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国際レスキューシステム研究機構が次世代防災・防犯システムを公開
~RTを応用したユビキタス・セキュリティ・エリアの事業化


 9月13日、NPO法人国際レスキューシステム研究機構神戸ラボラトリーは、国際フロンティア産業メッセ2007において、「RT応用メッシュネットセンサによるユビキタス防災・防犯システム」の研究成果を公開した。

 同システムは、近畿経済産業局の平成19年度地域新生コンソーシアム研究開発の受託事業として産官学民が共同で開発に携わっている。


 まず最初にプロジェクトリーダーの高森年氏より、開発の経緯と目的について説明があった。

 防災システムは、災害時に速やかに対処し被害を最小限に止めることが期待されるが、オペレータがシステムに不慣れでは緊急時にシステムを使いこなせないことが予想される。一方で、防犯システムは、犯罪を未然に防ぐために常に稼動することが求められている。

 防災・防犯システムの原点は、現場の探索や監視による情報収集であり、集めた情報の取り扱いが重要である。そこで、平時からリアルタイムに情報収集ができる環境を整備し、防犯システムとして活用し、有事の際にはレスキューシステムとして稼動できるシステムを考案した。

 防災・防犯のために探査・監視を行なう範囲は、事前に環境条件を特定することができない。地上空間は住宅、ビル、公共広場や公共施設などと多岐にわたり、地下空間も地下街と地下鉄では条件が異なる。

 このように多様な生活環境に対してフレキシブルに対応し、かつリアルタイムに情報収集を行なうために、ITやユビキタス、ネットワーク技術を活用するRT(ロボットテクノロジー)を応用してシステム実現を目指した。


次世代防災・防犯システムのためのUSエリアの実現
 本プロジェクトでは、多用な生活環境で情報収集を行なうために、分散して配置した固定型のセンサーユニットとセンサー機能を搭載した移動型ロボット群の全てを中継点として、網の目のようにネットワークを張り巡らす技術(アドホックネットワーク技術)を用いて、現場の状況に応じて自由自在に環境の情報構造化を実現する研究開発を進めている。

 また、このようにセンサやネットワークがカバーするエリアを「US(ユビキタスセキュリティ)エリア」と名づけた。

 「今回、公開するシステムは、現在、各省庁で開発が進められている環境の情報構造化やユビキタス化というものを、防災・防犯を切り口に実現した例になると考えている」と高森氏は語った。


USエリアの基盤となるセンサーユニット

固定型センサーユニット。USエリアの基盤となるシステム
 従来設置されている監視カメラには電源供給と、撮影した映像を有線で監視センターに送るというケーブルの拘束があるため、定点観測しか行なえない。

 そこで本システムを開発するにあたり、ケーブルの拘束をなくすことを考えたという。情報伝達を有線から無線にし、電力供給は観測ユニットに電源を内蔵した。この2点をクリアして、いつでもどこでも、観測点となるセンサーユニットを据え付けることができる。このセンサーユニットを分散して複数配置し、USエリアの基盤をつくる。

 センサーユニットには、火災を検知するための温度センサー、地震を検知する加速度センサー、ガス検知のCOセンサー、可燃物検知の可燃物センサーが搭載されている他、魚眼レンズ式広角高解像度カメラによって鳥瞰監視を行なっている。双方向音声通信も可能で、センサーとカメラ、音声の情報を防災センターへリアルタイムで送信できる。

 USエリアとして100m四方をカバーする。複数のエリアを結合することでコミュニティのレベルから、都市空間まで拡張することができる。


USエリアを構成する移動ロボット群

 USエリアを隅々まで監視するためには、定点となるセンサーユニットを設置するだけではなく、USエリア内を移動しながら観測する機能も必要となる。

 センサーユニットの周囲にセンシング機能を持った移動ロボット群を配備することで、フレキシブルな観測エリアの構築が可能になる。センシング移動ロボットとしては、1次元、2次元、3次元を移動するロボットをそれぞれ開発している。

 1次元センシング移動ロボットは、USエリア内に設置されたレール軌道に沿って移動する。天井などに設置して、上から見た映像を監視センターへ送る。プログラムで監視モードを設定することができ、工場などに設置し守衛の巡回の代わりにロボットが巡回することが可能となる。


1次元センシング移動ロボット。サイズは250×475×240mm(幅×奥行き×高さ)。重量は11.5kg。時速6kmで走行する 【動画】1次センシング移動ロボットのデモンストレーション。下部についたカメラやセンサーで周囲の状況を監視しながら移動する

 2次元センシング移動ロボットは、前後についた2組のフリッパーアームで移動し、階段昇降・不正地も自由に走破できる。センサーユニットと同様に各種センサーを搭載している。また、カメラを前方2つ、後方に1つ搭載している。

 カメラの映像は、ロボットを操縦するオペレーター用と、監視指揮者用の映像をそれぞれ送信するのが特徴だ。これは消防署と合同で行なった実証実験で、オペレータはロボット前方を見ているのに対して、指揮官は周囲全体の状況を把握して指示を出す必要があるという要求に応えたからだという。


2次元センシング移動ロボット。サイズは354×800×364mm(同)。アームを伸ばしたとき、長さは1,300mm。重量は60kg 【動画】時速6kmで走行する。前方についたカメラで撮影した映像を見ながら、遠隔操縦する 【動画】その場の旋回や、フリッパーアームを使ってボディを持ち上げることもできる

【動画】ガレキを走破するデモンストレーション。会場のスペースが狭いため、かなり苦労して乗り越えている。前方にスペースがあればスムースに乗り越えることができる 2次元センシング移動ロボットのオペレータ用画面とコントローラー

 3次元センシング移動ロボットは、飛行船型で機体内外のカメラ情報や機体上のセンサから自らの位置と姿勢を推定して、事前に定められた軌道に沿って自動飛行することができるという。今回は会場の都合で展示はできず資料説明のみだった。


【写真A】監視センターへ、全てのロボットの情報が送られてくる
 このようなセンサーユニットと移動ロボット群でUSエリアのコミュニティをつくり、複数のコミュニティを長距離の無線で結合し、全てのコミュニティの情報をセンターで監視できるというシステムになっている。

 監視センターへは、写真Aにあるように、全てのロボットからの情報が送られてくる。写真の左側に表示されているのは、1次元ロボットから送られてきた映像。中央上は、2次元ロボットの監視指揮者用映像で、下がオペレーター用映像。右端は、固定センサーユニットの映像である。


USエリアを使った事業化の取り組み

 こうしたUSエリアを使った事業化の話が進んでいる。

 当プロジェクトの通信部分開発を担当しているのが、株式会社シンクチューブだ。同社は、WiFiメッシュネットワークと長距離無線システムの結合に取り組んでいる。

 前述のとおりセンサユニットや移動ロボットは、情報収集を行なうと同時に無線の基地局でもある。それぞれのロボットを基地として、無線でメッシュ状にネットワークを構築する。この基地局は、ロボットでもセンサーユニットであってもいい。このように無線で接続できる端末のみで構成されたネットワークをアドホックネットワークという。

 防災システムは、災害発生などいざ必要となった時に、速やかにネットワークを構築できるシステムでなくてはならない。同社のシステムは、事前の設定やネットワークを組む必要がなく、各ユニットやロボットを配置して電源をいれれば全体がつながるという。

 同社はUSエリア事業化のひとつの取り組みとして、同社が開発したアドホックネットワークを六甲アイランドとポートアイランドの間で構築し、その効果を実証しながら販売している。今年は、両方の島のデータを海上無線で飛ばし、互いのメッシュを統合し、6km離れたところにあるロボットを遠隔操縦した。この成果を元にして、秋には次世代モデルを発表する予定だという。


赤色のところにロボットやセンサーユニットで構成するメッシュネットワークを構築した 「システムを発展させて、神戸の港湾エリアをカバーしていくようなシステムを作りたい」と語る(株)シンクチューブ社長 海藻敬之氏

 また、1次元移動ロボットを用いた地下鉄安心支援システムを株式会社創発システム研究所明興産業株式会社が共同で開発している。

 当プロジェクトのシステムは、ビルのような閉鎖空間や地下街での稼動を対象として開発をしている。このように情報をセンターに集めて監視する場合、どこの情報なのか、またその情報が何を意味しているのかが重要となる。そこで、移動センシングロボットにローカライゼーションシステムユニットを搭載し、遠隔操縦のロボットの位置を計測し、3次元マップを作るシステムを同時に開発している。3次元マップ表示システムを開発しているのが、創発システム研究所。ロボットの開発を明興産業株式会社が担当している。


1次元センシング移動ロボットを用いた地下鉄安全支援システム 3次元マップ表示システム 3次元マップ表示システムのシステムを紹介する?椛n発システム研究所 代表取締役 中堀一郎

 USエリアのひとつとして、地下街と地下鉄のコンプレックスシステムを想定している。例えば、三ノ宮の地下街は阪神電鉄の地下鉄や神戸の地下鉄も入り、非常に複雑な迷路になっている。もしここで火災が起きた場合、地下街は全てつながっているため、煙がどちらの方向に行くのか、総合的に監視をし、安全安心な空間を作るのが必要だという。

 コンソーシアムで開発したロボットを地下街や地下鉄のホームに導入し状況を探査した場合、ロボットに搭載したカメラの映像を地上に送り、その映像がどこから発信されているのか、そこからどのように見えるのかというを知るためにコンピューターグラフィックを使う。

 地下鉄のホーム上にある1次元ロボットから送られてくる映像と、コンピュータグラフィックスを同時に表示することで、状況を把握しやすくモニタリングするシステムを考えている。

 創発システム研究所の中堀氏は、「今後の展開として、火災が起きたときに炎がどのように広がるかというシミュレーションとあわせていくビジネスが出てくると想定している」という。


URL
  NPO法人国際レスキューシステム研究機構
  http://www.rescuesystem.org/

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( 三月兎 )
2007/10/01 00:06

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