● 自然災害からNBC対策まで、危険のなかで活躍するロボットたち
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【写真1】国内外の危機管理に関する製品・技術・サービスが集結した総合展示会「危機管理産業展2007」。危機管理の重要性が叫ばれるなか、想像以上に来場者も多かった
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10月17日から19日までの3日間、東京ビッグサイトで「危機管理産業展2007」が開催された。本イベントは、国内外の危機管理に関する製品・技術・サービスを対象とした国内最大級の総合展示会だ【写真1】。大震災や集中豪雨などの自然災害から、テロ、治安対策まで、危機管理に関するさまざまな製品が展示されていた。ここでは、本誌に関連するロボット関連製品を中心にレポートする。
まず災害やテロなどで活躍するレスキューロボットで眼についた製品から紹介しよう。この種のロボットは災害現場の不整地で稼動するため、駆動系にクローラを利用したものが多い。国内メーカーでは、三菱電機特機システムやトピー工業のロボットが目を引いた。
三菱電機特機システムは、災害現場から日常作業までサポートする小型クローラ移動ロボット「FRIGO-M」のデモを行なっていた【写真2】【写真3】【動画1】。これは、総務省・消防庁消防大学校・消防研究センターと共同開発したロボットをベースに実用化したもの。防塵・防水・防爆構造で、一人でも搬送できる小型・軽量タイプのため、緊急現場ですばやい運用が可能だ。操作も簡単で、PC上からコントローラでロボットを動かし、センサからの情報を無線で収集できる【写真4】。災害対策だけでなく、家屋の床下点検や車底の監視など、さまざまな環境に対応するという。
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【写真2】三菱電機特機システムの小型クローラ移動ロボット「FRIGO-M」。防塵・防水・防爆構造で、一人でも搬送できる。写真の水たまりを走行しているところ
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【写真3】FRIGO-Mを俯瞰したところ。先方に1つ、中央には90度ごとに3つのカメラを搭載している
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【動画1】FRIGOに用いられている駆動モジュール。不整地でも機敏かつ走破性に優れた駆動が可能
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【写真4】ロボットをPC上から簡単な無線操作で動かせる点も特徴。現場に持ち込んですばやく運用できる
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一方、トピー工業は走破性に優れた3台のクローラ移動ロボットを紹介。もっとも大きな探査用クローラロボット「T-01」は、災害で人が接近できないような被災地に到達する走破性を持つ探査ロボットだ【写真5】。4台のネットワークカメラを搭載し、周辺情報を確認しながら目的地へ向かえる。ロボットの操作は無線LAN、あるいは300mの光ファイバーによる有線コントロールを併用できる。
クローラ走行モジュールをベースにした中型の「S-92」は、左右独立に動作するアクティブフリッパーを装備している【写真6】。このフリッパーアームを階段の段差に引っ掛けることで、より高い段差でも乗り越えられる。各ロボットは利用環境に応じて、ネットワークカメラのほかにも、光学・赤外線・磁気・ガス・温度などのセンサ類を搭載できるという。
最も小型・軽量な「S-90」は、主に床下点検用途に使われるロボットだ【写真7】。高輝度LEDとカメラを備え、無線LANで操縦しながら暗所での画像を収集。オプションでIP33レベルの防水・防塵にも対応する。
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【写真5】トピー工業の探査用クローラロボット「T-01」(写真奥)。展示されていたロボットのなかでは、もっとも大きなサイズ。全長1,025mm、重量60kg。最大乗り越え段差は180mm、時速3kmで走行できる
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【写真6】クローラ走行モジュールをベースにした中型の「S-92」。全長630mm、重量9kg。左右独立に動作するアクティブフリッパーを装備しているため、最大乗り越え段差は180mmまで対応
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【写真7】最も小型・軽量なクローラロボット「S-90」。全長は380mm、重量は6kg。主に床下点検用途に使われる
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NPO法人国際レスキューシステム研究機構は、クローラ移動ロボット「Kenaf」【写真8】など、大大特プロジェクト(大都市大地震軽減化特別プロジェクト)に関わる研究を紹介していた。「Kenaf」は、4つのクローラアームを装備し、瓦礫や段差を乗り越えられるレスキューロボット。走破性に優れ、ロボカップレスキュー世界大会2007ではテクニカルチャレンジ部門一位を獲得している。本体には前方・後方に設置されたカメラのほか、パン・チルトカメラや俯瞰カメラも搭載。2次元レーザースキャナもあり、地形や環境の情報を収集しながら走行が可能だ。
このほか、災害時の情報収集装置として「レスキューコミュニケータ」も展示【写真9】。これは、家電製品などから収集した人の情報を集められる装置。平時はブロードバンドルータとして動作するが、地震発生時には災害対策機関からインターネット経由で非常信号が送られ、音声で被災者の安否を確認できる。もし広域ネットワークが寸断されても、各家庭をアドホックネットワークで結べる。
また、クローラタイプのロボットではないが、キヤノンマーケティングジャパンが、立ち乗りでバランスをとりながらスムーズに移動するSegwayを紹介していた【写真10】。Segwayは米国で監視用途としてよく利用されている。現在、国内総代理店の日本SGIがSegwayの拡販に努めているが、キヤノンマーケティングジャパンも販売に乗り出している。
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【写真8】NPO法人国際レスキューシステム研究機構のでブースで展示されていたクローラ移動ロボット「Kenaf」。4つのクローラアームを装備し、瓦礫や段差を乗り越えられる
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【写真9】レスキューコミュニケータは、平時はブロードバンドルータとして動作するが、地震発生時には、災害対策機関からネット経由で非常信号が送られ、音声で被災者の安否を確認できる。アドホックネットワークの構成も可能だ
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【写真10】キヤノンマーケティングジャパンのブースではSegwayを展示。立ち乗りのため、高いところから見渡すことができ、監視用途として利用されている
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海外メーカーの製品としては、山田洋行がiRobot社のロボット「PackBot」のデモを行なっていた【写真11】【動画2】。iRobot社といえば、民生用として掃除ロボット「ルンバ」が有名だが、同社では戦術系ロボットも開発している。PackBotは、NBC探知機の搭載も可能で、車両に付いたアームによって爆発物を処理できる【写真12】。また3台のビジョンカメラとドライブカメラを備え、無線で映像をPCへ送ることも可能だ【写真13】。私的見解としては、ロボットの軍事転用には賛成できないが、海外では多くのロボットが戦術用として利用されているという事実もある。
また、双日エアロスペースも海外製ロボットを扱っていた。同社は、ヨーロッパメーカーの化学物質検知器や、米・NABCO社のNBC災害対策車両について紹介。たとえば、ロボットによって危険な生物化学剤を含む爆発物を把持して、それらを封じ込める災害対策車両のビデオなども流していた【写真14】。この車両は自動油圧開閉システムを備えており、迅速かつ安全に対策を講じることができる。耐爆性能はC4爆弾4kgに対応するという。
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【写真11】iRobot社の戦術ロボット「PackBot」。イラク・アフガニスタンを含む世界中で1,000台以上導入されているという
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【動画2】PackBotのデモンストレーション。本体を鉛直方向に立てながら姿勢を元に戻すところ
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【写真12】PackBotのアームには開閉式ハンドが搭載されている。またアーム先端や本体前方にカメラを搭載。NBC探知機を搭載することも可能だ
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【写真13】ハンディケースに収納されているコンローラとカラーモニタ。カメラからの画像のほか、ロボットの姿勢制御もCGで表示できる
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【写真14】双日エアロスペースが扱う、米・NABCO社のNBC災害対策車両。ロボットによって危険な生物化学剤を含む爆発物を把持して、それらを封じ込むことが可能だ
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災害救援活動が必要になるのは地上環境だけではないだろう。場合によっては水難事故など、水中環境での対応も求められる。そのため、水中で活躍するロボットもあった。テイセンが扱う水中ロボット「RTV.N-100」は、本体前方に可動式カメラを搭載、本体中央の上面にはソナーを装備していた【写真15】【写真16】。
一方、本格的な水中調査が可能な、広和の「MARINE VEGA」も展示されていた【写真17】。水平・上下方向のスクリューに2基ずつの油漬均圧式DCブラシレスモータを採用し、自在に姿勢を制御できる。こちらも前面ヘッド部にカメラを搭載していた。
このほか、ダイビング機材メーカーからは、溺者の救出活動に使える水中ビークル「SAV-7 Evo」の展示もあった【写真18】。スクリューの角度を3段階に変更したり、モータの回転を制御してスピードを調整できるビークルだ。ウィングアームを引き出せば、3人まで牽引することも可能だ。ロボットやビークルではないが、完全防水で水中でも通信できるユニークなトランシーバもあった【写真19】。
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【写真15】テイセンが扱う水中ロボット「RTV.N-100」。本体の中央上面にはソナーを装備し、リモートで操作できる
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【写真16】RTV.N-100を前方から見たところ。両側にはライト、可動式カメラを搭載
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【写真17】広和の水中ロボット「MARINE VEGA」。こちらも前面ヘッド部にカメラを搭載し、水中探査が可能
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【写真18】タバタの水中ビークル「SAV-7 Evo」。溺者の救出活動に利用できる。ウィングアームを引き出して、自分を含めて3人まで牽引
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【写真19】完全防水のユニークなトランシーバを水槽でデモ。「VX-581UCAT」は、水深1mで30分稼動しても正常に動作する
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● ロボットにも応用できるセンシング系の製品
次にロボット関係の要素技術について見てみよう。センシング系では化学物質の分析機器や、視覚、無線通信に関する装置が目立った。視覚系の機器では、ヘッドマウントディスプレイや特殊なヘルメットが展示されていた。
ヘルメットにカメラ・GPS通信機能を搭載し、災害現場や消防などで利用される「Uメット」は、谷沢製作所とNTTドコモの共同開発によるもの【写真20】。ヘルメット前方に付いたWebカメラによって映像を無線LANで送信したり、同時多極地点での長距離通話にも対応。また、GPSと赤外線位置システムによって屋内外での位置も検出する。
現場によって、ガス検知、倒れ検知、入退場管理など、センサやRFIDをオプションで搭載して、アラームと連動させることも可能だ。この他のブースでも、小型無線ルータによってワイヤレスネットワークを構成し、カメラからの映像をヘッドマウントディスプレイに飛ばすデモが行なわれていた【写真21】。
各種ネットワークカメラの展示や、それらを利用したシステムも数多く見られた。たとえば芝電子システムは、高解像度のメガピクセルカメラで複数の人の顔を一度に捉え、同時認証できるシステムを開発【写真22】。入退場管理として用いることで、立ち止まることなく、ウォークスルーですばやく処理できるというメリットがある。
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【写真20】「Uメット」は、カメラ・GPS通信機能を搭載し、災害現場や消防などで利用できるユニークなヘルメット。現場によって、ガス検知、倒れ検知、入退場管理など、センサやRFIDをオプションで搭載できる
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【写真21】小型無線ルータによってヘッドマウントディスプレイにカメラからの映像を飛ばす
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【写真22】芝電子システムの顔同時認証システム。高解像度のメガピクセルカメラで複数の人の顔を捉え、ウォークスルーで入退場を管理
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ネットワークカメラで特に面白かった製品は、ソニーと日本電気が共同開発した「SNC-RX550」だ【写真23】。Webサーバ機能を内蔵しており、直接ネットワークに接続できるほか、カメラ側で自律的に撮像のフレームレートを切り替えられる点が大きな特徴。たとえば、通常はフレームレートを低くしておき、動態検知によって何かがカメラの前を横切った瞬間に、高いフレームレートになるように設定しておけば、データを保存する際にHDDの容量を抑えられる。
日本電気は、ガス検知のデモを実施していた。ライターの炎をディテクタの前にかざすと、ガスの存在を知ることができる【写真24】。同ブースでは、赤外線カメラに放熱板を取り付け、自然冷却によってセンサを安定させる参考展示品もあった【写真25】。
一方、富士通は高速走行型の赤外線検査装置を参考出展として紹介【写真26】。これは、時速50kmで走行しながら、高品質の赤外線画像データを収集する装置で、世界初になるものだという。高速で測定できる点に加えて、温度分解能も0.03℃と大変優れている。測定データは全体の変状を短時間で展開し、モニタに表示することが可能だ【写真27】。車両に搭載して、トンネル内部のコンクリートの浮き・剥離、高速道路・空港の路面や、橋梁などの変状を効率的に診断する。
日立電線は光ファイバー振動センサを展示し、フェンスにボールが衝突した際の振動を検出するデモを行なっていた【写真28】。光ファイバー振動センサは、「サニャック効果」と呼ばれる原理を用いている。サニャック効果は、ループ状の光路に光を伝播させるとき、全体の系が回転すると、右回りと左回りの光で位相差が発生する現象。この位相差を光の干渉強度として検出し、角度や振動を検出する。光ファイバーなので、低コストで敷設できる点がメリットだという。
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【写真23】ソニーと日本電気が共同開発したネットワークカメラ。カメラ側で自律的に撮像のフレームレートを切り替えられる点が大きな特徴
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【写真24】日本電気のブースで実施されていたガス検知のデモ。ライターの炎をディテクタの前にかざし、ガスを検出できる
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【写真25】赤外線カメラに放熱板を取り付け、自然冷却によってセンサを安定させる参考展示品
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【写真26】時速50kmで走行しながら、高品質の赤外線画像データを収集する、富士通の高速走行型赤外線検査装置。温度分解能も0.03℃と優れている
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【写真27】測定データをモニタ上で短時間に展開し、変状を効率的に診断できる。モノクロのほか、カラー表示も可能だ
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【写真28】「サニャック効果」と呼ばれる原理を用いた、日立電線の光ファイバー振動センサ。フェンスにボールが衝突した際の振動を検出するデモを実施
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● NBCや震災の対策を想定した各種製品が目白押し
さて、ここからは本イベントのメインテーマの1つ、テロに対する製品について紹介しよう。NBC対策を想定し、放射能や化学物質の分析機器や除染ツールなど、普段は見慣れないさまざまな製品が紹介されていた。もちろん、このような製品が実際に使われることがないようにしなければならない。しかし、それでも不測の事態が起こる可能性がないとは決して言えないだろう。備えあれば、憂いなし、というところだろうか。
災害時の防護服については、ガデリウスなど数社で紹介されていた【写真29】。危険地域から安全地域に被災者を搬送する際、NBC災害では2次災害が起こる危険がある。そこで、このような2次災害を避けるための機器もあった。
アイソテックは、感染症や化学災害で被災した患者を隔離しながら安全に搬送できるトランジット・アイソレータ「TI-3」を紹介【写真30】。これは、地上だけでなく、機内の圧力が変化する航空機での搬送にも対応している。すでにJAXAでの検証試験も済んでいるという。
双日エアロスペースのブースでは、NABCO社のNBC災害用対策製品が紹介されていた。現場にある危険物を隔離しながら、手を使って処理する簡易システム【写真31】や、化学物質・生物の検知ツール、化学物質の解毒注射器などがあった【写真32】。
ウエスタン・リンクは、イタリア・クリスタニーニ社の小型除染システムを展示【写真33】。これはNBC災害時での利用を想定しており、除染剤や水を供給するコントローラとジェットを噴射するガンで構成。また東京消防庁は、もう少し大型の除染システムを車両に積んだ専用の除染車や、特殊災害対策車を出展していた【写真34】。
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【写真29】ガデリウスのブースにて。災害時の防護服や、NBC災害で汚染された患者を除染するためのシステムも展示。イベントの性格上、この種の製品の展示は多かった
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【写真30】感染症や化学災害で被災した患者を隔離しながら搬送できるトランジット・アイソレータ。気圧変化がある航空機での搬送に対応していることがポイント
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【写真31】現場にある危険物を隔離しながら処理するシステム。簡易型で持ち運びに便利なシステムだ
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【写真32】双日エアロスペースのブースにて。NABCO社のNBC災害用対策ツール。化学物質や生物兵器の検知ツールから、化学物質の解毒注射器まで
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【写真33】イタリア・クリスタニーニ社の小型除染システム。ガンで除染ジェットを噴射する
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【写真34】東京消防庁の展示。大型除染システムを車両に積んだ除染車や、危険現場で活躍する特殊災害対策車を紹介
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地震列島である日本では、人口密集地帯で大地震がいつ起こる起こるか分からない。震災に対する日ごろからの備えも重要だ。プロセブンは、地震を発生させる特殊車両を会場内に持ち込み、同社の超粘着振動吸収マット「Pro-7」による耐震性能の実演を行なっていた【写真35】【動画3】。これは超軟質性ゴム(ウレタンエラストマー)に粘着性をプラスした素材。振動を吸収し、棚などに置かれた物を密着できる。デモでは震度7まで加振させて、物が落ちたり倒れないことを証明していた。
さらに、災害時の救助活動で必要なツールや装置も数多く見られた。エンジンを動力源とし、油圧で金属などを切る巨大カッター【写真36】や、照光機、ポータブル発電機なども展示されていた。このほか、重い物を階段で昇降できる電動式アシスト運搬車「ダンラク100MED」もあった【写真37】。
震災などの自然災害時には被災生活も重要な問題だ。今回のイベントでは、被災地で生活するうえで必要となるツール類も数多く出展。たとえば、トイレの排泄物を消臭・乾燥・粉末状にして、炭化物としてゴミ箱に捨てられる装置や、下水まできれいにできる浄水器、ダンボールで簡単に組み立てられる脱衣ユニットなどもあった。また、ご飯や水といった非常用の食料も数社で展示されていた【写真38】。
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【写真35】超軟質性ゴム(ウレタンエラストマー)に粘着性をプラスした超粘着振動吸収マット「Pro-7」。大地震でも振動を吸収し、棚などに置かれた物を密着できる
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【動画3】プロセブンのブースにて。地震を発生させる特殊車両を会場内に持ち込み、同社のPro-7の効果を測定
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【写真36】油圧で金属などを切る巨大なカッター。エンジンを動力源としているので、電源がない現場でも対応できる
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【写真37】重い物を階段で昇降できる電動式のアシスト運搬車「ダンラク100MED」。最大積載重量は100kg。騒音・衝撃が少なく、狭い階段の踊り場での回転も可能だ
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【写真38】非常用の食料も数社で展示。写真は尾西食品のブースにて。試食品はモチモチとした食感でおいしかった。水でも1時間ほどで戻すことが可能だという
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● 併設展の「テロ対策特殊装備展」でもロボットが登場
なお、今回の危機管理産業展2007では、併設展として「テロ対策特殊装備展」も開催されていた【写真39】。こちらのイベントでも、災害対策用ロボットなどが紹介されていた。
たとえば、東洋物産はラジコンで遠隔操作して、不整地を自由に移動できる無人威力偵察車「警戒君」を出展【写真40】。特殊なカメラを搭載し、特定秘話通話システム(マイクロ波スクランブル送信)によって、限定された受信機に動画と音声を送信できる。最大通信距離は300mほど。車体は強化特殊プラスチックを採用、4WD独立駆動で走破性にも優れる。通常では、このような無人偵察車は1,000万円以上するというが、88万円という低価格に抑えている。
車両取り付け型の測定器としては、モリタの放射線探知機「EVA-1」【写真41】も眼を引いた。この測定器を無人偵察ロボットに搭載し、放射能の汚染状況を確認することで、安全地域と警戒地域を識別できる。防塵・防水・耐震構造で、検知器はステンレス製カバーで保護されている。
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【写真39】危機管理産業展2007で併設されていた「テロ対策特殊装備展」。入場ゲートが設けられ、危険物持ち込みのチェックが行なわれた
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【写真40】東洋物産が扱う無人威力偵察車「警戒君」。ラジコンで遠隔操作し、不整地を自由に移動。特定秘話通話システムによって、受信機に動画と音声を送信できる
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【写真41】モリタの放射線探知機「EVA-1」。放射能の汚染状況を確認することで、安全地域と警戒地域を識別
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三菱電機特機システムは、光や赤外線では見えない対象物を検知するマイクロ波・ミリ波放射計「MMRS2」を展示【写真42】。同ブースでは、この計測器を利用し、コンクリートの壁を隔てた対象物を非接触で検知するデモを実施していた。検知能力はパッシブ型のため対象物によって異なるが、雨・霧・炎などを透過し、瓦礫下に埋まっている被災者も検知できる。
蝶理とエスティジャパンは合同で、危機管理関連の製品ラインナップを紹介。化学剤・有毒物質・放射能を分析し、警報も可能なマルチガスモニターや、固体・液体に反応するレスポンダなどの測定器を展示【写真43】。また、「IONSCAN」と呼ばれる装置を利用した危険物探査ゲートもあった【写真44】。これは、まだ日本での導入実績はないが、危機管理が進んでいる米国では空港や民間施設で導入されているという。
このほかにも、三菱重工業がユニークなレーザレーダ監視監視システムのデモを実施していた【写真45】。ストロボ写真撮影と同様の動作原理だが、こちらは極短波パルスレーザーを対象物に当て、高速ゲート機能付きCCDカメラで反射光が到達する瞬間にシャッターを切る仕組み。10km先の対象物まではっきりと観測できるというので驚いた。本システムはすでに国内でも実際に導入されているという。
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【写真42】三菱電機特機システムのマイクロ波・ミリ波放射計「MMRS2」。光や赤外線では見えない対象物を検知する。写真は、コンクリートの壁を隔てた対象物を非接触で検知するデモ
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【写真43】蝶理とエスティジャパンの合同ブースにて。マルチガスモニターや、レスポンダーなど、危機管理関連の製品ラインナップを紹介
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【写真44】展示の目玉という危険物探査ゲート。「IONSCAN」と呼ばれる装置を利用している
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【写真45】三菱重工業のレーザレーダ監視監視システム。10km先の対象物まではっきりと観測できる。悪いことはできません
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■URL
危機管理産業展2007
http://www.kikikanri.biz/
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・ 防犯、防災、リスク管理をテーマにした「危機管理産業展2006」開催中(2006/10/25)
( 井上猛雄 )
2007/10/24 00:04
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