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グリーンランド・ロボサッカー大会(その2)
~総合優勝を掛けた勝負の行方は?


 10月7日、8日の2日間、熊本県荒尾市の遊園地「グリーンランド」で、二足歩行ロボットによるヒューマノイドカップ・ロボサッカー大会が行われた。今回は2日目の様子をお届けする。


豪雨の2日目

 8日は朝から雨。雨は時々激しく降り、会場のお祭り広場のテント屋根から雨漏りするほどだった。さすがにグリーンランド内は客の姿もまばらだった。従ってロボサッカーの観客も少なく、2回目のイベント開始時は観客が10名足らずしかいなかった(試合が始まると、もう少し人は増えたが……)。

 しかし、サッカーの試合自体は熱いものになった。

 初日の7日はカイザーオールスターズの三連勝で終わったが、負けた3チームが密かに奮起。「カイザーを止めろ!」の合言葉の元、7日の晩、それぞれに対策を練って努力奮闘していたようだ。

 三連敗に終わったROBO-FCは大和社長以下、大反省会を実施し、戦術の見直しなどを行なったようである。

 九州三銃士は7日の夕方に、第12回ROBO-ONE軽量級3位のスーパーディガーのオーナーであるひろのっち氏が現地に到着。これで九州三銃士のメンバーがそろい、その三人で深夜のミーティングを行なっていた。

 カイザーオールスターズに惜しくも負けたROBO-SPOTチームはカイザーオールスターズ用に「新兵器」モーションを一晩で作成。

 これに対してカイザーオールスターズも手をこまねいていたわけではない。初日に不調の原因となったケーブルを取り替え、スローインを続けてもケーブルが痛まないように余裕を持ってケーブルを配線。パーフェクトな機体状態で完全優勝をめざした。


雨に濡れるグリーンランド 大会開始前の会場(前日と同じくお祭り広場)。この頃が一番雨がひどかった 直前まで調整を続ける参加チーム

 2日目の第1試合目は昨日と同じくROBO-SPOTチームとカイザーオールスターズの対決。

 この試合で、ROBO-SPOTチームのThunderboltは「足を捻って自分の前にあるボールを横に蹴りだす」モーションという新兵器を披露。オフェンスのロボットがドリブルで上がってくる場合、ディフェンス側はその前に立ちふさがれば、まずその動きを止められる。しかし、この状態からボールを横に蹴りだされると必ずしもそうはいかない。カイザーオールスターズはこのモーションに戸惑ったのか、試合はROBO-SPOTチームが優勢に試合を進めた。

 前半、TUBASAとThunderboltがそれぞれゴールを決め、カイザーオールスターズをリード。これに対してカイザーオールスターズも最強の武器であるスローインからのゴールで1点を返したが、ROBO-SPOTが2-1で前半を終えた。

 後半、ROBO-SPOTチームはTUBASAに代えてKHR-1HV HYUGA(1月のヒューマノイドカップ・サッカー大会に参加した機体で、TUBASAと同じくKHR-1HVストライカーバージョンのプロトタイプ)を投入。この日のROBO-SPOTチームはダメージを負っていない機体を後半投入する戦略を取ったようである。

 後半、カイザーオールスターズはROBO-SPOTチームをどうしても攻めきれない。前日、カイザーオールスターズにスローインから得点を許し続けたことで、2日目は各チームとも「スローイントラップ」とでも言うべき、戦術を使ってきたのだ。これはスローインする相手がゴール方向を狙ってくると判断した場合、わざとゴール前を空ける戦術だ。

 今大会のルールでは、スローインで直接ゴールに入れても得点にならずゴールキックになる。ただし、敵味方問わず一度でもボールに触れてゴールに入れば得点になり、これがカイザーオールスターズにとって最強の武器になった。ならば、スローインの時にゴール前を空けてダイレクトにボールをゴールに入れさせてしまえという戦術だ。

 これが効を奏したのか、後半なかなかカイザーオールスターズが点を取れない。逆にROBO-SPOTのThunderboltがゴールを決めた。結局、ROBO-SPOTが3-1で勝利し、カイザーオールスターズが今大会初の敗北を喫した。


2日目最初の試合、カイザーオールスターズ VS ROBO-SPOTチーム カイザーオールスターズのFireのスローイン。よく見るとくまたろうとThunderの間の絶妙な場所にボールが飛んでいる スローイントラップを発動したところ。スローインするThunderの前をわざわざ空けている

くまたろうを下げたROBO-SPOTチーム。右の頭部外装付きがKHR-1HV TUBASA。奥にいる機体がKHR-1HV HYUGA ボールが足にはさまって転倒したFire。真ん中にいるThunderboltが足を捻って蹴ろうとしているのがわかる カイザーオールスターズのスローイン

 2試合目は九州三銃士 VS ROBO-FC。九州三銃士は昨日のディガーZEROに代えてオリジナル・スーパーディガーを投入。またAutomoSandanの故障に備えてAutomoNicoをベンチ入り(?)させ、必勝体制を取った。それに九州三銃士はAutomoSandanだけでなく、スーパーディガーもスローインを使うことができる。昨日はスローインのやり過ぎでAutomoSandanが故障してカイザー戦での大敗につながっただけに、スローインのできるスーパーディガー参入の意味は大きい。

 しかし、試合で先取点を取ったのは、ROBO-FCだった。前日、三連敗しただけに今日にかける意気込みは違っていた。きちんと役割分担をし(キーパーはボールを止めることに専念)、足を大きく上げる歩行(8日は意外と当たり負けもしなかった)からドリブルでボールを持ち込む。これに焦ったのか、キーパー疾風がROBO-FCのFWの真正面にキックしてしまい、これが当たってゴールに飛び込んだ。

 これに対して九州三銃士はスローインのできるロボットが増えたことで、スローインからの突破を試みた。ゴール近くでスローインの権利を得たスーパーディガーは、ROBO-FCのキーパーに向かってボールを投げた。ここでROBO-FCのキーパーは「スローイントラップ・モーション(ボールが飛んできたら倒れこんでボールをさける)」を発動。ボールはキーパーを越えたように見えたが、審判はワンタッチありの判定でゴール。前半は1-1で終えた。

 後半に入ると、九州のロボットの中でも高速を誇るスーパーディガーとAutomoSandanがコート内を走り回り、ついにスーパーディガーがボールを押し込んでゴール。2-1で九州三銃士が勝利し、ROBO-FCは惜しくも敗れた。


気合の入っているROBO-FC VS 予備機にAutomoNikoを持ってきた九州三銃士 倒れこんでボールをセーブするROBO-FCのキーパー 先取点はROBO-FC

スーパーディガーの長距離スローイン。むろん前方にいるAutomoSandanへのパスを狙っている 後半、ゴールを決めるスーパーディガー この日もロボットパフォーマンスショーが行なわれた

 第3試合は、これまで引き分け2つでまだ決着のついていない、ROBO-SPOTチームと九州三銃士の因縁の戦い。今日の試合ではそれぞれ1勝しており、この試合での勝利が今日の優勝につながってくる。特にROBO-SPOTチームはカイザーオールスターズに勝っているだけに、この勢いで押し切りたいところ。しかし、カイザーオールスターズに勝利したことで気が抜けたのか、試合は九州三銃士の一方的なものになってしまった(後でROBO-SPOTチームの柴田氏は「あの時(カイザーオールスターズに勝った時)がピークでした」と語っていた)。

 開始早々、AutomoSandanがゴールを決め、スーパーディガーも押し込みゴールを決めて前半2-0。

 これに対してROBO-SPOTチームは、後半、キーパーのくまたろうの代わりにHYUGAを投入し、TSUBASAをキーパーに下げて、ThunderboltとHYUGAの攻撃的FW陣で逆転を目指した。しかし、後半はこれが裏目に出てしまったのか、九州三銃士のスーパーディガーのパワーが爆発。

 キーパーの疾風からのリターンキックを持ち込んでのゴールという、本当にサッカーらしい動きを含めて、3ゴールをゲットし、後半だけでハットトリックを達成。試合も5-0で九州三銃士が圧勝した。ROBO-SPOTチームは安定してゴールを守っていたくまたろうをベンチに下げた(?)ことで、後半の大量失点につながったのかもしれない。


九州三銃士 VS ROBO-SPOTチーム。どちらも予備機を持ってきていた 2台ごとボールを押し込むスーパーディガー 後半、中盤からのシュートを決めるスーパーディガー

 第4試合は、前日とは違って調子を上げてきたROBO-FCと、これ以上負けると総合優勝も逃しかねないカイザーオールスターズとの戦い。

 前日の戦いではカイザーオールスターズに0点で負けているROBO-FCだが、今回の先取点はROBO-FCが取った。倒れたKingKizerの胴体の上にボールが乗ってしまう珍事が発生。それがこぼれる形でROBO-FCが先制した。カイザーオールスターズ最強の武器であるスローインからのゴールに対しても、キーパーが逆にボールから逃げることで無効にしてしまう。「ROBO-FC、有利?」という雰囲気も出てきたが、前半終了間際にROBO-FCの機体同士がからみあって倒れた隙を見逃さず、Thunderがシュートを決め、1-1のイーブンに戻した。

 ハーフタイムの途中、ROBO-FCの1台が無線トラブルを起こして動けなくなってしまった。結局修復できず、後半、ROBO-FCは2台(控えのロボットはいなかった)で試合に臨むことに。こうなるとカイザーオールスターズの独壇場で、後半はカイザーオールスターズが3点を取って、結局4-1で勝利した。

 なお、カイザーオールスターズのThunderが前日に続いてハットトリックを達成した。


ROBO-FC VS カイザーオールスターズ。やっぱりROBO-FCは気合が入っている 楽々頭の上を越えてくるカイザーオールスターズのスローイン。これに対してROBO-FCは一度当たってからのゴールを防ぐために、キーパーがボールから逃げていた KingKizerの上に乗ってしまったボール。この後、ボールがゴールに落ちてROBO-FCの先取点となった

前半終了間際に決まったカイザーオールスターズのシュート 後半、ROBO-FCは2台で戦うことに 後半、点数を入れ続けるカイザーオールスターズ

この日もロボットパフォーマンスショーに出てきたVision810。動きの指示は無線で出していたようだ 天候のせいもあって、観客は決して多くなかった 雨が止んだ隙を見計らって、客の呼び込み

 さて、運命の第5試合、九州三銃士 VS カイザーオールスターズ。ここまで2勝している九州三銃士は、この試合で勝つか引き分けで8日の優勝が決まる。それだけでなく、ここで勝てば、カイザーオールスターズをかわしての2日間の総合優勝も手に入る。

 カイザーオールスターズにとっては、引き分けでも総合優勝だが、ここで勝利すれば8日の大会でも2勝1敗となり、得失点差次第では8日も優勝し、完全優勝を果たすことになる。どちらにとっても負けられない戦いだ。

 試合の前半は、2つの優勝を狙って九州三銃士が猛攻を仕掛けてきた。サッカー専用に調整されてきたKingKizer・Fをパワーで押しまくり、ついにAutomoSandanがキーパーごと押し込んで先取点を挙げた。それからも九州三銃士は敵陣でボールを支配していたが、カイザーオールスターズは3台で必死に守り、追加点を許さない。

 後半、その流れを変えたのは、やはりカイザーオールスターズ最大の武器であるスローインだった。スローインからのワンタッチゴールを決めて、試合をイーブンに戻した。それからは両者ともに点を取れずにドロー。

 カイザーオールスターズの総合優勝と、九州三銃士の2日目の優勝が決まった。


2日目の優勝と総合優勝のかかったカイザーオールスターズ VS 九州三銃士 スローインでボールを上げるスーパーディガー AutomoSandanがKingKizerごとボールを押し込む

中盤で激しくぶつかる両チーム 流れを変えたカイザーオールスターズのスローイン ワンタッチゴールが認められて、カイザーオールスターズは試合をイーブンに戻す

 これが最終試合となるROBO-FCとROBO-SPOTチーム。特にROBO-FCとしては1勝もできずには帰れないところだ。意気込みに勝るROBO-FCが開始早々ゴールした。

 そして前半、珍事が発生。カイザーオールスターズ用に作ってきた秘密兵器「横方向へのキック」でThunderboltが豪快なオウンゴールを決めてしまったのである。新兵器も慣れていないと諸刃の剣ということだろうか。

 後半、ROBO-SPOTチームはTUBASAをHYUGAに代えて逆転を狙う。Thunderboltが汚名返上とばかりにロングシュートを決めたが、ROBO-FCも倒れこみながらボールをゴールに入れ、点差は縮まらずに終了。ROBO-FCが3-1で今大会初勝利を上げた。


最終戦のROBO-FC VS ROBO-SPOTチーム ROBO-FCの先取点 ぶれているが、手前のThunderboltがオウンシュートを放ってしまったところ

Thunderboltのスローインを、スターバトンで応援するくまたろう。Thunderboltのスローインは遠くに飛ばすのではなく、近くに落とすタイプのもの 初勝利を上げて喜ぶROBO-FC

 今回、天候がよくないこともあって、それほど観客は集まらなかった。しかし、試合後に大和社長が「いいチーム同士でやると面白いですね」と語っていたように、試合の内容は濃いものだった。

 スローインを駆使して初日三連勝したカイザーオールスターズ、そのカイザーオールスターズに新モーションを使って唯一土をつけたROBO-SPOTチーム、しり上がりに調子を上げてきたROBO-FC、今回の大会での勝利のために直前まで努力を続けてきた九州三銃士と、それぞれのチームの努力と個性がぶつかりあった戦いだった。

 もしかすると、ここでのぶつかりあいが今後の二足歩行ロボットサッカー(自律・操縦を問わず)を変えていくのかもしれない。


表彰式の記念撮影 1日目&総合優勝のカイザーオールスターズ。お父さんからは「父としては、キーパー辞めたいです」との本音も(やはりFWをやりたいらしい) 2日目&総合準優勝の九州三銃士。この結果について水井氏は「ロボスクエアで練習を続けてきた成果でしょう」と答えていた

・8日の順位
 優勝 九州三銃士 2勝1分
 2位 カイザーオールスターズ 1勝1分1敗
 3位 ROBO-FC 1勝2敗
 3位 ROBO-SPOTチーム 1勝2敗

・総合順位
 優勝 カイザーオールスターズ 4勝1分1敗
 2位 九州三銃士 3勝2分1敗
 3位 ROBO-SPOTチーム 2勝1分3敗
 4位 ROBO-FC 1勝5敗


URL
  ロボスクエア
  http://www.robosquare.org/
  グリーンランド
  http://www.greenland.co.jp/index2.html

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グリーンランド・ロボサッカー大会レポート(その1)
~熊本県の遊園地での二足歩行ロボットサッカー(2007/10/15)



( 大林憲司 )
2007/10/16 00:00

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