福岡市のロボスクエアにおいて8月11日、12日の2日間、京商による二足歩行ロボットMANOIのイベント「MANOIDAY」が開催された。これはロボスクエアの夏休みイベントの一つとして行なわれたものだ。
イベントではMANOIのデモンストレーションとモーション作成体験授業が行なわれた。
デモではMANOIによるラジオ体操、MANOIの体験操縦などが行なわれ、特に体験操縦では子供たちが行列を作っていた。
モーション作成体験授業は、MANOIのモーション作成の仕方を公開授業していた。「サンプルプログラムのダウンロード」「モーションエディタでモーションの作成」の仕方を子供たちに公開していた。またMANOIの教示システムを使い、子供達にMANOIを動かしてポーズを作ってもらい、それを連続して再生させる方法も目の前で披露していた。
いずれも親子連れに大人気で、子供たちにとっては夏休みのいい体験になったことだろう。
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ショーの様子。司会を務めているのは声優学校に通う女性
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ショーに使用されたMANOIたち
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足を伸ばしたシンウォーカーで歩くMANOI PF-01
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ラジオ体操をするMANOI AT-01
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人気だった体験操縦
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MANOIのモーション作成体験授業
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モーションエディタを使ってのモーション作成の方法
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教示システムによるモーション作成の体験
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● Li-Poバッテリ講演会
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京商の岡本氏によるLi-Poバッテリの講演会
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両日の17時からはロボスクエアのセミナールームで、京商の岡本正行氏によるリチウムポリマーバッテリについての講演会も行なわれた。
6月に発売されたMANOIのPF-01にはLi-Poバッテリが使われている。つまりLi-Poバッテリに詳しい人ばかりでなく、PF-01を購入した一般の人もLi-Poバッテリを扱うことになる。
最近ではリチウム電池の事故やリコールが相次いでいることもあり、リチウム電池に対する不安が高まっている。しかし、十分な電流を得るためには、やはりリチウム電池は魅力的であり、MANOIのPF-01もLi-Poバッテリを採用している。京商としてはLi-Poバッテリを安心して使ってもらうために、この講演会を企画したとのこと。
講演会の要点は「京商のLi-Poバッテリは(過充電などの)ムチャな使い方をしない限りは安全」「(Li-Poバッテリ全般に関しては)膨らんで熱を持ったLi-Poバッテリを使い続けることは危険なので絶対に止めてほしい」との2点だった。
京商は自社のLi-Poバッテリに関して過激ともいえる実験を繰り返しており、講演会の会場でもその実験の映像が公開された。Li-Poバッテリに「釘を刺してみる」「定格電圧より遥かに高い電圧をかけての過充電」、最後には「Li-Poバッテリをバーナーの炎であぶって燃やしてみる」ことまでやっていた。
その実験などで、Li-Poバッテリに関して確認できたことを箇条書きにしてみる。
「過充電・過放電などによりLi-Poバッテリは膨らんで熱を持つことがある。この状態で使い続けるとLi-Poバッテリは発火する危険が高い」
「Li-Poバッテリは膨らんだらすぐに発火するわけではない。しかし、外国製のLi-Poバッテリの中には、膨らんだまま放置しておいたら発火した例がある」
「Li-Poバッテリから煙が出たら、数秒後に発火する危険もある。煙が出たら、回りの可燃性のものを速やかにどけて、安全な環境のもとで煙が収まるまで観察し、その後に水の中に投入すること」
「Li-Poバッテリは発火しても炎はあまり広がらない(40cm程度)。万一発火した場合には回りにある可燃物を1mより遠くにどけること。また発火したLi-Poバッテリの炎は消火器で完全に消え、消火剤と何かの反応をするようなことはない」
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Li-Poバッテリの釘刺し実験。吹き出しているのは水素ガス。この時の実験ではガスが出るだけで発火までには至らなかった
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3.7Vの定格電圧に対して6Vの高電圧をかけての過充電実験。すでに白いガスを噴出している
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発火! ちなみにLi-Po本体の燃焼時間は長くて2秒ぐらいとのこと
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燃えるLi-Poバッテリ。ケースは割と長く燃焼が続くらしい
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バーナーによるLi-Poバッテリ燃焼実験。上部には油を染み込ませた布が吊るしてある
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Li-Poバッテリの炎はあまり拡散せず、布にも火が燃え移っていない
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また京商では、工場から出荷されたLi-Poバッテリのロットの中から何個かを抜き取り、釘刺し実験やハンマー破壊実験を行ない、発火しなかったロットのみを販売しているそうである。
Li-Poバッテリが膨らんで熱を持った場合の処置だが、「ただちに使用を中止し、水の中に1時間以上放り込む」とのこと。水の中に放り込む理由は「酸素の遮断(Li-Poバッテリから出る水素ガスも酸素がなければ燃えることない)」「温度低下」が実現できるため。水中にある限り、Li-Poバッテリが発火するまで温度は上がることはないので、「膨らんだLi-Poバッテリは水の中に入れておけば大丈夫」と岡本氏は力説していた。
1時間以上水の中につけた後で、また発熱や膨張がなければ、まず発火の心配はないそうだ(また熱を発するようなら、再び水の中に投じ、発熱しなくなるまで待つ)。その後に端子を絶縁して不燃性で壊れにくい金属製の容器に入れておけば大丈夫とのこと。
膨らんだLi-Poバッテリに関しては、よく「塩水につけて完全放電した後、燃えないゴミとして出す」と言われているが、岡本氏は必ずしもこの方法は正しくはないと言う。
なぜなら「塩水につけても完全放電はしない(塩水によって金属部分が腐食するので放電が止まる)」ので、わずかとはいえエネルギーの残ったLi-Poバッテリがゴミ収集の時に傷つけられて「発火する危険性がゼロとはいえない」からだそうだ。
岡本氏はこれに対して「使えなくなった京商のLi-Poバッテリは、ぜひリサイクルに回してほしい」と語っていた。京商はライセンスを取得し、Li-Poバッテリのリサイクルが許されている企業である。京商が指定したマノイショップに持ち込めば、Li-Poバッテリの回収をしてくれるそうだ(現在、福岡県におけるマノイショップは、ロボスクエア、クラフトハウス天神店、ロボッチャ(いずれも福岡市内)の3箇所となっている)。
ただし、マノイショップでリサイクルできるLi-Poバッテリは、「京商のLi-Poバッテリに限る」とのこと。京商では他社のLi-Poバッテリもリサイクルできるように日本工業会に申請を出したが認められず、現在のところ京商のLi-Poバッテリのリサイクルしか許されていない。
京商以外のLi-Poバッテリの処理については「水の中に入れて発熱しない状態にした後で、そのLi-Poバッテリを製造した会社に処理方法を聞いてほしい」としており、これについては業界全体での早急な取り組みが望まれるところである。
岡本氏はLi-Poバッテリの危険について語った後で、「京商のLi-Poバッテリはよほど危険な使い方をしない限り、安全に使えます」と力説し、Li-Poバッテリを使っているMANOI PF-01の安全策についても話していた。
MANOI PF-01には「Li-Poセイバー」という基板を搭載し、異常な電圧を感知した場合は、すぐにLi-Poバッテリの放電をカットするようになっている。MANOI PF-01に関しては、純正の京商のLi-Poバッテリを使っている限り、それほど心配する必要はないようである。
ただ、「Li-Poバッテリは使い切ってから抜いてください。また三カ月に一度は充電して使ってください」とも注意があった。
また京商ではLi-Poバッテリを持ち運ぶ時、ビニール袋のような絶縁体に入れて、茶筒のような金属製の容器(外圧がかかった時にLi-Poバッテリの表面が傷つくのを防ぐため)に入れているとのこと。これも参考になるだろう。
講演会の最後に岡本氏は「膨らんで熱を持ったLi-Poバッテリは絶対に使用しないで、水の中に入れてちゃんと処理してほしい」と繰り返していたので、MANOI PF-01のオーナーだけでなく、Li-Poバッテリを使っている方はぜひとも心がけていただきたい。
■URL
京商
http://www.kyosho.com/
製品情報
http://www.kyosho.com/jpn/products/robot/index.html
ロボスクエア
http://www.robosquare.org/
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( 大林憲司 )
2007/08/22 00:10
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