていうものは、統計データを満たすためのものでしかない。定義は市場が進化すれば変わってくる。いまの状況は10年後は変わるでしょう。


(4) 次世代ロボットの普及促進に最も障害となっていることは何か?

【竹中氏】やはり安全性。機能の性能。コスト。この3つが成立するかどうかが普及最大のポイント。ロボット単品にすべてを押し込むとコストがあがる。そこには製品としての解はない。だから構造化が必要。しかし設備投資をするとコストがあがる。だから構造化の標準化をすすめることで、全体に負担を薄めていくことが重要だ。

【グレイナー氏】いちばん大きな障害は、ロボットの機能に対してみんなが疑いを持っていること。「ほんとに使えるの?」と聞かれる。答えはイエス。それを実際に示すためにもデモをする。アメリカでもいろいろなアプリケーションが出てきている。製品自体の認知をあげること、猜疑心を消していくこと。iRobotもそれほど高くないけど使えるので教育の問題。

【ヘーゲル氏】安全性や信頼性がないことが課題かもしれません。重要なことは機能性でしょう。ロボットはいろいろな技術が統合されたもの。だからミドルウェアのアーキテクチャーが必要。これから先の道は長い。いろいろなデータをとって、どうやって安全性の高い振る舞いができるかが重要。スピードは遅いが活動は進んでいる。

 会場からは、本誌でコラムを連載中のユニファイリサーチの五内川拡史氏から質問が出た。単純に要素部品が組み上げてロボットを作るとコストが上がってしまう。コストを下げるうえでの具体的な方法を教えてほしいというもの。

 グレイナー氏はパッと「ルンバのように安いロボットを使うことです」と答えた。竹中氏は、「富士重工のロボットもだいぶリーズナブルなコストになってきたと思う」と述べ、それは「特別な開発を避けた。基本的に世の中にあるものを組み合わせて作った」からだと答えた。新規開発するにしても、たとえばロボット分野だけを見るのではなく、自動車分野にも使える部品ができれば、コストは下げられる。広い分野を見ることが必要だという。ヘーゲル氏も「コストに関しては製品のボリュームが問題になる」と答え、「数百くらいにとどまっていると現状では、サービスロボットはサプライ企業に影響を与えていない」と述べた。結局は規模の問題だということだろうか。


特別講演「自立型ロボットを使った太陽系探査」

NASAジェット推進研究所プリンシバルリサーチャー アルベルト・エルフェス氏
 最後にNASAジェット推進研究所プリンシバルリサーチャーのアルベルト・エルフェス(Alberto Elfes)氏が特別講演「自立型ロボットを使った太陽系探査」を行なった。

 宇宙ロボットにおいて重要なことは信頼性である。99.99%の信頼性が必要になるという。電力も重要である。打ち上げコストがかかるので、機器の大きさも重要である。遠隔操縦するにしても探査する惑星は遠いので自立性が必須になる。このようにさまざまな厳しい条件がある。

 エルフェス氏は、完全自律ロボットを用いたRSA(Robot Supervision Architechture)というプロジェクトにかかわっている。氏は月面探査、金星探査、火星探査のこれまでとこれからの構想を交えて、さらにアマゾンなど地球でも探査ロボットの技術は活用できると述べた。

 たとえば金星探査用には気圧の高低に応じて本体の蛇腹部分が伸び縮みして中のヘリウムガスを調整するロボットが考案されており、現在、研究の第一段階にあるという。火星探査においては、ソジャーナ、そしてスピリット・オポチュニティと名づけられた探査ローバが活躍したことは広く報道もされている。ローバーのソフトウェアの開発は継続して行なわれており、自立性はいまも向上しているという。

 また、地球も面白い惑星探査の対象だという。たとえばアマゾン地域は気温・湿度も高いし洪水もある。しかも広さは西ヨーロッパよりもある。そこでロボットを使えないかと考えて、飛行船ロボットの研究や、沼地を突破できる水陸両用ロボットを開発しているという。水陸両用ロボットは、アマゾンの子供たちにも大人気だったそうだ。今後は、地球の初期の段階に似ているといわれているタイタンの探査も検討中だという。


火星探査ローバー そのアーム先端部分 かつて火星に液体の水があったことを示す証拠を発見した

アマゾンで活躍した水陸両用ロボット タイタン探査を目指した研究が進行中 そのアーキテクチャー

 フォーラムの最後に日本ロボット工業会専務理事の飯倉督夫氏は、「展示会場では現時点のロボットが展示されている。今日の話を聞いた後に見ると、評価の目もまた変わるだろう。そこで次の商品のアイデアを得て、次の国際ロボット展が行なわれる2年後に開発してきてもらいたい」と語った。


URL
  2007国際ロボット展
  http://www.nikkan.co.jp/eve/07ROBOT/

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( 森山和道 )
2007/12/03 20:40

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