11月3日、4日の2日間、熊本県荒尾市の遊園地「グリーンランド」で、二足歩行ロボットによるロボットバトル大会が行なわれた。これは西日本新聞創刊130周年を記念した事業イベント「DREAM DISCOVERY みらい九州こども博」の一環として開催されたもので、10月7日、8日に行なわれたロボサッカー大会に続くものだ。今回もロボスクエアが大会を実施し、実際の運営はROBO-PROが行なった。
今回は8台のロボットを招待してのバトルトーナメント戦が、3日、4日の両日とも行なわれた(会場はグリーンランド内のお祭り広場)。参加したロボットは、関東からスミイファミリーのアリウス、アリキオン、ありまろ7、関西からOmniZero.4、レグホーン、そして地元九州からはサッカーにも参加したスーパーディガー、AutomoSandan、九共大ー疾風の合計8台。
スミイファミリーは以前からロボスクエアのヒューマノイドカップに参加しており、今回もその実績からの参加。レグホーンは見た目の面白さと地方大会での実績が買われてのものだったそうだ。
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グリーンランド正面入り口
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大観覧車とロボットバトル大会の看板
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看板のアップ
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看板と恐竜コースター
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会場のお祭り広場外観
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お祭り広場の中。すり鉢状の観客席をテント屋根が覆っている
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今回は勝った相手同士だけではなく、負けた相手同士も戦って最終順位を決めるというルールを採用したため、1回のイベントで行なわれる試合数はいずれも4試合だった。それを1日に3回行なって優勝ロボットと最終順位を決める。
なお、今回のルールの最大の特徴は「3スリップで1ダウン、ただし、捨て身技の制限はないが、捨て身技を繰り出して失敗すると1スリップになる」だろう。これまでロボスクエアのヒューマノイドカップでは、何回スリップしてもダウンになることはなかったが、やはりROBO-ONEルールの影響を受けての改正となった。ただし、遊園地で行なわれるイベントとしては派手な部分も必要で、その2つを折衷した結果なのだろう。
今回は3日、4日とも同じ内容のイベントだったため、筆者は最終日の4日のみ取材した。従って4日を中心としたレポートをお届けする。
● 初日の3日のダイジェスト
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3日の決勝戦、スーパーディガー VS レグホーンの様子(写真提供:ロボスクエア)
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第1試合でAutomoSandanがアリウスを破る金星を上げたものの、次の準決勝戦ではオムニを破って勝ち上がったスーパーディガーに敗北。逆のブロックではアリキオン、ありまろ7を倒したレグホーンが勝ち上がり、決勝戦はスーパーディガー VS レグホーンの戦いに。決勝戦ではレグホーンの必殺技「手羽スラッシュ」が冴え、レグホーンが3-0でスーパーディガーを破り、初日の優勝を決めた。
● 4日第1回戦
10月に同所で行なわれたサッカー大会(特に2日目)は悪天候に祟られたが、今回は両日とも天候はまずまず。観客もそこそこ集まった(実は3日の方が観客はもっと多かったらしい)。
13時から行なわれた第1回イベントでは1回戦の4試合が行なわれた。試合の前には必ずロボットによるパフォーマンス披露が行なわれた。イベントとして観客の目を楽しませることを意識しているのだろう。
パフォーマンスは、ロボットの運動性能を見せるものや、ギャグもあったりして各自それぞれ工夫したものを披露していた。
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トーナメント表
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試合前に動いていたロボスクエアのシンディ。姫路ソフトワークス製で、同社の「りりあ」の妹にあたる
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試合前のアリウスのパフォーマンス。この後、ボールは見事にゴールの中に。なお、アリウスはこの日のパフォーマンスで一度もゴールを外さなかった
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レグホーンの試合前パフォーマンス。音声で「焼き鳥、食べたいなー」とギャグをかましていた
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1回戦第1試合は、アリウス VS レグホーンという関東 VS 関西の対決となった。昨日のトーナメントで優勝しているレグホーンは、今日もその好調さを見せ付けた。必殺技の「手羽スラッシュ」2発を含む攻撃で、アリウスを3-0で破った。アリウスは「3スリップで1ダウン」のルールが加わったために、ダイビングヘッドバッドが思い切って使えず、どういう戦法で試合に臨むのか、迷っていたように見受けられた。
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この日の最初の試合、レグホーン VS アリウス。操縦者は決められた枠の中で操縦するようになっていたようだ
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とにかく冴えていたレグホーンの手羽スラッシュ
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左右の羽根連打でアリウスからダウンを奪うレグホーン
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1回戦第2試合は、ありまろ7 VS OmniZero.4。8月に福岡市で行なわれたヒューマノイドカップバトル大会で相手を見事にフロントスープレックスで投げ飛ばしたありまろ7と、ROBO-ONEの予選で1位を取ったOmniZero.4という、運動性能の高いロボット同士の戦いだ。
戦法に迷いのあったアリウスと違って、ありまろ7の戦い方は明確。離れた相手には引っ掛けるようなパンチで相手を倒し、接近したらスリップの危険を無視してとにかくフロントスープレックスで投げに行く。
これに対してOmniZero.4は高速歩行と掴み攻撃をしかけたが、スリップで自滅ダウンし、また、ありまろ7の引き倒しもあって、試合は3-0でありまろ7の勝ちとなった。
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スローインのパフォーマンスを見せていたありまろ7
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足踏みしながらの高速歩行のデモをするOmniZero.4
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OmniZero.4 VS ありまろ7。OmniZero.4を操縦しているのは井高氏。以前のヒューマノイドカップバトル大会では、Omniと共によく出場していた
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リングアウトするOmniZero.4
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1回戦第3試合は、アリキオン VS 九共大ー疾風。試合は疾風が先行したが、急に疾風の調子が悪くなり(腰の部分の不調)、タイムの1ダウンも入れて、アリキオンが3-1で勝利した。
1回戦最後の試合は、スーパーディガー VS AutomoSandanの九州勢同士の戦い。九州練習会では激しくぶつかっている両者だが、なぜかこれまで公式戦で戦ったことがなく、前日の準決勝で当たったのが公式戦初対決となった(この時はスーパーディガーが勝利した)。
先日の借りを返すべく試合に臨んだAutomoSandanだったが、さすがに第12回ROBO-ONE軽量級3位のスーパーディガーは強く、3-0でスーパーディガーに軍配が上がった。
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ここでも踊るアリキオン。もしかすると、1番遊園地に相応しいロボット?
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腰軸を使った起き上がりを見せる九共大ー疾風
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九共大ー疾風 VS アリキオン
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両者の攻撃がクロスする
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起き上がりのできなくなった九共大ー疾風
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ワンハンドスローを見せるAutomoSandan
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AutomoSandan VS スーパーディガー。九州練習会ライバル同士の戦い
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ダウンを奪ったスーパーディガー
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スーパーディガーのアームカバーが取れてしまったところ
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観客席の様子。遊園地だけあって、お子さんが多かった
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自動でマイクをつかむOmniZero.4
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順位決定予備戦で、アリウスの腕を掴んで倒そうとするOmniZero.4
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投げでペットボトルを倒すデモを披露したレグホーン
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準決勝は本日2回目のイベントで行なわれた。
準決勝の第1試合はレグホーン VS ありまろ7。ありまろ7は引き倒し気味の投げモーションでレグホーンからダウンを奪ったが、「手羽スラッシュ」の連発でレグホーンはありまろ7に3-1で勝利。決勝に駒を進めた。
もう一つの準決勝は、アリキオン VS スーパーディガー。8月のヒューマノイドカップではスーパーディガーが勝利しているが、今回はアリキオンがサイドアタックパンチでスーパーディガーからダウンを奪い、先行した。しかし、3スリップダウンをきっかけとして、反攻に転じ、パンチ2発でアリキオンに3-1で勝利した。
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準決勝、引き込み系の投げで攻めるありまろ7
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最後は手羽スラッシュが炸裂
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準決勝のスーパーディガー VS アリキオン
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サイドアタックパンチでアリキオンが先行
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横突き2発でスーパーディガーが勝利した
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ありまろ7のエア・バックドロップ
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2回目のイベント時には、1回戦で負けたロボットによる対戦も行なわれた。
3回目のイベントは3位決定戦と決勝戦、そして他の最終順位決定戦が行なわれた。
3位決定戦では、ありまろ7 VS アリキオンのスミイファミリー夫婦対決が実現。お互い手の内を知り尽くしているだけに、この試合がこの日一番の熱戦となった。とにかく投げにこだわるありまろ7(なんとなく会場全体から相手を投げ飛ばすことを期待されていたようだ)は、スリップが増えるのもかまわず、フロントスープレックスでアリキオンを投げようとする。これに対してアリキオンもそう簡単には投げられない。
とうとう両者とも2-2で、しかもありまろ7は2スリップで全く後のない状態。しかし、それでもありまろ7は投げにこだわり、終了直前にフロントスープレックスでアリキオンの足を浮かせた。しかし、レフェリーは投げを認めず、また、ありまろ7が倒れたのは試合後だとして、この大会初の延長戦(1ダウン先取で勝利)に突入した。
だが、ありまろ7は最後の投げで気が抜けたのか、延長戦は試合開始早々アリキオンの突きが炸裂して、あっさり決着がついてしまった。
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3位決定戦の前に踊るアリキオン
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3位決定戦はスミイファミリー対決となった
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ありまろ7最後の投げ。アリキオンの両足が完全に浮いている
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しかし、アリキオンが体の上に乗ってしまったため、レフェリーは投げを取らず
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延長戦は開始早々に決着がついてしまった
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決勝戦は、レグホーン VS スーパーディガーという昨日と全く同じ組み合わせとなった。実はレグホーンのNAKAYAN氏とスーパーディガーのひろのっち氏は、去年の11月に大阪で行なわれたロボファイトSRC部門決勝で戦ったことがある(その時は、ひろのっち氏が優勝した)。今回は前日の戦いも含め、1勝1敗の決着をつける戦いだとも言えた。
しかし、試合はレグホーンの一方的なものになってしまった。とにかくレグホーンの必殺技「手羽スラッシュ」が強力で、レグホーンの真横に入るとまず倒されてしまう。いつもの相手ならスーパーディガーはその機動性を生かして逃げるのだが、レグホーンは外側に逃げたスーパーディガーを横移動で追って、そのまま場外に突き落とす攻めを出した。これに対してスーパーディガーは有効な対抗策を出せず、3-0でレグホーンが2日連続での優勝を成し遂げた。
レグホーンは今回の大会で、2日間で合計3ダウンしか奪われておらず、その安定性と強さが目立った。
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決勝戦のスーパーディガー VS レグホーン
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レグホーンの手羽スラッシュから逃げるスーパーディガー
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手羽スラッシュがヒット
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最後はスーパーディガーをリングの外に突き落として、レグホーン優勝
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レグホーン勝利のポーズ
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4日のトーナメント結果
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● MVPは西瓜割り?
今回のイベントでは総合優勝はなかったが、最も活躍したロボットに対してMVPが与えられた。そのMVPを受賞したのはスーパーディガーだった。2日続けて準優勝という成績もさることながら、試合前のパフォーマンスが評価されての受賞だった。
スーパーディガーは試合前に作り物の西瓜を割る「西瓜割り」を披露。それが1回ごとに進化していた。しかもそれは前もって考えていたのではなく、試合が終わった後に「次はどうするか」を考え、短い時間の中でモーションの調節をして、実際に西瓜割りを成功させたのだ。観客を楽しませようとする精神と、その技術力は確かにMVPに相応しいものだったろう。
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スローインのボールで西瓜を割るスーパーディガー
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こちらはキックボールで西瓜を割った瞬間
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2回目のデモでは、割った西瓜の中にキックでボールを落とすことにチャレンジ。二度のチャレンジでなんとか成功
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3回目のデモでは、なんと本当に西瓜割りを実行。目隠ししたまま、会場の子供たちの声でスーパーディガーを操縦
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「スイカ!」の掛け声と共に西瓜にヘッドバット
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見事に西瓜割りに成功
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表彰式でのNAKAYAN氏のインタビュー。会場に来ていた人に「ロボット、むっちゃ面白いんで、みんなもやってください」と呼びかけていた
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表彰式での記念撮影
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2日とも優勝を決めたNAKAYAN氏。「2日とも同じ競技はちょっときつかったです」との本音も
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会場となった「お祭り広場」は、普段は特撮ヒーローショーが行なわれる場所で、ロボットバトル大会に集まった子供達たちも、ヒーローに声援を送るように、ロボットたちに大声で「がんばれー!」と声援を送っていた。また大人たちも二足歩行ロボットを見るのは、ほとんどの人が初めてだったようで、ロボットたちの高度な動きを見て、新鮮に驚いていた。
遊園地という場所で、一般の人たちにロボットを見てもらえたことは、やはり大きな意味があったのだろう。
・バトル順位結果
【11月3日】
・優勝 レグホーン(大阪)
・準優勝 スーパーディガー(福岡)
・3位 ありまろ7(埼玉)
・4位 AutomoSandan(福岡)
・5位 アリウス(埼玉)
・6位 アリキオン(埼玉)
・7位 九共大-疾風(福岡)
・8位 OmniZero.4(大阪)
【11月4日】
・優勝 レグホーン(大阪)
・準優勝 スーパーディガー(福岡)
・3位 アリキオン(埼玉)
・4位 ありまろ7(埼玉)
・5位 AutomoSandan(福岡)
・6位 OmniZero.4(大阪)
・7位 アリウス(埼玉)
・8位 九共大-疾風(福岡)
■URL
グリーンランド
http://www.greenland.co.jp/index2.html
ロボスクエア
http://www.robosquare.org/
ロボプロ
http://www.robo-pro.net/
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・ グリーンランド・ロボサッカー大会レポート(その1) ~熊本県の遊園地での二足歩行ロボットサッカー(2007/10/15)
( 大林憲司 )
2007/11/14 00:15
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